《比翼の鳥》第20話:歓談

俺は異邦人について、更に詳しく説明をけることになった。

それによると、異邦人は、結構な頻度でこの世界に現れているらしい。

最近でも、人族の王國に現れたとのことだ。

ちなみに、異邦人と呼ばれる者たちには、能力的に様々な特徴が出現するらしい。

それは、強大な能力であったり、魔法の才能であったり、はたまた、作りの才能であったりと、多岐に及ぶとのことだ。

中には、王國中のを虜にしたとか、そういう能力を発揮した強者もいたらしい。

異邦人、パネェっす…。いや、俺もその一人なのか?

と言う事は、俺にも何か特殊な力があるのだろうか?よーわからんが。

そして、異邦人は、時期、場所、問わず、いつ現れるか全くの不明。

そのため、そんな強大な力を持つ可能のある異邦人を、人族の王國は全力で保護する制を整えているとのことだ。

ちなみに、基本的には異邦人を見分けることはそれ程難しい話ではないらしい。

俺が、それはどうしてかと聞いたら、長老とレイリさんはし楽しそうに笑いながら、俺の服を指差した。

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ああ、そりゃそうか…。考えて見たら俺、著たきりスズメじゃないの。スーツとかこんな格好している奴いないよねぇ。

なんでこんな簡単なことに気がつかなかったのだろうか?俺は自分でも不思議に思った。

しかし、進む話に、そんな疑問も押し流されていく。

更に、異邦人についての説明が続く。

そして、異邦人の扱いの中で、その最たるが、勇者と呼ばれる人々の事だと、長老さんは語った。

俺は、思わず、その言葉に反応してしまう。

「勇者って・・・あれですか?國の敵と言われるものを倒しに行き、ちょっとした名聲で奴隷のように、こき使われるあの勇者ですか?」

俺のそんな酷評に、レイリさんも、長老も一瞬目を丸くするが、そのあと、とても楽しいものを聞いたかのように大笑いをした。

ふむ。そんなに変な事言ったかね。大筋で間違ってないと思うんだけどな。

子供の頃こそ、勇者とかヒーローとか、そういった話しにドキドキしたものだけど、現実を知ってしまった今となっては、あの勇者とか言う存在が道化にしか思えないんだが…。

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昔のRPGとか、特にそうだが、末な裝備とわずかな路銀を與えられて、勇者と褒め稱えられつつ城を追い出されるとか、アホかと。

死んだら、「おお!勇者よ!死んでしまうとはけない!」とか、何様ですか!?と、激しく問い詰めたい。いや、王様なんだろうけどさ。

こちとら、死んでまで頑張っているんだからしはサポートしろよ!とか、ゲームとは言え、突っ込みたくなったわ。

しかも、功すれば手の平を帰すかのような、賛辭の嵐。舐めんなと言いたい。

世界の半分でもよこしやがれ!魔王の方がまだ気前がいいわ!と、今になると思う。

それでも、子供の頃は、それで満足だったんだよなぁ。頑張って褒められる。嬉しいことではあるからね。

ゲームだけど。

俺は、そんな懐かしさをじつつ、思い出に更ける。

そんな俺とは関係無く、ひとしきり大笑いしていたレイリさんと長老だったが、やっと落ち著いたのか、ヒィヒィいいながらも、會話を再開させる。

「いやいや…この歳になって、これ程までに笑うとは…。」

と、まだ息を切らしながら長老が言う。

レイリさんも、「まったく、本當に…ツバサ様はこれですから…もう。」

と、涙を目の端に浮かべながらあきれたように、そう呟く。

なんだと言うのだ。全く。俺はただ思ったことを言っただけではないか!

まぁ、そのが既にこの世界とはかけ離れたものなんだろうなと言うのは想像に難くない。

俺が、そんな渋い表をしていると、レイリさんが

「失禮しました。ツバサ様。勇者をそこまでコケにした表現と言うのが初めてだったもので、つい…。」

と、申し訳無さそうに、言ってきた。

「いやいや…人族のお主から飛び出た言葉と言うのが更にをかけてな…。面目ない。」

と、長老様までも謝ってきた。

俺は、そこまで不機嫌な顔をしていたのだろうか?

逆にちょっと心配になってしまうな。

「いえ、なんでそこまでお笑いになるのか、不思議に思っていただけですよ。」

と、フォローをれておく。そんな俺の言葉に、レイリさんは、

「ツバサ様。勇者と言うのは、こちらの世界では、人族の英雄なのですよ?子供ならみんなが一度は憧れを抱き、大人なら畏怖と敬意を抱く。そんな存在なのです。それを、王國の奴隷とは…正にそのとおりではございますが、そんな恐れ多いこと普通は考えもつきませんわ。」

そう、にこやかに説明してくれる。

「もっとも、退治されるのは、魔と悪い亜人と、相場は決まっておりますけれど。」と、し自嘲気味に、亜人の立場も説明してくれた。

話にも出てくる、鬼や悪魔みたいな位置づけなんだろうな…と、俺はちょっと憤りをえつつ理解する。

やはり、人族主の正義に照らせば、そんなものだろうな。

しかし、人族に勇者がいるなら、獣人族に味方する勇者はいないのかね?

俺は、不思議に思いそう聞いてみる。

しかし、返ってきた答えは、今までそんな好きな勇者はいなかったとの事だった。

うーん、俺と同じ世界から來るのであれば、獣人たちの魅力をわかってくれる同士がいてもおかしくないと思うんだけどなぁ。

それとも、何か他にこちらに味方できない理由でもあるのだろうか…。

そんな風に俺が思案していると、レイリさんと長老がそれぞれ意地悪な笑みを浮かべて提案してくる。

「それならば、ツバサ様。貴方様が初めての獣人族の勇者として立てば宜しいのですよ。」

「そうじゃの。向こうに勇者がおって、こちらにいないのは不公平じゃな。」

と、簡単に言ってくれる。人事ひとごとだと思ってかなり適當に薦めてるだろ!?

俺は、軽くため息を吐くと、

「私の事をかってくれるのは嬉しいのですが、それだけのカリスマも力もありませんので。第一、金狼族だけの支持を得ても、他の獣人族の賛同を得られなければ意味がありませんよ。」

と、やんわりと拒絶の意をしめす。道化になって先頭に立つとか冗談じゃない。

俺は、平和に獣っ子達とモフモフできればそれで良いのだ。うん、それが良い。

「それに、人族から見たら、獣人族の勇者は悪の手先って事になるんじゃないですか?下手すりゃ人から指差されて魔王とか呼ばれそうで嫌ですよ。」

と、俺はちょっと笑いながら、言う。し失禮な発言だったかもしれないが、2人とも「魔王か…それは良い。」「ふふふ…確かにそう呼ばれそうです。」と、笑って流してくれた。

しかし、この発言が後に、ちょっとした騒を巻き起こすことになるとは…俺はこの時考えもしなかったのだ。

話もひと段落して、先ほどの金狼族のがお茶を持ってきてくれた。

ちなみに、この方はずっとこの家で、侍従…ようはメイドとして働いていらっしゃる方らしい。

俺たちは和やかなムードの中、歓談を進めていた。

例のごとく、俺の膝上のルナは、お休みになられていた。

俺は、この子の育て方を間違っているのだろうか…。どうも、真面目な話をしている時に、この子が起きていた例が無い気がするのだが…。

何はともあれ、せっかくの話しやすい雰囲気なので、俺は、長老様とレイリさんにあるお願いをしておく。

2人とも、怪訝な顔をしていたが、とりあえずは了承してくれた。

そして、話はわが子達の話になった。

例のごとく、長老は、「まさか!?」という顔で俺を見る。長老様すら驚愕する程のことなんだなぁと、改めて俺の覚と、この世界の常識のずれをじる。

この件に関しては、師の試練をけることも含めて、他の長老の意見も聞いてみないと判斷できないと言うことだったので、明日に持ち越されることになった。

早く話がまとまってくれると良いな…。でないとうちの子が勝手に外に飛び出しかねないわ…。

そうして、話はレイリさんの若い頃の話に及んだ。何故かそうなった。主にじいさ…いや、長老が多分話したくてしょうがなかったのだろう。

レイリさんは、昔から…それはそれはもてたらしい。なんでも、上は今の長老と変わらない爺さんから、下はまだ尾のも生え揃わないほどの子供まで様々な男に言い寄られたそうな。

ちなみに、長老が、「レイリの若い頃はな…」と言いかけると、レイリさんが、底冷えするようなにこやかな顔で「長老様?私は、今も若いですわ?」と、言い放ち、それで長老が彫像のように凍りつくという楽しい場面が見られたのだが、それは見なかったことにしておいた。

そんなモテモテのレイリさんだったが、レイリさんは、そんな求婚してくる男共をバッサバッサと文字通りに一刀両斷していったらしい。怖いな!?

中にはそれで、新しい快に目覚めた獣人が一時期増えたとか何とか…。

そんな黒歴史聞きたくねぇよ!?と、思ったが俺は、苦笑するに留める。

ちなみに、レイリさんは「お恥ずかしい話ですわ。」と、頬を染めながらこちらを流し見る。

とりあえず、俺はそんなレイリさんをスルーすると、リリーはそういうことは無いのかと話を導した。

橫から、「ツバサ様、意地悪です…。」とか聞こえるけど、目を合わせない。きっと艶っぽい目で見てるに決まっているからな。

そんなレイリさんの様子に長老は気づかなかったらしく、それはもう嬉しそうにリリーの可さを語り始める。こうなるともう長老の威厳とか、完全に木っ端微塵こっぱみじんだな。

ここにいるのはただの親馬鹿だわ。

ちなみに、俺は話を聞いていて、獣人族の年と外見の関係がとっても気になった。ただ、ここで聞くとレイリさんに、々と言われそうなので、今度ベイルさんかリリー辺りに聞いてみようと、俺は決心する。

ぱっと見たじは、年の割に外見の変化は遅いじがする。

まぁ、実際はどうなのかわからないな。どうみても好々爺な爺さんと言う外見の長老様だが、レイリさんの父親ってことでしょ?逆に、そんなレイリさんはその娘なのに、とっても若々しい外見だし。謎だ。

長老の名を冠した爺さんの話は、リリーの生まれたときのらしさから始まった。

長老のことを、「じーじ」と呼んでくれた時のを、この孫馬鹿がそれはもう壊れ気味に話し始めた時…俺の探知に予想されたものが引っかかった。

來たか…。つかやっぱ來るのね。それは、この家をグルリと、取り囲むように配置につく。その數15。

それとは別に3つの反応が家の中へとってくる。

それと同時に、奧から「坊ちゃま!?今は…!」と、悲鳴にも似た聲がかすかに聞こえてくる。

俺は、その聲に気づいたレイリさんと長老に目配せをした。レイリさんは頷き、長老はし困ったような顔を見せるも、數瞬後、俺に頭を軽く下げる。

俺はルナを起こそうとしたが、良くない気配を察したのか、ルナは、目をパッチリと開けて膝に寢転んだまま、俺の目を覗き込んでくる。

俺はルナに優しく、「今度はうまくやれるね?」と、問いかけると、ルナは「うん。大丈夫。」と、強く頷いた。

俺達の心も含め、全ての準備が整ったとき、客間のドアが暴に開けられる。

「よう、爺さん。まだくたばらねぇのか?」

そこには、野心を丸出しにした、金の獣人が仁王立ちしているのであった。

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