《比翼の鳥》第31話:食卓
先日と同じように、朝起きると俺は逆抱き枕狀態になっていた。何故だ…。
中を覆う暖かならかさに、安らぎを得られるのは確かだし、俺も嬉しい気持ちがあるのは事実だ。
その代わり、俺の小さな尊厳とか、あふれ出すとか、俺の心が々やばい事になっている訳だが…。
とりあえず今日はそれ以外に何事も無く、起きることができてよかった。
まだ、頭にルナが巻きついているので、視界は真っ暗なのが問題ではある。
しかし、何故頭なのか…ルナさんや。
俺の頭を抱えると言うのは、勢的に厳しそうなのだが、そんなことは無いのだろうか?
この世界に來てから一番付き合いの長いルナなのだが、未だに訳判らんことも多いのだった。
その後、皆が起き出して、食事となるわけだが、俺はまたしても居間で待つように言われてしまった。
流石に、ただ、マッタリしているのも暇なので、俺は屋を直すための用意をするために、材料を取りにいくことにした。
先日、屋の修理に必要な素材は、町外れの資材置き場から持って行って良いと、既にカスードさんに了承を取り付けている。
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俺は、朝の散歩がてら資材置き場に向かい、屋の材料となる茅葺かやぶきを取りに出かけた。
今回使う分は、先日刈った量で十分すぎるらしい。
今後使う場合も、使った分を、また補充しておけば特に問題は無いと言われていた。
外から見て良くわかったのだが、レイリさん宅の屋は頭頂部がぶっ飛んでいた。
梁や柱の骨組みはそのまま殘っていたため、下地を直した後、茅葺を敷き直せば問題無さそうだった。
俺は、修繕に必要な茅葺や、竹材を持っていく。つか、竹みたいなものもあるとは…異世界侮りがたし。
資材置き場で、必要な素材を調達した俺は、それを先日のように、結界に閉じ込め自追尾させる。
今は朝方で、まだ人も多くないためあまり目立つことも無く家まで到著した。
材料を軒先に、置いたところで家の中からルナが出てきた。
ルナは興味深そうに、しきりに々聞いてくる。俺はそれを一つ一つ丁寧に答えて言った。
それを聞いていくと、「ルナも屋作りしたい!」とやる気満々なルナ。
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ついでなので、そのまま作業の一部を説明しつつ、ルナにもやらせてみる。
最初は、上手く出來なかったルナだったが…気強くチャレンジした結果、たどたどしいながらも、形になってきた。
俺はルナの作業を見守りつつも、サクッと屋の下地だけを作ってしまうことにした。
竹材を中心に網狀に家を覆う。その網目の間に、茅葺を指していくイメージだ。
家を【アナライズ】で測定し、俺の中でマッピングを行う。
俺は作業用の【ファミリア】を作り、それに風の魔法を付與した。
この【ファミリア】は空気を吸い込み続けることで、モノを摑む事ができる。
球狀で浮遊しているため、紐を結んだりモノを運んだりと、いろいろなことができるように設計した。
もちろん、付與するものを変えれば様々な作業を行うことが可能だ。
これをとりあえずは10ほど稼させ、竹材を並べて、藁紐で結んでいく作業を行わせた。
俺のイメージのみで、製図の必要も無く、且つ距離も作業も間違えることも無い…。
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俺が先日得た技を頭で思い描くだけで、同じように紐を結わえ、材料を加工していく。
反則なまでの作業効率だった。俺の思念でかせる、作業ラインのような狀態だ。
単純な作業であれば、インプットしておくだけで、材料がある限り延々とを作り続けることができる。
そのうち、薬作りとかおわん作りとかをこの魔法でやらせれば、大量生産が可能だな…と、ぼんやりと思っていた。
俺は魔法陣を併用して、5分ほどで茅葺屋の下地を完させる。
ルナも茅葺の束を作することと、それを結わえる作業をマスターしたようだ。
これで、俺のいない間に、その作業を任せることができそうだ。
俺は、仕上げとばかりに、ルナを連れて屋に上る。強化した機能なら、ジャンプだけで上れてしまうことに改めて、魔法の凄さを実したのだった。
屋の上で、ルナと実際に作業を一緒にやって採集確認を行った。
ルナは危なげなく、作業をこなしているようだ。これなら大丈夫そうだ。
「ツバサ様―!ルナちゃんー!ご飯できましたよー!」
そんな俺らを居間から見上げるように、リリーが呼んでいた。どうやら朝食ができたらしい。
「今行くよ!」と、聲をかけ、ルナと一緒に一度、地面へと下り、戸から中へとった。
今日も食事は味しかった。相変わらずの煮だったが…。
材料自は、ここ數日で數種類のみしか確認されていない。それでここまで味しいのは凄いと思う。
ただ、何故煮るのだろうか…。何か理由でもあるのだろうか?
ふと気になった俺は、リリーに聞いてみることにする。
「リリー、ご馳走様。今日も味しかったよ。」と言うと、「いえ!お末さまです!」とリリーは顔を真っ赤にしながら謙遜しつつ、耳をピョコピョコさせる。
うむ。朝から良い耳のきだ。
そんな耳をでつつも、「そういえば前から気になっていたんだけど…」と、切り出す。
「なんで煮が多いんだろう?いや、味しいんだよ?けど、焼いたり生だったり、蒸すとか々調理方法はあると思うんだが…。」
それを聞いたリリーは、し困ったような顔をすると、
「えっと…。それは、私達の主食としているライヤモ草が、いので煮ないと食べられないからなんです…。」
と、教えてくれた。
そうか、そのライヤモ草とやらがここらの主食なのか。
あのし歯ごたえのある白い葉っぱみたいな奴かな?毎食殆どってるし。
「そっか、主食になるくらいだから、きっと栄養素も多くて味しいんだね。」
そんな言葉に、以外にもリリーは首を振る。
「いえ、元々、獣人族の主食はおでした。ただ、安定して食べられないので、今は村の近くに一番生えているライヤモ草で食べ繋いでいるのが現狀なんです。」
そんなリリーの言葉をレイリさんが引き継ぐ。
「ツバサ様。けないお話なのですが、ルカール村の食糧事は決して良いものでは無いのです。私達家族は、私が…一応巫の役目を仰せつかっている関係で、優遇して頂いております。ですので、食事には事欠かないのですが…。」
それは、俺達はかなりお世話になってしまっているのではないだろうか…。今更ながらに、レイリさんやリリーに、無理をさせていたことに気がつく。
俺がそんな事を考えているのが表に出ていたのだろう。レイリさんは、微笑みながら、
「ツバサ様。ルナちゃん。食事のことについてはお気になさらず。私達の一杯のお禮なのですから。せめてこれくらいさせて頂かないと、私達親子の面子が立ちませんわ。」
そんな風に言ってくれた。
確かに、その心遣いは嬉しいが、それで余計な苦労をかけてしまうのは心苦しい。
だって、食事は別に毎日取る必要がないわけだし。ぶっちゃけ嗜好品みたいなものだ。
俺はそう考えると、レイリさんにその事を伝えるべく口を開く。
「レイリさん、リリー。いつも味しい食事を本當にありがとうございます。けど、そうした事があるのでしたら毎食作る必要はありませんよ。嗜好品のようなものなのですからね。なくとも2週間は食べなくても問題ないんですから。」
俺のその言葉を聞いた瞬間、レイリさんとリリーが、「「は?」」と、同時に直する。
ん?何故そこで固まる?何か俺は変なことを言っただろうか?
「つ、ツバサ様?」と、レイリさんが焦ったように聲をかけてきた。
「はい?」と、俺が答えると、レイリさんは
「食事が必要ない…というのは、勿論、ツバサ様なりの冗談でございましょう?」
と、し引きつった笑みを張り付かせつつ聞いてきた。
その言葉に、俺とルナは互いの顔を見合わせる。
ルナの顔にも不思議そうな表が浮かんでいた。
おやぁ?これはもしかして、もしかするのかな?
だとすると…これも々考えて見ないといけなくなるな…。
俺はそんな事を考えつつ、「いいえ?本気も本気ですよ?」と、勤めて明るく振舞う。
その俺の言葉に、2人して驚愕の表を浮かべる。
「えっと、もしかすると、皆さんは食事を取らないと死んでしまうのが普通…ですかね?」
俺がそんな風に聞くと、「あ、當たり前ですよ!お腹すいて、死んじゃいますよ!?」とリリーがぶ。
おう。どうにも當たり前に食事が出てくるとは思っていたが…どうやら普通は必須らしい。
なんだろなー?俺やルナと、レイリ&リリー親子の違いって…。
俺はふと、魔力のせいかな?と思い當たる。
ルナも俺も、魔力量は強大だしな。恐らくその辺りで機能が維持できるから必要ないのかもしれない。
そうすると、もしかしたら、レイリさんにも変化があるかもしれないな…。
供給している魔力は消費を上回っているんだし。
「レイリさん。実は最近、お腹が空かないってじてませんか?」
俺が突然、そんな事を問いただすと、レイリさんは思い當たることがあったのか、「そういえば…ここ數日は空腹を覚えたことはございませんね。」と、答える。
なるほど。そうすると、魔力が原因っぽいな。魔力萬能だな!?
そんなレイリさんの言葉に、
「ええ!?お母さん、あんなに大食いだったのに、最近あまり食べないのは病み上がりだからじゃ無かったの!?」
と、絶するリリー。
そうか、レイリさんは大食いだったのか…と、俺が思っていると、レイリさんはリリーに、凍りつくような視線を向け、
「リリー?お母さんはそんなに食べないわよ?全く困った子ね…。」
と、冷笑と言っても良いくらい凍えた笑みを浮かべる。
うわ…、こわ!?怖いですよ!?レイリさん!!
その笑みを見て、リリーは耳と尾をピンとそそり立たせ、怯えた様子を見せる。
しかし、何故かリリーは、「ま、負けないもん!」と、気合をれ直すとムキになって、勇敢にも挑みかかる。
いや、そこは頑張らなくても良いんじゃないですかね?リリーさん。
「そ、そんな事無いもん!お母さん、お鍋3つとか普通に食べちゃうんだもん!いつも、食料をもらいに行くとき、皆に『リリーちゃん。いつも良く食べるね!』って笑われて恥ずかしいんだから!!」
な、なるほど。地味に、降り積もったものがあるんだな。リリーも々溜まっていた様だ。
しかし、レイリさんすげぇな。あの鍋3つとか、流石に俺でも無理だぞ。
そんなリリーの言葉を聞いて、レイリさんは効果音がしそうな程目を見開くと、
「リリー?ツバサ様の前でそんな事を言ってしまうの?仕方の無い子ね…。」
居間が一瞬にして、極寒の地になったように底冷えする聲で、微笑みながら言う。
流石にリリーも、これ以上の戦は無理なようで、耳と尾がへにゃりとヘタって、戦意喪失しているのは明らかだった。
まぁ、あの目を真正面から見ればそうなるよね。あれは俺でも、戦意喪失しかねん。
目に涙を浮かべて、カタカタと震えているリリーはそれはそれで、味わいがあるのだが…・
このまま、これ以上放っておくと、リリーが暫く復帰でき無くなりそうなので、俺は聲をかけることにする。
「レイリさん、その辺で許してやってくださいな。俺は別に、気にしませんし。健康的で良いじゃないですか。」
そんな俺の言葉に、レイリさんは目を輝かせて「ほ、本當ですか!?」と食いついてきた。
俺は、そんな可らしい反応のレイリさんに微笑むと、
「ええ、勿論本當ですよ。なんでしたら、俺が今度、たらふくご馳走しますよ。」
そう続けた。
その言葉への反応は劇的で、レイリさん目が輝き、尾がこれまでに無いほどブンブンと振られていた。
やべぇ。この人、こんな可い一面も持っていたんだな。
俺は新しいレイリさんの魅力を見つけられて、し嬉しかった。
そんな喜ぶレイリさんの後ろで、カタカタと震えながらも、涙目で謝を訴えかけてきたリリーの姿も印象的だったと伝えておこう。
とりあえず、食事については今後もご馳走になることになった。
結局のところ、レイリさんもリリーも食べるのであれば、食事を作ることになるし、それならば一緒に食べたほうが味しいからと言うリリーの要があったからだ。
俺は、ルカール村の食糧事も知ったことで、今後は食料の調達もやっていくことを2人は伝えておいた。
とりあえず、俺のが空くまではルナとリリーに任せることにした。
そのうち、俺にも、狩場や細かいルールについて教えてもらうことを約束したのだった。
何故か、レイリさんが舌なめずりしていたのだが…俺は見なかったことにした。
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