《比翼の鳥》第16話:釈明

俺は居間で、皆を前にゆっくりと茶をすすっていた。

フリーズから復帰したレイリさんは、最初、「昨夜、あんなに激しくして頂いたのに!?」とか、「はっ、まさか手を出さないのも実はでないと…ブツブツ」とぶっ壊れていた。

ちなみに、尾をちょっとり過ぎたせいで、レイリさんは昇天された訳だが…そのお蔭で逆に、朝はとってもすっきりと目覚められたらしい。なんとも羨ましい話である。早く起き過ぎたので、朝食の支度をしていたところに、リリーの絶が聞こえて、あの奇妙な現場を目撃するに至ったらしい。

とりあえず、落ち著かせた後で、「ちゃんと説明しますから。」と言うと、一応、通常運転に戻ってくれた。今は変なオーラが見える気がするけど、きっと気のせいだろう…。

そこからは流石のレイリさん。此花と咲耶にリリーの古著を用意してくれ、今はわが娘たちは黒い浴のようなを包んでいる。初めての服のに戸いながらもとても嬉しそうだ。もちろん、良く似合っていてとても可いらしい。

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そんな様子を見て、しはレイリさんも落ち著いたらしい。先程ぶっ壊れたリリーを再起させると(どうやったのかは分からないが…)、一緒にこちらに戻って來て、お茶をれてくれたのだ。

ちなみに、ルナは「むー!」という表のまま、俺の左腕をホールドしている。

俺の右腕は、わが子達が2人でしっかりと左右から抱き抱えるように、うまくホールドしている。

レイリさんとリリーは俺の左向かい。つまり、ルナの方に座っている。

なんか、修羅場に放り込まれた男役をやる日が來るとは…。絶対に俺とは無縁な狀況の筈なのになぁ…。

人生って不思議だ…。そう達観しながら茶をまた一口すする。ちなみに、わが子に完全にロックされているので右手は無理だが、左手は辛うじてくのでなんとかお茶をすすれるのだ…。

レイリさんとリリーも、意識的に自分で落ち著きを取り戻そうとするかのように、お茶をすする。

そうして、3人の茶をすする音がしばらく居間を支配した後…。レイリさんは伏せていた目線を効果音が付きそうなほど鋭く俺に向けると、

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「さて…ツバサ様。ご説明願えるでしょうか?私とあそこまで激しい夜を過ごしておきながら、そのようない子を侍はべらせていたことについて…。」

と、々と誤解を招く表現を織りぜながら、説明を求めて來た。

そんな言葉に、リリーは「お、お母さん!?激しいって何!?」とか、「あなたにはまだ早い事よ…」と、艶っぽい目で語って見たりとか、親子漫才が始まる。

「そ、そんな。お母さんずるいよ!!」とか涙目で訴える娘に、「甘いわよ?リリー。の戦いは何でもありなの…敗者は何も言う資格が無いのよ?」とか、勝ち誇った駄目母親が返す。

うん、この親子最高だ。素で々面白すぎるわ。

俺はもっとやれー的な目で見守っていたが、そんな俺に気が付いたのか、ハッと我に返ると、俺の方に今度は2人して、鋭く視線を向けて來る。

「して、どういう事ですか?」

「そうです!どういう訳ですか!!」

チッ…思いのほか早く素に戻ってしまったな。

つうか、リリーさんよ。今日はやけに積極的な発言が飛び出しているのだが、いつの間にそんな事になったんだね?

々と腑に落ちない俺は、意識してお茶をすする。

その間を嫌ったのか、クールダウンする為か、同じように2人ともお茶をすすりだす。

ふ…かかったな!俺はそのタイミングで口を開く。 

「この子達は……俺の子です。」

茶の飛沫が舞ったことは言うまでもないだろう。

激しく咳き込む親子を見て、思わずニンマリする俺。いかん、これは病み付きになりそうだ。

しディーネちゃんの気持ちが分かってしまった気がする。人をからかうっていうのは面白いな!

苦しそうに、咳き込む2人の様子を見て、流石に心配になったのか、ルナとうちの子達が、レイリさんとリリーの背中をさする。

うん、ルナもうちの子も良い子達だねぇ。それに引き替え、俺のひどい仕打ち。

流石に、可哀相だからこの辺でやめておこう。まぁ、ひたすら驚いて頂く事は変わらないのだが。

暫く咳き込んだ後、やっと喋れるようになったレイリさんとリリーは、

「どどど、どういうことですか!!ツバサ様!!こ、こんな大きな子が…しかも二人も!!」

「そそそ、そうですよ!!それに、昨日までいなかったのに!何で今日朝起きたらいきなりいるんですか!?母親はどこですか!?」

と、完全に取りしていた。こう言う所を見ると、この人達は本當に親子だなぁとじる。

そんな二人の様子をうちの子は、ちょっと心配そうに見守る。

まぁ、子供たちにそういう顔をさせちゃうのも可哀相だし、さっさと止めを刺してあげるとするかね。

「まず、この子達の母親ですが…、訳あってこちらに來れず、今は離れ離れです。いずれ、こちらに來ることがあるかもしれませんが…何年かかる事やら…。」

そんな俺の言葉を聞いて、リリーは、「そんな…。」と、母に會えない子らに同を含んだ聲を上げ、レイリさんは「それでは…後妻でも妾でも良いので…」と、中々にたくましい事を言う。

そんな2人に、俺は、ちょっと意地悪をするように…

「あ、けど関係については、この子たちの母親からお墨付きをもらっておりますので。別に何人侍らせてくれても良いと、心の広い事を言っていましたよ。」

そんな寛大すぎる言葉に、2人は絶句すると…數秒後には再起した。

その瞳にはよく分からない食獣のが燈っていたと言って置こう。

そんな目をし戦々恐々としながら見ていた俺だったが…。

そこで、ハタと、わが娘達に挨拶させていなかった事に気が付く。

「そうだ…。すいません、子供たちにまだ挨拶させていませんでした。此花、咲耶、ごあいさつしなさい。」

そんな俺の言葉をけて、わが娘たちは、一瞬、視線をこちらに向け、頷くと、レイリさん達に向かって姿勢を正す。

「レイリ様、リリー様、初めまして。私は此花と言いますわ。お父様がお世話になっております。お著ありがとうございますわ♪」

「レイリ殿、リリー殿、お初にお目にかかりまする。拙者は、咲耶と申します。父上共々厄介となりますが、何卒、宜しくお願い申し上げまする。」

2人とも、そんな風に互に挨拶を述べた後、にっこりと花の咲くように微笑んだ。

その笑みを見て、俺はなんともホッコリとした思いになる。うんうん、本當に俺には勿無いくらい良くできた子達だ。

そして、ホッコリしたのは、俺だけでなく、ここに居る他の3人も、微笑ましい顔でそんな我が子達の様子を見守ってくれていた。レイリさんは、そんな行儀の良い2人の様子を見て、

「此花ちゃんと、咲耶ちゃんね。丁寧な挨拶ありがとう。ここに居る間は、私の事を母親と思って、甘えてくれていいですからね?あ、もちろん、ルナちゃんも含めて皆で私の事はお母さんって呼んでいいのよ?」

と、レイリさんらしい、優しさとその後ろに何かよく分からないが垣間見える提案をしてくれた。

「あ、私も、お姉ちゃんって呼んでくれていいからね♪ルナさんは、後で一緒にどっちがお姉ちゃんになるか決めましょ!」

リリーは、そんな事をルナににこやかに提案してきた。まぁ、今のじならリリーが一番上のお姉さんで良いかもなぁ。なんとなくポンコツっぽい所があるけど、ルナに支えて貰えれば良い姉妹になりそうだ。

いきなりそんな提案をけたルナは明らかに挙不審となったが、俺がポンポンと頭を叩くと、張しながらも笑顔で「はい♪」と、返事をしていたのだった。

此花と咲耶も、レイリさんとリリーに、「レイリお母様♪リリーお姉さま♪」「レイリ母様、リリー姉さま。」と、ちゃんと空気を呼んで返事をしたので、それからは、ワイワイと皆で談笑していたのだが、ふと、リリーが

「結局、此花ちゃんも咲耶ちゃんも何処から來たんですか?」

と、話を蒸し返してきたので、それに答えざるを得なくなった。

それを聞いて、ちょっと、戸ったように互いの顔を見合わせた後、俺の様子を窺うように見つめて來るわが娘たち。

チィ…、うまく流せたと思ったが駄目だったか…。まぁ、そりゃそうだよねぇ。

俺は、頬をかきつつ、説明する。

「えっと…。まぁ、包み隠さず言えば、此花も咲耶も虛空から現れた事になりますね。」

そんな俺の言葉に、レイリさんとリリーは眉をひそめる。

「転移魔法か何かでしょうか…?」とのリリーの呟きに、俺は首を振る。

「いいえ。俺もびっくりしたのですが…此花と咲耶は、先程、この世に顕現したばかりなんですよ。」

俺の言い回しに引っかかるじたのだろうか、レイリさんが眉をひそめて「顕現…ですか?」と、確認する。

それに俺も、ただ一言、「はい。顕現です。」と、答える。流石レイリさんだな。恐らく答えを導き出している。

リリーは、そんな俺達のやりとりを「???」と、顎に人差し指を當て、首を傾げながら見つめている。

そんなリリーも可いなぁ…と、俺は真面目になりきれない頭で、そんな想を抱く。

俺は、そんな2人を後目に、わが子達に目配せをする。賢い彼たちは、俺の意図をちゃんと汲み取ってくれている。

そうして、俺は2人に、決定的な言葉を投げかける。

「結論から、申します。うちの娘たちは…霊です。」

そんな俺の非常識な言葉に、レイリさんとリリーは、息を呑む。と同時に、此花と咲耶がらかな青いに包まれ発しながら形を変じて行く。その様子を、皆、言葉も無く見守っている。

先程まで、2人の著ていた著が、パサリと、床に落ちる。しかし、青いを放つ球は宙に浮いたままだ。

そんなわが娘たちの様子を、ルナは「綺麗…」と、して見つめている。

レイリさんとリリーは例の如く、何処かに旅立たれているようだ…。2人とも、尾も獣耳もピーンとびた狀態で止まっている。その姿を見て可いと思ってしまう俺はおかしいのだろうか。

やがて、娘たちの発が緩やかになり、人だった形は文字通り姿を消した。そんなの向こう。代わりに姿を現したのは…小さな小鳥たちだった。

の可らしい小鳥。らしいその姿は、俺の世界で良く知られている雀をし大きくしてぽよぽよに膨らませたじだった。羽もふわふわでらしさを引き立てている。

もう1匹の小鳥は、まごう事無き、ツバメだった。そのは深い蒼と、黒で、元の世界のツバメより暗めなだ。スッキリとしたフォルムなのに、その中に可らしさも失わない。

しっかし、またこちらの姿も可らしいなあ。鳥好きの俺としては、これまた嬉しい事この上ない。

俺は、羽ばたきもせずに宙に浮いている娘たちに、「此花、咲耶。おいで!」と聲をかける。

聲をかけられた2人は、『お父様ぁー!』『父上ぇー!』と、文字通り俺の肩めがけて、一直線に飛んできた。そして、俺の肩に止まると、両側より俺の頬に頬ずりをしまくっている。うーむ、この小鳥獨特のモフモフも素晴らしい。

「此花も咲耶も、小鳥の姿もとっても可くて、さわり心地も素晴らしいぞ!」

俺は、そう娘たちに語りかけると、娘たちも、ピヨピヨチュィチュィと、嬉しそうに聲を出す。っていうか、鳥の聲も出せるんだな…。霊ってすげーなー。

そんな娘たちの姿を、ルナも興味津々といった合で見ていたので、ルナと俺で、娘たちをでまわして頬ずりし倒した。

俺達が、そんな風に、癒しの時間を過ごしていると、再起したのか、レイリさんとリリーが、復帰した。

そして、復帰一番。リリーが聲を上げる。

「つつつ、ツバサ様!!!霊様ですよ!?霊様がどうして!?」

そんな風に聲を荒げるリリーと対照的に、レイリさんは落ち著いた聲で、

「もう、ツバサ様の事ですから、何があってもおかしくないのでしょう…。ええ、霊様がお子様と言うのも何か理由が有りなのでしょうね。」

と、何でか暗い影をバックに背負いつつ、やや投げやり的にそう一人で呟く。

そんなに大したことなのかね?と俺は、咲耶のを優しくなでながら考える。ちなみに、此花はルナの手に包まれて気持ちよさそうにしていた。

そんな俺達と、獣人族の親子の間には、常識と言う目に見えない意識の壁がある事を、俺はまだしっかりとは実できないのだった。

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