《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第十一話 予言の勇者①
僕たちが學校へ戻るまでの道のりは、簡単に説明することは出來ない。
なんというか、あの験は実際に験してみないと、きっと共することが出來ないだろうと思ったからだ。
「……わたし、初めて転送魔法を使って移したわ。すごいんですね、先生!」
メアリーが興しながら話しているように、僕たちは転送魔法を使って學院まで移することが出來た。
緑のに包まれて、目を開けた先にはいつもの教室が広がっていた――という算段だ。
「転送魔法を使うのは、まだまだあなたたちに難しいことだとは思うけれど、そう悲観することは無いわよ。これは努力を積めば、簡単に習得できる魔法の一つなのだから」
「へえ……」
メアリーは目をキラキラさせながら、サリー先生を見つめていた。
「まったく、メアリーの魔法オタクには目を見張るものがあるよ」
「あら? でも私は錬金が好きなのよ。魔法が好きなのはただ単に錬金に近いものをじているから。錬金はバリエーションが正直言ってないからね。魔法も一緒に使うことが出來ればとても便利ではあるのだけれど……なかなかそうもいかないのよね」
Advertisement
「ダブルスタンダードを持つ人間は、そう多くありませんからね」
サリー先生の言葉を聞いて、僕は頷いた。
ダブルスタンダード。
二重標準、と言えばいいだろうか。簡単に言えば魔法も錬金も一流のレベルまで鍛え上げる人間のことを言う。はっきり言って鍛え上げることだけならばそう難しいことではないのだが、しかしながら錬金も魔法も使いこなせる張りな人間になることは簡単ではない。
「錬金も魔法も、似たような學問であることには変わりありません。しかしながら、だからといって誰も魔法も錬金も使えるのかといえば、そうではありません。むしろ、それができる人間のほうが一握り……それは一種の才能とも言えますから」
「才能、ですか……」
僕はサリー先生の言葉に、そう続けた。
「……サリー先生、私たちは今からどこへ向かうんですか?」
そうだった。
僕たちは教室に到著してから、休むことなくある場所へ向かって歩いていた。
殘念なことに僕たちはその目的地がどこであるかを知らない。知っているのはサリー先生だけだった。だからといって、サリー先生のことを信用できないわけではない。むしろ信頼しているといってもいい。
先ほどの戦いで、サリー先生は僕たちを守ってくれた。
それだけで僕はサリー先生を信頼することの理由たるものと言えた。
「著いたわ」
そこにあったのは石像だった。
図書室にったときには、本でも読むのかと冗談を言いそうになったが、真剣に歩くみんなの表を見ているとそうも言えなかった。そう冗談を言える雰囲気ではなかった、と言ってもいいだろう。
石像にれるサリー先生は、小さくつぶやいた。
「フル・ヤタクミ、メアリー・ホープキン、ルーシー・アドバリーの三名をお連れしました」
そう言ったと同時に、石像がゆっくりと競り上がっていった。
「うわあ……」
こんな仕掛けは見たことが無かった。
そしてそれはメアリー、ルーシーも同じだったようだ。
メアリーは手で口を押えていたが、ルーシーはぽかんと口を開けて呆然としていた。
自分たちの良く知る空間にこのような大仕掛けがあるとは思っても居なかったのだろう。
「……さあ、下りましょう。この先にあなたたちを待つ人が居ます」
石像の下には階段があった。延々と地下へ続いていく階段。
それを見て僕はどこか不気味な様子に思えたけれど――しかし僕たちは先に進むしかなかった。
その先に何があるのか、知らなかったけれど、僕たちに退路なんて殘されていなかった。
◇◇◇
階段を下まで降りると、そこには木の扉があった。
ノックをして中にると、そこは大きな部屋が広がっていた。図書室の地下にこのような空間があるとは知らなかったので、僕は心の中で驚いていた。
「フル・ヤタクミだな」
そこに居たのは――老齢の男だった。
それを見たメアリーとルーシーはすぐに頭を下げる。
「校長先生……。ということは、まさかここは」
「はっはっは、そう張せずとも良い。ここは私の部屋だ。それにしてもみな、よく頑張ってくれた。サリー先生から話は聞いておるよ。ルイス・ディスコードという脅威を退けることが出來た、と」
退けた、というよりもあれは殺した――ほうが近いかもしれないけれど、とは言わないでおいた。
「まあ、そんなことはどうでもよい。私としては、敵が現れた時にいち早く守らなければならなかったのに、何も出來なかった……。私はそれが悔しくて仕方がなかった。どうか、今ここで謝罪させてくれ。ほんとうに申し訳なかった」
誰も、返す言葉が見つからなかった。
校長自らが僕たちに頭を下げていれば、言葉が見つからないと思うのは當然のことだった。
しかし、
「ヤタクミ」
その靜寂を、僕の名前を呼ぶことで、校長自らが破った。
「何でしょうか」
僕は名前を呼ばれたので、それにこたえる。
「君は、なぜルイス・ディスコードに襲われることとなったのか知りたくはないか」
それを聞いて一番驚いたのはサリー先生だった。
「校長、それはつまり……!」
サリー先生がこれ以上何かを言う前に、校長が自らの手でそれを制した。
「もう隠し通せないだろう、ここまで來て。いずれにせよ、私は隠すつもりなど無かったがね。もっと早く、本人たちに伝えてあげるべきだと思っていた。……後悔はしないね? 例え、君たちが知る真実が、殘酷なものであったとしても、それを最後まで聞く覚悟は出來ているかな?」
「當然です」
そう答えたのは、僕でもルーシーでもなく、メアリーだった。
「ほう……」
校長は顎鬚を弄りながら、笑みを浮かべる。
続いて、ルーシーがはっきりと大きく頷く。
最後に僕が――しっかりと校長の目を見て、
「お願いします、校長先生。僕たちに……いいえ、僕に教えてください。なぜ、ルイス・ディスコードは僕たちを襲ったのか、その理由について」
「いいだろう。しかし、これから話すことはそれなりに長くなる。サリー先生、椅子を彼らに渡したまえ、私も立ちながら長話はしたくない。だから私も椅子に座らせてもらうことにするよ」
そう言って校長は木製の椅子に腰かける。リクライニング付きのゆったりとした椅子だ。安楽椅子の一種と言ってもいいかもしれないが、揺れる機能がついていないから、正確には安楽椅子とは言わないのかもしれないけれど。
サリー先生がどこかから椅子を持ってきたのを見て、僕たちは頭を下げた。ありがとうございます、という謝の気持ちを伝えることは、どんなことよりもシンプルであり、どんなことよりも大事だ。
「……それじゃ、話を始めよう。そしてその前に、一つの結論を述べることにしよう。フル・ヤタクミ。君は……予言の勇者だよ。何百年も前から語られていて、それが覆されたことのない『伝説の予言』とも言われているテーラの予言から來ているものだがね。君の目的は、テーラの予言によればただ一つ。いずれやってくると言われる世界の破滅から、世界を、人々を、救う。いわゆる君は……言い方を変えよう、英雄なのだよ」
幼女無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族の幼女になって【英霊召喚】で溺愛スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】
【サーガフォレスト様から1巻発売中&続刊決定!吉岡榊先生によるコミカライズ準備中!】 私は勇者パーティーのリリス。その勇者に裏切られて倒れていた私を助けてくれたのは魔族の四天王。そして、彼らの好意もあって魔族になったんだけど…。その時の手違いで幼女化してしまう。 「おい、邪竜を倒してこいって言ったよな?」 「けんぞくに、なるっていうから、ちゅれてきたー!」 そんな幼女が無雙する反面、彼女を裏切った勇者パーティーは、以前のような活躍もできずに落ちぶれていく。 そして、私を溺愛する父兄も「こんな國、もう知らん! 我が領は獨立する!」と宣言する。 獨立後は、家族で內政無雙したり、魔族領に戻って、実家の謎を解いたり。 自由気ままに、幼女が無雙したり、スローライフしたりするお話。 ✳︎本作は、拙作の別作品と同名のキャラが出てきますが、別世界(パラレル)なお話です✳︎ 舊題「幼女無雙 〜勇者に裏切られた召喚師、魔族の四天王になる。もう遠慮はなしで【英霊召喚】で無雙します!〜」 © 2021 yocco ※無斷転載・無斷翻訳を禁止します。 The author, yocco, reserves all rights, both national and international. The translation, publication or distribution of any work or partial work is expressly prohibited without the written consent of the author.
8 154【書籍化】え、神絵師を追い出すんですか? ~理不盡に追放されたデザイナー、同期と一緒に神ゲーづくりに挑まんとす。プロデューサーに気に入られたので、戻ってきてと頼まれても、もう遅い!~
【書籍版発売中!】 富士見L文庫さまから2022年1月15日に書籍化されています!! ========== 【あらすじ】 「仕事が遅いだけなのに殘業代で稼ごうとするな! お前はクビだ。出ていけ夜住 彩!」 大手ゲーム開発會社のデザイナーとしてデスマーチな現場を支えていたのに、無理解な無能上司のせいで彩はチームを追放され、自主退職に追いやるための『追い出し部屋』へと異動させられる。 途方に暮れる彩だったが、仲のいい同期と意気投合し、オリジナルのゲーム企畫を作ることにする。無能な上司の企畫にぶつけ、五億の予算をぶんどるのだ。 彩を追放した上司たちは何も分かっていなかった。 ――優秀すぎる彩にチームは支えられていたことを。 ――そして彩自身が、実は超人気の有名神絵師だったことを。 彼女を追放した古巣は瞬く間に崩壊していくが、デスマーチから解放された彩は華やかな表舞臺を駆け上っていく。 夜住 彩の快進撃はもう止められない――。 ※ほかの投稿サイトでも公開しています。
8 109魔滅の戦士
悪魔。それは人間を喰い、悪魔の唾液が血液に入った人間は感染し、悪魔になる。ある日突然家族が悪魔に喰われた少年は、悪魔を殺すために、戦士へとなった。少年は悪魔を滅ぼし、悲しみの連鎖を斷ち切ることが出來るのだろうか?
8 66ライトノベルは現代文!
ライトノベルが現代文の教育要項に指定された20xx年。 んなぁこたぁどうでもいい。 これは、ごくごく普通?の高校生が、ごくごく普通に生活を送る物語である
8 97異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編
「ああ、死にたい」事あるごとにそう呟く大學生、坂上宏人は橫斷歩道を渡っている途中トラックにはねられそうになっている女子高生を救い自らが撥ねられてしまう。だが死ぬ間際、彼は、「こんなところで死ねない!死ねるわけがない」そう思い殘し、そのまま死んでしまう。死にたいという言葉と死ねないという思いを抱えながら死んだ彼は、あの世の狹間で神に出會い、異世界に転生される。そこで手にいれたのは攻撃魔法不可、支援特化の魔法とスキルだった。 仕方ないからこれで納得できる人生送ろう。 感想の返信はご勘弁お願いいたしますm(_ _)m エンターブレイン様より書籍化いたしました。
8 190殺しの美學
容疑者はテロリスト?美女を襲う連続通り魔が殘した入手困難なナイフの謎!--- TAシリーズ第2弾。 平成24年七7月8日。橫浜の港でジョニー・アンダーソンと合流した愛澤春樹は、偶然立ち寄ったサービスエリアで通り魔事件に遭遇した。そんな彼らに電話がかかる。その電話に導かれ、喫茶店に呼び出された愛澤とジョニーは、ある人物から「橫浜の連続通り魔事件の容疑は自分達の仲間」と聞かされた。 愛澤とジョニーは同じテロ組織に所屬していて、今回容疑者になった板利輝と被害者となった女性には関係がある。このまま彼が逮捕されてしまえば、組織に捜査の手が及んでしまう。そう危懼した組織のボスは、板利の無実を証明するという建前で、組織のナンバースリーを決める代理戦爭を始めると言い出す。ウリエルとの推理対決を強制させられた愛澤春樹は、同じテロ組織のメンバーと共に連続通り魔事件の真相に挑む。 犯人はなぜ3件も通り魔事件を起こさなければならなかったのか? 3年前のショッピングモール無差別殺傷事件の真実が暴かれた時、新たな事件が発生する! 小説家になろうにて投稿した『隠蔽』のリメイク作品です。
8 133