ルナが俺の方に歩いて來た。

すると、る球達も、一緒にルナの周りを回りながら著いて來る。

さしずめ、る竜巻のような狀態だ。そのままテクテクと俺の目の前まで歩いてくる。

一瞬目が合うのだが、直ぐにる竜巻の中に取り込まれて見えなくなるルナ。

おう…綺麗なんだけど、現実がなさ過ぎる。何となく心霊現象の様な、寒々しい恐ろしさを覚える景だね。

その竜巻の中から、ルナが何やら「むふー！」と言ったじで笑ったような気がした。

うん。すごく嫌な予しかしない。

何かをやらかすつもりだというのは、短い付き合いだがすぐに分かった。

そして、そういう時のルナの行は、たいていの場合思いも寄らない事態を引き起こす。

洗濯の時しかり、収穫の時しかり…

頭の中で盛大に警鐘が鳴り響く。

うん、駄目だ。今までこちらの世界でこの覚に遭遇した時は、すぐにルナを止めるべきだと本能が知っている。

「よし、ルナ。まずはストップだ。くな。いいか？いちゃ駄目だ。今、考えて実行しようとしていることをすぐにやめ…って、わぷ。」

遅かったかもしれない。いや、明確に遅かった。俺がし後ずさりしながら、必死に止めようとしたのも…むなしく、ルナは行を起こした。

何をしたかと言うと…俺に飛びついて來たのだ。しかも顔に向かって。

どこにそんなジャンプ力があるんだと一瞬考えたが、抵抗する間も無く顔をルナので覆われる。

らかいルナと溫をじる間もなく、俺は腰が引けていたことと、視界を奪われた事が祟ったのか、そのままもちをついた後、完全に仰向け狀態で倒れる。

ルナを取り落とす訳にはいかないので、俺は咄嗟にルナのに手を回し、ルナのをキープした。

「うわっと、何をしてるんですか！ルナさん！」

思わず敬語になった俺は、一回ルナを顔から強引に引きはがす…が、何やらルナの様子がおかしい。

「んふふー」と壯絶に笑い…いや、むしろ…にやけながら、俺の顔を見ている。

その目が、あれだ、表現に拘らないのであれば…いっちゃってるのだ。トランス狀態である。いつものパッチリではなく、し吊り上って意地悪な雰囲気になっているのだ。焦點も何となくずれてるし。それでいてトローンとしてる。

あれだよ。それは、なくとも子供がして良い目じゃないよ。ルナさんや。

そして、気が付いた。更に幸せなじの魔力が放出されているのである。

便宜上、幸せオーラと名付けよう…。

先程よりも更に濃なその魔力は、近くに居る俺が包まれていると錯覚するほどの濃さだった。

いや実際包まれているのか？なんつー濃度だ。溺れてると言っても過言ではない。

唖然とした俺は、ふと視線を外して見えた景に更に絶句する。

俺達はの中に居るのだ。いや、正確には先程のの球の竜巻の中にいるのだろうが、もう、外の景が全く見えない度なのだ。さっきよりはるかにの球が増えている。これは、もしかして、幸せオーラの影響か？

考えてみたら、あのオーラが出始めてから、の球がやってきたような気がする。もしかして、このの球は、このオーラと接な関係があるのか？だとすれば、このオーラを止めれば事態は収拾するのでは…。

そこまで考えた時、耳にらかく、そして暖かく、しかしったをじた。

その後、數瞬遅れてやってきた、ぞわーっという覚に思わず、

「うひぃい！？」

と聲をあげる。

何事！？と思って目を向けると…

ルナが俺の耳たぶを甘噛みしていた。

「ちょっとぉおおおお！？」

俺は完全にパニック狀態だった。

なに、中年の耳たぶをかじってるんですか！？

俺がやるならなら良いけど（注：駄目です。犯罪です。）、こんな景見て嬉しがる奴いないだろうがぁ！！誰得だ！責任者出てこい！責任者！！

って、耳舐めないでえぇぇ！！

ルナは、幸せそうに「むふー」と鼻息を荒くしながら、俺の顔をあちこち舐めたり甘噛みしたりし始めた。

俺は必死に腕でガードを試みるも、マウントポジションに鎮座したルナは、巧みに俺のガードをすり抜けて攻撃（？）

を仕掛けてくる。

きっと見ている皆は、何で起き上がらないんだよ？って思うだろ？俺もそう思うんだよ。

けど、何かよく分からない圧力が俺を押さえつけてて頭が上がらないんだよね…。

起き上がれないから、ルナに好きなようにやられてるのが現狀だ。わざとじゃないんだぞ！？本気で無理なんだよ！！

あかん、駄目だ、このままでは俺の貞…はまだ良いとしても、人として大切っぽい何かがルナに犯される。

…一瞬それでもいいんじゃね？とか思った俺がいるが、理を総員して抗う。

そもそも、今のルナはまともな狀態じゃない訳で、元に戻った時に、ルナに悲しい思いをさせてしまうのは俺の本意ではない。

そんな真面目な思考も、ルナが首筋に吸い付いて來たに、思わず…うひぃいい！？

って、これ、腐った中年が味わって良い覚じゃねぇぞ！味あわせる側に回らせ…らめぇえええ！！

ぬあー！もう駄目だ！堪忍袋の尾が切れた！じゃなくて、引きちぎらないと別の世界に旅立ちそうだ！

そう思い、戒めのチョップをルナに向けてお見舞いしようとするが、全く當たらない。なんつー回避能だよ…。

やはり流石に、ルナをどうにかするのは気が引ける…以前にこのじでは実力差云々で出來ないと思うが。

しかし、周りのの球を吹き散らせば、何かしら事態が改善すると俺の勘は告げていた。

俺は、まず、ルナに一時的にでも攻撃させないように、強引ににかき抱いた。ルナはにスリスリスリスリ…って、ぞわぁーってくるわ！いつまですりよってるんじゃ！！くすぐったい！くすぐったい！！ちょっと幸せ…けど、我慢！さっきより、まだまし！！

と、なんとか集中しつつ、自分の中の魔力を転させて、無理矢理オーバーフローさせる。先日やったやり方だ。

しかし、今回はこの転を、丹田だけでなく、先程摑んだ、の経路まで長くばす事で、より多くのエネルギーを無理矢理に捻出しようとしている。

とりあえず、現狀を打開できれば何でもいいわ！半ばやけっぱちな気分で、転させていく。よし、回転數が…上がって…膨張…よし、きた！俺はそれに『中和し浄化する』というイメージを描きながら、更に膨張させていく。

上手く行ったら拍手あれ！っと、いけ！！

俺は、右手を虛空に突き出すと、全力で放出をイメージする。

「これで！！どうだぁ！！」

その瞬間、音も衝撃も無い発が俺らを包み込んだ。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

先程まで、渦巻いていたの球はゆっくりと速度を落とすと、かずそこに漂うだけになった。

ルナから放出されこの一帯を濃に覆っていた幸せオーラも、発と同時に吹き飛び、ルナからも新たに出なくなっていた。

騒ぎの元兇であるルナは、俺のの上で、「すぴー」と幸せそうに寢息をかいていた。

俺は右手を突きだしたままの狀態で固まっていたが、狀況を確認すると

ゆっくり右手を降ろし、しばらく放心したまま、大の字で倒れていた。

なんか思いのほか上手くいって良かった…と、ほっとする。

それと共に、魔法を的確に使えた事に、靜かに興する。

しかし…

「『これで！！どうだぁ！！』じゃねぇよ…。歳考えろっての…。」

そういった後で、俺は自分の顔を右手で覆いつつ、込み上げてくる笑いを抑えるのに必死だった。

久々に、自分の素のままのを剝き出しにした気がする。

考えてみたら、うつ病になってから、いつも周りを気にしてばかりだったからな。

何も考えずにを発させるっていう事自が、そうそうある事ではなかった。

たまにはこうやって、をそのまま吐き出すのも悪くない…。

そんな事を思っていた時、

「はわぁー…なんだか騒がしいですが～…何かあったのでしょうか～？」

と、何とも力の抜ける聲が上から降って來るのを聞いた。

なんだ？首を向けると…そこには、青いが浮かんでいたのだった。