《比翼の鳥》第13話:後の祭り

俺は虛空に漂っていた。に包まれた暖かな空間だ。

ふわふわとした覚は日常では決して味わう事のない不思議なだった。

先程まで、俺は夢を見ていたらしいという覚があった。

どんな夢かはいまいち思い出せないのだが…何となく良い夢では無かったような気がする。それが、霧散したような覚はあるのだが…しかし、夢から覚めず俺はこうして宙を漂っている。

暖かくらかなに包まれたこの空間は、何故かは分からないが心がとても安らぐ。

その視線の先は霞がかかった様にかすれて、ハッキリと見通す事は出來ない為、どの位の広さなのか全く想像できなかった。

さて、これはどうしたことか?

ふと、首を巡らせると、クルクルと踴るように舞う青いが2つこちらに近付いてきた。

その達には禍々しさは無く、むしろ無邪気で楽しげなじすらうけた。

俺は近付いてくる2つのの球を、何となく見つめていたが、ふと、その正に思い當たる。

「此花と咲耶か?」

俺が聲をかけると、近付いてきたの球は、嬉しそうにキラキラとりながら俺の前まで來ると、スッと、制止した。

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そうか、此花と咲耶か。こうやって夢の中なら相対する事ができるんだな!

俺は何となく嬉しさと恥ずかしさのじった思いを抱きつつ、2人の様子をじっと窺う。

そうして、空の球から、

『はじめまして!お父様!此花ですわ♪』と、頭の中に直接き通る、ころころと鳴る鈴の様に可い聲が響いた。

その後、蒼の球から、

『父上。この姿ではお初にお目にかかります。咲耶です。』と、凜と響く風鈴のような、真の通った綺麗な聲が響いた。

俺は、初めて聞いた我が子達の聲を聞いて、した。どちらも可らしいの子の聲だったからだ。

とりあえず、俺に似なくて本當に良かった!!と心から安心した。

そしてその後、改めて父親として、親が浮かぶのが自分でも不思議だった。

「此花、咲耶。まずは、會えて…と言うより話せてとても嬉しいよ。なんだか良くは分からないけど、來てくれてありがとうな。」

俺は思わず、手をばし、2人の(?)と思われる球でる。っていうか、でれた。

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凄い不思議だ…の球なのに質があるっていうのは。2人の娘たちは暖かくて、らかかった。

2人ともしくすぐったそうな聲で、『クスクス…』と笑っていたのだが、その聲には嬉しさがにじみ出ていた。

俺はそうやって2人をでながら、日ごろ助けてくれているお禮を言う。

「此花、咲耶。いつも助けてくれてありがとうな。今回も、喋れなくて大変だろうけど、良く我慢してくれているよ。本當に駄目な父親だけど、これからもよろしくな。」

その言葉を聞いたわが娘たちは、何か一瞬思う所があったのか、し黙り込む。

ん?何かあるのかな?俺は2人が言いだすのをし待ってみる事にした。

『お父様。の調子はいかがですの?』

『父上。気分が悪かったり、違和があったりはしませんか?』

そんなわが娘たちは、俺の調を気にしてきた。

ふむ…。突然のことで良くわからないが、特に俺の方に問題は無さそうだ。

悪夢を見ていたような…気もするのだが、いつもと違って、倦怠も絶も無いな。

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ん?もしかして、何かしてくれたのだろうか?と俺は思い當たる。

「うん、特に問題はないかな。何となく…悪夢を見ていたような気がするけど、その割りに元気だよ。もしかして…何かしてくれたのかな?」

俺のその言葉に、わが娘たちは、しホッとすると。

『負の魔力より、お父上を守っておりました。』

『お父様は、時々ご自分の過去の怨念に襲われておりますわ。』

と、互に話し出す。負の魔力?過去の怨念?いつもの悪夢のことか…。

そうか、だから、今はこんなにすっきりしているのか。

これは、本當にこの子達に助けられてばっかりだなぁ。父親の威厳とか微塵も無いじゃないか。

「そうか…此花と咲耶に守られていたのか。ありがとうな。」

俺は、けないとは思いつつも、謝を述べる。

それに対して、わが娘たちは

『いいえ、お父様。私たちだけではありませんのよ?』

『ええ、父上。私たちだけでは、あの夢魔は倒せませんでした。』

と、意外な事を言う。

ん?この子達だけじゃない?ディーネちゃんだろうか?あの人なら何やってても不思議じゃないじはするが…

そんな俺の様子に、悪戯が功した子供のようにクスクスと笑うと。

『助けてくださったのは、ルナお姉さまですの。』

『ええ、姉上のお力はとても頼もしいのですよ?』

と、それはもう自分の事のように喜んで話すのであった。

ルナ?なんで?俺の夢に?つか、そんな素振り…

そこで、結構前に、いきなりルナがマウントポジションに鎮座して泣いていた事を思い出した。

…あれか!?あの時も確かに、何か夢をみていたような…。

そこまで理解して、俺は急に居たたまれない程の恥ずかしさに襲われる。

うわー…自分で偉そうに先生っぽくしておいて、実は悪夢から救ってもらってたとか…恥ずかしいぞ!?

俺は、真っ赤になった顔を隠すように覆うと、しばし悶える。

そんな様子を、わが娘たちは楽しそうに見守っていた。

しばらく、悶えてなんとか平常心を取り戻した俺は、

「まぁ、ルナにも後で禮を言うとして…。それとは別に本當にありがとうな。何か俺にできることがあったらいつでも言ってくれな。しは父親らしいこともさせてくれ。このままだとかっこ悪いからさ。」

そう、ちょっと肩を落としながら2人に改めて禮を言う。

そんな、俺の様子を2人は嬉しそうに見ていたが、その後し沈黙した。その後、何かを決するように、

『お父様』『父上』と、俺を呼んだあと、

『『お願いがあります。』』と、見事にシンクロしておねだりしてきたのだった。

「うん、良いよ。何でも言ってごらん。出來る事ならなんでもするよ。」

俺の回答は早かった。それはそうだ。斷るとか、まずありえない。

そんな親馬鹿な俺の様子を娘たちは、どう見たのかはわからないが、一瞬置くと

『『私達も、外に…』』『出とうございます。』『出たいのです。』

と、2人で合わせて言って來た。さすが雙子だけある。息がぴったりだ。

先ほどから観察していると、若干、言葉遣いに違いがあるのがまた面白い。

しかし、外へ出る…か。どうすれば良いのだろう。俺はディーネちゃんじゃないので霊のことはわからんし…。

とりあえずわからないので、知っていそうな雙子に聞いてみる。

『『沢山の魔力がしいです。』』

なるほど。顕現するのに魔力が必要ってディーネちゃん言ってたもんな。

どの程度必要なんだろうか…。流石に娘に魔力全部貢いで干からびて死にましたとか、かっこ悪すぎる。

そんな思いを娘たちはじたのだろうか。

『父上、心配ありません。』

『お父様。必要な魔力は、お父様の魔力量なら問題ありませんわ。』

咲耶と此花がそれぞれ口にする。

ふむ、なら大丈夫だろう。唯一つだけ気にかかっていることがあるので、俺はそれを問いただす。

「此花、咲耶。俺の魔力が必要なら生活に支障が出ない程度で持って行ってくれて構わないのだが、そんなに魔力を大量に注して大丈夫なのかい?ディーネちゃん…君らの母は、魔力は霊にとって薬にも毒にもなるっていってたよ?」

そうなのだ。俺の気持ちが伝播して、この子達が狂ってしまったら俺は自分で自分が許せなくなる。

ちゃんと、この子達の長の害にならないと言うことがわからないと、安心して魔力を渡すことは出來ない。

しかし、俺の心配を他所に、娘たちは

『『それなら大丈夫です。』』

と、しっかりユニゾンして答える。

『お父様と、お母様の魔力で私たちは形作られていますの。』

『逆に、父上、母上の力が取り込めれば、更に存在を固定化できるのです。』

『つまり、お父様の魔力がいただければ』

『私達の姿を更に決めることができるのです。』

『普通の霊は、魔力に侵食されてしまいますが』

『私達の場合は、元々が父上の魔力を使っているので全く問題ありません。』

『お父様の魔力を多くいただくことは、つまり…』

『私達の顕現に必要なことなのです。』

『ですから…』

『父上…』

『『魔力をくださいませ。』』

うん、見事な連攜だ。聞いていて、心地よいくらい綺麗にれ替わり立ち代り説明してくれた。

しかも、最後とか絶対意識してハモらせたのだろう。かの有名な雙子姉妹達もビックリのユニゾン合だ。

まぁ、とりあえず娘に危険がないのであれば、俺は枯れる寸前まで魔力を貢ごう。

「わかった。俺の魔力は死なない程度になら、幾ら持って行ってくれても構わないよ。」

俺はそう笑顔で言うと、何故か娘たちから戸いがれ伝わる。

ん?俺なんか変なこと言ったかな?

そして、おずおずというじで、此花が聲をかける。

『お父様?もしかして、お気づきでないですの?』

ん?何がだろうか…?

俺は逆にその問いに戸う。

そんな俺に、咲耶がおずおずというじで、意見を述べる。

『父上。父上の総魔力量は既に、人としての領域を超える勢いです。そんな量の魔力を使ったらこのが持ちませぬ。』

「は?」

俺は思わず目を點にする。

人としての…総魔力量を超える?言っている言葉の意味が正しく俺の中にってこない。

つまりあれか?俺の一つに、人を超える魔力が凝されているって言うことか?

俺は急いで自分に【アナライズ】をかける。

夢の中だから無理かと思ったが、すんなり起して安心した。

が、しかし、その魔力の數字を見て俺はく。

魔力: ∞ / ∞

え?何そのアンリミテッド。確か、その表示が出るのは無量大數以上になったときだったよね?

そもそも、1ヶ月前、計ったときには9萬くらいだったでしょ?それでも俺は結構驚いたんだけど!?ちなみに、レイリさんは3千程度だった。ないとは言っていたが普通はこんなものなのだろう。

確か、魔力1を俺の火 の 槍フレイムランスに設定してたよね?あれ1本で木々だったら20本はなぎ倒せる威力だったよね?おかしいな…その計算だと、恐ろしいことになるんだが…。

無量大數は、10の68乗だったはずだ…。これを元に、とりあえずはそこを限界點とした。

それ以上になったら ∞ が出るようにしたから、つまり俺の魔力量は無量大數以上の桁を有していることになる。一応、それ以上の數の単位もあったはずだが、もうそこまできたらもはやどうでもいい気がする。

そ、そうだ…表示形式を変えよう。きっと何か変なことが起こっているだけだ。

きっと、俺の魔法陣の作の仕方が悪くてバグっているだけだ。

俺は、表示形式を変えて、再度【アナライズ】を起させる。

魔力: 1 . 46・ ×〈10×123〉 / 1 . 52・ ×〈10×123〉

じゅうの…123じょう…だと?

俺は思わず、「あほかぁぁあぁあああぁぁ!!!!」とんでしまう。

無量大數ぶっちぎってるじゃんよ!?しかももうすぐ2周目じゃん!?何で?

火 の 槍フレイムランスそれだけ打ったら世界滅亡だよ!?

する俺を心配して、此花が話しかける。

『お父様。魔力が増大した件なのですが…恐らく魔力隠蔽のせいですわ。』

俺はそれを聞いて、ギギギギと、さび付いたロボットのように此花に視線を向ける。

『父上。父上の行っているその隠蔽法は魔素の存在を不確定化することで隠蔽しております。』

『それを埋めようと、が自然に魔素を生産し続ける質になっているのですわ。』

『既に父上のは、全ての細胞レベルで魔素を生産するほどになっておりますので…』

つまり人の細胞=60兆の魔素が作られている計算か…。まぁ、サイクルは知らんが。

なんつー副作用。魔力隠蔽する予定が、逆に増大して首絞める結果になるとは…。

レイリさんにこの治療法しなくてよかった…。魔力を噴出しながら笑顔で近づくレイリさんとか見たくないし!

はて…と言う事は、すぐにでも隠蔽を解除しなければならないが…

「わが娘たちよ…參考までに聞きたいのだが、今俺が隠蔽を解除すると、どういうことが起こると思う?」

わが娘たちは、一瞬考え込むように…いや息を呑むようにかな…黙り込むと。

『『村が吹き飛びます。』』

その言葉を聞いて、俺は天を仰いだのだった。

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