《どうやら勇者は(真祖)になった様です。》26話 2-7 休日

「よく來たな」

「きょうは、よろしく……します」

「おう」

そう言ってロザリーの頭をポンポンとする男。鎌使いのジャックである。

の混ざった長髪を無造作に纏めた彼は、飄々とした様子で席を勧めた。

今日は學園は休日で、授業がなにもない。ロザリーは鎌を習うべく、この休日にジャックと會う約束をしていたのだ。

「……さて、改めて自己紹介だ。オレぁ鎌使いのジャック。ジャック・オリバーだ」

「ろざーりあ・れいぜん」

「レイゼン。早速で悪いんだが、お前のき見せてくれねえか」

「ん……」

を習いたいロザリー。しかしジャックはジャックで、ロザリーのさばきに興味があったらしい。

席に著かせて早々、移を提案した。

店の外、裏側にある空き地にやってきた2人。ジャックはロザリーに木製の鎌を渡すと、素振りをするよう言った。

砂利の混ざった荒れた地面。ロザリーは飛び出た小石につまずくかどうかのギリギリの高さまでしか足を上げず、るように踏み込んんだ。

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鎌を振り回すのではなく、らせて、それに鎌が付隨する。そのきはどこか奇妙で、しかしそれでいて水のようにしくもあった。

「……ふむ、いいぞ」

1、2分ほど顎に手を當てその景を見ていたジャックは、靜かにそう言った。しかしすぐには口を開かず、何かを考えこんでいる。

「……前に見た時も思ったが、の使い方としちゃ驚くくらいに洗練されてやがる。が──」

おもむろに口を開くジャック。しかし微妙そうな表を浮かべ、想を述べていった。

「──おしいじだな。何かのだろう、そのき」

コクリ、と頷く。

大和流円流。それがロザリーの使う技だ。

それはロザリーが勝人だった頃の話に遡る。

──チートを手にれたとはいえ、剣を1度も握ったことのない勝人。そんな彼が1から剣を習い、1流の剣士になるのは非常に時間がかかることであり、また冒険を進める上で一刻も早く解決しなければならない問題であった。

そこで勝人は考えた。

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しでも早く技能をに付けるにはどうしたら良いのか。また、自分に合った技は無いのか……。

そして勝人は、先代勇者の日記に、その答えを見付けた。

──先代勇者は、世間一般で言う“オタク”であった。それはアニメ等に限らず、鉄道、歴史、武、魔(あくまで元の世界の)、そして古武等、多岐にわたる。

その中で先代勇者が目をつけたのが、合気道。

それこそ道場に通うでもなく、ネットで調べて獨學で練習する様な──つまり現実では全く役に立たないレベルであった。しかしそれも、あくまで元の世界での話だ。

彼はこの世界で、力チートを手にれたのでる。

本來なら空想としてで終わるはずだったソレを、先代勇者はこの土地で、立派な剣として完されたのだ。

素人が考えた、勇者のチート頼りのエセ剣は、同じく素人の勝人にとって実に理解しやすく、また再現が楽なのであった。

を守る聖騎士団団長のギリアヌス・オルドマテラの力を借り、より完度を高めたこの剣。それはロザリーとなった今でも自然で使えるほど馴染んでいるのだ。

きとしては、円運を主として相手の攻撃をいなすじか。としては面白いし、完されてる。だが、せっかくの大鎌の良さを引き出せてねえな」

そう言うと、大鎌を持つジャック。

「棒みてえに振り回そうとする初心者は多いが、逆にそんなに著させて使う初心者は初めて見たぜ」

──不吉な風切り音を立てながら、水平に薙ぎ払う。

「確かに、に鎌を著させて歩法で攻撃するのは有効な手段だが、大鎌には大鎌の利點がある」

「りてん……?」

ああそうだ、とジャックは鎌を見せるように掲げた。

「例えば、鎌は敵の構えた盾を無視して攻撃出來る。他にも、上から振り下ろせば、とても防ぎきれない」

ロザリーは、遙か頭上から振り下ろされた鎌を、剣で防ぐところを想像した。

振り下ろす力と、巨大な鎌の重さによる加速。そこら辺の剣でけ止めるには、々荷が重く思えた。

「あとは、本來の用途と同じ様に、敵の足元を薙ぐんだ。そうすりゃ、敵の足を切り裂ける」

ブン──っと、足元の草を切り飛ばすジャック。

「あとはそうだな。単純に鈍として考えりゃ、間合いの広いハンマーだ。一多數のシーンで囲まれた時なんかにゃ、振り回すだけでも有効な攻撃手段になる」

「たしかに……」

大鎌の、普通では扱いにくい獨特な形狀。しかしそれを活かした扱い方がある。ロザリーのそれは、有効ではあるが鎌の特を殺した使い方なのだ。

そのことを、ジャックは説いていたのだ。

「さて、レイゼン。お前には基本的な鎌の型を教える。それを繰り返し反復練習するんだ。そうやってに覚え込ませれば、後はが最適なきをしてくれるだろう」

その後は一通りの型を教わり、ジャックによる個人授業は終わったのだった。

同じ日の夕方、太が傾き、沈み行く中、ロザリーはアリサの元を訪れていた。

アリサは寮ではなく、実家から學園に通っている。その実家というのがこの街にある、武屋なのだ。

「ごめんください」

既に日は落ちかけ、ロザリーの意識は覚醒しかけている。

”マリード武店”と書かれた看板が印象的な建の扉を開き、鈴の音が鳴る中ロザリーはし聲を張り上げて言った。

は木でできていて、背の高いカウンターに、壁や棚に収められた富な種類の武があった。

剣はもちろん、槍や弓矢、金槌にグローブまでと幅広いラインナップだ。

「んー? どうしたんだい嬢ちゃん? ここはお前さんみたいな嬢ちゃんが來る場所じゃないぞ?」

ロザリーが店を眺めていると、店の奧から大柄な男がいらっしゃーいと言いながら現れ、その小柄なの姿を見るなりそう言った。

「あの、アリサ、ちゃんともだちで……ろざーりあって言います」

「おお、あいつの友達か。おおーい! アリサ! ロザーリアちゃんって子が來てるぞ!

ハーイと、店の奧から聞きなれた聲が響いた。

そしてすぐさま、荒々しい足音が近づいてくる。

「いらっしゃいロザリーちゃん! どうしたん?」

「ちょっと、おねがいがあって……」

「んんん? なんかいつもより元気だねぇ……おねがいって?」

ここでは話しずらい……と、アリサを外へ連れ出すロザリー。

屋の裏は試しに武を振るえるように、ちょっとした空間と丸太の的が用意されている。

そこに移した2人。ロザリーは、こんなこと頼むの変かもしれないけど……と前置きをして、お願いを言った。

「魔法を當ててほしいって? どういうことなん?」

ロザリーは、自分が魔法を使えない原因が分かるかもしれないと説明した。

「えぇ~? ほんとに魔法當てただけでわかるん?」

力強く頷くロザリー。いつもと違う、意志の強そうな様子に戸いつつも、しょうがないなぁと言わんばかりに首を振るアリサ。

でも──と続ける。

「あいにくウチは魔法苦手だから、人に向けては撃てんわぁ」

學の時の能力検査の時に不発だったアリサの魔法。使えないわけではないが、威力が使うたびに変わるという。弱いぶんにはいいが、下手をすると暴発するため親から止められているという。

どうしようか……と2人で頭を悩ませる。他の人に頼もうにも、あいにくそんなことを頼める友達はいない。

「あれ、2人ともこんなところでどうしたの?」

突然、そう聲をかけられた。

振り向けば、そこにはいつも2人と一緒にいる年、ヘンリーが立っていた。

「どうしたのって、ヘンリーこそなんでこんなとこいんのさ!?」

「どうしてって……配達の途中なんだ」

そう言って腕に持ったバスケットを掲げる。ロザリーの鋭い嗅覚は、その中から漂う香ばしいパンの臭いを嗅ぎ取った。

「ヘンリー、もしかしてパン屋さん?」

「そうだよ。親の手伝いでね。ところで、なにがあったんだい?」

問われ、事を話すロザリー。

それだったら……とヘンリーは一歩前へ出た。

「僕がその役引きけるよ」

「えっ、ヘンリー魔法使えるん?」

アリサが意外そうな顔をして訊ねた。

それもそのはず。ヘンリーは聖騎士を目指して、魔法系の授業を一切取っていないのだ。そんなヘンリーが魔法を使えるとは夢にも思っていなかったのだ。

「うちの手伝いでね。釜土に火をつけたりするんだ」

そう言って、呪文を唱え始めるヘンリー。簡単な魔法なのか、ものの數秒で手の平から小さな炎が出現する。

「やるじゃん!」

珍しく褒められ、えへへ……と照れるヘンリー。

さっそく魔法を使ってもらおうと思ったロザリーだが、まだ配達が殘っているという。

ヘンリーは、すぐ終わらせてくると言い殘し、かけていった。

ヘンリーが戻ってくるまでの間、2人は店の中にり、お茶を飲みながら雑談に花を咲かせるのであった。

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