《比翼の鳥》第40話 マチェット王國(9)

俺は、なおも斷続的に炎の槍フレイムランスを打ち込み続ける。

一度に生できるのは、々10本程度だが、それがコンマ數秒の間隔で発できれば何とかなるものだ。

知覚強化された俺の世界の中でなら、そんな神がかった事も可能となる。

勿論、それ相応の魔力は消費してしまうが、背に腹は代えられない。

まるでマシンガンの様に、全方位にバラまかれた炎の槍フレイムランスは、瞬く間に周辺の魔達を、焼き盡くした。

に飛びかかられる景を目の當たりにし、反的に頭を抱えしゃがみ込んでしまったお姫様だったが、何時まで経っても、攻撃が來ない事を不思議に思ったのだろう。

「えっ? ……ぇ?」

恐る恐る顔を上げた彼が見た景。それは、周囲數百メートルにわたり焼け焦げた大地だった。

その奧から遠巻きに魔達が、こちらの様子を伺っている。

ふう。しかし、炎の槍フレイムランスは、思った以上に燃費が良いな。

なんせ、魔力1の消費で1匹以上倒せているし。もうし苦戦するかと覚悟もしていたのだが、思った以上に魔法の通りが良い。

ビビに【ライトニング】を撃った時にもじていたが、こちらの想定以上に俺の魔法が効いているがある。

もしかしたら、俺の魔力を取り込んだから、何か相乗効果が起きているのかもしれない。

しかも魔は倒した端から魔力に戻るため、魔力も取り込めるし、消耗も無く戦う事ができる。

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俺は、魔力を転させながら、周囲の魔を屠った事で発生した魔力をかき集める。

結果として、先程、ビビの砲撃で消費した分を、補ってなお余りある量の魔力が確保できた。

ふむ。このペースなら、もうしで、もしかしたら屆くかもしれないな。

そんな風に考えていると、魔達がじわじわと、その包囲網を狹めて來た。

それを見て、我に返ったのか、慌てて弾倉に何かを裝填し始めるお姫様。

チラリと盜み見れば、それは俺も見た事がある、元の世界の弾丸の様な形をしているだった。

それを一つ一つ、弾倉に手で籠めていくお姫様。

だが、勿論、そんな隙を見逃すはずも無く、先程と同じ様に、一斉に飛びかかって來る魔達。

「っ!?」

聲も出せず、避ける事も出來ず、直するだけで何の対応も出來ない彼を見ながら、俺は再度、力ある言葉を世に解き放つ。

「あういけ、うぇうあ~うフレイムランス」

先程と同じ様に、一瞬にして何百と言う魔が、炎の槍フレイムランスに貫かれ、魔力に帰った。

打ち出される1つの槍は、々、長さ1m程で直徑は數センチもない細いだ。

だが、それは飛びかかって來た魔達を引き裂き、その威力を殺すことなく、後列の魔達をも容易たやすく貫通し、地面へと突き刺さり炎を上げる。

それが、360度、微妙に上下左右の角度を変えながら、スプリンクラーで水を撒くような気やすさで、斷続的に発されていくのだ。

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俺らの直上から見れば、それは綺麗な炎の大が咲いている様子が見て取れただろう。

「これは、なん、なの?」

ふと、呟きれたお姫様の聲が、またも焦土と化した大地に溶ける。

まぁ、そう言いたくなる気持ちは分からないでもない。

この世界に來てから魔法に関しては常に最適化を続けている俺が、この魔力をロクに生み出せないになって到達した一つの形が、この魔法なのだから。

魔力の消費は極小、だけど効果は最大限に。それを追求したらこうなった。

勿論、魔法陣は論外だ。あれは、魔力を食い過ぎる。

ぶっちゃけ、今持っている魔力をすべて使っても、魔法陣を構築できるかは怪しい。

こうなった今なら、皆の気持ちがよく分かる。

その位、あの魔法発方法は、規格外だったのだ。あれは、無盡蔵の魔力があった俺だったからこそ出來た、一種の反則技である。

まぁ、ただ、今のお姫様の反応を見るに、やはり、この魔法はこの魔法で、規格外なのかもしれない。

だって、今の俺からしても、何なのって言われても、魔法としか言いようが無いからなぁ。

それに、俺から言わせれば、お姫様の使っている小手の様なの方が、気になる。

原理が全くわからない。恐らく、魔法陣の様なを、もっと小規模で発生させる機構が存在するのだと思う。

だが、そうにしても、魔力の消費が、俺の知っている魔法陣と比べても、著しく低い。

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弾丸の様なに込められた魔力は、せいぜい、數千程度。それでは、魔法陣は逆立ちしても発できないはず。

何か、きっと特殊なか、方法があるに違いないのだが……。

そう心で獨り言をつぶやきつつ、俺は周囲の魔力をかき集め、更に充填する。

集まってくる魔力のは中々のものだ。

地道に數日間、集め続けていた魔力に相當する量が、今の戦闘で集まった。

この調子なら、この群れを全滅させれば、もしかしたら、足りるかもしれない。

先程と同じ様に、また単純に特攻してきてくれれば、悪くない効率で魔力を収集できるのだが、如何せん、流石に、魔側も警戒しているらしく、今度は闇雲に包囲を狹めて來る事は無かった。

そう言えば、そろそろリリーが合流しそうな時間なのだが。彼は、何処かな?

何気なく彼の向かった渓谷の方に【サーチ】を飛ばすと、どうやら、戦闘中の様だ。

こちらに集まった程では無いにせよ、數百匹の魔の群れに囲まれていた……が、たった今、大部分が消失した。

何ともまぁ、無茶苦茶なである。

せっかくなので、魔力の転を上げ、渓谷で発生した魔力もこちらに引き寄せておく。

時間はかかるだろうが、回収できるだろう。

まぁ、彼の足ならば、あそこから2~3分もあれば、こちらに到著するはずだ。

達が様子見で時間を引き延ばしてくれるのであれば、こちらも、それに乗ればいい。

リリーと合流できれば、より安全に戦う事も可能だし。

しかし、そんな俺の思を知る由も無いお姫様が、何やらブツブツ言いながら、構える。

「魔王だとは知ってたけど、ここまでなんて……。いえ、私だって、まだまだ……」

そんなお姫様の言葉に、非常に嫌な予を覚えた俺が、口を開く前に、彼は行を起こした。

「私だって、戦える!!」

そのまま、折角様子見をしていてくれた魔の群れに、わざわざ突っ込んで行くお姫様。

こらぁ!! どんだけ、戦いたがってんのよ!?

待ってれば、その、リリーと合流できるのに!?

「たぁ!!」

の突きと共に、発が起こる。そして響く金屬音。

観察していて気がついたが、どうやら、この金屬音は、リロードの音の様だな。

「まだまだぁ!!」

更に発が視界を覆う。響く金屬音。

先程盜み見たじでは、彼の手首に巻き付いている弾倉は、恐らく8。

つまり、8発し・か・魔法を発できないのだろう。

「私だって、リリーに!!」

今度は魔法が発する前に、金屬音が數回鳴る。

そして、今迄に無い規模での発が、目の前に起こる。

それは、まるで群れを割る様に駆け抜け、彼の直線狀の魔を一掃した。

ほう、これは面白い。なるほどね。弾薬を多く消費する事で、威力の嵩かさ増しも可能と。

中々に面白い道だ。

だが、こういう狀況での運用は、かなり厳しいと思う。

消耗戦や持久戦においては、弾薬換のリスクは、無視できるものではない。

ましてや、今回の敵に関して、彼の攻撃方法が、いささか効率が悪いように思える。

この彼が放つ発は、基本的に球形にその力が発生する様だ。

しかし、今回の敵は全て地上戦力なのだ。

敵に攻撃を當てた場合、その威力の半分以上は地面と虛空へ……敵のいない所へと流れてしまう。つまりは、無駄になる。

もし、有効に使うなら、上から風を叩きつけた方が、まだマシだろう。

しかし、彼は、橫向きに発を起こしているため、その殆どの威力が無駄に拡散してしまっている。

一緒に散弾でも打ち出せるなら、全然違うんだろうけどなぁ。

そこまで考えて気がついた。

あ、そうか。こっちでサポートすればいいのか。

「認めて、貰うんだから!!」

びと攻撃で発が起きる場所は、必ず魔力が一瞬、凝する。

その場所を確認すると同時に、【石の弾丸ストーンバレット】を魔の群れ方向に発

発が起きると、俺の魔法で現出した石の飛礫つぶてが、一気に推進力を得て、魔達に牙をむく。

そして、響く金屬音。

先程までは風に巻き込まれた數が消し飛ぶ程度だったが、今回は、扇形に數十がそのに小さなを開け、魔力に帰る。

しかし、俺が思っていた程の威力は出なかった。やっぱり、打ち出すのが小石だと、強度の問題で駄目らしい。

風に負けてかなりの數が、細かい礫となってしまって、期待通りの威力を発揮できなかったようだ。

「あ、あれ?」

だが、當のお姫様は、最後の攻撃が明らかに今までと違った威力だった事が不思議だったようで、首を捻りながら、小手をしきりに確認していた。

いや、だから、そう言う事は、ひと段落著いてからやってしかった……。

勿論、今はまたもや、魔の群れのど真ん中であり、どうもこのお姫様、んな意味で周りが見えてないと言うか。

案の定、好機とばかりに背後……つまり、俺へと飛び込んでくる魔達。

もう、面倒なので、再度、炎の槍フレイムランスで、周りを焼き払う。

今度はし遠くまで狙ってみたが、流石に度が落ちるらしく、遠くの方は殲滅せんめつとまでは行かなかった。

音で、お姫様も我に返ったようだが、時すでに遅く、またもや數百メートルに渡る、緩衝地帯が出來た後だった。

呆然とするお姫様を他所に、俺は、しれっと、魔力を回収し、充填する。

お姫様は、首を傾げながらも、またも弾薬を充填していく。

しかし、この武、あれだな。使い勝手が悪いな。

せめて、裝填の手間が無くせれば、大分、化けると思うんだが。

そんなどうでも良い事を考えていると、【サーチ】に目を引く反応が飛び込んできた。

街の方からこちらに向かってくるその反応は、常人とは一線を畫す魔力量を示している。

そして、それ以上にこの反応、俺はつい最近にも見たことがある……。

あれ、何でこっちにくるんだ? え? まさか。

凄く嫌な予がしたと同時に、今度はその反応を塗りつぶすかのような強大な魔力反応が、一瞬、捉えられたかと思うと……。

「ツバサ様! お怪我はございませんか!?」

もう目の前に降ってきた。

文字通り、それはもう、気持ち良い位、空・か・ら・、砲弾宜しく突っ込んできたのだ。

そして、その結果、ド派手に周りの魔を木っ端微塵に吹き飛ばし、どでかいクレーターをこさえる、金の獣人。

魔力が全から噴出し、金のオーラに包まれているように見える。

獣人の証である、耳や尾もが逆立ち、天へとなびくように揺れていた。

俺がいた時は、まだセーブしていたようだが、全力を出すとこうなるか。

だが、その出で立ちが、あれですよ。どこからどう見ても、スーパー何とか人です……。

しかも、あれだね。ちょっと派手な登場過ぎませんかねぇ?

ほら、お姫様、呆然としているから。

、頑張ったんだよ?

數匹ずつだけど、一生懸命ぶん毆るように倒していったんだよ。

それを、登場一発目で、あっさりとほぼ、半數を消し飛ばすって……。まぁ、楽だから良いんだが。

「り、リリー……相変わらず、貴……」

呆然としながらも、どうやらお姫様も慣れているようで、すぐに言葉を発する。

「ああ、良かった。リザも無事でしたか」

リリーのその一言を聞いて、お姫様がムッとしたようだったので、思わず俺は肩を優しく叩いて、落ち著けと意思表示をしてしまった。

だが、その行がかえって彼の気を逆なでしてしまったようだ。

「気安くらないでくださる!?」

若干、言い回しはらかかったものの、やっぱり蟲の居所が悪い。

やはり、お姫様より、俺の様を優先してしまうリリーの様子が、腹に據えかねるようだ。

リリーにも、何回か言い含めているのだが、あまり効果がない。彼はなぁ……信念に関しては、そう簡単に曲がらんからなぁ。

徐々に、折り合いをつけていくしか無いんだろうなと、長期戦で行くことに決めている。

そんなお姫様の癇癪も、察する所があったのだろう。

俺が、手でストップの合図を送ったことも、功を奏したのか、リリーが口を開くことはなかった。

なんか、あれだ。俺って、文字通りの板挾みである。むしろ、三角関係の修羅場が適當な表現なのか?

疲れる……。

そんなアホな事を考えているに、先程の、街から來たであろう反応が、直ぐ側まで來ていた。

あ、しまった。リリーの登場ですっかり忘れてた。

どうやら、その存在は、丁度、俺達から死角となる小高い巖場に到著したらしく、裏でゴソゴソやっている。

また、都合の良い場所があったもんだな。

リリーがし安心した様子でこちらにゆっくりと歩み寄り……そして、何かに気づいたように耳をピクピクと震わせながら、怪訝な表を浮かべた。

あ、この様子だと、リリーは、まだ気づいてなかったんだな。

そして、小高い巖場に視線を向けると、彼にしては珍しく、表が一気に嫌悪も顕あらわなに変わった。

同時に彼は魔力の噴出を抑え、完全にいつもの姿になるが、もう遅いと思うぞ。

そんなリリーの不思議な行に釣られるように、お姫様も巖場へと視線を向け、何もないことを確認すると、首をかしげる。

俺は、お姫様の肩越しに、これから起こることをちょっと期待しながら、様子をうかがう。

「ツバサ様、早くこの場を……」

リリーがちょっと焦ったように、口を開いた次の瞬間。

小高い巖場に、突如発が起こり、聞き覚えのある曲が流れて來た。

思わず天を仰ぐように立ちすくむリリー。

こんな彼の姿を、俺は今まで見たことがなかった。

どうやら、それはお姫様も同じだったようで、困した表を浮かべている。

そんな微妙な雰囲気をもたらした元兇が、高らかに聲を上げる。

「この私がいる限り、悪の栄えた試し無し!!! フィジカルレッド、ただいま參上!!」

その名乗りとともに再度、激しく上がる発を見ながら、俺はいらっしゃい、ヒーローさんと心で呟くのだった。

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