《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第三百十八話 役割
「……これは、そんな一幕です」
ナレーションの代わり、とでも言うのだろうか。ガラムドは目の前にある巧な『積み木細工』を見せながらそう言った。
しかし、積み木細工とは言ってみたものの、一言でそう片付けられる程のクオリティではないことも確かだ。人間はそっくりそのまま小さくしたようなじだし、建の窓一つ一つも手を抜いていない。
そして、それ以上に――異質と言えることがある。
それはその人形たちがいていることだ。人形劇を見せられているような気分だ。簡単に片付けてしまえるほどの神力と思考があれば良かったのだが、どうも僕には目の前のそれがただの人形劇とは片付けられなかった。
「ガラムド……これは、いったい」
「追験、とでも言えば良いでしょうか。私の、かつて人間だった時の記憶を元に作り上げたシミュレーションキットです。私が思うがままのシナリオで、私が思うがままの景を作り上げてくれる。そんなシミュレーションキットで作り出した、『過去の回想』です」
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過去の回想。
そう、ガラムドは言い切った。
確かにそこにあったのはただのジオラマ。人形たちが演じた劇に過ぎない。しかしながら、それはとてもリアルで、現実味がある。過去の回想だけでは片付けられない程に。
「……結局、この世界はどうなったんですか?」
聞きたくなかった。
けれたくなかった。
けれど、僕の意志がそれを許さない。
けれど、僕の役割がそれを許さない。
けれど――僕のこころがそれを拒む。
「あなたは、本當にこの世界を救いたいと願っているのかしら?」
ガラムドは言った。
さらに、続けた。
「あなたは、この世界こそ救われるべき世界かと思ったかしら? 生きていて、旅をしていて、いや……それよりも十何年間生きていたあの世界だって。生きてきて、あなたはこの世界は救済するに値する世界だと思った?」
救済。
神が行う、所業の一つ――だったと思う。宗教には詳しくないけれど、実際問題、『最後の日』が訪れたら、人間は裁判をけることになる。
その罪を。
その命を。
天國へ送るか否か、判斷する――重要な儀式。
人間はそのために生き続け、そのために善行を積み重ねる。
それが宗教の考えで、それが宗教の基本システムで、それが宗教のメカニズムだった。
神は人間に罪を與えた。人間は『考える力』を得たと共に神から罰をけた。
それが、それこそが、僕たち人間と――神の関係。
ただそれだけのことだったはず。授業で學んだ範疇しか分からないけれど。
しかし、ガラムドはそれだけじゃない。もっと何か深いことについて、もっと深層心理に近い何かを問いかけたいような――そんな気がする。
「考え方を変えましょう・・・・・・・・・・か、フル・ヤタクミ」
ここでガラムドが違う可能を提示する。
それは違う可能だと、僕が勝手に判斷しただけ。
或いは違うように見えて、本當は同じ可能へ収束するだけの、ただのメンタリズムの応用――或いは悪用? なのかもしれないけれど。
「あなたはこの世界で唯一の『ロール』を與えられた人間です。ロール、その意味が分かりますか? 役割、ですよ。あなたにはある役割を持って生まれてもらった。それこそ、私とヤルダハオトが作り上げたかりそめの空間に」
「ある……役割?」
「あの世界は、私たちがかつて人間だった時代、人口が急速に減し、人間という種が滅亡することを恐れたエルダリア統治政府……いいえ、難しいことを言うのはやめましょう。この場合は、ただの『政府』としましょうか。いずれにせよ、その政府が、人間という種を殘すために、マザーコンピューターに人間の『脳の電子データ』と『伝子データ』を殘しておきました。のが失われたとしても、いつかは人間の種を復興出來るように」
の。
マザーコンピューター。
脳の電子データ。
伝子データ。
何だ。何なんだ。
僕には分からない。
僕には分かりたくない。
僕には分かろうとしたくない。
僕は――如何すれば良い?
「あなたの選択は二つに一つ。あなたはこの世界をずっと生きてきた。予言の勇者としてあの世界を旅してきた。けれど、そもそもあの予言は何のための予言だった? 世界は、滅亡するのか? ええ、確かに世界は滅亡するでしょう。しかし、それは、あなたたち『かりそめの存在』だけ。マザーコンピューターには、人間が元に戻れるようにいつでものを一萬人分召喚できるようにセッティングされてあります。そして、一萬人分の脳の電子データも、ディラックの海を……0と1の空間を揺っているのです。いつかまた、のに魂が舞い戻り、人間としての役割を果たすために」
「ガラムド……僕には、あなたの言っていることが分からない……」
「あなたは、あの世界に人間を戻すための最後のピース。あなたの存在こそが、人間を復活させるプログラムの起コードなのですよ」
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