《比翼の鳥》第25話:快晴

久々に、本當に深く、ゆっくりと寢ることができた。

そして、徐々に浮上するようなまどろみをじつつ、ゆっくりと意識を覚醒させていく。

浮上した意識がじたのは、四方八方から襲い來るらかさと暖かさだった。

は?と、思うも、目を開けても、そもそも視界が真っ暗だったのでどうにもならない。心地よい弾力とぬくもりに包まれていて、幸せなのだが同時にわけがわからなくて焦る。

腕をかそうとしたが、これまた弾力のあるものに挾まれ、けない。右腕は、完全に埋沒しており至福の覚を伝えてくる。左腕は右腕ほど重量はないものの、申し訳なさそうに挾みこむじが、逆に新鮮で気持ちが良い。

右足と左端はそれぞれ、腕とは違ったぬくもりに包まれていた。時々、足に息が當たるのがわかる…って息!?

そこまで思考が到達して、やっと意識が完全に覚醒する。

俺は、右手と左手の手先を使って、何が俺の腕に巻きついているか探る。

右手にも左手にも、何故かフサフサな覚が…。これは、尾か?

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俺は、その尾の覚を丁寧に探るように、で回す。

「やん♪」とか、「ぅん!」とか、っぽい聲が聞こえて、レイリさんとリリーの存在を確信する…。

ちなみに、俺の息子は辛うじて、自己主張するのを止めていてくれていた。

排泄の必要のない世界でよかったと、今にして初めて思う。もし普段だったら、それはもう、朝の日課のごとく俺の意思に反して自己主張していたはずなのだから…。

両足の付著は大きさ的に、此花と咲耶ではないかと思われる。レイリ・リリー親子のような、そのけしからん主張が無いので。

子特有のらかさがそれはそれで気持ちがいいのだが。

って、んなことはどうでも良い。ということは、この視界を遮る暖かでらかい素敵なはルナのものかと、思い至る。

俺は頭をルナに抱えられているのか…だからなんも見えないのね…。良く見れば若干何かが上下している覚を得られる。ルナの呼吸に合わせてだか腹だかがいていると判った。

しかし…、寢る前に結界を張ったはずなんだが、どうやって中にったんだ?

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今回はかなり本気で張ったから、そう簡単に破けるはず無いんだが…。

俺は意識を結界に向けるが、結界はもう発していないようだった。

どんだけ凄い攻撃を加えたんだろうか…下手な攻撃の仕方をすれば家ごと吹っ飛ぶと思うんだが…。

一瞬、更地の中で皆に抱きつかれて寢ている自分を想像し、背中を寒気が襲う。

いや、そんな馬鹿なことがあってたまるか…。そんなアホな理由で村が無くなるとか冗談じゃないですよ!?

俺が、変な妄想に取りつかれてガクガクしていると、そんな様子に気が付いたのか、ルナが目を覚まし、俺の視界からモゾモゾと、移していく。

おう、の子のに頭を躙される覚とか、新しすぎて表現できない。

らかかったとだけ言って置く。

そして、ルナが俺から離れると、上から眩しい日のが降り注いでくるのが分かった。

もう朝と言うより晝なのか…。

眩しそうに眼を細める俺を覗きこむ様に、ルナは上から「おはよう。ツバサ!」と、明るく言ってきた。

盛大に照りつける日のを、ルナの髪は反し、それはそれは綺麗にキラキラと輝いていた。

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ルナの表は逆になり見えないが、きっと良い笑顔を浮かべているのだろうと言う事は見なくてもわかった。

「おはよう。ルナ。今日も良い天気の様だな。」と、俺も笑顔で返す。

ふと、周りをみると、右腕にレイリさんが、左腕にリリーが、絶対にはなすもんか!という勢いでがっちりと巻き付いていた。

部屋には布団が人數分敷かれているにも関わらず誰も使っておらず、何故か全員俺の布団に集合して丸くなって寢ていた。

居間へと続く戸は何故か開け放たれていた。昨日、あの後何が起こったんだ…。

ちなみに、わが子達は掛布団の中に隠れていて見えないのだが、的に足に絡まっていると思われた。

2つの山が規則正しく微かに上下しているようにも見える。

俺は、もう一度視線を獣人の親子にそれぞれ向ける。その顔はとても満足している様子だ。

そして、2人とも、その艶やかで金の髪を日ので輝かせ、神々しいまでのを放っていた。

そこまで考えて、俺は強烈な違和じる。ん?なんか変だ。何が変なんだ?

數秒程俺は考え込むと、ハッ!?とその違和の原因に行き當たる。

俺は、天井のあるべき場所を見つめる。

そこには、抜ける様な青い空と、燦々さんさんと降り注ぐがあった。

「ちょ!?ばっ!おま!?ルナさん!何やったんですかぁぁあああ!!!」

そんな俺の絶が、屋の無い家を抜け、ルカール村に響きわたったのだった。

俺の絶で目が覚めた皆は、とりあえず挨拶もそこそこに、ご飯の準備に取り掛かった。

俺も手伝おうかと思ったのだが、「お気になさらず、居間でお待ちください。」とのレイリさんやリリーの言葉に甘えて、居間でお茶をすすっていた。

畳に囲爐裏のある部屋に、燦々と日が降り注ぎ、そこでお茶をすする。

そんな良く分からない経験をしつつ、俺は皆が食事を和気あいあいと作る風景をホッコリとした気持ちで眺める。

今回は、此花と咲耶も料理に參加しているようだ。

此花が真剣な顔で、菜っ葉のようなを水で洗っている。水道も無いのにどうやって…って思ったら手から無盡蔵に水が出ていた。

此花は洗い終わった野菜っぽい何かを後ろも見ずに空中へと放り投げる。

それを、ルナと咲耶が、笑いながら切り刻んでいた。

恐らく、風と水の魔法なんだろうな…。

包丁の音とか全く聞こえない。高周波と切斷音がひっきりなしに聞こえるだけである。

なんだろう、この殘念な気持ちは…。

やはり日本人の調理イメージである包丁の音とみそのにおいが無いからなのだろうか?

俺は、元の世界の平和な料理風景に郷の念を抱きつつ、食事が出て來るのをのんびりと待ったのだった。

そんなじで、食事も味しくいただき、ゆったりとしたひと時となったので、俺は天井が忽然と消えた訳を皆に問いただす事にした。

「それは…そうですね…。そろそろ天井を変えようと思いまして。ねぇ?リリー?」と、レイリさんが何故かリリーに振る。

どういう理由だよ!?まだ、竜巻が突然來て壊れましたって言った方が信憑があるよ!?

リリーは突然自分にお鉢が回って來るとは思ってなかったのだろう。急に挙不審になりながら、

「え、えと、そ、そそそ、そうですよ!!ちょっと、夜空がみたいなー…なんて…思いまして…。」と、どもりながら、どんどん聲が小さくなっていくリリー。

流石に、リリー自でもその理由は無いだろうなーとか思っているのがありありと分かる態度だった。

そんな2人の必死のフォローが分かったのか、ルナは「違うの…ルナがやり過ぎちゃったの。」と、自分から予想通りの回答を呟く。

やっぱりかー。しかし、ちょっと自信あったんだけど結界が破られるとは…。ルナ侮りがたし…。

きっと、皆で煽ったんだろうと言うのは想像に難くない。今回はルナだけでなく、俺も含めて皆で調子に乗ったせいだなぁ。

そんな事を俺が考えていると、

「ごめんなさい。レイリさん、リリーちゃん。壊しちゃった所直します。」

と、ルナがしっかりと謝っていた。俺はそんなルナを見てちょっとしていた。

ちゃんと、自分で考えて自分で許して貰おうと行している。ルナの長が垣間見えて嬉しかった。

「そんな!ルナちゃん!!元はと言えば、お母さんが、渋るルナちゃんにやっちゃって良いって言ったのが悪いんだし!」

「そうですよ、ルナさん。私がお願いしたのですから気にする必要はありませんよ?」

リリーとレイリさんは、親になってルナのフォローをしてくれていた。されているなと、実できるね。

つか、屋がぶっ壊れても良いからやってしまえって…どんだけ俺と同衾したいんだよ!!と、俺は飽きれる。

「レイリさん、リリー。今回はすいません。元はと言えば、俺がちょっと過剰に結界を張った事も原因でしたので、俺とルナで直します。」

と、俺はルナを援護する意味も込めて頭を下げる。

そんな俺の様子に、レイリさんとリリーも、「いえ!そんな!」と逆に恐してしまう。

俺の申し出を聞いたルナもし申し訳なさそうに…しかし、それ以上に嬉しそうにしていた。そりゃ、不安だったろうなぁ。一人で直すとか無理があり過ぎるだろう。

ともあれ、親しいとは言っても、ケジメはしっかりとつけるべきだろう。

ただ、2人とも何か変な負い目をじてしまっているようなので、俺もそれを解消すべくく。

「ただ、すいません…。俺は屋どころかモノ作りに攜わった事が無いので、申し訳ないのですが、職人さんを紹介してくれませんか?」

そんな俺の言葉に、レイリさんは頷いてくれた。何かこちらに便宜を図ってくれれば、それはそれで気がまぎれると言うだ。

早速、その職人さんの所に行く事になった。今回はリリーが案してくれるらしい。

そして、レイリさんとわが子達がお留守番だ。

何故か総出で盛大に見送りしてくれた。なんでやねん。

てか、此花と咲耶は他の人に見られると々面倒だから早く家にれ!とか思っていたのだが…。

そんな俺の想いを無視して、「お父様ぁぁあ!!早く帰って來てね!!」とか、「父上ぇえ!!この咲耶、何時までもお待ち申し上げております!!」とか、凄い大げさに聲をかけてきやがった。

絶対ワザとだ…。流石、俺とディーネちゃんの子。変なところでひねくれている。

まぁ、けど、最近なんかドタバタして構ってあげられてないから許そうと思い至る。

時間があれば、わが子達ともマッタリ過ごそうと思った。

俺の左腕をルナががっちりとホールドし、俺の右手をリリーがおずおずと言うじで握っていた。

ルナは本當に楽しそうに、ニコニコしながら俺の手を両手で抱いている。

この腕に當たるらかさにいつか、気恥ずかしさを覚えなくなる日が來るのだろうか?絶対に無理だと思うんだが…。

対してリリーは、本當に申し訳なさそうに、軽く俺の手に手を添えるだけだった。それがまた、男心をくすぐる訳だが。

らかく、手に力を込めるとリリーは一瞬、ピクッと獣耳と尾を立てるのだが、その後、手を握り返して來て、耳と尾がへにょへにょとくのだ。

しかし、何この両手に花狀態。さっきから、男どもの視線が突き刺さって痛いんだが…。

どうやら、特にリリーにしては積極的ともいえるこの行が、群衆に揺を広げているらしく、常にざわついた雰囲気の中を歩いていくこととなった。

職人さんの家に著くと、流石に2人とも俺から離れた。

リリーを先頭に、職人さんの家へとお邪魔する。

「カスードさん!いらっしゃいますかー?」

そんなリリーの聲に、奧からのっそりと黒い並みの獣人が現れる。

その男の獣人は、黒い耳に黒い尾。髪も黒ければ、も黒い…てか、今まであった獣人の中で一番深かった。

髭こそ無いものの、やはりその深さから、しワイルドで男らしい印象をける。

顔の彫りも深く、表く見えてしまう。これで威圧されたら、子供が泣きそうだ。

カスードさんと呼ばれた獣人は、俺達の事を値踏みするように見ると、

「なんでぇ。リリー嬢ちゃん。ついに気でもれて人族と番になるのか?」

と、ちょっとニヤニヤしながら小ばかにするように言ってきた。

そんな言葉に、ルナはちょっとムッとした顔をするも…、なんとか耐えたようだったのだが…。

意外なことに何故かリリーが激昂げっこうした。

「ツバサ様は、私の大切な婚約者です!いくらカスードさんでも馬鹿にすることは許しません!」

そんな言葉を、レイリさんも顔負けの迫力で言い放った。

よっぽど意外だったのだろう。カスードさんは鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をするが、しばらくして我に返ると、「ガハハハハ!」と、大笑いしつつ、俺とリリーの肩をバシバシと暴に叩く。

そして、俺に向き合うと、

「ツバサとか言ったか?やるじゃねぇか…。どうやったか知らねえが、期待していいんだな?」

と、俺に凄みのある視線をぶつけて來る。うわー。普通の人ならこれだけで、失ものだな。

しかし、俺はそんな視線を悠々とけ止めると、

「何に期待を寄せられるかにもよりますが…、リリーを幸せにできるように一杯頑張りますよ。」

と、微笑みながらも誠心誠意答える。

そんな俺の態度が余程楽しかったのか、カスードさんは笑いながら俺の背中をバン!と勢いよく叩くと、「頼むぜ?男!」と、ご機嫌な顔でそう呟いたのだった。

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