《比翼の鳥》第79話 イルムガンド防衛戦 (4)
「……という訳で、予想以上に勇者様が弱そうなんだ。不確定要素は多いの、戦力としてはあまり期待できないと思う。だから、ちょっと俺達が頑張らないと行けなくなりそうなんだよね。ただ、皆は無理をしないでね。俺とルナで何とかできると思うし。」
俺は、そんな風に、じた事を皆に伝える。
約一名、と言うか、クリームさんが驚いた様子を見せていたのを視界の端で確認した。まぁ、それが普通の反応だろうが、今は時間が惜しいので、そのまま流す事にする。
「了解です、父上! この咲耶、立派に西壁を死守してご覧にいれましょう!」
「はい、わたくしも、東壁は任されましたわ。お父様、安心して見ていて下さいな。」
「いや、君たちはやり過ぎないように。許可があるまで霊裝は止ね。」
「「そんな……。」」
そのまま飛び出していきそうなほど勢い良く立ち上がった我が子達に、俺は冷靜に釘をさす。
いや、君達が霊裝使って戦ったら、違った意味で被害甚大だからな?
特に俺の力の使い方を理解しつつある咲耶が使ったら、どうなるか、想像もしたくない。
霊裝無しであの出鱈目でたらめさだぞ? 霊裝使った日には、暴走して山脈ごと隣の國まで大地を割っても俺は驚かん。
俺がそんな未來を想像していると、ヒビキが聲を上げる。
「……『私はそこの小む……リリー殿と南壁擔當で変わりはないでしょうか?』とヒビキ殿が申しておりますな。」
ややしょんぼりしつつも、律儀に翻訳してくれる咲耶の言葉を聞いて、俺は苦笑すると、頭を振る。
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「いや、ちょっと予定変更だ。リリーはここに殘って貰って、俺のサポートをしてもらう。南壁はヒビキ一人になっちゃうけど頼めるかい?」
そんな俺の言葉に、ヒビキは心もち嬉しそうに一聲上げて答えた。その聲から、やる気がじられる。
逆に俺の言葉を聞いて、リリーはし殘念そうな、それでいてどこかホッとしたような何とも言えない表を浮かべていた。
まぁ、今のリリーではまだ、ヒビキのサポートは厳しいだろうしな。
それに、ヒビキと二人っきりっていうのも、し不安な要素だったんだろう。
「んで、リリーには、ちょっと重要な役所を頼みたいんだ。これは、かなり難しい事だけど……お願いできるかな?」
俺は、ワザとし不安を煽る様に、そう話しかけた。
一瞬、戸ったリリーだったが、すぐに気を引き締めたのだろう。
「はい。私で出來る事なら、なんでもやります。やらせて下さい。」
真っ直ぐに俺を見つめ、そう答える。
「うん。じゃあ、お願いするよ。ルナ、悪いけどリリーとあの事で打ち合わせしておいてくれる?」
《 うん、わかった。じゃぁ、説明するからリリー、こっちでちょっと話そう? 》
リリーはルナの言葉を見て、頷くと、部屋の奧にある機へと向かった。
俺はそんな二人の様子を確認した後、
「よし、では、作戦開始。皆、所定の位置へ移。頼んだよ?」
「承知!」「はい!」
そう皆に聲をかけるや否や、皆、それぞれ、聲……と咆哮を上げ、すぐに姿を消した。
どこの忍者だ、君達……。
「あ、あの、私も何か出來る事……あるでしょうか?」
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そんな違和のある景をものともせず、今迄黙って様子を見ていたクリームさんが、おずおずと言ったじで、聲を上げる。
「そうですねぇ……。では、すいませんが、クウガとアギトの相手をして頂けると助かります。ちょっと暇そうなので。」
「はい? クウガさんと、アギトさん……ですか? その方々はどこに……?」
そう問いかけながら俺の視線につられたように、彼は部屋の隅へとその視線を向ける。
そんな彼の視線の先には、暗闇の中に怪しく浮かぶ4つの。
呆けた様にそのを見つめるクリームさんだったが、次の瞬間、そのが尾を引いてくと、クリームさんは、「ひっ!?」と、から聲をらしながら後ずさる。
そして、そのが大きく揺らめいたと同時に、クリームさんはソファーに押し倒されてしまった。
「あ、こら、お前達……。」
そんな俺の言葉が終わらぬうちに、彼の悲鳴が部屋に響いたのだった。
「し、失禮致しました。まさか、ヒビキさんのお子様がいたとは。暗くて分かりませんでした。」
「いえ、今のは完全にこの子達が悪いですから。こら! クウガ! アギト! に突然のしかかるなんて、うらやま……いや、失禮な事は、駄目だぞ。」
俺の叱責に反応して、クウガとアギトは、甘える様な甲高い聲をだすと、地に伏せて反省の意を示す。
「いえ、知らなかった事とは言え、怖がってしまった私も悪かったですから。クウガ……さん。アギト、さん? でしたか。宜しければ、私とし遊びましょう?」
そんなティガ兄弟を庇うように、クリームさんは笑顔を浮かべる。そして、そんな彼の言葉を聞いた彼らは、目を輝かせ尾を振るも、次の瞬間には、俺の顔を窺うように視線を向けて來た。
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全く、そんな顔されたらこっちが悪役みたいじゃないか。
「分かった分かった。ちゃんと行儀よくな? では、クリームさん、やんちゃな子達ですが、お願いしますね。」
俺はため息と共に、クリームさんへと改めてティガ兄弟の相手をお願いする。
「はい。では、お二人とも、何をしましょうか?」
そんな風に、ティガ兄弟に話しかけるクリームさんへ、俺は言っておかなければならない事があったのを思い出し、
「あ、そうだ。クリームさん。」
そう聲をかける。
「はい。何でしょうか?」
「ちょっとこれから話し合いをするので、あまり音の立つ事は控えて下さいね。クウガ、アギト、分かったね?」
「はい、分かりました。では、し離れたあちらで靜かにしておきましょうね。」
そんなクリームさんの返事と共に、ティガ兄弟も元気よく聲を上げると、3人……いや、1人と2頭でルナ達と反対側の壁へと移していった。
そんな様子を見送った俺はソファーへと戻り、ゆっくりとを沈める。
さて、遮音は……まぁ、必要ないか。一応、ここに居る皆くらいには、知っておいてもらった方が良いだろう。
俺はこれから始める話し合いがこの部屋で聞こえる様に、設定を作する。
マイクとかだとハウリングの心配をしないといけないんだが……改めて、魔法って反則だと思う。
「さてと……始めますかね。」
俺はそう一人呟くと、ファミリアへと接続し、視界と聲を移したのだった。
「すいません、そこの竜さん。ちょっとお話ししませんかね?」
俺は目の前に浮かぶ山の様な大きさの竜へと聲をかける。
その瞬間、竜の周りを優雅に飛んでいたワイバーン達はきょろきょろと辺りを見回し、そのせいで隊列が崩れた。
そんな狀況に苛立ったのだろうか? 竜は大音聲を上げると、【ステルス】を纏ったファミリアへと視線を向け、何かの力場を飛ばす。
しかし、それは瞬時に自展開された障壁によってあっさりと弾かれ、余波に巻き込まれたワイバーンが數十匹単位で消え去った。
「あらら。可哀想に。」
俺のそんな余裕な態度で更にいらついたのだろう。
竜は【ステルス】を纏った俺のファミリアに向かって、更に何度も不可視の攻撃を正確に飛ばして來る。
うーん、これは風かな? まぁ、風と呼ぶには明らかに騒なものだが。
ちょっと見た所、圧搾空気と言うか、むしろ裂弾の様なものだし。
そんな想を抱く間に、障壁で弾かれた風弾が、周囲のワイバーン達を巻き込んで、次々と消し飛ばしていく。
しかし、目の前の竜は、そんな事に目もくれず、狂ったように風弾を連して、周囲のワイバーン達を際限なく消し飛ばしていた。
そんな狀況に、流石に命の危険をじたのだろう。ドームを形していたワイバーン達が、蜘蛛の子を散らす様に飛び去り、距離を置く。
そこには忠誠心とか、そう言ったものは微塵もじられない。なるほど、恐怖政治って奴ですかね?
俺はそんな狀況を黙って観察していたが、ワイバーン達が作っていたドームが消え去った結果、日差しが差し込むようになり、流石に狀況を理解したのだろう。
竜は忌々しそうに、俺……つまりはファミリアの方を睨むと、そのまま口を閉じる。
《 先程からの忌々しい視線は貴様か 》
同時に、憎しみと苛立ちがそのままぶつかって來たかのような思念……としか言いようのない何かが、ファミリアを通して俺に屆いた。
おお、こんな事も出來るのか。流石、竜だけはある。どうやってやってるのか、ちょっと解析させて貰おう。
ファミリアに【アナライズ】をさせ、そのまま解析しながら會話を続ける事にする。
「はい。失禮とは思いましたが、し様子を探らせてもらいました。」
《 ………… 》
しかし、言葉……と言うか、明確な思念は帰ってこない。代わりに不機嫌そうな唸り聲だけが、場に響く。
まぁ、ストーカーしてましたって言われて喜ぶ人は、特殊な方を除いていないだろうし、そりゃそうか。とは言え、このまま睨み合っていても埒が明かんので、本題をスパッと切り出す事にしよう。
「さて、早速ですが本題にりますね。今回は、お願いがありまして。」
《 …… 》
「そんなに睨まないで下さい。お話しは簡単です。すいませんが、この先の都市を攻撃しないで頂きたい。」
《 斷る。 》
あらま。早くも渉決裂。取りつく島も無いとはこの事だ。
「無茶な要求だと言うのは、こちらも理解しております。斷片的にではありますが、狀況も伺っておりますし。あ、そうそう。あの緑の子竜は、あなたの子供ですか? こちらで治療して保護しておりますので、良かったら……。」
まだ言葉の途中だったが、突然いきり立った竜の咆哮がそれを遮る。と同時に、全方位に向かって衝撃波が幾重にも伝わり、遠巻きに見ていたワイバーン達の殆どが巻き込まれ、木の葉のように吹き散らされる様子が確認できた。哀れな。
《 あのような出來損ないなど、我が眷屬では無い! しかも、まだ生き恥を曬しているのならば、我が食い殺す! 》
そう、嫌悪もわに、吐き捨てるような仕草もえながら、竜は狂ったように暴れ出す。
想像通りとはいえ、こうも簡単に子供を切り捨てられるのもどうかと思うが……。
「そうですか。では、お子様は 《 あんな失敗作は我の子ではない!! 》 あー、保護した竜は……私の方で責任を持って、育てますので。」
途中遮られながら、何とか言葉にしながら、俺は沸々と湧き上がる怒りを押し込め、取りあえず言い切る。
失敗作……ね。まぁ、やっぱりと言うか、そういう格なのね。
そんな俺の殘念な気持ちも解らない目の前の竜は、興した様に吐息をらし、八つ當たりのように……っていうか、完全に八つ當たりだが、俺のファミリアに執拗な攻撃を加えている。
もう、これどうにもならんかなー。
ちなみにこの攻撃の余波で、先程から、本當に極僅かではあるが、地鳴りの様な細かい振が、イルムガンドにも伝わってきている。
市壁からめば、まだ點にも満たない様な姿が確認できると言うほど遠くであるのはずなのに、地団駄じたんだを踏んでいるだけでこの狀況。
都市直上でこれをやられたら、普通の狀況なら、間違いなく壊滅するだろうな。まぁ、今回は、ルナが防ぐけど。
しっかし、何この竜。短気にも程があるんだけど。もうし賢いかと思ったら、まるで子供じゃないか。
もしかして……まだ、若いのか? 人の事は言えないけど、元の世界でも図だけ大人で、中は子供な人も多いしな……。
元の世界で、高圧的に店員にクレームをつけている恥ずかしいおっさんの姿が、今の竜の姿と被り、何とも言えない微妙な気分が湧き上がる。
竜と言えば、長い時間を生き、老齢で賢いイメージがあったが、どうやらそうでもないらしい。
人知れずため息をついた俺は、まだ暴れまわる竜をそのままに、言葉を続ける。
「あー、ちなみに、都市を攻撃するのはやめて……くれないんでしょうね。やっぱり勇者との闘いがおみでしょうかね?」
《 勇者? あの人族の小僧か! 我に挑むとは、愚かなり! その対価は戴く! 無様に殺す! 人族も皆殺しだ! 》
興した様に、嘲笑いながら、安い魔王の様な臺詞をサラリと言う。
しかも、興しているせいか、変に饒舌だ。そんな竜の姿を見て、もう、なんかどうでも良いかなと思い始めた俺がいる。
しかし、一応、渉は最後までしよう。もう結果は見えているが。
「あー、こういうやり方は、あまり好きじゃないんですけど……。じゃあ、最後通牒です。都市攻撃やめて帰って下さい。都市には大事な人が沢山いるので、來てもらっては困ります。」
《 斷る。 》
即座に拒絶の思念が返って來た。そういう所は、変に冷靜なのね。そう思い、ため息をつきつつ、俺は続ける。
「困りましたね。そうすると、私は本當に憾ながら、あの痛い勇者様の味方をしなければならないんですが。」
《 ククク。貴様と都市の奴らごと、勇者も食らってやるわ! 》
本當に楽しそうに、仄暗い思念が飛んで來た。
あ、駄目だ、この竜、完全にやる気満々だわ。超楽しそうにしてるし。
「はぁ……全く。本當に、やるんですね? 私、なるべくなら、あなたと戦いたくないんですよ。」
《 ならば大人しく食われろ! 》
そう思念を飛ばしながら、ファミリアに向かって噛みついてきた。
しかし、即座に障壁がその開いた口をそのままに、押しとどめる。
なんか、竜って攻撃がワンパターン? 噛みつくかブレスしか無いのだろうか?
質な音を響かせながらも、俺の障壁を破れず、尚も力を籠める竜に対し、俺は宣戦布告をする。
「それは嫌なので、抗わせてもらいますね。さてと……とりあえず、しの間、靜かにしてもらいますよ。」
どうせまだ、勇者様はまだ、民衆に対してパフォーマンスを繰り広げているのだろうが、いい加減、時間稼ぎも疲れた。
さっさと勇者様には、ご登場頂くことにしようかな。
俺は、ファミリアを通して、問答無用で【エアハンマー】を起する。
その瞬間、言葉を発する事も出來ず、視界から消える竜。
遅れて、鈍い打撃音と、風が広がり……直下の砂漠に巨大な砂の花が咲いた。
そのまま、意図的に【ステルス】を解いたファミリアは、砂漠に空いた巨大なの直上へとるように移し、ファミリアの姿を見せつける。
《 き、貴様!? いった 》
一瞬、から顔を出し、こちらを睨んだ竜だったが、すぐに直上に待機したファミリアの自迎撃で、再度砂の中へと強制的にお帰りになる。
そんな竜がまたも砂へと叩きつけられたその瞬間、轟音とともに空を突く程、巨大な砂柱が上がった。
よし、うまく機能しているようだな。んじゃ、後は任せよう。
ファミリアには5分間、竜の上で待機してもらい、ひたすら竜の出を抑えるように指示を出した後、俺は接続を切り、部屋へと意識を戻す。
どうやら竜とファミリアは派手にやっているようで、先程から、ひっきりなしに市壁が揺れている。
まだ結構離れているんだが、流石にあの質量を砂に叩き落しまくれば、こうなるか。
振の數だけ、竜が叩き落されている訳なんだが……いやいや、なかなかに良いペースで叩き落されているようである。
そんな狀況は、他の皆に解るわけも無く……勇者を映した畫面に視線をやれば、不気味に鳴する大地に観衆は不安を隠せない様子だ。
ほら、勇者様。早く行かないと。いくら大丈夫だって口で言ったって、君が出て行かないと、皆安心できないよ?
そんな俺の心の呟きが聞こえたわけではないだろうが、
「皆、安心してほしい! これも竜の卑劣な手に決まっている! 今から、俺が行って止めてくる! 皆は安心して待っていてほしい!」
勇者は観衆に向かい、そう宣言した。
その表に不安な様子は見られず、これから散歩にでも出かけるかのような余裕すらうかがえる。
ある意味、大だな。まぁ、半分回って、事実を把握できてないだけかもしれんが。
俺はそろそろ事態が大きくき出すことを確信し、ゆっくりとソファーから立ち上がる。
ふと、視線をじて振り返ると、ルナとリリーが、こちらの様子を伺っていた。
《 やっぱり竜は駄目だったね。 》
ルナが虛空へと文字を描き、俺はそれを読むと、黙ってうなずく。
「まぁ、仕方ないよ。あんだけ我が強ければ、話し合いの余地も無いしね。」
《 子竜さん……可哀想だね。 》
そんな憂いを表に出したルナに近づくと、俺は左手で頭をポンポンと優しく叩き、
「そうだな。その分、皆で、あの子竜に楽しい事を沢山教えて行こうな。案外、あの竜も反省したら変わるかもしれないしね。」
そう努めて明るく聲をかけた。
「そうですよ。あんな我儘わがままな竜は、一回、痛い目に合えばいいんです!」
橫で話を聞いていたリリーも憤懣やるかたないといった様子で、勇ましい事を口にする。
「んじゃ、リリーやるか? あの竜と。」
そんな威勢の良いリリーを見て、ちょっと意地悪をしてみたが、その言葉を聞いた瞬間、彼は慌てて耳と手を振りながら、
「へ!? い、いえ、わ、わわわた、私では、その、まだちょっと……。」
そう慌てながら弁解してきた。
そんな様子を見て俺は思わず笑顔になりながら、右往左往するリリーの耳に右手を置くと、そのまま口を開く。
「ははは。冗談だよ。……けど、まだって事は、いつかは……と言う解釈でいいかな?」
俺の手が置かれたことで、一瞬きが止まり、ついで俺の言葉を聞いて、リリーは不思議そうな顔で俺を見上げる。
しかし、その言葉が改めて大きな意味を持っていることが理解できたのだろう。
リリーは真剣な表を浮かべると、大きく頷いた。
うん。良い表だ。ちゃんとそこに向かう意思をじる。その真っ直ぐさ……ちょっと羨ましいね。
一瞬、そう思うも、気持ちを切り替えると、俺は、この先に備えて、リリーへと更に問いかけた。
「よし、んじゃ、リリーには、今回は違った形で頑張ってもらうよ。ルナには説明をけたかな?」
「はい! ……ちょっと不安ですけど、一杯、頑張ります!」
「うん。そんなに気にしなくて大丈夫だからね。腹案はいくつかあるから。」
《 リリーなら、大丈夫だよ! 可く出來ると思うの。 》
「そうだな。俺もそう思う。」
「そ、そうでしょうか?」
張が見えたリリーだったが、俺たちの褒め殺しに、満更でもない様子で尾をわさわさと振る。こら、尾の制が甘いぞ。
そんな風に、張のない俺たちの様子を、凄く微妙な表でクリームさんが見ていたのを、俺は暫くしてから、気が付いたのだった。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
8 88【書籍化/コミカライズ決定】婚約破棄された無表情令嬢が幸せになるまで〜勤務先の天然たらし騎士団長様がとろっとろに甘やかして溺愛してくるのですが!?〜
★書籍化★コミカライズ★決定しました! ありがとうございます! 「セリス、お前との婚約を破棄したい。その冷たい目に耐えられないんだ」 『絶対記憶能力』を持つセリスは昔から表情が乏しいせいで、美しいアイスブルーの瞳は冷たく見られがちだった。 そんな伯爵令嬢セリス・シュトラールは、ある日婚約者のギルバートに婚約の破棄を告げられる。挙句、義妹のアーチェスを新たな婚約者として迎え入れるという。 その結果、體裁が悪いからとセリスは実家の伯爵家を追い出され、第四騎士団──通稱『騎士団の墓場』の寄宿舎で下働きをすることになった。 第四騎士団は他の騎士団で問題を起こしたものの集まりで、その中でも騎士団長ジェド・ジルベスターは『冷酷殘忍』だと有名らしいのだが。 「私は自分の目で見たものしか信じませんわ」 ──セリスは偏見を持たない女性だった。 だというのに、ギルバートの思惑により、セリスは悪い噂を流されてしまう。しかし騎士団長のジェドも『自分の目で見たものしか信じない質』らしく……? そんな二人が惹かれ合うのは必然で、ジェドが天然たらしと世話好きを発動して、セリスを貓可愛がりするのが日常化し──。 「照れてるのか? 可愛い奴」「!?」 「ほら、あーんしてやるから口開けな」「……っ!?」 団員ともすぐに打ち明け、楽しい日々を過ごすセリス。時折記憶力が良過ぎることを指摘されながらも、數少ない特技だとあっけらかんに言うが、それは類稀なる才能だった。 一方で婚約破棄をしたギルバートのアーチェスへの態度は、どんどん冷たくなっていき……? 無表情だが心優しいセリスを、天然たらしの世話好きの騎士団長──ジェドがとろとろと甘やかしていく溺愛の物語である。 ◇◇◇ 短編は日間総合ランキング1位 連載版は日間総合ランキング3位 ありがとうございます! 短編版は六話の途中辺りまでになりますが、それまでも加筆がありますので、良ければ冒頭からお読みください。 ※爵位に関して作品獨自のものがあります。ご都合主義もありますのでゆるい気持ちでご覧ください。 ザマァありますが、基本は甘々だったりほのぼのです。 ★レーベル様や発売日に関しては開示許可がで次第ご報告させていただきます。
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