《どうやら勇者は(真祖)になった様です。》4話 0-4 力試し③
────イメージしろ、宇宙を、神を、人間のの神を。
───イメージしろ、自分の中からだじゅうに張り巡らされた覚神経、それを電流の様に流れる“痛み”の信號を。
……それを、消す。 いや、一時的なモノでなく連続的、持続的に──いや、非効率だ。
……そうだ、傷を治そう。その方が早い。
腹を見下ろし、細胞一つ一つに命令を──魔法を下す。
細胞の中の核の中の染の中のDNA《デオキシリボ核酸》に働き掛け、細胞分裂を促し、繰り返す。
細胞がミミズの様に蠢き、元來あったカタチに戻ろうとくっついたり離れたり……。
その際、かなりの痛みが発生するが、一時的に神経をシャットアウトする事で対処する。
そうして服を捲って確認すれば、殆ど傷は塞がっていた。
……さて、こちらをまるで化を見たかの様にガン見してくるクライアを一瞥いちべつし、再度イメージを始める。
初めての攻撃魔法だ。定番の炎か………それとも廚二宜しく氷、もしくは雷……そうだ、何も自然現象じゃなくて良いんだ。例えばそう──。
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「……んなっ!?」
クライアの顔が、恐怖と驚きに染まる。
その目に映るのは、剣。
……特に魔剣だとか、伝説の剣等では決してない、ただの剣である。
……では聖騎士団一番隊副隊長、この國で1位2位を爭う槍の使い手が、恐怖でけなくなる理由とは。
────それは、數だ。
そう、勝人の周りに浮かぶのは  何百──もしかしたら何千にも達するまでの、夥おびただしい程の數の剣。
それ等の切っ先は、すべて・ ・ ・クライアの方へ向けられていたのだ。
「そ……そんな、これだけの數の武を召喚? ……いいえ、違う」
それを見て、ブツブツと呟いていたミランナは、何かに気付いた様にハッと顔を上げた。
「まさか……“創造”したとでもっ!? ありえません!」
魔法使いの多くは、自然現象────火や水、風等の発現を発させ、その方向を指示し作する。これが一般的な魔法である。
しかしそれだけでも大量の魔力を使用するし、狙い通りの現象を起こすのは至難の技だ。だからこそしでも魔力の消費を抑え、発し安くする為に魔法陣や定句詠唱を使う。
現に、かつ自然現象でない“召喚魔法”を使える者はない。
──しかし、この年はどうだろう。自然では起こり得ない現象、召喚とは違う、無から有を造り出す。魔法陣や詠唱を使わない。そして、それらを楽々と制する──どれか1つでも出來る様になれば文句無しの“一流魔法使い”。
……では、それらを全て・・・、同時に・・・・、1人・・・で行ったこの年は、いったい──?
そして、それらが自分を殺す為だけに造られるのを見ていた者──つまりはクライア。
そのクライアは何を思うか……。
クライアは、死を覚悟……いや、どちらかと言うと無理矢理に理解させられ、死の剎那、走馬燈さえ視ていたかも知れない。
──だからか、自分に掛けられるその聲に、クライアはなかなか気付く事ができなかった。
「────おい、聞いてんのかオッサン! もう一回訊くけど、降參する気とか無いのかっ?」
そしてようやく正気に戻ったのか、慌てて何度も頷くクライアであった。
「腹の傷は大丈夫か?」
「腹? ……あぁ、あれか」
──その後、強さを十分証明したと言う事で試合を終え、この城(教會)の客室で休んでいる所にクライアが訪ねて來たのだ。
勝人自は、魔法であっさり治してしまったため、忘れていたのである。
「特に何ともない……ってオイコラッ!?」
平気だと言っているのに、クライアは勝人の服をめくる。
(やめろ、俺にソッチの趣味はねぇっ!?)
「これは……」
「な、なんだよ……」
しかしクライアの顔は真剣そのもので、決して腐った趣味では無いらしく、何か理由があるらしい。
「おい年、お前まさか 治癒魔法……“魔法”の使い手なのか?」
「魔法?」
もしかして魔法って屬あるのか? そう聴くとの、クライアは頷いた。
「火・水・風・土・無・・闇の7屬あるが……どうやらその様子だと知らないみたいだな」
「あぁ、……そもそも“魔法”自使ったのも、さっきが初めてだったし」
「はぁっ!? 初めてで あんな魔法使ったって言うのか?! 有り得ねぇ!!」
(ありえないって言われてもなぁ……『日記に書いてあった通りやっただけ』何だけど、魔法については わざわざ翻訳OFFで書かれて、こっちの人達に知られたら駄目そうだったし……)
「オッサン、あれだよ……覚醒って言うの?眠ってたーとか 封印されてたーって言う力が開放されたってじ?」
「いや、確かにそう言う事は起こり得るが……けど流石にアノ魔法は──」
クライアの脳裏に浮かぶのは、つい先程 自分を絶の淵へ追いやった 無數の剣。
あれを“覚醒”の一言で済ませられる程、魔法は簡単なでは無い。
「……にしても、年は呑気だなぁ」
ヘラヘラしている勝人を見て、毒気を抜かれたらしいクライアは、呆れた顔で本題にった。
「──そうだ、ミランナ様に、こいつを年に渡せと言われてな」
と言って 手渡されたのは、勇者の日記。
それを見て、何故か不安そうな表をする勝人。
どうした? とクライア聞けく、勝人はボリボリと頭を掻いて答えた。
「これって、俺がけ取って良いなのかよ……」
あぁ……っと、クライアは何かに気付いた様に頷く。
「國寶とまでは言えないが書、國王も気軽に読むことが許されない本だ。
まぁ、最後に勇者が現れたら渡せってあるから遠慮なく持ってけ。……あ、いくら金に困っても、売るとかはなしだぜ?」
訳を話しても表の晴れない勝人にクライアが冗談っぽく言うと、ようやくそろそろと手をばした。
「……さて、これからしっかり頼むぜ? 2代目勇者様よ」
勝人は真剣な──それでいて明るい表でしっかりと頷いた。
「あぁ、しっかり頼まれたっ!」
──こうして、勇者カツヒトの冒険は始まったのだった。
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