《比翼の鳥》第22話:姉妹
さて、計らずとも、雙子の父となりました。三十路のおっさんです。
まぁ、意図せずやってしまったことだが、後悔は無い。多分。
だって、どちらも可い俺の子達ですもん。流石に、狙ってやったことではないのでビックリしたけど、過ぎてしまえば楽しみでたまらない。早く可い聲でお父さんって呼んでしいなぁと妄想を膨らませる。
そんなこんなで、日も大分落ちてきたが…俺の太ももにがっしりとしがみ付いているルナさんが未だに目を覚まさないのが非常に心配だ。多分、幸せオーラに當てられて疲れているだけだと思うのだが…
俺は落ちてきた日を見て、流石にそろそろ起こさないとまずいなと、焦り始める。
何故かって?そりゃあなた…俺一人では窟に帰れないからですよ…あんなどこもかしこも同じようにしか見えない森にって、生きて出られる自信は小指ほども無いよ。
俺は、ルナを起こすことを決定すると、早速行に移す。
「ルナ、ルナさんや。そろそろ起きなさいな。もう夕方だ。家に帰ろう?」
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俺の太ももに張り付いて「うふー」と寢息(?)を立てているルナを軽く揺すりながらそう話しかける。
しばらく、気よく話しかけ揺すり続けていると、ようやくルナは眠そうに下がった目をこすりながら
「おはよう…ごじゃやす…」
と、半分寢ながらもを起こした。
俺はその様子を見て苦笑した。ちゃんと挨拶ができてえらいなーとルナの頭をでつつ、
「ルナ、眠いところ申し訳ないが、家に帰りたいんだ。道案をお願いできるかな?」
そう問いかけると、眠そうな目でコクリと頷きつつ両手をばしてきた。
俺はその意図を汲み、ルナを抱き上げる。
ルナは日の落ちる方と逆を指差しつつ俺の首に腕を回す。
俺はルナを抱きかかえながら、指差さされた方向に歩き始める。
と、そこで、ルナは何かに気づいたように、「ん?」と首をかしげ、俺のYシャツの襟を広げつつ元を覗き込む。これ、ルナさんや。人の類を勝手に広げて元を覗き込まないでください。
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ルナは俺が首に掛けている我が子…と言う名のペンダントを指差すと、
「誰?」
と聞いた。
驚いた。「誰?」と聞いてきたよ。普通は「これ何?」だろう。
ルナは、どこから見ても寶石のついたペンダントとおぼしきを、生として認識したのだ。いや、まぁ、霊が生かって言うと、正直微妙なんだが。
やはりルナは俺とは違う世界の見え方をしているんだろうなと、その時はっきりと理解した。
そんな揺を俺は押し殺しつつ、ルナに応える。
「うん、その子達は、今日から家族になる『此花』と『咲耶』だよ。」
その俺の聲にあわせて、我が子たちは、挨拶をするように明滅した。
ルナはその様子を、目をまん丸に見開いて見ていたが、しばらくすると、「ん!」と頷いた。
そして、俺は、ルナが寢ていた時に起こったことを、簡単に説明した。
水の霊、ウィンディーネことディーネちゃんが現れたこと。
ディーネちゃんに、この子達を頼まれたこと。
その、ディーネちゃんがこの子達を迎えに來るであろう事。場合によってはそのまま一緒に過ごす事になるかもしれない事等々だ。
ちなみに子供を作ったという事や、この子達が俺の子であるという事は話さなかった。そこから芋づる式に、話題が楽しい教育になることを俺が嫌ったためだ。いや、まだ俺には難易度高いです。うん、無理。そのうちね…そのうち。
その説明を聞いていたわが子達が、心持ちか不服そうに明滅していたのは緒である。
説明を聞いていたルナは、しきりに「んー?」とか「ふむー?」とか、唸っていたが、とりあえずは納得してくれたようだ。
そんなやり取りをしながら歩き続け、気がつくと窟住居へと到著した。
俺たちは、「ただいまー」と聲を上げつつ、中にる。誰も居ないんだけど、やっぱりこういうのは積み重ねだと思うんだよね。我が子たちも、俺の聲を追うように明滅していた。いい子達だ。
とりあえず、簡易冷蔵室に保存していた、リンゴ(仮)を出してきて、ルナと2人で仲良く食べた。俺は自分で思う以上に疲れていたらしく、リンゴ(仮)のみずみずしい甘さがに染み渡るのをじ、その余韻を楽しんだ。
ルナに幸せオーラを放出していたときのことを聞いて見たが、良く覚えていないようだった。ただ、とても楽しく、幸せだったという覚は殘っているらしい。まぁ、あんだけ恍惚とした表を見せられれば、そりゃそうだろうね!としか言えない。
しかし、今日は疲れた…。流石に々ありすぎて頭もいい加減思考停止気味だ。
俺は視線を天井に向けつつ、散漫な思考でそんな事を考える。
し早いが今日は寢てしまったほうが良さそうだ。そう決めると、俺はルナに話しかけた。
「ルナ、ちょっと俺は疲れちゃったから橫になりたいんだけど、ルナはどうする?し早いけどもう寢る?」
それを聞いたルナはし考え込むと、首肯した。
そして、ルナが先頭となり俺の袖を引いてルナの部屋へと向かう。
自室へ著くと、ルナは綿布をどかし、ぽんぽんと、敷布団代わりの皮の上を叩いてこちらを見る。
おや?先に寢ろってか?俺は、一瞬俺は訝しがったが、
「先に寢ていいのかい?ありがとう。」
と、深く考えずに応えると、橫になるために寢臺に近づいた。
寢臺の枕元に、我が子たちを優しく橫たえる。我が子たちは始めての皮のに、はしゃいでいるようだった。
そんな様子を見て、俺はホンワカした気持ちになる。
そして俺が寢臺に橫になると、いきなりルナが特攻してきた。
まさに、どーん!っていうじで俺のに飛び込んでくる。俺は「ぐほ!」とから息を強制的に吐き出し、悶絶する。
「ちょっと!ルナさん!それは危険だから止!!」
そう注意するも、ルナは俺のに張り付いて、イヤイヤ!と首を振るだけだった。
なんだか今日は、先日にも増して途端に甘えん坊になったなぁと、思った俺は…ふと、その原因に行き當たる。
「ルナ、もしかして不安なのかな?俺が取られるとか、どっか行っちゃうとか思ってる?」
そう聲を掛けると、ルナは一瞬、ビクッとして、俺のにそのまま顔を埋めてしまう。
その時、一瞬、俺のシャツを握る手に力が込められたのを俺は見逃さなかった。
そんなルナの様子を微笑ましく思いながら、ルナの頭をゆっくりとでつつ、諭すように優しく話しかける。
「そうだよね。いきなり家族が増えますって言われても、ビックリしちゃうよね。大丈夫。俺は絶対ルナを一人で放っておきもしないし、どこかに勝手に行ったりもしないよ?」
そう、聲を掛けるとルナは、おずおずと顔を上げると、涙の溜まった目で俺を見る。
その目は、「本當?」と語っていた。
「うん、絶対に一人で置いて行ったりしない。もしどこかに行くときは、ルナ。君も一緒だ。なんせ、ルナはこちらの世界で最初の家族だからね。」
と言いつつ、俺はよくもまぁこんな歯の浮くような臺詞が出てくるものだと自分で自分に呆れる。
確かに、俺が本當にそう思っているものは事実だが、元の世界では口が裂けても言えるような臺詞ではない。
この世界に來て、俺は自分の心に、より素直になっていることを、事あるごとに実していた。
それが、ルナのせいなのか、俺に何か変化が起こっているのか、その両方なのかは判らない。
ふと、枕元を見ると、我が子たちもルナを心配するように、そして勵ますように明滅している。本當にいい子達だ。俺には勿無いくらいに。
「ほら、この子達もルナの事をとても心配している。俺はね、ルナ。君にこの子達のお姉さんになってしいと思っているんだよ。」
俺は、我が子たちの様子を見ながら、ルナに語りかける。
ルナはビックリしたように、我が子を見ながら、「お姉さん…」と呟く。
「そう。この2人のお姉さん。俺と一緒にんな事を教えてあげてしい。話し相手になってしい。困っていたら力になってしいんだよ。俺がルナにそうしているように。ルナが俺にそうしてくれているようにね。皆でそうやって助け合えたら、もっと素敵だと思わないかい?」
俺のその言葉を、ルナは一生懸命に考えてくれている。俺は、急かすことなく、ゆっくりとルナの考えがまとまるのを待つ。やがてルナは、我が子たちの方を見て、そして、俺の目を覗き込むようにまっすぐと見つめてきた。その目には、決意とやる気があった。俺はその目を見て、微笑むと、
「頼むな。ルナお姉さん。」
と言った。その言葉にルナは、「んむ!」と、力強く頷いたのだ。
そんな俺たちの様子を見た我が子たちは、嬉しそうに明滅していた。
そんな様子を確認した俺に容赦なく眠気が襲ってきた。
気が抜けたのと、今日は々あったからだろうか…そのには抗いがたい吸引力があった。
俺は、段々と意識が遠ざかるのを自覚し、
「ああ、安心したら、ちょっと眠くなってきたよ。すまないが先に寢るよ。ルナ、此花、咲耶。お休み。また明日な。」
そう言って、俺は意識を手放した。
意識が途切れる寸前、「「「おやすみなさい。」」」と鈴のように可らしい、3人の聲が聞こえたような気がした。
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