《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二十六話 エルフの隠れ里④
「そう。だからここで、取引と行かないかしら?」
ぴたり、と庶務を進めていた手を止めるラドーム。
「取引?」
「そうよ」
リュージュはニヒルな笑みを浮かべながら、ソファに腰かけた。
「……予言の勇者を、こちらにけ渡してもらえるかしら?」
はあ、と溜息を吐き立ち上がるラドーム。
彼はこういう狀況を予想していなかったわけではない。
予言の勇者が現れて以降、確実にそれを狙う相手が出てくることは明らかだった。
しかしここまで早く出てくるとは思わなかっただろうし、それが同じ祈禱師からのものだった――ということが彼にとってとても悲しかった。
「ねえ、聞いているかしら? 予言の勇者、それをけ渡してくれるだけでいいのよ」
「それをみすみす許せるとでも思っているのか?」
ラドームはリュージュの問いに、はっきりと答えた。
「……ハハハ、さすがはハイダルク一の頭脳と謳われたことはあるわね、ラドーム」
「いずれにせよ、私たちラドーム學院にすでに所屬している學生を、お前にみすみす渡すと思っているのか?」
「ねえ、もう話すのをやめたほうがいいのでは? 政治にはまったくと言っていいほど詳しくないけれどさ……これはどうみてもずっと平行線を辿ったまま終わってしまうと思うけれど?」
そう言ったのは、炎のように燃える髪を持った年だった。
「……そうね。面倒なことはなるべく避けたかったけれど、致し方ないことかもしれない。けれど、まあ、あなたは々考えが固すぎるのよね、ラドーム」
リュージュは立ち上がり、とてもつまらなそうな表をして、炎の年に命令する。
「バルト・イルファ。命令よ。この學院をできる限り破壊しなさい」
「人は燃やしても?」
「構わないわ」
それを聞いたとたん――彼の表が醜く歪んだ。
まるで新しい玩を與えられた子供のような、純粋な笑顔。
それをして、彼は右手を差し出した。
「……私を殺すかね」
こくり、と頷くリュージュ。
「殺して、何が生まれるというのかね。なくとも何も生まれないと思うが」
「何? この狀況においても、そのような発言をするわけ。まあ、あなたらしいといえばらしいけれど。そんなあなたにこの言葉を贈るわ、ラドーム」
リュージュは踵を返して、指を鳴らす。
「言論だけで戦爭を止められるなら、世の中に兵や魔法が流行するわけがないのよ」
そして、それを合図として――バルト・イルファの右手から炎が放された。
「それで? これからどうするわけ?」
校長室にある資料をすべて燃やし盡くしたバルト・イルファは笑顔でそう言った。
「あなたは學園の破壊を最優先しなさい。私はやることがあるのよ。ある人に會って、話をつける必要がある」
「それじゃ、別行?」
「そういうことになるわね」
バルト・イルファは頷く。
「それじゃ僕はここから、攻撃することにするよ」
笑みを浮かべたバルト・イルファは――両手から炎を放して、T字路の左に進んでいった。
「……一応言っておくけれど、魔力を使い過ぎないでよ? あなたは、一応無盡蔵に力があるとはいえ、それは『木の実』で得られた魔力。枯渇する可能も十分に有り得る。もし枯渇の可能が出てきたら急いで私のもとに來なさい。いいわね?」
「解りました。まあ、それが出來るほど、楽しませてくれるかどうか解らないですけれど」
そう言って、バルト・イルファは今度こそ歩みを進めていく。
それを見送ったリュージュは溜息を吐いて、背を向ける。
バルト・イルファは『十三人の忌み子』の一人だった。そして、その中でも優秀な実力を持っていた。実験の中でも一番の功、と科學者が認めていた。それがバルト・イルファだった。
しかしながら、副作用ともいえることがあった。それは人間だったころの記憶を一切保持していないということ。科學者によればそれは魔力を得た代償だと言っていたが、リュージュにとってはむしろ都合が良かった。
「……まさか、バルト・イルファの人格が、『兄』という人格になったとはね。それはさすがに想定外だったけれど……」
それでも結果としては問題ない。
彼がむ方向に、計畫が進むのならば、それだけで。
「さて……話をつけに行きましょうか。もちろん、それが解決するものであるとは思っていないけれど」
そう言って、リュージュは通路を進んでいく。
目的地はただ一つ。彼が會おうと思っている、ただ一人ののもとへ。
◇◇◇
獣は弱っていた。
炎の一撃が相當効いているようで、獣はふらつきながら、それでも何とか倒れまいとしていた。
「今よ、フル!」
メアリーの聲が聞こえる。
そうだ、今こそがチャンスだ! 今なら、倒せるはず!
そうして僕は――獣の心臓に思い切りシルフェの剣を突き刺した。
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