《比翼の鳥》第41話:最初の一歩
俺の問いに真剣に、包み隠さず全ての思いを答えてくれたレイリさんに、俺は謝を述べる。
だが、同時に俺の心の中には、未だ良くわからない混沌とした気持ちが渦を巻いていた。
その出所がわからず、わからないと言う事で更に湧き上がってくる苛立ちを、俺は強引に押さえつける。
この気持ち悪さは何だ?
俺は、レイリさんを見る。その顔は今までと変わらず、したの気を持って俺を見つめている。
しかし、その姿にほんの一瞬…本當に剎那の瞬間ではあるが、何か空恐ろしいものをじてしまった。
慌てて俺は頭を振る。
何だ?俺は何を恐れている。何にそんなに引っかかっている?
必死に考えるものの、その答えはまったく摑めない。
俺は必死に、心を落ち著かせるように心がける。
今まで異世界で、お世話になった人たちの事を考える。
ルナやリリー、ディーネちゃんや我が子達の事。そして、目の前で今も心配そうに俺の事を見つめるレイリさんの事。
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今までの暖かで楽しかった日々を思い描き、俺は出所の分からない負のを塗りつぶす。
今やるべきことは他にも沢山あるだろう?
俺はそう自分に問いかける。
そうだ。まずは村に帰って料理しないとな!!みんなが待っているはずだ!
そうして俺は自分を鼓舞する。
俺は、思考を切り替えると、レイリさんに微笑みかけ、「お待たせしました。さぁ、行きましょう!」と、聲をかける。
レイリさんはそんな俺の顔をジッと見つめると、「ツバサ様。」と、聲をかけてくる。
「ツバサ様が何に悩んでおられるのか、このレイリ、察することできませんが…。私はツバサ様のお力になりたいと思っております。それだけは、お知り置き下さい。」
そんな言葉をらかな表で投げかけてくれた。
レイリさんだって、今のやり取りで、々思うところがあったはずだ。
それなのに、自分のその不安な気持ちを押しやって、俺の事を心配してくれている。
俺はそのレイリさんの優しさに、心の底から謝の念と、どうにかなってしまいそうな嬉しさを覚える。
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勿論、それは、俺が先ほどのやり取りで、出所のわからない不安を抱えていることも影響しているのだろう。
それを抜きにしても、この人は俺をしっかりと見てくれている。そんなことがどうにも嬉しかったのだ。
俺は、そんなをごまかすように、俺はおもむろにレイリさんを抱き上げる。
「きゃ!?」と、言う聲と共にお姫様抱っこの狀態で俺の腕のなかに収まったレイリさんに、俺は微笑みかけると、恥ずかしさをまぎらわすかのように、村へと急ぐのだった。
そんな俺の腕のなかで、レイリさんがポツリと、「また1つ夢が葉いました…。」と、呟いたのが印象的だった。
そのままの勢いで、村までってしまい、村人からの生暖かい視線に曬されたのはご敬だろう。
獲の解も無事終わり、食材となったたちをけとると、俺たちは急ぎ、家へと向かう。
その途中で、狼になったことや、その方法についての模索を一度、桜花さんと相談して見てしいと俺は頼む。
更に、可能であれば、この現象の検証を行うかもしれないと、俺はレイリさんに話した。
レイリさんは、どちらの話についても、2つ返事で了承してくれる。
今回のことで、々わかった。課題もあるが、これは対策が取れると俺は思っていた。
そして、これを乗り越えることを俺は第一目標に掲げようと、決意も新たにしたのだった。
家に帰ると、スルホとラーニャがいた。
俺が呆けた顔で2人を見ていると、2人は俺の顔を見るなり、
「おっせーよ!」「おかえりなさいー。」と、毎度毎度期待を裏切らない対照的な挨拶を飛ばしてくる。
2人はリリーやルナ、それに我が子達と話していたようだ。
和気藹々とした雰囲気が、居間には漂っていた。
はて?何故この2人が?と思ったが、次の瞬間、ヨーゼフさんに伝言したことを思い出した。
そんな風に、俺が考えていると、我が子達も、ルナも、そして復活したリリーも俺たちを出迎えてくれた。
ふと見渡すと、ティガが先程の場所からいなくなっていた。
どこへ?と俺はいぶかしがり、探知で探すと、何故か屋にいた。
視線で俺は、リリーに問いかけると、リリーは「あははは…。」と、苦笑しつつし困ったようにルナを見る。
ふむ?何かあったらしいが、なんだろうか…?とりあえず、大きな問題は無いようなので、今は放置しておくことにする。
確かに、居間にいたら、またスルホとラーニャが大騒ぎするだろうしな。
申し訳ないが、その場所で待機してもらうとしよう。
ただ、仲間はずれも可哀相だから、食事ができたらこっそり、持って行ってやることにしよう。
俺はそんな事を思いつつ、食材を一端置くために炊事場へと向かう。
戻ってきた俺は、「まずは飯でも食ってから、授業しような。」と、スルホとラーニャに話しかけた。
「マジか!?」「よ、よろしいんですか?」と、ビックリする2人に、「待たせたからな。食ってけ。」と、俺は答えた。
そんな俺の言葉に重ねるように、レイリさんも「食べていきなさいな。」と、優しく勧めたことで、ご馳走することになった。
俺とレイリさんのそんな様子を見て、ルナは何か思うところがあったのだろう。
俺の方にやってきて「レイリさんと仲良くなったんだね!」と、笑顔で言ってきた。
え!?そんなに判りやすい空気だったのか!?と思い、リリーと我が子達を見るが、頭に『???』と、疑問符を浮かべていた。
この子は妙に鋭いところがあるからな…。気づいたのはルナだけか…。流石、ルナ。恐るべし。
俺はそんな風に考えると、「そうだな。仲良くなるくらい、有意義な時間だったよ。」と、微笑みながら答えた。
更に、ルナは俺の右肩を見て、「大丈夫だよね?」と聞いてくる。
ああ、そうか…。俺の右肩、そういや、レイリさんに噛まれてジャケットにが空いてるじゃん…。
うう…一張羅いっちょうらだったのに…。後でレイリさんに何か著れそうな服がないか聞いて見よ…。
そんな俺の悲しそうな顔を見て、ルナは「痛いの?」と、し心配そうな顔で俺の顔を覗き込む。
俺は、「ああ、違うんだよ。服がね…。」と、の空いた部分を指して、そう言った。
それを聞いていたのだろう。レイリさんが、ハッ!?と言うじで耳を立てるも、その表は落ち著いたまま、「ツバサ様。今、お著替えを用意いたします。こちらへどうぞ。」と、言ってきた。
俺は一瞬、料理を優先すべきか迷ったのだが、「すぐに済みますから。」とのレイリさんの事場で、先に著替えることにした。
レイリさんの部屋で、俺は、大き目の浴っぽいものを著せてもらった。
…次は自分で著れる様に教えてもらいながらである。
だって、お約束のように、レイリさんの視線がやたら熱を持っていたり、々ってこようとするんですもん。
次は自分ひとりで著れる様にならないと、々危ない。
一瞬、別に問題ないだろう?と、心の底から衝にも似た思いが沸きあがるが、俺はそれを黙殺する。
著替えた俺は、すぐさま料理の支度へと取りかかる。
といっても、俺のレパートリーはあまり多くはない。
しかも、調味料といったら塩ぐらいしかない始末。香辛料などあるはずも無く、いきなり途方にくれる。
調理も無いため、結局、焼くか煮るか…そのくらいしかできないのだ。
仕方がないので俺は、今日とってきたを薄くスライスし、焼きに丁度良い大きさへと加工する。
更に、この村で主食となっているライヤモ草をすりつぶし、ペースト狀にしてみた。
ちなみに、ライヤモ草は、ぱっと見長いもが緑になって、皮がとても厚いじだと思ってくれればいい。
菜ではなく、草なんだそうだ…。生えている姿が想像できなくて一瞬悩んだが、とりあえず置いておくことにする。
すったライヤモ草は、程よく粘り気が出てて、なんだかこれだけでもいけそうではある。
見た目はとろろ芋っぽいじがするので、しょうゆと混ぜてご飯と食べたら味しいかもしれない。
試しにペースト狀のものに熱を通すと、モチモチとした食べに変化した。
これはこれでありのような気がする。
試しに一口食べて見ると、お餅をもっとらかくほぐれ易くしたような食だった。
これをで巻いてあぶったものを1品作って見る。
香ばしいの香りと、モチモチとした食がたまらないものになった。
さしずめ、ライヤモ草の巻きって所か?
幸いなことに、塩だけはあったのでそれを振りかけて、完とする。
今度はライヤモ草をざく切りにして、と一緒に炒めてみる。
ライヤモ草は熱を通すとある程度らかくなるようで、皮ごとでも問題なかった。
今度はシャキシャキとしたじに仕上がる。これも軽く塩で味付けして、大雑把に終了。
良いのか?これで?と思ったが、もう気にしない事にした。
これはライヤモ草の炒めって所だろうかね?
大雑把な上、2品しかないが悪くないだろう。
俺は、妥協するとそれを大量に量産し、へと盛る。
これだけあれば、みんなに行き渡るはずだ。
それとは別に、単なる焼きも作るとそれも、へと盛っていった。
後ろから、リリーとレイリさんが興味深そうに見ている。
俺は振り返り、笑顔を返すとを渡し配膳をお願いした。
一通り渡した後、最後の一皿を持って向かうと、スルホが涎を垂らしながらの前で、マテ狀態で座っていた。
俺はそんな景に苦笑すると、皆に食事を促した。
それと同時に、貪るように料理を臨し始める獣人達。
それはまさに、戦場の様相を呈していた。
そこに、一切の躊躇も慈悲も無い。
目に映る全てのものを平らげ、胃袋へとう野獣の姿がそこにあった。
思わず、その様子に、固まる俺とルナ。
ちなみに、我が子達は、我関せず。通常通りであった。
とりあえず…好評そうで良かった…。
が全てで、なんか料理とか関係無さそうだけど、良い事にしよう。
リリーとラーニャは、口いっぱいにをほお張ると、部屋の隅に移し、「誰にも渡さない!」というように、隠れながら食べていた。
対照的に、「このは私が取ってきたものです!!よこしなさい!!」「ふざけんな!!俺のだ!!」と、醜い爭いを繰り広げるスルホとレイリさんを見て、苦笑すると俺は、ティガの分の料理を持ってそっと外に出る。
俺が屋に上がると、それに気がついたティガは、顔を上げ可い聲で鳴いた。
俺はそんなティガに笑いかけると、「何があったかわからないが、こんなところにいさせちゃってごめんな。」と、詫びる。
そんな俺の言葉に、ティガは「気にしなくて良い。」とでも言うように、一聲鳴くと俺の持つ料理に視線を注ぐ。
「ああ、俺が作ったんだけど、これ良かったら食べてくれ。もし、生が良ければそれもあるからな。」
と、ティガに勧める。
ティガは、一聲鳴いて、謝の意を伝えてくると、ゆっくりと味わうように食べ始めた。
一口食べ、目を見開き俺を見て、まるで「うまい!!」とでも言うように、勢い良く食べ始める。
それでも、一口一口丁寧に食べていく姿は、まるで人のようで、とても獣とは思えない。
そんなティガを見て、どっちが獣でどっちが人かわからん…などと言う想をに抱くのだった。
そんな食事も終わり、一段楽した俺達は、第一回算數講座を始めた。
せっかくいるので、レイリさんとリリーにも參加してもらい、初歩的な加法について説明をし、実戦を行う。
用意しておいた木版と墨を黒板代わりに、基本的な數字の概念を教えていった。ちなみに、十進法についてである。
レイリさんは流石に、そのレベルは問題ないようで、すぐに理解していたので個別に筆算について説明を行う。
ルナは既に小學生レベルの算數はマスターしているので、俺の補助として、詰まっている所を丁寧に解説してもらった。
スルホは、「うぁー!」とか、「んがー!!」とか言いながらも、リリーやラーニャの助けもあってか、何とか理解したようだった。リリーも、繰り上がりで躓いていたが、講座の最後の方では、間違いが々ありながらも、何とかものにしていた。
一応、目標としていたところまで終わったので、今日は解散とした。
スルホは頭から煙が出そうな勢いで、ふらふらとしていたが、他の3人はし興したように、目を輝かせて理解したことについて話し合っていた。
俺も、これなら何とかなるかな?という手ごたえをじていた。
學校を作る。小さな野ではあるが、その一歩が踏み出せた気がして、俺は一人充実を覚えるのであった。
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