《比翼の鳥》第37話:ヒエラルキー

結局、これだけの騒になってしまい、村人たちも未だ不安を抱えている狀態で、族長會議を続けることは出來なかった。

本日は、どの族長も、各部族への説明でかかりっきりになるとの事で、いったん解散する方向でまとまった。

勿論、予定されていた、ヨーゼフさん宅での楽しい算數講座は、明日へと持ち越しになってしまった。

一応、俺自に予定はないので、「やる気があるなら、レイリさん宅に來るように!」

そんな言葉を、スルホとラーニャに伝えてもらうよう、ヨーゼフさんにはお願いした。

そうすると、橫でそれを聞いていたマールさんが、興味津々といったじで、算數講座なるものは何か?と聞いて來た。

俺は簡単に、やろうとしていることを掻い摘んで説明すると、マールさんは是非、自分もけてみたいと言い出す始末。

結局、マールさんも授業に加わる事となり、ヨーゼフさんは何故か苦笑いしつつ、ブツブツと呟いていた。

その呟きに、「割れるはしまっておかないと…」とか、混ざっていたので、その意味を理解し合掌する。

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カスードさんは、去り際、俺に向かって、「明日は來いよ!」と、聲をかけて來た。

訓練をやる気満々のようだったので、俺も、笑顔で「宜しくお願いします。」と、返しておいた。

慌ただしくも、やるべき事の決まっている者達は、それぞれ自分のすべきことをするために、去って行った。

殘された俺達は、ティガを連れて家路へと向かう。

ちなみに、ティガを抱っこしていた俺だったが、レイリさんがの涙を流しそうな勢いで見つめて來るので、仕方なく、風の魔法で浮かせて運ぶ形に変えた。

「すまん…ティガよ。」と、俺はそっと呟くと、「問題ない…。」とでもいう様に、目をつむり、首を振る姿が印象的だった。

帰りがてら、レイリさんに、事後承諾ながらティガをしばらく住まわせて貰っても良いかと聞いた。

し卑怯な形で、なし崩し的に決まってしまった事にも言及し、謝罪をした。

レイリさんは、そんな俺の言葉を聞いて微笑むと、

「お気になさらず…。ツバサ様の思う通りにしてください。私たちはそれを支えるだけです。」

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と、完全に俺を擁護するかのような発言をしてくれた。

俺は、全面的に甘えるのも心苦しく、またお互いの関係としても宜しくないので、いずれ、々恩返ししないとなーと心のメモに留めておく。

「それに…。私たちの旦那様ですから。夜頑張って下されば充分ですわよ?」

と、意地悪な笑みを浮かべつつ、とんでもない事をのたまった。

そんな言葉に俺は苦笑で返す。

前言撤回。この人には、隙を見せちゃだめだ。襲われる。

この人の場合、この手の言葉は冗談に見せかけて、半分以上本気だから質が悪い…。

俺は、そんな事を考えながら、家路へと著くのであった。

家へと著いた俺達を、リリーが出迎えてくれた。

「ツバサ様、ルナちゃん!お帰りなさい!って………きゃぁあぁあ!?」

そして、俺の傍らに浮かぶティガを見て、絶しながら、家の中へと消えて行った。

あー…。そうだよねぇ。食われかけた宿敵が目の前に居れば、そりゃ絶もするよね。

耳も尾も、一瞬にして完全に垂れ下がっていたなぁ。一発で戦意喪失している様子が窺えた。

悪い事をしたと思いつつも、こればっかりは、なんとか克服してもらうしかないとも思っている。

何せ最低1週間は、毎日顔を合わせる事になる訳だし。

ちなみに、ティガは我関せずという顔で、すっかりとれた様子で風の臺に乗って寢そべっていた。

「あー。レイリさん。どうしましょうかね?俺は今日の所はティガを土間か、居間辺りで休ませようかと思っていたのですが…。」

そんな風に、困った顔をしながら、リリーの消えて行った戸を見つめる。

レイリさんは、そんな俺の困った様子を見て、微笑みつつ、

「リリーの事ならお気になさらず。そのティガ様は、私達に敵対する様子も無いようですし。それに、ティガ様はいわばツバサ様のお客様ですから、當然、私どもとしてもお持てしさせて頂きます。」

視線を時々、ティガに向けながら、そんな風に言ってくれた。

流石レイリさんだ。話がわかる。それに、ティガを恐れる様子を微塵も見せていない。

そんな言葉を聞いたティガは、レイリさんに目を向けると、ひと聲、威厳のある聲で鳴いた。

それは、謝なのか、世話になるという意味なのか測りかねたが、敵意が無く敬意がこもっていたのだけはじ取れた。

「はい。宜しくお願いしますね。ティガ様。…しかし、ツバサ様は渡しませんよ?」

そんなティガの言葉に、微笑みながらも、何かよく分からない冷気を纏わせつつ、ティガを見つめるレイリさん。

おいおい…何、獣にまで嫉妬しているんですか…。

そして、そんなレイリさんの視線を、真っ向から跳ね返し睨みつけるティガ…。

って、何?この図。竜虎相搏りゅうこあいうつみたいなこの雰囲気、俺逃げ出したくなるんだけど…。

何故か俺は、レイリさんとティガの目からビームがほとばしり、差點でバチバチと音を立てているように見えて仕方なかった。

暫く、聲も無く睨み合っていた両者だったが、何のきっかけか、2人同時に、フンと言ったじに、目をそらす。

ティガそのまま寢そべり、レイリさんは家の中へと消えた。

俺は、何故かバクバクと音を立てて暴れる心臓を落ち著かせつつ、レイリさんの後を追って、家へとるのだった。

家へとると、炊事場へと向かうレイリさんの後ろ姿が見えた。

そして居間の隅で、座布団を頭に抱えて、「ティガ恐い…ティガ恐い…。」と、ブルブル震えている哀れなリリーの姿が目に映った。いや、し面白い…と言ったら彼には失禮なんだろうが…。

なんとなく罪悪に襲われるも、今更どうにかなる訳でも無く、俺は開き直って、リリーの傍に寄り聲をかける。

「リリー大丈夫?ごめん。そこまで恐がるとは思っていなかったんだ。」

そんな俺の言葉に、ピクッと反応し、耳も尾もへにょへにょっとした、リリーが目に涙を浮かべて、俺を見上げる。

あー、これは駄目だ。こんな姿見せられたら、庇護マックスになるって。

俺は、衝に任せてリリーを抱きしめると、頭をそっとでながら、彼が落ち著くのを待つ。

俺のの中に納まった彼は一瞬にして、力を抜くと、気持ちよさそうに耳と尾を揺らし始めた。

うーむ、今日もリリーの並みは素晴らしい…。

しばらくの間、そうやってリリーをでて獣耳を堪能していると、背中から何とも機嫌の悪そうなティガの唸り聲が聞こえてきた。

その聲で、尾と耳をピンッと、立たせ、ハッと我に返ったリリー。

そこへ、レイリさんがお茶をれて戻って來たと思えば、開口一番、

「リリー?このままだとツバサ様を、そこのティガ様に盜られるわよ?」などと言う。

正に、火に油を注いだかの様だった。

一瞬にして、リリーの闘志が燃え上がるのをじる。

俺に抱き締められたまま、肩口から視線をティガへと、効果音が鳴るのではないかと言うほど鋭く見據える。

そんなリリーは、「つ、ツバサ様は…渡さないもん…。」と、小聲で呟いていた。

その視線をティガ悠々とけ止め、鋭い眼と唸り聲を返す。

ティガの暴力ともいえる視線をけ、へにょんとリリーの耳が垂れ下がるのを間近で見た。

涙目でカタカタと震え出す。

もう、この可い生のせいで悶死しそうなんだが。

そんなよく分からない攻防の橫で、いつの間に著替えたのか、浴を著たわが子達がルナと一緒にお茶をすすっていた。

「皆で仲良くすればいいのにね?」と言うルナの言葉に、「ルナ姉さまの言う通りですわ。お父様は一人ですから獨占とか無理です。」「ええ、父上の溫けられるだけで謝すべきですね。」と、よく分からん會話をしていた。

ああ、そいや、視覚阻害の魔法を張っていたな…。忘れないに解除しておこう…。

心が折れそうになったリリーは、何故か俺を強く抱き締めると、奇跡的に戦意を復活させたようで、更にティガを見據えて言い放つ。

「つ、ツバサ様は、私の婚約者です!!添い遂げるのは私です!」

それを聞いた俺は、思わず顔を真っ赤にした。

いや、そりゃね、ええ、婚約者ってことにしましたよ。

けど、こうもストレートに思いをぶつけられると流石に気恥ずかしい。

しかし、それを獣に言い放つのはどうなんだろうか…。

それとも、この世界は獣とも結婚できたりするんだろうか?

リリーの大膽な一言か、その一言でうろたえるそんな俺の様子が面白かったのか、レイリさんは聲を上げて笑っていた。

ルナは、「私も、ツバサの婚約者!」と、手を上げ、「私は娘ですの!」「同じく!」と、何故か此花と咲耶まで宣言する。

このままだと、収拾が付かなくなりそうなので、俺は、リリーのおでこを人差し指で軽く小突く。

「はぅ!」と、思わず聲を上げ、涙目でおでこを抑えるリリーに、俺は微笑みながら、言う。

「リリー。気持ちは凄く嬉しいんだけど、別にティガと結婚する訳じゃないし、リリーとの婚約を破棄する訳でも無いから。もうしティガと仲良くしてやってくれないかな?」

そんな俺の言葉に、納得はいかないまでも、俺が困る事は分かったのだろう。しぶしぶと、頷く。

俺はそんなリリーを一ですると、土間の上でフヨフヨと浮いているティガの前に赴き、視線を合わせる。

「ティガよ。お前も、々気にらない事も多いと思うが、皆と仲良くしてくれないか?皆、良い奴らばかりなんだよ。俺は、これからも、お前と一緒に居たいと思ってるんだ。その為には、どうしても、周りの理解が必要なんだよ。」

俺は誠心誠意、心を込めてティガに話しかける。

そんな俺の言葉を理解してくれたのか、ティガはひと聲鳴いて、承諾してくれたようだった。

俺は、リリーに手招きして、こちらに呼ぶと、ティガの頭をでるように勧めた。

リリーは恐る恐る、手をばし、ティガの頭を優しくでた。

最初は怖がっていたが、しばらくすると、その並みに思う所があったのか、楽しそうにで続ける。

しかし、ティガは、仏頂面だった。その目に、「いつまででとるんじゃ!」といった雰囲気をじたので、俺がそろそろ止めようとしたその時。

ティガは、リリーの手を造作も無くパクリと、咥えた。

一瞬にして、耳と尾を羽立たせ固まるリリー。

見たじ本気で噛んだのではなく、甘噛みに近いものだろう。

現に、咥えた手を舐めまわして完全に遊んでいる。

そして、數秒後…今日二度目のリリーの絶が家に鳴り響くのであった。

リリーは泣きながら自室へと猛ダッシュで消えて行った。

そんなリリーを見て、ティガは満足そうな顔をしているのが印象的であった。

そして、その目には「ふん、小娘の分際で…。」という、明らかに下のに向ける分を含んでいた。

ああ、リリーよ。完全にヒエラルキーで最下層に落ちたな…。

俺は、リリーに憐れみを覚えつつ、彼の消えた戸を眺め、そんな事を思っていたのだった。

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