《比翼の鳥》第24話:パワーバランス
みんな大好き宣言で、訳の分からない騒ぎとなってしまった。
その結果、眠っていたレイリさんも流石に起きてしまったようだ。
そんなレイリさんは、起き抜けに居間のカオスな慘狀を見て、訳が分からないという顔をしている。
うん、そりゃそうだよね。これは俺が見ていても、わけわからないもん。
戸った表のままレイリさんは、「これは一どうしたというのでしょうか?」という視線を投げかけて來る。
俺もここまで大騒ぎになるとは思っていませんでした。はい。
そんな気持ちを込めて苦笑を返す。
とりあえずルナがリリーに抱きつき、々な思いを吐き出しながら號泣している。
その容は、嫉妬してしまった事への謝罪だったり、料理の事を教えてくれた事への謝だったりと、様々だ。しかも、泣きながら喋るから、何を言っているのか聞き取る方も大変である。
リリーはそんなルナを嫌な顔一つせず、らかな微笑を浮かべて、頷きながら聞いている。
そんなルナに、此花と咲耶が抱きついてすり寄っていた。
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まぁ、いつもの俺がいる位置に、リリーとルナが収まったじか…。
今更ながらに気が付いたが…客観的に見ると、凄い絵だなこれ。
しょうじょたちがくんずほぐれつ…。なんか変な気持ちがわいて來るから、考えるのはここまでにしよう…。
レイリさんは、そんなしょうじょ…娘たちの様子を見て事を察したのだろうか。ススッと音も無く炊事場へと向かった。
リリーはそんな母の様子を気が付いていたようだが、相変わらずルナをあやし続けている。
漸ようやくルナも落ち著いて來たのか、しずつ、ゆっくりと落ち著いて話すようになってきた。
そんなタイミングを見計らったように、レイリさんがお茶をお盆にれて持ってくる。
俺は、レイリさんにお禮を言いながら、木の湯飲みをけ取り、ゆっくりと茶をすする。
わが子達は、レイリさんからお茶をけ取ると、當たり前のように定位置である俺の右隣りに仲良く鎮座してお茶をすする。
考えてみたら、茶をすする霊とか、シュールすぎるぞ…。
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ルナもゆっくりとを起こし、リリーから離れると、「リリーちゃん、ごめんね?」と、ぐしゃぐしゃの顔のままそれでも、ニッコリと微笑む。
リリーも、「いいえ、ルナ様。大丈夫ですよ。」と、笑顔で返す。
そんな言葉に、ルナは一瞬、「むー」と、顔をしかめると、「ルナ!様はいらないの!」と、ちょっとむくれて言う。
リリーはちょっと驚いて、俺とレイリさんの様子を窺う。そんなリリーの様子に、俺もレイリさんも笑いながら頷く。
そんな俺達の様子を見て、安心したのか、嬉しそうに「じゃあ、ルナちゃんって呼ぶね!これからも、よろしくね。」と、握手していた。ルナは一瞬ビックリしたように、リリーを見つめていたが、ジッと握ったリリーの手を見ると、「うん!」と、素敵な笑顔を見せていた。とても微笑ましい景だ。まぁ、んなで顔がぐちゃぐちゃなのが殘念すぎるけどね!
それから、ルナはこちらに向いて、おずおず…と言ったじで座りながら近寄ってくる。
おや、何時ものルナさんならミサイルタックルなのに珍しい。やはり、々と思うところがあるのだろうか?
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座ったままちょこちょこと俺の前に來たルナの頭を、俺はし暴気味にワシワシとでると、顔を手ぬぐいで優しくふいてやった。
ルナは、そんな俺の照れ隠しにも似た暴な抱擁を、嬉しそうに微笑みながら、されるがままになっていた。
ちゃんと顔を拭いて、綺麗になったルナは々さっぱりしたのか、俺に満面の笑みを浮かべながら、正面に正座してかない。
ふむ。何か言いたいことがあるのかな?そんな風にじた俺は、焦らずルナが口を開くのを待つ。
ルナは何故か、ちょっと顔を赤くし始め、モジモジと落ち著きの無い様子を見せ始めた。
そんなルナの姿を見て、俺も何故だかしくすぐったい様な、恥ずかしいような気持ちになる。
ルナは、「よし!」と覚悟を決めたように俺と見詰め合うと、
「ツバサ…。大好き!」
と、耳まで真っ赤にしながら、太の様な暖かな、そして眩しい笑顔で言ってきた。
あかん…何その兇悪な可さ。そして、その純粋なまでの言葉が恥ずかしい。そして、そんなルナの言葉がそれ以上に嬉しい。
俺は思わず、ルナを抱きしめて、その耳元で、「俺も大好きだよ。」と、ささやいてしまった。
もう、何も考えず脊髄反のようにがいた。
しいってが発すると、人間ってこうなるんだなぁと、脳みその冷めた部分で心する。
そんな俺達の様子を、リリーとわが子達が、何故か顔を真っ赤にしながら見つめていた。レイリさんは「あらあら。」と、微笑を浮かべて余裕の表だ。
俺は落ち著いてきたを、自分の管理化に掌握する。
俺がを離すと、ルナはし名殘惜しそうな顔をした後、上目づかいで俺の目を覗き込む。
そして、ちょっと恥ずかしそうに、呟くように、
「んと、んとね…。ツバサは、リリーと…結婚?するんでしょ?」
突然そんな弾発言をかます。
え?何その斜め後ろくらいの発言…。そんなルナの発言に、俺は唖然とする。
レイリさんは、一歩引いた態度でこちらを見守り余裕の表でお茶をすすっていたが、口から「ぶほっ」と、それを吐き出す。
そして、それまで微笑ましくこちらを見守っていた聖母のような顔から、一変して能面のような表の消えた顔になる。
「リリー?」そんな溫度をじられない聲で呼ばれた娘は、「は、はぃ~!」と、背筋も獣耳も尾もピンとばして直する。
哀れな子羊…いや、子狼は、完全に直してしまっていた。不憫だ…。
そんな慘劇を目の端で確認しつつ、俺はゆっくりと考えながら、ルナに答える。
「うーん、そうだね…まだ會ったばかりだからお互い知らないことも多いだろ?だから、俺はまだ無理かなって思ってるよ。けど、もっとお互いに理解しあって、お互いに一番好きな人って心から言えるようになったらそれもいいかもね。」
俺は、自分の気持ちに正直にそう答える。
そんな俺の言葉をルナはゆっくりと咀嚼するように、自分の理解の中に収めていっているようだ。
俺は、後ろで事聴取ばりに追い込むレイリさんと、リリーのやり取りを何となく見つめながらお茶を飲む。
「リリー!母親を差し置いて、どういうこと!?」「お母さん、昨日、の戦いは何でもありって言ってたじゃない!」とかなんとか…。ずいぶんリリーもたくましくなった様だ。レイリさんに怯えながらも、しっかり主張している。
そんな親子の骨の爭いとは隔絶した雰囲気の中、考え込んでいたルナだったのだが、ある程度、理解できたのだろう。
何故か、「うん!」と、気合をれるように頷くと、
「じゃあ、ルナも、結婚したい!」
と、二投目の弾をそれはもう盛大に投下してきた。
「ごふっ」と、若干むせ気味に俺は、茶を噴出しそうになる。
あ、危ねぇ。レイリさんの二の舞になる所だった…。
何でそうなった…ルナさんや。俺は、頭を抱えながらどう返事をしたものかと悩む。
そんな俺の悩みに関係なく、何故か今の言葉を聞きつけたレイリさんが參戦する。
「そうですよ、ツバサ様。この際、みんなで結婚してしまいましょう。」
何を仰っているのだ…このご婦人は。
俺は信じられないものを見るような目で、レイリさんの嬉しそうにはしゃぐ顔を見つめる。
そんなレイリさんの後ろで、ぺターンと獣耳をしなびさせていたリリーが震えていた。怖かったんだな…かわいそうに…。
しかし、いきなりレイリさんも何を言い出すのやら。
結婚だよ!?結婚!!海に飛び込むペンギンみたいにポコポコ気軽にすることじゃないでしょ!?
「ちょっと…?レイリさん?何を仰っておられるのか…全く理解が及ばないんですが…。」
俺は、しため息をえつつ、レイリさんにそう伝える。
レイリさんは、そんな俺に、さも當たり前のように
「ツバサ様に、全員で嫁いでしまいましょうと言う話ですわ♪そうねぇ…私は一度嫁いで世間もあるので、第3婦人で良いでしょう。。」
と、勝手に話を進めようとする。
ですわ♪じゃねぇよ!?レイリさん!?
しかもちゃっかり自分も納まろうとかしてるし!!そのアグレッシブな気質をリリーにし分けて下さいよ!?そんで、もうし貴方は大人しくなりましょうよ!?
「ちょ!?ちょい、待ち!なんでそうなってるんですか!!結婚とか俺、無理ですって!!」
焦った俺は、思わず止めにかかる。このパターンは先日経験したばかりだ。
ここで止めないと、なし崩し的に俺のウェディングが決定してしまう。
そんな俺の言葉に、レイリさんは、
「あら?先ほど、それも良いとおっしゃってませんでしたか?」
と、それはもう楽しそうに言う。
何故かルナもそれに同意して、「うん、ツバサ、良いって言ったよ!」と、笑顔でレイリさんの援護を始める始末。
こらー!?ルナさんや!?このタイミングでそれは駄目だって!?
そんな會話におずおずとリリーが、「あ、けど…それはお互いを知ってからって…。」と、弱々しく援護してくれた。リリー!素晴らしい!一瞬、君が神に見えた!!満創痍なじだけどね…。
俺はせっかくリリーがくれた援護を生かすべく、反撃を試みる。
「リリーの言うとおり、俺はまだ結婚とか無理ですよ。リリーやレイリさんとだって先日會ったばかりじゃないですか。結婚とは、お二人の人生を預かるにも等しい事なんですから、おいそれと決めることはできませんよ。」
しかし、そんな俺の言葉を聞いた瞬間、レイリさんは食獣の目で俺を見た。
え?何その、「かかったな!馬鹿めが!!」的な目は。
そんな俺の揺を目に、レイリさんは勝ち誇ったように言う。
「それでしたら、ツバサ様。婚・約・に止めましょう。これでしたら何の問題もございませんわね?」
俺は、その瞬間、やられた!と、天を仰ぎたくなる。
そうね!さっきの俺の言い方だと、時間さえかければ良いよ!!って話だもんね!
ちなみに、ここで否定したら、どうせレイリさんのことだから、嫌いなのか?って話になるよね!!
俺はそんな訳無いって言うしかないじゃんか!!
詰んだ!!文字通り八方塞だよ!?
今の俺の心境は、某弾を設置しまくるゲームで、四方八方を弾に囲まれた哀れな奴だった。
まぁ、今までの俺だったら、それでも斷固拒否するんだが、先ほどの一軒があってからか、そこまで忌避するがわいてこないのは事実なのだ。
しょうがない…。ここはとりあえず、承諾しておこう。なるようにしかならんだろうし…。
俺はとりあえず、棚上げも含めて覚悟を決める。
え?けないって?そう言わないでくれ…。ヘタレな人間がそんな簡単に変われるわけ無いじゃんよ…。
「はぁ…。わかりました。とりあえず、婚約で止めて置いてください。俺は別にみんなのことが嫌いなわけじゃないから。覚悟が決まらないだけなんで時間を下さい。」
そんな俺の言葉を3人ともビックリした顔でけ止める。
おいおい、全會一致でそれかいな。ちなみに、わが子達は完全に傍観者狀態だ。
優雅にお茶をすすりながら、このぶっ壊れた話し合いの様子を眺めている。
「驚きました…。きっと猛烈に反対されると思いましたのに…。」と、ちょっと殘念そうなレイリさん。
「わ、わ、わわっわたしで、良いんでしょうか!?」と、したようにリリー。
「ありがとう!ツバサ!!ルナ、頑張って結婚するね!!」と、完全に頑張る方向がずれたルナ。
とりあえず、三者三様で、思いが違えど…吃驚したのは変わりなかったようだ。
そして、どうなったかと言うと…先ほどから、俺の価値観を超越した會話が、俺の意思とは関係なく飛びっている。
主に、誰が第1婦人となるか。だの、夜伽の順番はどうだだの。結婚式でどんな服を著るかだの…。
ああ、長老をどうやって大人しくさせるかって事も話してたな。理解を得るって話じゃないのね!押さえつけること前提なんだね!?
もう、異世界、わけわかんないよ!?
そして、三人寄ればかしましいという言葉のとおり、完全に暴走狀態だった。
一応、俺にも大いに関係のある話のはずなのだが、俺の意思が介在する余地は欠片も無かった。
よし、なんか神的に疲れたし、俺は寢よう…。
そう決めると、俺は先日寢た部屋にそっとり、布団を敷く。とりあえず、先日と同じように全員分は敷いておいた。ちゃんと離してね。寢ている最中に起こされるのもなんだし。別に、嫌なわけではないからな。
…ちょっとまた皆で寢るのを期待しているとか、そんな事無いんだからね!!
そして、俺は布団に橫になると、防護結界を5重に起する。更に、上から結界を維持・回復させる魔法陣を展開。事実上、何人たりともることの出來ない聖域サンクチュアリが完する。
よし、これでルナの全力攻撃も耐えられるぞ…。核兵が落ちてきても理論上は全く問題ないはずだ。
せっかく降って沸いた安眠の機會だ。今日は徹底的にゆっくり一人で寢ると決めた。
なんか結界の外で、「お父様あぁぁあ!!!」とか、「父上ぇぇえええ!!!」とびながらゴンゴンと、結界を叩くわが子の姿が見えるが、今日は一人で寢る気分なのだ。
「此花、咲耶。さっき助けてくれなかったから、お仕置き。今日は俺抜きで寢なさい。」
俺がそう言うと、此花も咲耶も「そんあぁぁあ!酷すぎますわぁー!!!」「ち、父上!!それはあまりにもご無な!!」といった聲が聞こえる。しらんがな。しは親離れしなさい。
「ちゃんと明日からは一緒に寢てあげるから、今日は練習だと思って他の人と寢なさい。じゃあ、此花、咲耶、お休み!」
俺はそうにこやかに言うと、布団に包まり遮音結界も発させる。
心地よいぬくもりと、靜寂の中。俺は、気持ちよく意識を手放していったのだった。
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