《どうやら勇者は(真祖)になった様です。》13話 1-6 おでかけ②
「────♪」
ロザリーは今、この世に生をけてから一番の幸せを味わっていた。
右を向いても甘いモノ。左を向いて甘いモノ。もちろん腕に抱え込んだ山も甘いモノ。
実はリュックサックにもなる、お出かけ用クマさんの中にも甘いモノが詰まっていると言う徹底ぶり。
フラフラ~と甘い香りに導かれて店先に立てば、適當に金貨を出して替りに甘いモノを幾つかけ取る。そのの1つを早速食べ、一緒に手渡された紙に星五段階で評価をつけ、それを國の中央のポストにれる。
────かれこれ1時間程國を練り歩き、ふと気が付いた。
(────あれ? みんなは……?)
周りを見渡しても、父様の姿も、ディアの姿も、バラメスの姿も見當たらない。
(────みんな、迷子? …………ま、いいや)
迷子なのはロザリーの方なのだが、そんな事は気にも止めず、呑気のんきに歩き出す。
(さて、次はどこにしようか──)
───ぽふん
「あっ、ごめんねお嬢ちゃん」
Advertisement
右や左を見ながら歩き出したため、何やららかいモノに顔面bからぶつかってしまい、その際に両手に抱え込んでいた甘いモノを、地面にばらまいてしまったのだ。
ごめんね、大丈夫? と言うはロザリーに怪我が無いか確認したあと、しゃがんで散らばった甘いモノを拾い集め──わざわざ自分の持っていた袋にれ、ロザリーに渡そうとし────
「────サラ?」
「え?」
──元勇者パーティのエルフ サラは思わず耳を疑った。
「あなた……どこかで會ったことある? いえ、パレードの時に見てただけかしら……」
しい銀髪に煌めく朱のこのは、きっと一度見れば忘れられない程に印象的だ。
ならばむしろ、パレードの時等に一方的に顔を覚えられていたと考えた方が自然だ。
「えーと、あなたお名前は?」
「──ろざーりあ、れいじぇん」
「ロザーリア……稱はたぶん、ロザリーちゃんね?」
「──ん」
こくりと頷くロザリー。
「それで、ロザリーちゃんは誰と來たのかな?」
Advertisement
「んと──とうさまと、でぃあと、ばらめす」
「────え?」
虛をつかれた様な聲を出すサラ。
「──?」
「い、いえ……何でもないわ」
まさかね……と呟き、己の馬鹿な考えを振り払う。
──あの執事と同じ名前が出ただけで、このを彼等の仲間だと思ってしまった事を。
「ロザリーちゃんのお父さん達が探してるかも知れないから、一緒に探しましょう?
私は霊達の聲が聴けるから……たぶん直ぐに見つけられると思うわ」
「──ありが、とう?」
「えぇ、じゃあ──行きましょう?」
差し出された手を取り、ロザリーは歩き始めた。
……この時既に、語がき始めていたと知らずに。
~〜~~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜
「えぇい! まだロザリーは見付からんのかっ?!」
「申し訳ありません、見た、來た、と言う証言は多いのですが、その後どこへ行ったかまでは分からない様で……」
「うぅぬ、蝙蝠達も役に立たんし…………む?」
イライラとした様子だったヴラキアースは、何かをじたのかフッと顔を上げた。
「ご主人様、こっちにも居ませんでし…………って、どうしたんですか?」
そこに丁度戻って來たディアが、そんなヴラキアースを見て不思議そうに首を傾げた。
「──どうやら向こうから戻って來た様だな」
「えぇ、この魔力は──間違いありません。お嬢様のものです」
「はわぁ、よかったです~」
~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜
(──おかしい、霊達がざわついてる。何かを察知したのかしら)
サラが、エルフが霊と會話が出來ると言っても、実際言葉がわされる訳でもなく、あくまで互いの言いたい事が何となく伝わる程度で、細く的な事はなかなか伝わらないのだ。
そんな事を考えながらも歩いて行くと「──あ」と、手を繋いで歩いていたロザリーが聲を上げた。
「とうさま、たち──」
「あら、見つかったのね」
手を離してやると、ジト目無表なのにどこか嬉しそうにチョコチョコと駆けていくロザリーの、どの先──
「────え?」
思わず、サラは目を見張った。
「な、なんでアイツが……」
呆然と目を見開き、唖然と立ち盡くす。
そのサラの10m程先、抱き著いたロザリーを優しくあやし、微笑んでいる男。それは勇者カツヒトを死へ追いやり、その亡骸を何処いずこかへと持ち去った、憎き敵。
しかも、あの執事まで居るではないか!
サラ・キレイアは憤慨した。目の前を紅く染め、背負っていた大弓を構える。
「許さない──相打ちになったとしても、殺してやる……!!」
サラの周囲に、火のが舞始める。
「『焔を司りし霊よ、吾に力を──イグニファイト・エクスプロージョンアロー』!!」
そして、街中などと言う配慮を一切せず、本気の一閃を解き放つ──
「────ん?」
その魔力をじ、スッと前を向いた(真祖)、神祖ヴラキアース・レイゼンは、慌てる事なく魔障壁を張る。
────ズドンッッ
突然の発音に、周囲で甘いモノを堪能していた人々は悲鳴を上げながら逃げ出し──
──そこにはヴラキアース、(真祖)を睨み付けるサラ、ヤレヤレと首を振るバラメス、オロオロするディア、そして相変わらずボケ~っとしているロザリー。この5人のみが殘っていた。
「──はて、汝は何故なにゆえ、いきなり攻撃を仕掛けて來たのかね?」
「巫山戯るんじゃないわよ! あなた、カツヒトのを一どうしたの?!」
「うむ? …………あぁ、汝はあの時の1人か」
「相変わらず…………人を舐めた態度ね!!」
サラは青筋をたて、怒りを顕にする。
「して、今日は何の用かね?」
「だから! カツヒトを返して、あなたは死になさいって用事よ!!」
「なるほどしかし──それはどちらも不可能だな」
「なんでよ?!」
「まず……あの年は既に存在しない、そして、我はそう簡単に死ねぬのでな」
「ふざけんじゃないわよ……」
もはや鬼の形相。怒りと殺気は最高峰まで上がって、いつ発してもおかしく無い狀態だ。
そして実際に、サラはもう一度矢に手をかけ────
「サラ、とうさま、いじめないで……」
「!?」
「とうさまも、さら、いじめないで……」
「…………」
──そこで、今まで空気の様に佇んでいたロザリーによって橫槍をれられたのだった。
「…………今回だけは、ロザリーちゃんに免じて見逃してあげるわ。 次會ったら……覚悟しなさい」
何故か完全に毒気を抜かれてしまったサラは、フンッと振り向き、機嫌が悪そうに言い殘すと、背を向け歩き出した。
複雑な思いをのにめながら……。
そうして、その後ろ姿を見送る4人の間には、微妙な空気が漂っていた。
「あ、あの──さっきの方って、何方どなたなんですか?」
そこでおずおずと言った様子で質問するのはディア。
「ふむ、つい最近我の晩餐の招待を斷った者共のの、一人だ」
「え──え?」
訳が分からず聞いたら、余計に訳が分からなくなったと言うじで目を白黒させるディア。
リンゴーン    リンゴーン
「──ロザリー、今日はどうやら終了の様だ」
地面を見やれば、既に夕影がび始めていた。
「どうだ、今日は満足出來たかね?」
「──ん、おいし、かった」
「それは何より。では──帰ろうか」
サッとマントを翻し、馬車へと歩き出すヴラキアース。
「日が完全に落ちると、街門が閉じてしまいます。參りましょう」
「そうですね! ……姫様?どうかしましたか?」
「────んん、なんでも、ない……」
「そうですか……?」
何かを思いつめたような顔をするロザリーが気になり、振り返るディア。しかし、直ぐにそれまでと同じ、ぼぉっとした表になったロザリー。
しその事が気になったディアだったが、たぶん悩むだけ無駄だろうと 、手を取りゆっくり歩き出したのであった……。
スウィルツ王國を出てから、靜かに揺れる馬車への中で段々と働き始める頭の裏で、ロザリーは1人考える。
(サラ…………エルフ、私は知っていた。どうして?)
面識はない筈だ。理由は簡単。ロザリーがこの世に生をけてから、処零館から出たのはたった2度。ディアと出會った前回と、今回のみ。
では何時いつ顔と名前を知ったのか……。
屋敷に著いてからも1人思いに耽るロザリーは、月明かりが照らす薔薇と百合の咲く広大な庭を、遙か塔のベランダから見下ろし、溜息を零した。
「なにか──なにか大切なことを、わすれてる気がする……」
ぼぅっと耀く月を見上げながら、ポツリと呟く。
と、コンコンっとドアがノックされ、ディアが部屋の中にって來た。
「姫様、お晝ご飯の時間ですよ」
「あぁ、うん──」
「…………どうかしたんですか?」
「ごめん、しょくよくがでないの……」
「はぁ……」
正確には味か。なにせ吸鬼には食事をとる必要が無いのだから。
「もしかしたら、初めての遠出で疲れが溜まっているのかも知れませんし、今日はもうお休みになられたらどうですか?」
時刻は子の刻。吸鬼からしたら丁度晝なのだが、睡眠を必要としない吸鬼は、逆に言えば早く寢たとしても起きる時間には影響はないし、やろうと思えば死ぬまで起きていられるし、寢ていられる。
ディアの心遣いに謝しつつ、その日はもうベッドに潛り込むロザリーなのであった…………。
星の海で遊ばせて
高校二年生の新見柚子は人気者。男女関係なくモテる、ちょっとした高根の花だった。しかし柚子には、人気者なりの悩みがあった。5月初めの林間學校、柚子はひょんなことから、文蕓部の水上詩乃という、一見地味な男の子と秘密の〈二人キャンプ〉をすることに。そんな、ささいなきっかけから、二人の戀の物語は始まった。人気者ゆえの生きづらさを抱える柚子と、獨創的な自分の世界に生きる文學青年の詩乃。すれ違いながらも、二人の気持ちは一つの結末へと寄り添いながら向かってゆく。 本編完結済み。書籍化情報などはこのページの一番下、「お知らせ」よりご確認下さい
8 62死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜
學校で酷いいじめを受けていた主人公『藤井司』は突如教室に現れた魔法陣によって、クラスメイトと共に異世界に召喚される。そこで司が授かった能力『不死』はいじめをさらに加速させる。そんな司が、魔物との出會いなどを通し、心身ともに最強に至る物語。 完結を目標に!
8 125ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
派遣社員プログラマー・各務比呂(カカミ・ヒロ)、二十六歳。天涯孤獨なヒロは、気がつくと見たこともない白い部屋に居た。其処に現れた汎世界の管理人。管理人はヒロの世界は管轄外だから帰してやれないと告げる。転移できるのは管理人が管轄している世界のみ。だが無事に転移できる確率はたった十パーセント! ロシアンルーレットと化した異世界転移に賭けたヒロは、機転を利かせて見事転移に成功する。転移した先は剣と魔法が支配する世界。ヒロは人々と出會い、様々な経験を重ね、次々と襲い掛かる困難を機転とハッタリと頭脳で切り抜けていく。気がつくと頭脳派の魔法使いになっていたヒロは、元の世界へと帰る方法を探しながら、異世界の秘密に挑んでいく。冷靜沈著な主人公が無盡蔵の魔力を手に知略と魔法で異世界を無雙する物語! ◆3月12日 第三部開始しました。109話からです。週1~2話程度のゆっくり更新になります。 ◆5月18日 タイトル変更しました。舊タイトルは[ロシアンルーレットで異世界に行ったら最強の魔法使いになってしまった件]です。 ◆7月22日三部作完結しました。 第四部は未定です。 中世ヨーロッパ風異世界のファンタジーです。 本作品の八千年前の物語 「絶対無敵の聖剣使いが三千世界を救います」(舊題:覚醒した俺は世界最強の聖剣使いになったようです)連載始めました。 URLはこちらhttp://ncode.syosetu.com/n2085ed/ どうぞよろしくお願いいたします。 以下の要素があります。 SF、ファンタジー、パラレルワールド、群、ドラゴン、振動數、共鳴、エレベータ、ボタン、たがみ、ロシアンルーレット、三千世界、結界、神、祝福、剣、モンスター、ファーストコンタクト、精霊、団子、金貨、銀貨、銅貨、商人、交渉、タフネゴシエーター、契約、古語、禁則事項、餞別、葡萄酒、エール、ギャンブル、賭け、サイコロ、ナイフ、魔法、盜賊、宿、道具屋、胡椒、酒場、マネージャー、代理人、ギルド、杜、干渉、指輪、茶、王、神官、鎖帷子、チェーンメイル、クエスト、ゴブリン、焼、炎、図書館、虹、神殿、耳飾り、闘技場、マナ、オド、復活、墓、アンダーグラウンド、眼、迷宮、地図、パーティ、ミサンガ、バリア、異世界、チート、俺TUEEE、ハーレム、謎とき、ミステリー 以下の要素はありません。 ス/テータス要素
8 167【新】アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります
書籍第1~2巻、カドカワBOOKSより発売中!! 『おめでとうございます!! あなたは15億円獲得の権利を得ました!!』 といういかにも怪しげなメールを受け取った在宅ワーカー大下敏樹(40)は、うっかり大金の受領を選択してしまう。悪質な詐欺か?ウイルス感染か?と疑った敏樹だったが、実際に15億円の大金が振り込まれていた。 そして翌日現れた町田と名乗る女性から、手にした大金はそのまま異世界行きのスキルポイントとして使えることを告げられ、最低限のスキルを習得した時點でいきなり異世界の森へと飛ばされてしまう。 右も左もわからない、でも一応チートはあるという狀況で異世界サバイバルを始めた敏樹だったが、とあるスキルにより日本に帰れることが判明したのだった。 合い言葉は「実家に帰らせていただきます!」 ほのぼの時々バイオレンスな、無理をしない大人の異世界冒険物語、ここに開幕!!
8 91FANTASY WAR ONLINE
『FANTASY WAR ONLINE』通稱『FWO』主人公である龍血昴流はVR技術の先駆者である父親の友人から世界初のVRMMOを手に入れる。しかも、家族全員分。人族と魔族の陣営に分かれて戦うこのゲームで龍血家は魔族を選択し、『FWO』の世界へと足を踏み入れる。
8 87美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
私は自身を美少女にした。だってそうしたら楽ちん人生イージーモードだと思ったからだ。新たな世界がどんな所からはわからない。けど可愛いは正義。それを信じて突き進む! 目覚めたら草原ででっかいドラゴンが私の前に降りてくる。話してみると案外良い奴で私たちは心の友となった。なんとドラゴンの力が使えるらしい。友達料としては十分だ。力も手に入れたし世界征服もいいかもしれない。 そんなことを思ってると、何か機械兵士みたいなのが私を追う。私は逃げる。追い詰められて壁をぶち破ると私はどこにいたかをその時初めて知った。それは空に浮かぶ島。私の物語はここから始まった。
8 184