《比翼の鳥》第54話:狐との語らい

「それで、カスードさん?何をそんなに驚いていたのですか?」

俺は、話を変え先程から疑問に思っていた事をぶつける。

カスードさんは「ああ、そりゃ、お前ぇ…。」と、歯切れが悪いじで呟くと、宇迦之さんを見ながら、

「そこの狐様が、さくっと先走っていたからだな。普通は、相手の承諾なしに子を作ろうとは思わねぇよ。俺ぁ、てっきり、ツバサが種馬として狐族に引っ張られていくんだろうと思っていたんでな。まぁ、多の抵抗こそあるだろうが、やる事やってらぁ、お嬢ちゃんたちも反対しないだろうし、楽しい事になりそうだと思ってたんだがねぇ。」

そんな風にし呆れたように、「全く…困ったお狐様だねぇ。」と、ため息をつきながら話す。

つか、種馬て…。言い得て妙だから、何も言えないけどさ!!

やる事って言うのは、先に子供を作っておくとか、説明しておくとかなんだろうが…大変なんですよね!それ!!

この狀態で更に子供増やすとか、今の俺の気持ち的に余裕なしです!無理ですから!!

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カスードさんの意見が一般的なようで、宇迦之さんもバツの悪い顔をしつつ、

「し、仕方なかったんじゃ!ツバサ殿の魔力には他の者の魔力と違って、可能じたのじゃ!」

「それでつい、子供を作られてもこっちは困ってしまうのですが…。もっとも、元兇は私の軽率な行なので、文句を言う立場でもありませんが…。」

と、俺は苦笑しつつ答えるしかなかった。

やらかしてしまったのは俺に非があるので、その點は弁解の使用が無い。

自業自得と言われてしまえばそれまでではある。

そんな言葉に、宇迦之さんは「うー!」と、悔しそうに口を閉ざす。

「ちなみに、先程見せて頂いた、霊珠というは、どういったものなのでしょうか?何か特別な使い道等はあるのですか?」

俺は話題を変える為に、もう一つ気になっていた事を聞いてみた。

そんな俺の素樸な疑問に、カスードさんが答える。

「ああ、元々、霊樹にれられなかった魔力はそのまま拡散して、何にも殘らねぇのが普通なんだが…極稀に、その霊珠が子種の代わりに出來る事があるんだよ。大抵の場合は、気持ちが足りなかった時に出來ると言うのが一般的な考えだなぁ。」

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「そうなのじゃ。そして、霊珠が出來るという事は、大抵の場合は、気持ちさえ魔力に乗せれば、子種になると言う証でもあるのじゃ。ツバサ殿とわらわの相はバッチリなのじゃ!」

カスードさんの説明をけ取るように、更に、宇迦之さんが続ける。

なるほど。殘念で賞とか、惜しかったで賞的な位置づけか?

命が絡んでいる話を、そんなに軽く扱うのもどうかとは思うが…。

そんな事を俺が考えていると、宇迦之さんが、「そうじゃ…。」と、何かを思い出したように手を叩き、

霊珠は、霊樹の種であると言う話も聞いた事があるのぉ。」

と、呟くように言う。それを聞いたカスードさんも、それに続くように呟く。

「そぉいや、そんな話聞いた事あるなぁ。確か…龍脈だか、魔力の濃い土地に植えると、霊樹になるんだっけな。」

「それは…まことか?じゃとすれば、我が狐族の村に丁度良い龍脈があるのじゃ。ツバサ殿とわらわの魔力のこもった霊珠じゃ。案外何かあるやもしれぬのぉ。」

「ほぅ?それは、試す価値があるんじゃねぇのか?ツバサの魔力を含んでるんだ…何があっても不思議じゃねぇぜ?」

そんな風に、本人そっちのけで何か重要な話が進んでいく。

そして、人の魔力を當たり前のように、おかしなもの扱いされて、ちょっとへこむ。

「あのー。」と、俺は申し訳なさそうに、手を上げつつ2人の會話に割ってる。

「この件に関しては、一度、宇迦之さんも含めて、うちの家族と相談させてくれませんかね?」

こんな事を言うのは、このままだと、なし崩し的に、狐族の村に出発する勢いだからだ。

別に、狐族の村に行く事自は、俺的には問題が無いのだ。

どの道、子作りについての方法を検証するにせよ、一度狐族の村へと出向いて、ルカール村に皆を引き連れて來なければならない訳だし。

ただ、その前に、々とやらなければいけない事がある。

特に、今回の件に関しては、俺に非があると思うので、その辺りも含めて、皆でちゃんと意見をすり合わせておきたい。

俺がまた、先走って、いろいろ決めた後で、もめたりするのは嫌なのだ。

異世界での皆の覚は、俺の覚と微妙にずれていると言うのを前の件で、をもって知ったが故の用心である。

そんな俺の気持ちを理解してくれたのか、カスードさんは

「あー…そうだな。一回ちゃんとお前ぇらで話し合った方が良いだろ…。族長どもには俺の方から伝えておくからよ。」

そう、言ってくれた。

「また、桜花の奴、ビックリするんだろうなぁ…ククク。」とか、黒い笑みを浮かべていたが、見なかった事にする。

なんだか、宇迦之さんは心配そうに、俺の顔を見上げて來た。

目をし潤ませつつ、こちらをすがる様に見つめて來る。なかなかの威力である。

なんか、急にこの人…弱気になって來たなぁ。先日までのツンツン狀態は何処へ行ったのだろうか…。

ハッ!?まさか、これが王道のツンデレと言う奴か!?

などと、アホな事を考えている俺に、カスードさんが、

「おう、そうと決まればさっさと説明しに帰れや。いつまで、見つめ合ってるんだよ。」

と、ニヤニヤしながら突っ込んで來る。

そんなカスードさんの言葉に俺と宇迦之さんはお互いに「「!?」」と、弾かれた様に視線を外すと、

「さ、さぁ!宇迦之さん!とりあえず、家へとご案します。行きましょう!」

「そ、そうじゃな!よ、宜しく頼むぞ!ツバサ殿!」

と、不自然な程慌てて、俺達はカスードさんの家を後にしたのだった。

くそぉー!なんか意識しちゃうんだよなぁ。やっぱりの弱っている姿に男は弱いって事か…?

俺は悶々とした気持ちを抱えながら、靜かな宇迦之さんを伴って家路へと向かうのであった。

家路へと向かう途中、妙に大人しかった宇迦之さんが、遠慮がちに聲をかけて來た。

「の、のう?ツバサ殿?」

「はい?何ですか?宇迦之さん。」

「そ、そのじゃな…。」

そう、言いよどみ、俯く宇迦之さん。

俺はそんな様子の宇迦之さんを急かさずに、「はい。」と、返事をしつつ、ゆっくりと言葉を待つ。

しばらく、無言のまま歩いたが、宇迦之さんは意を決したように顔を上げると俺をしっかりと見據え、

「…何で…わらわのを、誰にも話さずに…守ってくれるのじゃ?」

と、揺れる瞳を向けながら問いかけてきた。

俺は、「なんだ、そんな事ですか。」と、笑いながら呟くと、「そんなに難しい事じゃないですよ?」と続ける。

「宇迦之さんが、その様に幻を使うには何か訳があるのでしょう?そして、それを知られたくないと思っているのもわかります。それが、私達にとって悪意のあるであるならば、見逃しはしませんでしたが…そうでもなさそうですし?」

そう、しおどけて言う。

「ちなみに、俺だけじゃなくて、リリーとルナも知っていますよ?」と、言うと揺したようだが、「そ、そうか…。」と呟くにとどまる。

「し、しかし…狐族の巫たる、わらわのじゃぞ?使いようによっては、々と有利な事もあるとは考えなかったのかの?」

俺は、「うーん?」と、腕を組み考える。

しかし、特に何も思いつかなかったので、逆に「例えば…?何かありますかね?」聞いてみた。

そんな俺の言葉に、宇迦之さんはビックリしたように、こちらを見つめると、恥ずかしそうに俯きながら、

「た、例えば…そ、そうじゃな…。わ、わらわのを好きにできる…とか?」

「なるほどなるほど。それは確かに魅力的な提案ですね。」

何となく自信無さげに答える宇迦之さんを見て、思わず笑みがこぼれる。

そして、俺は失禮とは思いながらも、笑いながらそう答えた。

「ふ、ふん!どうせ、本はちびっこじゃよ!わらわだって、いつか幻など使わなくとも…。」

宇迦之さんは悔しそうにそう、呟きながら恥ずかしそうに下を向いて、呟く。

では、俺よりしだけ小さい位の背丈だが、本は俺のあたりまでしかない。

ふて腐れて、ブツブツ言う宇迦之さんに、俺は苦笑しながら言葉をかける。

「いやいや、本當にそう思っているんですよ?その綺麗な耳や尾をでまわせる特典は、なかなかに魅力的ですしね。」

そんな俺の言葉を聞いて、ピッ!?と言う擬音でも起きそうなほど耳と尾を直立させると、俺の方を、まるで信じられないものを見るかのように凝視してくる。

いつも思うのだが…そんなにおかしな事なのだろうか…。いまいち、獣人の覚は分からん…。

俺がそんな事を考えていると、宇迦之さんは、何かを決意したように俺を睨んで來ると、プィっと視線を逸らせ、

「…よい…。」と、一言呟く。

俺がその言葉の意味を計りかねて、訝しがっていると、こちらを真っ赤な顔で、真っ直ぐに見つめ、

「み、耳位なら…。っても良い…。」

と、蚊の鳴くような聲で言ってきた。

ぐおー!?何このに來るおしさは!?破壊力がすざましいです…。

思わず俺もつられて、一瞬顔を真っ赤にしてしまう。

「ほ、本當に良いのですか?お…私は嬉しいですけど…。」

「く、くどい。ゆ、許す。お主には々と世話になるしの…。そ、その…前払いじゃ。」

そうやって、恥ずかしそうに、俺に頭に鎮座した狐耳を向けて來る。

しかし、言葉とは裏腹に、獣耳は何かを期待するようにピクピクと震えていた。

「じゃ、じゃあ、失禮しまして…。」

と、俺はひと聲かけた上で、宇迦之さんの本の耳に手をばし、優しくで始める。

「ふぁ…。」と言う、気の抜けた宇迦之さんの聲がれ、しばらくすると、気持ちよさそうに目をとじ、尾を揺らし始める。

リリーやレイリさんとは違って、し大きめの耳はでごたえがあり、並みはややかった。

しかし、丁寧に櫛を通す様に丹念にでて行くと、その絡まっていたからじられる抵抗もしずつ無くなっていく。

俺はそんなで心地に、狐耳は狐耳で良い!!としていた。

それは、奧様方の「また…ツバサさんが、耳をでまわしてるわよ?」「良いわねぇ…。あんなに気持ちよさそうに…。私も頼んでみようかしら?」「そんな事したら、レイリさんに睨まれるわよ?」「けど…羨ましいわねぇ。夜も凄いのかしら?」と言う聲が聞こえて來て、俺が背筋に汗を流すまで、往來で続けられたのであった。

俺が奧様方の聲で、でるのをストップすると、宇迦之さんは、ハッとして、俺の顔を見た後、クルッと、後ろを向き、顔を両手で覆って必死に何かを耐えているようだった。

やっぱり、これ…往來でやる事じゃないんだろうなぁ。

次から人目につかないところでやろう…。

などと、ずれたことを俺が思っていると、宇迦之さんは復帰したのか、し赤みの殘る顔で、俺を見上げて來て、

「お主…の敵じゃな…。」

と、ポツリとショッキングな事を言ってきた。

「えええぇ!?何でですか!?」

と、俺がぶも、宇迦之さんは笑いながら、その真意を口にすることは無かった。

そんな、し意地悪そうに笑う宇迦之さんの笑顔は、とても綺麗なものだった。

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