《比翼の鳥》第23話:鈍

食事も終わり、皆でお茶をすすりながらゆったりとした時間が流れている。

そんなゆったりと寛げる時間ができたので俺はリリーに疑問に思っていたことを聞くことにした。

丁度レイリさんも寢ていることだしな…。

「リリー、ちょっと良いかい?聞きたいことがあるんだが…。」

お茶を飲んでいるリリーに、俺はそう切り出す。

リリーは、不思議そうな顔をしながらも、にこやかに「はい?何でしょうか?」と、小首をかしげる。

もう、この可い生きをどうにかしてやりたくなるね!

一瞬、々な思いが溢れそうになるのに蓋をしつつ、言葉を続ける。

「実は…に聞くのもどうかと言う話なんだけど…。獣人族の見かけと、年齢の関係が良くわからなくてね。リリーやレイリさん、それに長老様はいったい何歳くらいなんだろうか?」

そんな俺の問いに、リリーはちょっと恥ずかしそうに、

「えっと、おじ…長老様は、確か今年で152歳になるかと思います。私は…えっと…今年で21歳になります。お母さんは…私の3周り位…です…。」

と、教えてくれた。正直驚いた。俺が思った以上に、皆が年をとっていたからだ。

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リリーは見たじ13~15歳くらいにしか見えない。年齢に対して見た目は半分くらいと言ったじか?

流石にレイリさんの年齢を言うのは、々と憚はばかられる部分があるのだろう。それだけでは無い恐れのようなものも一瞬見せた表からじられたが…。気のせいだと言うことにしておこう。うん。

俺はそんな驚愕に似た複雑なを表には出さず、

「そうか。そこら辺は人族とは違うんだね。俺の覚だとレイリさんやリリーはもっと若く見えるよ?」

と、笑顔で伝える。そんな言葉に、リリーは「あ、ありがとうございます。」と、し顔を赤らめながら答える。

「あ。ちなみに、獣人族は15歳で周りから大人と認められるようになります。」とそんな報も教えてくれる。

あれ?そうすると、リリーは人間的に結構いい年齢ってことか?

うーん、ちょっと聞くのは悪いかな?けど、聞いておきたいなぁ。今後のためにも…。

俺は、悪いとは思いつつ、思い切って聞いてみる。

「リリー。ちょっと失禮なことを聞くけど良いかい?」という俺の言葉に、「は、はい?」と、ちょっと焦りながらも返事をするリリー。俺はそれを確認すると、

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「獣人族…今は金狼族でも良いんだが…。結婚の適齢期ってどの位なんだ?後、大の壽命も聞いておきたいんだが。」

それを聞いたとたん、ボンッと真っ赤になるリリー。

なにゆえ…?そんな凄く恥ずかしい事を聞いてしまったのか?

俺がそんな風にし心配した様子でリリーを見ていると、リリーは全く余裕の無い様子でワタワタしつつ

「あ!えっと…その!つ、ツバサ様なら、わ、わらしだいじょふでふ!」

とか、噛み噛みで答える。盛大に何かを勘違いした模様だ。

うん、俺、この子抱きしめたくてしょうがないんだが!!良いかな?駄目かな?駄目だよねぇ。

頼むからルナさんや…橫から嫉妬熱線ジェラシービームを飛ばさんでくださいな。って、魔力障壁が1枚割れたじゃないですか!?つか、リリーにも嫉妬するようになったのね…。どんどん俺の気苦労が増えていくじゃないですか。

これでハーレムとか無理っしょ。異世界につきもののテンプレだけど、俺の甲斐でルナをどうにかできるとは到底思えない訳だが!?

そんな事を考えつつも、壊れたリリーが、「えと、えと!べ、べべべべちゅに2人目でも、わ、わらし、全然気にしにゃいので!!」と、目をグルグル回し…ついでに腕もグルグル回しながらながら必死にアピールしていた。

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一家に1人、リリーがいると世界中が平和に過ごせそうな気がするわ…。俺はそんなリリーの壊れっぷりにほんわかしつつも、まことに殘念ながらとりあえず元に戻って貰う事にする。

「リリー。とりあえず、はい!深呼吸~。息吸って~吐いて~…。」

リリーはそんな俺の言葉に律儀に反応すると、俺の言葉に合わせて深呼吸を始める。

しばらく、そんなやり取りを続けると、リリーは徐々に落ち著きを取り戻していった。

「どう?リリー。落ち著いた?」と、俺が聞くと、「は、はい。失禮しました。」と、今度は獣耳がぺたーんとなるほど落ち込み始める。見てて飽きない子だねぇ。

「まぁ、リリーの事、結構好きだし、リリーの想いは凄く嬉しいけど、まずはお互いを知ることから始めよう?まだ、會って日も淺いんだしさ。」

俺はそう、笑顔で言うと、リリーはとても素敵な笑顔で…昇天していた。

あれ?この一言だけで、飛んでっちゃうのか…。ちょっと純粋培養にも程があるのでは…。

レイリさんー!?お宅の娘さん、ちょっと初心うぶ過ぎませんかね!?まぁ、そこがまた良いのだが。

そして、そんな様子を見ていたルナからの嫉妬熱線ジェラシービームが更に勢いを増す。

それにより、俺の魔力障壁が、また4枚消し飛んだ。おいおい!?そろそろ危険領域じゃないの!?

つか、俺の魔力障壁って1枚でルナの氷の槍アイススピア15本は防げるなんだが!?嫉妬一つでこの威力ってどういう事よ!?

俺は命の危険をじたため、急ぎルナに向き合う。

ルナは「むーーーーー!!!」と言うじで、いつもの3倍増し位に不機嫌さをあらわにしている。なんか、背後の空気がユラユラ揺れているんですけど…。

ちなみに、わが子達は、危険を察知したのかさっさと囲爐裏を挾んで俺の向こう側に退避していた。お父さんピンチなんですけど!?助けてくれんのかね!?

そんな俺の視線での訴えに、わが子達は「お父様。ファイト♪ですわ♪」「父上。骨は拾いますゆえ!」と、それぞれ素敵な言葉を安全圏から返してくれる。

俺はそんな素敵な子供たちに、後で絶対仕返ししてやると心に決める。

「えっと、ルナさん?何でそんなに怒っているのかな?確かに、リリーにちょっと萌え…いや、可いって思ったのは事実だけど…流石にそれを止めろって言われても、難しいよ…。」

だって、可いものは可いんですもの。こればっかりはどうにもならん。

けど、ルナはブンブンと、首を振ると、否定の意をしめす。そして、小さな聲で「違うもん…。」と、寂しそうに言う。その顔は本當に悲しそうで、今にも泣き出しそうな表をしていた。

ここに來て俺はルナの様子の違和に気が付いた。これは、単なる嫉妬ではないという事にだ。

俺は何かをやらかしたのだ…と直で気が付く。なんだ?何をした?何を間違えた??

俺はさっきのリリーとのやり取りを、細かく思い出す。

結婚の話?いや、違うな。そもそも、ルナは結婚の概念を知らない。俺が教えていないから。

リリーや、レイリさんに聞いて知っていたとしても、それは本人が主張すれば済む話だ。知っていたなら、阻止すべくリリーとの話に乗って來るだろう。

俺は必死に考える。きっと最後の言葉のどこかに…。はたから見れば告白に近いやり取りだったのだがそれが駄目だったのだろうか?けど、ディーネちゃんは良くてリリーがダメって事も…無いだろうし。

そこまで、考えて、ふとある事に思い當たる。俺は、古い記憶を可能な限り思い起こしつつ…。

ある程度、気のすむまで考えに沒頭し、そして理・解・した。

その瞬間、俺は自分のあまりのアホさ加減に、自分を毆りたくなるも、その衝を抑える。

アホか!!俺、やっぱり駄目だ!こんな簡単なことにも気が付かなかったなんて!!そして、それを実行していなかった事に愕然とする。

そして、それ以上に、やっぱりどこか心を開ききれていない自分に、より一層腹が立った。

余りに腹が立ちすぎて、そして、そんな自分がとても稽で、笑えてきた。

「フフ…ハハハ…。馬鹿だわ。俺。」と、俺は思わず自分に対し失笑する。

そんな俺の突然の豹変ぶりに、ルナは目を丸くして俺を見る。まぁ、そりゃそうだわな。いきなり失笑し始めればビックリするわ。

俺の何気ない一言で、ルナはきっと傷ついたんだろう。そして、そんな事で傷ついてしまうという事は、この子が本気だと言う事だ。俺は、それをけ止められるのか?いや、け止めても良いのか?

自問自答するも、回答は出ない。

しかし、俺は、この可い無垢なの子を悲しませたくないと、本當に心の底から思っていた。

親代わりだからか?…いいや、違う。

先生として?…いや、そうではない。

俺の命の恩人だからか?…そんな事は関係ない。

何て事は無い。それは…ルナがルナだからだ。

何にも知らないところから、俺を健気に信じ、そして著いてきてくれた。

いつも幸せそうな笑顔を振りまき、ちゃんと人の事を思いやる優しい気持ちを持っている。

いつでも、俺の事を理解しようと頑張っていることも俺は知っている。

俺の為に頑張ろうとして、時々失敗もしてしまうが、そんなまっすぐな思いも俺は分かっている。

あまりにも純粋すぎる思い故に、俺が気恥ずかしくてけ止められない事もあるが…。

それでも、いや、だからこそ。

俺は、この子を理解したい。笑顔にしたい。幸せになってほしい。

そう思っている自分にやっと気が付く。

なんだ…。俺はとっくに…この子ルナの事が好きで好きで仕方なかったのか。

この気持ちがに対するなのか、娘に対するそれなのかは俺にも分からないが…。

とにかく好きだと言う気持ちに変わりは無かった。

それならば、まずは良いじゃないか。どんな好きであれ、俺はこの子に伝えなくてはいけない。

全く…つい先日まで立派なだったルナに対して好きって気持ちがあふれて止まらないとか、とんだ変態だな!?

まぁ、けど、いいや。気付いちゃったならもう言い訳できない。

変態大いに結構!良いじゃないの。どうせ異世界だ。立派に変態になってやるよ。

そう決意したら何もかも吹っ切れた。そうしたら、何となく心の枷かせが一つ外れた気がする。

俺は、優しくルナのを抱く。しでもそんなおしさが伝わればと。

またも突然の事で、ルナは戸っているようだ。

不安げに、「ツバサ?」と、俺を気にして來る。

そんなルナの肩に手を掛けたまま、俺はルナと向き合い、真正面から見つめる。

ちょと心配そうに俺の瞳を除きこむ赤い瞳も、陶のように白いも、サラサラと流れ落ちる綺麗な白い髪も、全ておしく、しかった。

俺は一度、目を閉じ、心を落ち著ける。そして目を見開き、ルナをジッと見つめると、そんな俺の様子を見たルナも俺を深い意志が宿る目で見つめ返してきた。

「ルナ。今までずっと側に居てくれてありがとう。俺は、そんな優しくて頑張り屋なルナが大好きだよ。」

俺は、自分の心を込めるように、ゆっくりと丁寧に言葉を紡いだ。

ルナは、そんな俺の言葉をビックリした顔でけ止めると、顔を歪め、その目に涙を浮かべる。

「ほ、本當?」と、信じられないように綺麗な目に涙を浮かべながら問う。

俺は、そんなルナに、しっかりと分かって貰えるよう、ゆっくりと言い聞かせる。

「ああ、ルナの魔力も綺麗で素敵だけどそれ以上に、ルナ自がとても好きだよ。」

俺の最大の過ち。

そう、俺は『ルナ自』の事を『好きだ』と言った事が無かったのだ。

魔力の事は好きだと言った記憶がある。だが…ルナ自の事を好きだと言った事が無い。

もちろん、事あるごとに謝はしているが、そうでは無いだろう。

勿論、俺は行で示している部分は多々ある。しかし、の子なのだ。ルナはなのだ。時に言葉で自分の事を認めてもらいたいと思うのは當然だ。

そして、言われたことも無い「好きだ」と言う言葉を、俺はリリーに対し、軽々しく使ったのだ。

ルナは魔力の事でしか言われた事のない、好きと言う言葉をだ。

きっと、とても悲しかったに違いない。そして、魔力でしか認められていない自分と、リリーと言う可い子を比べてしまい、が制できなくなったのだろう。

別に付き合ってる訳でも無いし、ましてや、そういう関係をんで一緒にいるわけでは無い。

しかし、好きか嫌いかと言われれば、間違いなく好きなのだ。大好きだと言って良い。

人になるとか、結婚するとか、そんな事は関係なく、好きだと言う思いはあったのだ。

だが、俺はそれを言葉にすることは無かった。

それがルナを結果的に追い詰め傷つけていたのだとやっとわかったのだ。

俺は、自分のそのちっぽけな見栄で、ルナに悲しい思いをさせる位なら…恥ずかしい言葉位幾らでもかけてやろうと、今なら思えている。

それでルナも俺も幸せな気持ちになれるなら、その程度の事はれよう。

ルナは、俺のそんな決意のこもった言葉を聞いて、最初のは何を言われたのか分からない…と言う風に目を見開いて直していたが、次第にその言葉が浸したのか、大粒の涙をボロボロと流しつつ、

「本當!?本當に!?」と、俺の目を見ながらクシャクシャな顔で聞いて來る。

俺は、聞かれるたびに、「うん。好きだよ。」「大丈夫だよ。」と、聲をかける。

ルナは極まったのか、

「うわぁぁあーん!!ルナもぉお!!づばざのごどーずぎー!!」

と、大聲で泣きながら告白してきた。もう涙と鼻水となんだか分からないまみれで、綺麗なルナの顔は壯絶なことになっていた。

うわぁ…なんともムードの欠片もない告白だ…。

まぁ、けど、ルナらしいかな…と、俺は苦笑しつつ、レイリさんに借りていた手ぬぐいでルナの顔を丁寧にぬぐっていく。すいません…ちゃんと洗って返しますと心で謝罪しながら…だ。

ルナの好きが、どんな種類の好きなのかは俺にもわからない。おれ自の気持ちもまだ良くわからないのだ。

ただ、鈍系の主人公がやるように、ルナの心を裏切り続けることだけはしないようにしよう。俺は自分の心と向き合うことを誓う。

も、いつか向き合うことになるのかもしれない。その時は、しでも力になれれば良いなと思う。

そんなルナの號泣で流石のリリーも生還したようだ。幸せな空間から一変して修羅場っぽい訳の分からないフィールドに放り込まれたリリーは、「はい!?なにが…起こったのですか!?」と、狀況を摑めず、オロオロしていた。

そんなリリーに気が付いたのか、ルナはリリーのに飛び込むと

「うあぁあーん!!リリーぢゃんも、ごのばぢゃんも、ざぐやぢゃんも、ずぎー!!ごべんだざいーー!!」

と、皆に大好き宣言と謝罪を用にこなしつつ涙を流すのだった。

突然の告白に、リリーは何の事やらわかっていなかったのだろうが、その心は通じたのだろう。

「私も、ルナ様の事大好きですよ。」と、に抱きながらルナの頭を優しくでていた。

そんなルナの傍に、わが子達も寄り添うと、「私もルナお姉さまの事、大好きです!」「姉上。この咲耶も姉上の事はお慕いしておりますよ。」と、ルナに抱きついた。

そんな大好き宣言が飛びう様子を、俺は暖かい気持ちで見守るのだった。

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