《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第七十二話 シュラス錬金研究所㉕
僕たちが外に出た、ちょうどのタイミングで研究施設のり口が崩落していった。
「……間一髪、だったのか……?」
ルーシーの言葉に、僕は頷く。
まさかここまでギリギリだとは思いもしなかった。正直な話、もうし余裕があるものかと思っていたからだ。
それにしても、この建が破壊されてしまったということは――。
「また、メアリーの報が手にらなくなった、ということか……」
そう考えると、とても頭が痛い。ようやくメアリーについての手がかりを見つけ、おそらく捕まっているであろう場所まで到著した――にも関わらず、
「どうやら、敵のほうが一歩先を進んでいた、ということになるのだろうね……。かといって、メアリーはいったいどこへ行ったのだろう? まさかこの瓦礫の中に――」
「ルーシー!」
僕はルーシーの言葉を聞きたくなかった。
その可能だって、十分に考えられる話ではあるけれど。
今はできる限り、考えたくなかった。
「フル、ルーシー! ……ちょっと、こっちに來て!」
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聲を聴いて、僕たちはそちらへと向かった。
僕とルーシーを呼んだのはレイナだった。レイナは瓦礫の中に何かを見つけたらしく、それで僕とルーシーを呼びつけたようだった。
レイナが見つけたのは杖だった。その杖は林檎のデザインがされており、僕もルーシーもよく見たことのある杖だった。
「これは、メアリーが持っていた……!」
そう。
メアリーが持っていた、シルフェの杖だった。
それがそこにあったということは、メアリーがここにいた証拠になる。
けれど、
「でも、メアリーがどこかに行ったという証拠にはならない」
ルーシーの言葉は的確だった。
確かにその通りであったし、逆にメアリーがここに埋まっているのではないか? という最悪の答えを考える可能もあった。
「メアリー・ホープキンは生きているよ。君たちの想像通りね」
聲が聞こえた。
それは、僕もルーシーもレイナも、聞いたことのあるやつの聲だった。
「バルト・イルファ……!」
頭上には、バルト・イルファが浮かんでいた。いったいどのような魔を行使したのか、僕には解らなかったけれど、そんなことよりもどうしてバルト・イルファがそれを僕たちに伝えたのか――それが妙に気になった。
バルト・イルファは僕を見つめて、言った。
「どうやら君たちは気になっているようだね。どうして僕がメアリー・ホープキンの居場所を知っているのか。そして、それをなぜ教える必要があるのか。確かにそう考えるのは當然かもしれない。けれど、それは君たちに絶を與えるためだといってもいいだろう。君たちにはもっと苦しんでもらいたいからね」
「貴様……! バルト・イルファ、お前だけは、絶対に許さない!」
僕はバルト・イルファを睨み付けて、そう言った。
けれど空を飛ぶ敵に対しての攻撃手段を僕は持ち合わせていなかった。
「……まあ、せいぜい頑張るがいいさ。そうだね、ここまでやってきた君たちにはリワードを與える必要があるだろう」
指をはじいたバルト・イルファは踵を返して、最後にこう締めくくった。
「メアリー・ホープキンは邪教の教會にいるよ。そこがどこにあるかどうかは、まあいう必要も無いだろう。そこまで言うとヒントではなくなって、それはもはや解答を示すことになってしまうからね。だから、そこは自分で考えたまえ。寒い場所だから、急がないと凍えてしまうかもしれないよ?」
そうしてバルト・イルファは、今度こそ姿を消した。
◇◇◇
帰り道。
僕たちは行きと同じように竜馬車に乗り込んでいた。
では、縦者はだれか?
「……まさか、シュルツさんが生きているなんて思いもしなかったですよ」
僕はその思ったままのことを、口にした。
「確かにね。まさか、メタモルフォーズの足に踏みつぶされたと思わせておいて、ただ隠れていただけなんて」
シュルツさんが竜馬車でコーヒーブレイクをしていたのを発見した時は、驚きというよりも呆れてしまったと言ったほうが正しかった。
なぜ僕たちにも噓を吐いていたのか――まずそこが理解できなかったし、なぜそんなことをしていたのか、とても気になった。
しかしシュルツさん曰く、
「別にそれについて言う必要もないだろう? ……あと、敵をだますなら味方から、というくらいだし」
現に巖山のにはメタモルフォーズの死が倒れていた。
どうやら研究施設のり口にカメラがあることを見破ったシュルツさんは、敢えて一回自分が死んだように見せかけて、カメラの死角となっている場所でメタモルフォーズを倒したのだという。いったいなぜカメラの死角が解ったのか――それについては、あまり教えてくれなかったけれど。
「取り敢えず、次の目的地は決まったのかい?」
最後に、シュルツさんは、言った。
その言葉に僕たちは大きく頷いた。
そして僕たちは次の目的地へと向かう。
そのためには一度、エノシアスタへと戻る必要があったわけだけれど。
◇◇◇
「シュラス錬金研究所が、崩壊しただと?」
スノーフォグ國軍大佐であるアドハムは部下からの報告をけて、目を丸くしていた。
シュラス錬金研究所を任せたはいいものの、まさかこうも簡単に破壊されるとは思いもしなかったからだ。
「それもこれも、ついこの間やってきたあのキメラのせいだ……!」
キメラ。
正確にはそうではないのだが、いずれにせよ彼にとってあまり理解していない分野のことだからそう説明するほうが正しいかもしれない。そのキメラはスノーフォグの王自らがそこへ向かわせたため、アドハムもそのキメラに従わざるを得なかった。
「まさかそこまで出し抜かれるとは思わなかった……」
「いかがなさいますか?」
部下の言葉に、アドハムは頷く。
「我々は我々で進めるしか無いということだよ」
窓から外を眺め、
「予言の勇者の抹殺。我々の計畫はプランエーから、プランビーへ移行する。ほかの人間にもそう伝えておけ」
傅いた部下はそのまま部屋を後にした。
アドハムの思、そのやり取りは彼とその部下を除けば、空から眺める月くらいしか解らないことであった。
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