《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第七十話 シュラス錬金研究所㉓

フランツは苦蟲を噛み潰したような顔をしてバルト・イルファを睨みつけた。

「君が何を知っているというのですか。所詮ただの研究結果の一つに過ぎないあなたが? 知ったような口で事を語るのはやめたほうがいいですよ」

「果たして、そうかな。結構的をている発言だとは思うけれど」

「そう言っていられるのは外野の人間であると相場が決まっているのだよ。……いや、細かい話ではあるが、君は外野の人間は無いけれど、野の詳しい事を君は知らない。そういう人間がどうこう言おうとしたって、何も変わらないのが事実だし真実なのだよ」

「……そう回りくどい話をしても、結局意味は無いと思うけれどね?」

「意味があるか無いか、ではないよ」

フランツは頷いて、モニタに背を向ける。

「どこへ向かうつもりだ?」

「どこへ、と言ってもね。研究はまだ終わっていない。いや、そう簡単に終わっちゃいけないものだからね。先ずはそれをどうにかする必要がある。お上もそう言っているからね」

「だが、お上が言っていることってそう簡単にクリアできるものでもないだろう?」

フランツは出口に向かって歩きながら、笑みを浮かべた。

そして何も答えないまま、外へ出ていった。

バルト・イルファは溜息を吐いて、モニタに視線を移す。

「……結局、この世界をそう簡単に変えることなんて出來ない、ってことなんだろうな……」

バルト・イルファの呟きは、誰にも聞こえることなく、自然に消えていった。

◇◇◇

僕たちは何とか右や左に角を曲がり、しずつ距離を稼いでいった。

そうしてようやくある場所へ逃げ込むことが出來た。

第四倉庫と書かれた名板を見て、僕は何か隠れられないか――と考えた。

しかし、その考えはすぐに捨てることになった。

「フル。やっぱり、あのメタモルフォーズは倒すしかないんじゃないか?」

ルーシーの言葉を聞いて、僕はその言葉をれなくてはいけないと思った。

やはり、あのメタモルフォーズを倒さないといけないのか。しかし、どうやって? あのメタモルフォーズは全的にゼリー狀で、とてもじゃないが斬撃が通る相手とは思えない。となると剣や弓での攻撃は不可能と言ってもいいだろう。

では、魔法なら?

しかしながら僕たちは今までメアリーに助けられっぱなしである事実を考えると、それも難しい話だった。それに僕もルーシーも高度な魔法を知らない。だって予言の勇者という肩書きこそあるけれど、僕たちはただの學生だ。學生に出來る魔法なんてたかが知れている。

となると、このままでは手詰まりだ。

ならどうすればいいだろうか……。

一先ず、倒すとするならば使えそうなものはフルで活用していったほうがいい。そう考えて僕たちは倉庫の中を探してみるのだが、

「ねえ、フル。これっていったい何かな?」

ルーシーがあるものを指さした。

それを見て僕は首を傾げる。

そこにあったのはモーターがつけられた大きな機械だった。そしてその機械の隣には燃料がっているとみられるドラム缶が多く置かれている。

「……これは発電機のようだね。きっともともとはどこかで電気を作っているのだろうけれど、急時のために置いているのだろうね。こういう施設だから電気が無いとやっていけないのだと思うよ。それに、これは……?」

燃料のっているドラム缶からし離して、幾つかの薬品がっているドラム缶を見つける。

それにはラベルがられており、やはりここが何らかの研究施設であることを改めて認識することとなる。

「これは……水酸化ナトリウム? ということは……」

僕は學校で習った知識を思い出す。確か水酸化ナトリウムと電気……何か法則があったはず。なんだ、思いだせ。思い出すんだ……!

そして、思い出した。

「これだ……!」

そして、ルーシーとレイナにそれを告げる。

「これなら、あのメタモルフォーズを倒すことが出來るかもしれない!」

る程……。でも、無茶じゃないか!? そんなこと、実際に出來るかどうか……」

「出來るかどうかを考えるんじゃない。出來ると思って考えないといけない。この作戦なら絶対にあのメタモルフォーズを倒すことが出來る。だから、何とか頑張るしかない」

「けどこのドラム缶をどうやってあそこまで!?」

「あら、ルーシー。何か忘れていないかしら」

そう言ったのはレイナだった。レイナはあるものをひらひらと僕たちに見せつけるように持っている。

それを見たルーシーは目を丸くして、「あ!」と何かを思い出したかのように驚いた。

「そうか、それを使えば確かに……!」

ルーシーも作戦を理解してくれたのを見て、僕は大きく頷いた。

「さあ、時間が無い。あとは作戦を実行するだけだ。急いであいつを倒して、メアリーを探さないと!」

その言葉にルーシーとレイナは大きく頷いた。

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