《比翼の鳥》第98話 月下の語らい 至

ルナが突きつけている槍の様なは、パッと見たじ、木の枝が寄り集まったような杖に近いだった。

見た目だけなら、古ぼけた木の棒である。毆ったらバッキリと折れそうなほど、頼りない。

だが、見た目に反して、その槍から迸る存在と魔力は、俺の生存本能を刺激するのに十分なである。

つまり、かなりヤバいなんだろう。

あの槍を目にした瞬間から、俺の心臓が早鐘の様に鳴り響いているのが、何よりの証拠だ。

だが、と本能は、全力で逃げろと告げている一方で、俺の頭は妙に冷靜だった。いや、正直に言えば、冷え切っていた。

ルナは言った。

が醜い心をけ止められないから、辛いと。

そこには、俺の心の底にある、あの黒く渦巻いたが影響している事は、想像に難くない。

その點に関しては、本當に申し訳ないと俺は素直に思う。

そんなものを一端でも、知らないに、彼へと押し付けてしまった事は、本當に辛いし、土下座したい位だ。

……だけどね。それは、それ。

そんな事を理由にした、彼に、俺は正直、怒っていた。

吐くなら、もうしまともな噓を吐くんだな。ルナさんよ。

そんな俺の心のきをとらえたのだろう。ルナは、ピクリと手を震わせる。

ほら、ダダれだよ。っていうか、そもそも、その程度の事で、ルナが別れようとか言う訳が無い。

賭けても良い。絶対に、この世界が滅びても、無い。

今まで、どれだけ近くで、彼の事を見て來たと思っているんだ。

そんな下らない事で、大事な事を黙って決めてしまうほど、彼は馬鹿じゃない。

ルナは、自分の事はいつも後回しにしてしまうような、心の優しい子だ。

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勿論、に振り回されて暴走する事もあるけど、それだって、彼らしさでもある。

そんな彼が、自分の事で、ましてや、人を傷つける様な言葉をわざわざ使ってまで、俺に唐突に別れを切り出した。

明らかに不自然すぎる。

と言う事は、だ。

こんな事をしでかしている、本當の理由。

それは、恐らくは、俺自に関わる事だ。

ほら、また、揺した。

一瞬、彼が突きつけた槍が震えるのを、俺は見過ごさない。

しかも、それは、俺が凄く傷つく事だから、あえて、彼が俺の傷を淺くするために、そうしている、と考えられる。

ルナは不用だからな。そういう所は、変に自分で抱え込もうとするし。

さて、そうすると、俺が最も嫌で、困る事が、この別れ話っぽい何かの原因と言う事に……。

『もう! ツバサの、そういう妙に勘が鋭い所、嫌い!!』

そう推察していたら、なんだか、変な刺激をしてしまったらしく、ルナが槍を突き出してきた。

一瞬、防壁でけ止めようとして、俺は咄嗟に、強化からの回避に切り替える。

數瞬前に俺のいた場所を、槍が突き抜け、空間にが開いたかのように、衝撃が起こる。

あ、あぶねぇ!?

防壁とか、無かったかのように吹き散らされたぞ!?

あのまま防壁でけようとしたら、そのまま終わっていたかもしれない。

厄介だな、あの槍。

見るとルナが若干涙目で、俺を睨んでいた。

いやいや、そんな怖い顔しなさんな。どう見ても、両敗でしょうよ、これ。

そこまで追い詰められていると、気が付けなかった俺も悪いが、相談しないルナも悪い!

そんな俺の心の聲に応える事無く、ルナは、先程とは段違いのスピードで、槍を突きれにかかる。

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「ちょ、こら、待て。」

『待たない! 早く突かれて、別れて!』

「意味わからんわ!!」

『い、い、か、ら、さっさと……この、槍に、刺されて!』

「嫌だ! お斷りだ!」

ルナは目にも止まらぬ速さで槍を突き出すも、俺にはかすりもしない。

そりゃそうだ。俺だって必死だ。全力で、拒否させていただく。

そもそも、俺は納得していない。俺が嫌いになったとかなら、そう言えば良い。

けど、このまま宙ぶらりんな気持ちのまま、突然、そんな事言われても、納得できるか!

の気持ちは移ろいやすく、一度、駄目と認定されたら、一瞬で、拒絶が勝り、け付けられなくなる言う話もあると知っているが、今回の事は、それっぽくない。

元々、隠蔽の為に、貯蔵へと回していた魔力の全てを、俺は強化と知覚強化、更には思考加速へと回す。

結果、俺は反則的な未來予測と、運能を手にれていた。

ルナの視線が、腕の角度が、次の攻撃位置を教えてくれる。俺はその線上から、をどかせば良い。

薙ぎ払われれば、またし難しい局面ではあっただろうが、どうやら突き刺すと言う直線的な攻撃しかできないであろう木の槍は、俺には絶対に當たらない。

それは、ルナも解っているようだったが、元々、強化が得意ではないルナは、知覚能力こそ、俺に拮抗していたものの、明らかに、が追い付いていなかった。の反応がワンテンポずれる事で、俺に槍を突き刺す事が出來ない。

そんな狀況が理解できてしまったのだろう。ルナは半分泣きながら、聲を上げる。

『もう! 當たって! 刺されてよ!!』

「嫌だよ!? 理由も解らず、痛そうな事が出來る程、俺は変態じゃない!」

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一瞬、脳裏に変態ライトさんだったら、喜々としてけるだろうと、どうでも良い事が過る。

『なんで、解って、くれないの! このままじゃ、ツバサが!』

「俺が、何よ!」

『ツバサじゃ、無くなっちゃうんだもん! そんなの、嫌だよ!』

その瞬間、俺はルナが槍を持つ両腕を抱え込むように押さえた。

元を抑えてしまえば、槍は振るえない。

「漸く、本音が出た。全く……。」

俺は、ほぼルナを抱きしめる様な形のまま、俺は耳元でそう囁く。

その瞬間、ルナは槍を手放し、泣きながらただ力無く、俺に頭突きをするかのように、頭をにぶつけてくる。

ルナの手を離れた木の槍が、乾いた音を立て転がる中、ルナの鳴き聲が、赤い夜空に吸い込まれて行くのだった。

『ツバサとルナの心は、今、混ざり合って、無意識化の部分で均一化されているの。だから、ツバサの記憶とか、考えている事とか、ルナには伝わっているの。』

頭突きしながら泣いていたルナだったが、暫くしたら落ち著いたのだろう。し不貞腐れたように口を尖らせながらも、俺の腕の中でそう切り出したルナの言葉は、ある意味衝撃ではあった。

だが、予想通りの結果だったので、俺はそのまま頷いて聞き役に徹する。

ふと、視界の端に映ったカウントダウンは、殘り103だった。

『だから、今の時點でも、記憶とか経験は、無意識の範囲でルナとツバサで共有しているの。』

ふむ、そうなのか。だが、これと言って、表立って俺はルナからけていると思われる変化を、自覚できていない。

つまり、ルナに一方的に、俺の記憶と経験が吸い出されているのではないのか?

そんな俺の疑問に、ルナは首を振る。

『そうじゃないの。ツバサ、最近、自分でも変だと思ったことはない?』

そう言われて、最近、ちょっと気分が前向きな気がすると思い當たる。

何というか、気が大きくなっていると言うか。

実際、何となく、口調が若い頃に戻っているじすらける。

そんな俺の思いをじ取ったのだろう。ルナは頷くと、悲しそうに言葉を紡ぐ。

『それは、私じゃなくて、ある事が関係しているの。ねぇ、ツバサ。冒険者ギルドで、ディーネちゃんとツバサが話していた時、何か変なじはしなかった?』

ああ、確かに。ディーネちゃんと話していた最中に、妙に心の中がすっきりとしたのは、よく覚えている。

あの覚は、一種の、喪失をともいえるかもしれない。

え? まさか、あれは……。

『そう。あれは、コティの仕業なの。ツバサがなかなか私をれないから、あるを強制的に消し去ったって言ってた……。』

おいおい、そりゃ幾ら何でも、暴すぎるだろ。

って、ある? 何を消したんだ? コティさんは。

『コティが言うには、それは……不安だって言ってた。特に、人との関係に付くを中心に、消したらしいの。本當に、ごめんなさい。』

おいおい、なんつう、大層なを消し去ってくれたんだ。あのポンコツは。

不安って言うのは、一種の抑止力なんだぞ? 一歩立ち止まり、先を考えるからこそ見えてくることもある訳で。

確かに、俺は怖がりで慎重な方だから、見ていてもどかしいのは分かるけどさ……。

つまり、こうか?

俺がヘタレて、なかなかルナに心を開かないし、行を起こさないから、不安を消した。

結果、俺の行が全的に前向きになり、思慮が淺い分、暴走気味になったと?

ああ、不安が無ければ、未來予測も曖昧になる。

あらゆる事に対して、気負いなく行できるようになるのも當然だ。

うーん、心が若返ったと思えばいいのか、未になったと思うのが良いのか……難しい所ではある。

そうすると、待てよ? もしかして、あの時の事も、コティさんの件に関係しているのか?

俺は、気になっていた、竜との戦いの時の違和を思い出す。

あの自分が分離した様な、強烈な違和は、忘れようとしても忘れられない。あの時、俺は確かに、おかしかった。

今までの俺だったら、確実に躊躇する部分だっただろう。

だが、俺は竜を殺そうとした事を、今なお、何とも思っていない。

『そう。本來のツバサなら、絶対に竜を助けようとしたはず。だけど、実際は、躊躇なく殺そうとした。そうでしょ? それは、私の影響をけた結果なの。』

「ルナの影響? そうなのか?」

俺の言葉をけて、ルナはし俯きながら、弱々しく頷く。

『ツバサに教えられて、私は、命を奪う事が、いけない事って知っているよ? けどね、経験はツバサから引き継いだだけだから、忌避が薄いの。元々、そう言う覚も無いし。だから、そんな私の影響をけて、今度は、ツバサの忌避が薄まっているの。』

「あー……。なるほどね。そういう事か。」

つまり、ルナがあまり命のやり取りを悪い事だと捉えていないから、結果として俺の経験が希釈されて、俺の忌避が薄まっている。

確かに俺は、ルナに命の大切さは教えている。森では無駄な殺生が、どんな事に繋がるか、嫌と言うほど理解させた。

だが、それだけだ。知識として、命をむやみに奪う事は良しとしないのは、解っているだろう。

だけど、こちらの世界の考えは、弱強食だもんな。

それは、ルナがこの世界を生きてに著けて來た経験であり、摂理だから。

俺以外の皆も、基本的には、手の屆く範囲以外は、案外、どうでも良いと思っている節が、今までの行からじられる。

必要以上に命に固執するのは俺だけだ。それは、ルナも例外ではない。

だから、結果として、ルナの経験に影響され、命を奪う事に対する忌避が薄れていっているのだろう。

大事おおごとだな。こりゃ。うん、大事なんだけど……別に良いかなと思ってしまう。

と、橫柄に構えていられるのも、不安が抑制されているせいだろうな。

そう考えると、今の俺は、確実に、前の俺とは別の存在と言える。

こうして冷靜に考えると、立派に狂っているな。參ったね。

俺がそんな風に、考えている様子を見たルナは、涙腺を決壊させ、徐に口を開いた。

『私は、ツバサが変わってしまうのが怖いの。優しいツバサでいてしい。だから、比翼の接続を切りたかった。』

頭を振り、涙に濡れた顔を隠しもせず、ルナはその口を開き続ける。

『それに、さっきいった事も、本當の事なの。私もツバサに影響をけているから。記憶も見たよ? あんなひどい世界の事。そして、こんなひどい世界の事。全部、考えて考えて……それでもツバサみたいに、暖かくは考えられないの。』

それは、慟哭。俺と同じにはなれない。そして、俺を壊してしまう。自分のせいで。

そうした負のがないぜになった、懺悔にも似た告白。

『だから、私、遠からず、この世界を壊してしまいたくなると思うの。』

それは、彼なりの誠意だったのだろう。

け止め方では、どうしても、許せない世界。どちらの世界も、そう映った。

ならば、彼ならやるだろう。それは、俺のせいなのかもしれない。

は俺の姿を通して、彼の醜さを見る。

俺が壊れていくさまを見て、自分の愚かさを知る。

……そうか。それは、きついよな。

だが……だったら、話は簡単だ。

「じゃ、滅ぼそうか。」

俺のそんな言葉をけて、ルナは信じられないを見るように、俺を見上げて來た。

実際、心もそんなじの意識を伝えてくる。

割と失禮だぞ、それ。

『ツバサ、何言ってるか解ってるの? 世界を滅ぼすんだよ?』

「うん。」

『きっと數えきれない程の、人族が泣くよ? それだけじゃない。きっと、そんなことしたら、例え違う世界でも、元の世界のご家族や友人達が、悲しむよ?』

「ああ、母親辺りは、泣きびそうだね。……妹には、ボコボコにされそうだ。ああ、柴田と鈴木君は……案外、協力してくれるかもしれん。」

春香にボコボコにされる狀況が浮かび、次いで、親友達が喜々として、策謀を巡らせる姿を想像して、割と本気でげんなりとする。

『ツバサ……ついに壊れちゃったの?』

「酷いな。勿論、率先してそんな事はしたくないよ? けど、それでも、そうなってしまったなら……俺は、ルナといる方を取るよ。こんな、世界とか知るか。」

そう。俺が一番大事にしたい事。それはルナと共に歩む事。

それが、例えルナの影響をけ、言わされているとしても。

その事によって、彼が、俺の言葉を信じられないとしても、俺は、何度でも伝える。

なくとも、半分は俺の心だ。これは譲らないし、譲らせない。

俺は、ルナと共にいたい。ルナと一緒に、この世界を見たい。

その為なら、世界を敵に回しても良い。それは、俺の覚悟であり、意思だ。

『ず、ずるいよ……そんなこと言われたら……私……。』

俺の心の聲を聞き、本気をじ取ったのだろう。涙を流し、俺を見上げ、見つめるルナ。

『わ、私だって……ツバサと……ずっと……。』

涙を流しながら、俺を見つめ……目を見開いた彼は、咄嗟に腕をばす。

……次の瞬間、俺は、突き飛ばされ……。

え?

まるでスローモーションのように、ルナのから何かが飛び出す。

それは、木の槍。先程、俺にルナが向けていた槍が……に……なんで?

「いやいや、世界を滅ぼされると、困るんですよね。」

誰だ!? そう思った瞬間、襲い來る激痛。そして、響くルナのび聲。

それも、途切れ、何か心の中からごっそりと引きはがされたような、強烈な激痛がの中で発した。

視界が赤く染まる。息が苦しい。ぐ、だが、こんな痛み! あの時程ではない! それよりも、ルナだ!!

「っと、こんなじで、宜しいですかね?」

見ると、苦しむルナのには、先程の木の槍が突き刺さっていた。それを足で更に踏みれる男。響くルナの悲鳴。

お前……。

おまえ……おまえぇええ!!?

「ルナに何してやがる!?」

暴発した魔力が、そのまま兇となって男に向かう。

それを軽いステップで避ける男。

「おやおや、怖いですね。」

そう軽くほざく男を無視し、俺はルナへと駆け寄る。

咄嗟に、ルナを抱えようとして、次の瞬間、何かの力場に弾かれ、俺の指が吹き飛んだ。

っ!?

何だ、これ!

俺の人差し指、中指と薬指が無くなった。激痛が走るも、今は、そんな事、どうでも良い。ルナは!?

焦って見ると、ルナのを貫通した木の槍から、更に枝がびるように、ルナのを突き刺し始める。

くそ!? 何だよこれ! 今、外すからな!

俺は、魔力を全開にして、槍へと手をばすが、槍から障壁が発生しているようで、それ以上先に手がばせない。

青い障壁が頑なに俺の手がルナへと近づく事を拒む。

すぐ目の前には、涙を流し、を押さえて苦しむルナの姿が見えているのに、手が屆かない。

「ちぃ! 待ってろ、今助けるからな!!」

そうぶも、このままじゃ駄目だ。魔力が足りない。この強固な障壁を破るにはもっと、多くの魔力が必要だ。

俺は、躊躇なく、封印を解きにかかる。被害の事は、今は良い。最悪、皆に任せる。

「リミット:【ストア】 リリース!」

瞬間、隠蔽用の魔法が一つ、消える。一部の魔力を、俺とルナの足元を支えている屋上に流し、強化に回した。

最悪、これで魔力余波による崩壊は無いはずだ。

そうして、今までこの魔法により吸収され、ファミリアに流し込まれていた魔力をそのまま使い、更に障壁を破りにかかる。

激しく青い電をまき散らし、俺の手を頑としてれない障壁。

駄目だ……まだ、足りない! くそ!!

見ると、ルナのがどんどん、槍に侵食されていく。

もう、時間が無い。俺は瞬時に決斷した。

「パージ:【リストリクション】 オール!」

その瞬間、俺の目の前に、浮かび上がる文字。

同時に、魔法陣を展開。足元を強化し、余波による崩落を防ぐ。

『全ての封印を本當に解きますか? 《はい》 《いいえ》 』

 

俺は苛立ちながら、《はい》を押す。

『これが最後です。本當に宜しいですか? 《はい》 《いいえ》 』

再度立ち上がる警告を見て、俺は暴に《はい》を選択した。

その瞬間、大気が鳴する。隣の石造りの家屋が揺れ、それは徐々に悲鳴を伴って、伝播していく。

そんな様子を後ろで見ていたらしい男が、

「おお、素晴らしい。何と言う魔力だ。」

と言ったようだが、俺はそんな事を気にしている余裕はなかった。

「父上!?」「お父様!?」

背後から、我が子達の聲が聞こえたが、俺は魔力を制するのに必死で、答える余裕が無い。

今は、この障壁を破って……それから後の事を考える!

全魔力を腕に集中させ、俺はルナとの間に立ちはだかる障壁を破りにかかった。

激しく黒と青のが混じり合いながら、それでも、しずつ、俺の手はルナへと近づいていく。

あと、し……。もう、ちょい!

そして、ジリジリと障壁を押し込めて行き……ついに、ルナの腕に手が屆く。

屆いた! あとは、この槍を、ぶっ壊す……!

ふと、その瞬間、ルナが俺を見つめた。

苦しいのだろう。涙を流しながら、それでも俺の方へと揺れる視線を投げかけてくる。

「待ってろ! もうしで助けるからな!」

俺がそうんだ瞬間、ルナは、涙を流しながら、口をかした。

……なんで? 何で今、そんな事を言うんだ。

「くそ! 諦めるなよ! 絶対……」

そう俺がぶと……ルナは、靜かに微笑んだ。

その笑みは、今まで見た事も無いほど、き通ったで、その目は何かを悟っている事をじさせた。

それは嫌な予を伴って、俺に、とある一つのイメージを抱かせる。

嫌だ……やめてくれ! 俺はまだ、君に何も、全然……!?

ルナのり始める。ルナは寂しそうに、それでも微笑んで、口をかした。

「駄目だ! だめだぁああああああ!」

俺がそうんだ瞬間……発した。

失われる手の中の

その瞬間悟った。ルナは、の粒子となって、消滅した。

最後に、『ごめんね。』と、言い殘して……彼は、この世から消え去ったのだった。

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