《比翼の鳥》第29話:決著。そして
俺は、ティガの牙や爪に魔力コーティングを施す。
先ほどのじだと、ティガの攻撃では、あの狂った熊の裝甲を貫けないと判斷したからだ。
こういうエンチャント系の魔法陣も作らないとなぁ…と必要をじた。
強化や、意識拡大もかけてやりたかったのだが、今の俺の魔法技では他人を強化することはできなかった。
魔力の流れや、力の掛け方は、それぞれの人で異なるためだ。単純に力だけ強化しても、意識とリンクしていない狀態では暴走して、自分のを破壊しかねない。
かく言う俺も、最初の頃は筋斷裂や、骨折ばかりしていた。
それを乗り越えてようやく強化魔法をモノにしたという経緯がある。
更に、念のために防護結界をかける。これで、致命傷は避けられるはずだ。
今できることは、こんなもんだろう。俺はティガに向けて話しかける。
「こんなじでどうだ?使いこなせそうか?」
ティガは突然、自分の牙や爪の覚が変貌したことに驚いていたようだ。
焦ったように爪を研ぎ、牙を鳴らし、落ち著き無さそうにキョロキョロと周りを見回していたが、俺に聲をかけられると、うろたえた様に一鳴きした。
どうやら何とか行けるらしい。
しかし、慌てる姿とか普通に可いんだが。泣き聲も妙にヘナヘナしてたし。これは俺のが狂っているからなのか?
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そんな風に、うろたえるティガを見て、なごんでいた俺だった。
暫く待つと、覚に慣れてきたのか、ティガのに闘志のようなものが漲るのが見て取れた。
並みの発も先ほどよりし強いようだ。こうやって改めて近くで見ると、結構綺麗だな。
ティガは、そんな姿の見とれている俺に一鳴きして、行を促した。
「おっと、では行こうか。」
俺は、気を引き締めると、未だに狂ったように結界に攻撃を繰り返している熊に向き直る。
「では、結界を解くぞ?3・2・1・GO!」
俺のカウントダウンと同時に、をググッっとめ、結界解除と同時にディガはミサイルのように一直線に飛び出していった。
突然、結界が無くなりつんのめった熊の隙をティガは見逃さなかった。すれ違いざま、爪での渾の一発を熊のわき腹に見舞う。
質な同士がれ合う、甲高い音が周囲に響き渡ると同時に、熊のわき腹から黒に近いしぶきが上がる。
よし、どうやら熊の裝甲は突破できるようだな。ティガも手ごたえをじたらしい。
余裕を見せるように、咆哮する。それを見た熊は殺意のこもった目をティガに向け、狙いを定める。
「おっと、こっちも忘れてもらっては困るね…っと!」
俺は、わざと熊を挑発するように、言葉を発しながら水の槍アクアランスを熊の背中にぶち當てる。
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魔法陣を行使しない、ただの魔法だ。時間をかけず、練り上げもしない魔法だから威力はお察しだ。
それでも、熊の裝甲を貫いたようで、背中のを吹き飛ばし、若干のしぶきを上げる。
しかし、それも數秒後にはふさがって行くのが見て取れた。良く見ると、先ほどティガのつけたわき腹の傷もなくなっているようだ。
え?何その超回復。ずるくないですかね?これは、ちょっと厄介だな。
俺の攻撃でお怒りの熊は、今度は俺を標的にし、ティガに背を向ける。
その隙をティガは逃さず、後ろから襲い掛かり、無防備な首筋に噛み付いた。
俺は、それを援護すべく、火の槍フレイムランスを熊の腹へと叩き込む。
流石の熊も、連攜攻撃が効いたのか、うずくまる様に姿勢を崩す。
ティガはうなじの辺りを強引に牙で引きちぎると、更に執拗に、首筋へと牙を突き立てる。
熊は背中のティガを振り払おうと暴れるも、俺が風 刃ウィンドカッターや水 刃ウォーターカッターで右腕を切り落として援護をする。
うお…切り落とした先から手が生えてくる!?なんじゃそりゃ!?
切り落とされた腕はの粒子となって、虛空に溶けていくも、數秒後には新たに腕が生えてくるのだ。
なんという生命力。なんという能。ずるいでしょ!!
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そんな俺の心の悲鳴を無視するように、切っても砕いても再生する熊。
そして、傷を負うたびに、熊の禍々しいオーラが濃くなっていくのをじる。
なんか、この典型的なテンプレパターンに嫌なものをじるんですけど…。
ティガも俺の攻撃にあわせる様に、連続攻撃を叩き込むのだが、熊は一向に倒れる気配を見せなかった。
本當はティガに花を持たせたかったのだが、戦闘を長引かせるのは良くないと俺の勘が告げていた。
「ティガ!大技行くぞ!10秒だけもたせてくれ!!」
俺は、大聲でびつつ、魔法陣を展開する。再生が追いつかないほどの高火力で焼き払うしかないと考えたのだ。
「【エクスプロージョン】 スタンバイ!!」
いつもの癖と言うのは怖いもので、聲に出さなくても良いのに、ついついんでしまう。
今回は、魔法構築を視覚できると都合が良いため、魔法陣は見えるように設定してある。
そのため、熊を覆い盡くすように展開する魔法陣が見て取れた。
幾重にも熊を半球の魔法陣が覆い、その外郭を更に多數の円形魔法陣が覆い盡くしていく。
その數は、コンマ數秒ごとに増えていき、現出した魔法陣は細かくその文様を変え、融合を繰り返す。
ある魔法陣は限界まで積層し、その高さは木々を超えるほどだ。球形の魔法陣に槍を何本も突き立てたように魔法陣が立していく。
俺はティガと共に、魔法陣構築完了までの足止めを行う。
何故そんな必要があるか?
俺の魔法陣は、それはそれは々な用途に使え、汎用の高いものへと仕上がった。
しかし、大きな欠點が二つあるのだ。
ひとつは、瞬発力に欠けることだ。
大規模な魔法を行使する際には、大量の魔力を消費するのだが、その魔力を通す回路の幅が決まっているのだ。通常の使い方でなら全く問題はないのだが、超高火力の魔法を使う際、または多くの魔力を使う魔法の構築には時間がかかってしまうのである。
例えば、俺の魔法陣一つに使用できる魔力回路の太さを鉛筆1本分だとすると、我らがルナさんの魔力回路の太さは電車のトンネル位になる。まさしく比べるのも馬鹿馬鹿しい位の差があるのだ。
その欠點を埋めるべく、並列に魔力回路を設定することで時間短を図ってはいるものの次の問題がそれを邪魔する。
もう一つの問題。それは、魔法陣の空間占有だ。
魔法陣はその質上、陣を描かないと発できない。と言う事は、魔法陣同士は差できないのだ。
差すると、最悪暴走する。大量の魔力がダダれで暴走とか全くしゃれにならない。
つまり、幾ら並列で魔法陣を描いたとしても、その都度空間を占有するので、書く場所がなくなっていくのだ。
今の魔法も、限界まで積層化してここまでコンパクトにしているものの、魔法陣を発すれば瞬く間に魔法陣だらけ。
そこに新しい魔法陣を描くことは出來ないため、同じ空間に複數の魔法陣を同時に発することは、不可能なのだ。
もちろん、場所をずらしたり、出系の魔法と組み合わせることで幾らでも応用が利くのは事実である。
今回の場合は足止めしたいのだが、檻や結界で塞いでしまった場合、その上から魔法陣を更に構築する必要があるため、魔法陣の大きさが増え、より大規模な魔法になってしまうのだ。
時間にして僅か10秒程度。しかし、その時間ですら惜しい場合にこの方法はとれないと、改めて魔法陣の更なる改良を誓う俺であった。
「ティガ!離れろ!!」
魔法陣の構築が終了したことを確認した俺は、熊の周りを駆け回り、隙を見て攻撃していたティガに警告を発した。
俺はそれと同時に、ティガの離を援護すべく、熊の顔面に火の槍フレイムランスを叩き込む。
流石に顔は効いたのか、熊は仰け反り、倒れこむ。
その隙に、ティガが離したのを確認した俺は、魔法陣によって構築された魔法をこの世に解き放った。
數瞬遅れて、絶を呼び込む、暴力的な力が解放される。
開放されたことを喜ぶように、その魔力の本流は一直線に、倒れこんでいた熊に向かって、収束して行く。
1秒にも満たないその剎那の時間。が弾け、轟音が森に木霊した。
それは、連鎖的に幾つもの轟音と閃を伴って暴れまわる。
しかし、衝撃波は外にはれず、熊のいた場所、半徑10m程の空間を何度も何度も躙するに止とどまった。
その狹い空間に凝された発と、全ての存在をも焼き盡くす程の熱をもって対象を躙し、骨も殘さずチリと化す魔法。
発に時間はかかるものの、その破壊力は絶大だった。
そんな暴力の時間が過ぎ去った後、殘ったのは煙を上げ、すり鉢上に溶解した地面だけだったのだった。
ふう、何とかなったかな。俺は人心地付くと、ティガの様子を見る。
ティガはそんなクレーター狀の地面を凝視して、固まっていたのだった。
俺はそんな人間らしいティガの反応を見て苦笑すると、薬草のった結界を追尾モードにして、背後に浮かばせる。
さて、思ったより時間を食ったな。早く帰らないと。
「じゃあな。ティガ。ナイスファイト!」
俺は去り際にそういい殘すと、ティガの様子も省みず、帰路を急ぐ。
そんな俺のには、ちょっとした達と充実があったのだった。
予定外に時間を食ってしまったが、何とか30分以に村へと戻って來られた。
村にった瞬間、違和を覚える。どうも、村全が騒がしく、浮足立っているのだ。
そして、皆一様に、俺の來た森の方へと視線を向けている。
気にはなったのだが、今は約束の時間が迫っているのを思い出す。
急いで先ほど3人が言い爭っていた場所へと向かう俺に、あちこちから発せられた驚愕の視線が突き刺さる。
そりゃ、変なもん背後に浮かべた俺はさぞかし奇異に映るんだろうな。
しかし、急いでいる俺はその視線を無視しまくると、目的地に到著した。
先ほどの家の前には誰もいなかったが、探知の反応には先ほどの3人が家の中にいることがわかる。
俺は、家の戸を暴にならないように叩いた。
すぐにヨーゼフさんが戸を開けてくれ、俺の背後に浮かぶをみて、固まる。
しかし、流石は大人だ。さくっと復帰すると、何事も無かったかのように俺を家へと招きれてくれた。
中にると、スルホとラーニャが椅子に座ってこちらを見ていたが、やはり背後のを見て直する。
なんとなく居心地も悪いので、俺はヨーゼフさんに一聲かけると、機の上に何も無いことを確認し、ヒッポ草700株を載せて結界を解いた。
「なんと…これはまた…。」「ありえねぇ…。」「こんなに…一杯…。」
そんな景を見て三者三様それぞれ、呟いていた。
「とりあえず、これで薬は作れると思うのですが宜しいでしょうか?」
俺は、ヨーゼフさんにそんな風に、聲をかける。
そんな俺の言葉で我に返ったヨーゼフさんは、「ええ、十分すぎます。」と、返答していた。
その後すぐに、俺は約束どおり、ヨーゼフさんに薬草の作り方を見せてもらうことになった。
ヨーゼフさんは俺に作り方を見せるだけでなく、やり方も教えてくれた。
これは嬉しい誤算だった。きっと匿すると思っていたからだ。
俺はそんな事を問いかけたのだが、ヨーゼフさんは笑って、「薬師さんが増えると、私も楽ができますので。」と、笑いながら答えていた。
薬の作方法はそれ程難しいものではなかった。要は煮出して、分を出しているだけだ。
溫度も沸騰してお茶のように煮出すだけ。冷ますときに気をつけることがあるようだが、それ以外は普通だった。
これって、もっと砕して出したほうが効率良いのでは…。後で試して見ようと心にメモをする。
俺も教わりながら作ってみたが、なんとか功した。
特に魔法も使わなかったのだが、思った程時間もかからずに済んだ。
早速、スルホとラーニャに薬を渡す。
スルホはまだ、俺に疑いの眼差しを向けていたが、ラーニャに促され渋々ながら禮を言う。
ラーニャは満面の笑みでお禮を言ってきた。うん、素直なのは良いことだ。
とりあえず、今はこれで十分かな。
俺は、野の第一段階が上手く完了したことを心喜んだ。
種まきは完了である。後は、しずつ育てていけば良い。
あまったヒッポ草は全てヨーゼフさんに預けることにした。
この子達が必要になったらそれで薬を作ってもらうようにお願いをする。
その申し出に、スルホが噛み付く。
「なんだよ!俺達に恩を売ろうとしたってそうはいかねぇぞ!」
実にわかりやすい反応である。まぁ、実際、大特売で売ってるんだけどね。
そんなスルホを、ラーニャは「お兄ちゃん!」と戒めるも聞かないスルホ。
「いや、実際、しお願いしたいことがあるのは事実なんだよね。」
そんな2人に俺は、さらっと本音を伝える。
それを聞いて2人とも固まってしまう。そしてヨーゼフさんは目をスッと細める。
一瞬、迫した空気がこの場を支配するが、俺はそんな空気を吹き飛ばすように言い放った。
「君達には、いずれ俺の生徒になって、勉強してもらいたい。」
その言葉を聞いて、3人とも訳が判らないという顔をするのだった。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
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