《比翼の鳥》第10話:知るという事

改めて、よろしくと握手をわした俺達は、窟住居を出て、外に來ていた。

森は薄暗くあるものの、靜謐な空気が支配し、それが徐々に息吹のじられるものへと変わっていく。正に、目覚めの途中と言った風景だった。日もまだ低く、これから一日が始まる予を十分にじさせる。

そんな中、俺はルナの後ろをまたも著いて回っていた。

今回は、ズバリお食事がお題である。

簡単にルナに問いただしたところ、食事は時々しているとの事なので、折角だから俺も…と言う流れである。

時々って何だ?時々って。と突っ込みたくなったが、まずは食事をしながら聞けばいいだろうと気軽に考える。

相変わらず、目印も何も無いのに、意気揚々とルナは森の中を進む。これも魔法の恩恵なのだろうか…。

だとすると、魔法を覚えるまでしばらくの間は一人で散策もできんな…。俺はヤレヤレと、し肩を落とす。

15分ほど歩いただろうか?し開けた場所に出た。先日の大樹の所ほど大きくは開けてないのだが、庶民的な一軒家が丸々とるくらいの広さだ。

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その開けた場所に、ぽつぽつと等間隔に、細く青々とした木が茂っていた。良く見ると、その木にはリンゴの様な味しそうな実が実っている。

程。これがルナの食事かな?と問いかけると、コクコクと首肯。

何ともおいしそうじゃないか。

もし、獣を出會いがしらに一刀両斷して、生を差し出されたらどうしようかとかに思っていたのだが…とっても平和的な食事で良かった。

ただし、実のなっているところはし高く、俺がジャンプしても屆かない。ここも魔法の出番かな?と思ってルナを見る。

「むふー!」と高い所にある実を見ながら、何やら鼻息の荒いご様子。

あれ?何かやっぱり嫌な予しかしないんだが…。これは、俺がさっきの事を引きずっているだけなのか?

そう思い、ルナに何をしようとしているか聞いてみようと思った矢先。

ルナの腕が下から上へ無造作にふり払われた。

その直後、突然起こった突風に俺は思わず顔を庇う。

腕に遮られた視界の先からは、ドンガラメキャゴロンゴロンと、何とも俺を不安にさせる大音響が聞こえてきた。

何だ?一?ルナの仕業か?と怪訝に思いながら顔を庇った腕を降ろした俺の目の前には…

先程まで味しそうな実を実らせていた木々が幹の元からバッサリと綺麗に切斷され、倒木となっている姿が延々と続いているのであった。正に死累々ならぬ、倒木累々。しかも、実を付けた木々を全壊したに飽き足らず、その奧の森までもこそぎ倒壊させていたのだった。

「ちょっとぉおおおー!?ルナさぁーん!!何してるんですかぁぁぁああああ!!」

ルナのドヤ顔をバックに、俺の絶が、より広くなった空き地(當社比1.5倍)に木霊した。

とりあえず、腹が減っては戦は出來ぬという訳で、リンゴ(仮)を食べつつ、今の慘狀について申す事にした。

まぁ、別に腹は減ってないんだけどね。

「ルナさんや?あ、このリンゴ味いな…。モグモグ。…ではなく!何で全部木を切り倒しちゃったのよ?しかも幹ごと。」

それに対して、ルナは「んー?」と首を傾げるばかり。

その様子に、俺はルナにはどういう事をしたのか理解が及んでいない事を改めて察する。

「んとね。もし実がしいんであれば、実が生っている枝だけ切ればいいんじゃないかな?とは考えなかった?」

その言葉を聞いたルナは、「おお!その手があったか!」と言った、心したようなびっくりしたような顔になっていた。

やはりその考えはなかったのか…。しかし、これだって本能やってるわけでは無いだろうに。誰かに教えて貰ったはずだし…。と、そこまで考えて、以前爺さんと婆さんが一緒に居たと言っていたことを思い出す。

「もしかして、さっきの洗濯にせよ、木の実取りにせよ、誰かに教えて貰った?」

その問いに、ルナは首肯しつつ、

「じじいとばばあ。」

と答えた。

何処のクソジジイとクソババアだ!?ワンパクってレベルじゃないぞ!!

俺は、ルナの答えを聞きつつ、天を仰いで、今は亡き(死んだかどうかはしらんが)2人に悪態をつく。

そして、この慘狀がどういう事を意味するのか、しっかりとルナに教える必要があるとじた。

俺は心を鬼にして、ルナと向き合う。

「ルナ、そのままで良いからよく聞いてほしい。を食べるっていう事は、他の命を貰うって事だよ。命をもらうって事はね?その貰われた命は無くなっちゃう。死んでしまうんだ。つまり、俺達がを食べるっていう事は何かの命を殺しているっていう事なんだよ?ここまでは分かる?」

俺は、姿勢を正し、ゆっくりと説き伏せるように、ルナにそう語った。

ルナは俺に言われたことをジッと考え、そして頷く。

俺は倒れた木々の中でまだ、赤々としている実を啄む鳥を見付け、その鳥を指さす。

「ほら、あそこに鳥がいるだろう?あの鳥も、俺達と同じ様に実を食べて命を貰ってる。そうして自分の命を繋いでいるんだ。」

そして、俺は再度ルナをじっと見ると、こう切り出した。

「けど、ちょっと考えてしい。ここの木が全部無くなったら、明日からあの鳥は何から命を貰えばいいんだろう?」

ルナはその言葉を聞くと、ハッとした様子で鳥の方を見る。まだ、鳥は夢中で実を啄んでいた。

「俺達は、ここにあった全ての実を食べる必要は無い。そうだよね?今は々3個もあればいい。だから、実をすべて落とす必要は無かった。けど、ルナ。君は木を倒す事で全ての実を奪い取ってしまった。今はまだあるけど、死んでしまった木からは実が出來ない。実が全部無くなったら他の生きはこの木の実を食べれなくて死んでしまうかもしれない。」

一旦區切って、ルナの様子を見る。ルナはまだ、必死に実を啄む鳥を見ていた。その鳥は、まるでこの機を逃すともう実を食べる事は出來ないというかのごとく、一心不に実を食べている。

「ルナ、俺達は、必要な量以上に、森の生きから木の実を奪ってしまったんだよ。それは単なる好奇心や遊びでやっていい事ではない。」

俺がそうルナに言うと、ルナは涙の溜まった目で俺を見て、そして、今も実を啄む鳥を見て、

「ごめんなさい…ごめんなさい…」と、涙を流して謝っていた。

その様子を見て、俺はこの子は大丈夫だと確信する。

ちゃんと失敗とけ止めて、その失敗がどういう意味を持つか理解している。

痛みもちゃんとじている。これならきっと同じ失敗はしない。大丈夫だ…。

「ルナ、辛い?」

その問いに、ルナはコクコクと、頷いた。

この子は純粋だ。どうしようもないほどに。

「そう…。そんな辛い思いをさせて申し訳ないという気持ちはある。けど、これはルナが知らないといけない事だから。いや、違うな。俺が知っていてほしいと思ったから、俺は敢えてそれを教えた。」

ルナはぶんぶんと首を振る。そして、しゃくりあげながら、

「ルナ…えうぅ、な、何も…うぅ、知らない…の。知りたいの。」

グスグスと鼻をぐずらせながらも、懸命に俺に訴えかけて來た。

その顔を見て、俺は教え子だった川合さんの事をふと、思い出した。ああ、彼と同じだ。

今でこそ才の川合さんだったが、良く分からない事や出來ない事にぶち當たると、悔しい!と連呼していた。

知らない事が悔しい。皆出來る事が出來ないのが恥かしい。

時には涙を流しつつ、それでも彼は必死に勉強した。俺もそれに必死に応えた。

その時の彼と良く似た顔を今のルナはしている。

「分かった。ルナが知りたいなら俺は、知りうることを教える。だから、一緒に頑張って知って行こうな。」

俺は何度もうなずくルナの頭をでながら、今後、どうやって彼を育てて行くか、真剣に考えていた。

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