《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第四十六話 はじまりの島②
「オリジナルフォーズを復活させる……ですって? それは、あのお方の命令かしら」
「いいや、違うよ。これは僕が自らで考えたことだ。考えた結果の結論だ」
それを聞いて鼻で笑うクラリス。
「あのお方がなんと言うかしら」
「もしかしたら殺されるかもしれないな。いや、あるいは復活させたことをほめてくれるかもしれない。いずれにせよ、あのお方の目的にはオリジナルフォーズの復活も含められているはずだからな」
バルト・イルファはそう言って、オリジナルフォーズを見つめた。
オリジナルフォーズは今もなお目を瞑っている。それだけを見れば、ただ自分の城で眠っているようにしか見えない。
いや、実際に眠っているだけだった。オリジナルフォーズはただ眠っているだけに過ぎない。けれど、そうであったとしても、実際には薄におおわれており、その傍まで近づくことは出來ない。
「……その障壁が、ガラムドの作り上げたものなのだろう?」
こくり、とバルト・イルファは頷く。
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「なんだ、研究しているじゃないか、クラリス」
「そりゃ一応念のため、ね。私だって何も知らないでずっとあなたと共に行しているわけではないから。……それにしても、そう簡単に出來る話ではないでしょう?」
踵を返し、クラリスはバルト・イルファに問いかける。
その目線は氷のように冷たく、バルト・イルファの心を見かそうとしているようにも見える。
それを見たバルト・イルファは、一笑に付し、
「……やはり、君には何も噓を吐くことは出來ない。……いや、正確に言えば噓を吐いているわけでもないのだが、それに近しいものだと思っても過言ではないだろう」
「やはり、何か裏があるのね」
バルト・イルファは一歩近づき、彼の顎に手を添える。
そしてくい、と顔を上げさせる。強制的にバルト・イルファとクラリスの目線が一致した狀態になり、彼は言う。
「どうせ、君が得た報は筒抜けになるのだろう? だったら、別に伝える必要も無かろう。僕は裏表なんて何も持ち合わせてはいない。すべてはあのお方のため、だ」
「ふうん……。だったらどうしてこのようなわざとらしいことをするのかしら」
「これは忠告だよ、クラリス」
バルト・イルファはクラリスの言葉を遮って、強い口調で告げた。
そして彼を睨みつけたまま、話を続ける。
「君がどう思っているかは知らないが、これまでも、そしてこれからも、僕は僕のやり方でやらせてもらう。これはあのお方にも了承を得ている。だから君が不審にじていたとしても、それを止めることは許されない。理解できるだろう? つまり、僕の行は、あのお方の考えと直結するということを」
「……解ったわ。私もし言い過ぎた。だから、この態勢を止めてもらえないかしら? 別にあなたのことを疑っているわけではないのよ。それだけは理解してもらいたいことね」
それを聞いたバルト・イルファは彼の意見をけれて、彼の顎から手を放す。
そそくさと移して、様子を見るクラリス。
バルト・イルファはそれを見て、ばつの悪そうな表を浮かべて小さく舌打ちした。
「……ところで、オリジナルフォーズはほんとうに復活できそうなのかしら?」
「どういうことだ?」
「噂によれば、ガラムドの張った結界を破壊するにはある魔法が必要であると聞いたことがあるのだけれど。しかもその魔法はあまりにも強力過ぎて封印されているとか」
「ああ、その通りだ。しかし……一つだけ間違いがある」
人差し指を立てて、バルト・イルファは言った。
その言葉に対し首を傾げるクラリス。
「間違い……だと?」
「つまり、君の理解している『噂』には間違いがある、ということだ。別に君が間違って理解しているとは考えていない。つまり、噂にも間違ったものが流布していることがある。伝言ゲームみたいなものだ。伝言を続けていくうちに、人の記憶はそう完全なものではないから……どこか抜け落ちたり、変わってしまったりすることもある。クラリス、君の聞いた噂話は、そういう『変わってしまった』ところがあるのだ、ということだよ」
「だから、その変わってしまったところはどこだ、と聞いている」
「魔法は封印されている。ここまでは正しい事実だ。……しかし、事実としてはここからが違うことになる。その魔法はとある魔導書として封印されている。魔導書は知っているだろう?」
「あの舊世代的魔法の教科書のことか?」
こくり、と頷くバルト・イルファ。
「ああ、そうだ。あの魔導書だよ。まあ、魔導書については殆ど殘されていない。確かに君の言った通り、もう古い文獻にり下がっている。けれど、昔にあるから『古い』という考えは、々お門違いになり果てている……ということだ」
「封印されたから……古いものに、結果としてなっている、ということか……」
「ご名答。そうしてその魔導書はガラムド本人の手によって封印されたらしい。だから、どこにあるのかは誰にもわからないのだというよ」
「……ならば、それこそ手詰まりではないのか?」
その言葉に笑みを浮かべるバルト・イルファ。
もうその流れに呆れてしまったのか、小さく溜息を吐いてオリジナルフォーズの眠る火口を見つめるクラリス。
そうしてクラリスは火口からオリジナルフォーズを見つめた。
「……手詰まりだとすれば、やはり我々にはどうしようもないのではないか? その魔導書が見つかるのならばまた話は別だと思うが」
「見つかるよ、魔導書は」
それを聞いてクラリスは踵を返す。
「あてがあるのか? その魔導書がある場所が」
「無いわけではないけれど、きっと僕たちが行っても無駄だろうね。正確に言えば、予言の勇者サマじゃないと無理かもしれない」
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