《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》最終話 広くてすてきな宇宙じゃないか④
メアリーたちは、再生の間――いわゆるヤルダハオトと決闘を繰り広げた部屋にて待機していた。
フルは必ず帰ってくる。だからここで待つんだ、とメアリーが強く願ったことによりガラムドもそれに従うしかなかった。
今まで暗くなっていた畫面が明るくなったのは、待ち始めて一時間程度経過したときのことだった。
『もし、この通信が聞こえていたら、応答してほしい』
「この聲、フルの聲だ!」
メアリーはたまらなくなって走る。そして畫面にかじりつくように見つめた。
そこにはフルの姿が映し出されていた。
「フル! 聞こえているわ、私よ、メアリーよ!」
『メアリー。聞こえているか。……良かった、君と話ができて』
「私もよ、フル。ねえ、いつになったらこの世界に戻ってこれるのかしら? あなたをみんな待っているのよ。ヤルダハオトとの決著はついた?」
『ヤルダハオトは僕が殺したよ。すべて、解決した。……おそらく、ヤルダハオトが制していたオリジナルフォーズも行を停止したことだろう』
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違和に気づいたのは、ガラムドだった。
メアリーを押しのけ、フルの顔を見つめる。
「フル・ヤタクミ……あなた、まさか『神』にりましたね?」
「え……?」
『……分かっちゃいますか』
「これでもあなたと同じ、神よ。まあ統治している範囲が違うけれど。いったい何があったの。まさかヤルダハオトの代わりに神にならざるを得なかったとか……」
『そんなことではありませんよ。正確には、もっとスケールが大きい話です』
「スケールの大きい話?」
『世界再生プログラムの代理実行、とやらをしなくてはならないそうなんです』
騒なプログラムの名前だと彼たちは思ったことだろう。
フルはさらに話を続ける。
『僕はそのプログラムを実行することはありません。実際に実行するのは影神と呼ばれる地位の方になるのですが……。もし実行してしまうと、神が誰一柱として居なくなってしまうんです。正確には、神としての仕事を遂行する神が居なくなる、と言えばいいでしょうか』
「それで……あなたが神になることで結論付いたということね」
ガラムドの言葉にフルは頷く。
しかし、メアリーはそれを理解することはできなかった。否、理解したくなかった。
「ねえ……どういうこと? つまり……戻ってこられない、ということなの……?」
『…………済まない、メアリー。ほんとうは元の世界に戻りたかったけれど、早急にこの世界を元に戻さないと、メアリーたちの世界にも影響をもたらしてしまうと言っていたんだ』
(正確には、この世界を構しているコンピュータに問題が起きるのでしょうね……。電気すらどこから生み出されているか分からない現狀、世界再生プログラムが功したとしてこの世界がずっと存在し得るかどうかも分からないけれど……)
ガラムドはメアリーたちには聞こえないくらい小聲でそんなことをつぶやいていた。
確かにそう思うのは、外の世界を知る彼だからかもしれない。
しかし、今はそれを信じるしかない。彼はそう思ったのだろう。
はっきり言って、ヤルダハオトがやり遂げたの行為は失敗する可能が非常に高い。培養に保管されている人間の構分ももうずいぶんと時間が経過しているから、劣化している可能が非常に高い。
ほんとうは元々のを冷凍保存する案もあったのだが、それよりも若いを作るほうが永遠の命を得ることができる、ということで卻下されてしまった。だから仮にが功してもそれは元々の自分のではなく、新しい自分のなのだ。
そんなことは、今あの世界に居る古屋拓見には関係の無いことなのかもしれないが。
『メアリー。だから、約束は守れそうにないよ。一緒に元の世界に戻るというのは、難しい。でも、オリジナルフォーズの呪縛が解き放たれたということは、ルーシーは無事のはずだ。今こちらから彼を元の世界に移させた。きっと彼は元の世界で待機している。後は君たちだけだ。君たちが移したのを確認して、この世界を破壊する。エネルギーがもう一つの世界を管理するくらいしか殘っていないんだ。だから、君たちが元々暮らしていたあの世界を殘して、すべての世界を破壊する。それが僕の神としての最初の任務だ』
「何を言っているのよ……。フル。あなた、約束したじゃない。一緒に帰ろうって。それに、昔私が告白したことを忘れたとは言わせないわよっ!」
メアリーは涙を零していた。
いつしかが極まってきていて、涙を流していた。
本來なら我儘だと済ましてしまうかもしれない。
本來なら欺瞞だと済ましてしまうかもしれない。
本來なら迷だと済ましてしまうかもしれない。
けれど、彼の、フルの思いはそんな一つの単語で片付けられるほどのものではない。
『メアリー……。ほんとうにごめん。だから、今、答えるよ。あのときの答え――』
フルの言葉は、メアリーにしか聞こえないくらい小さい聲だった。もしかしたら聲も発しておらず、口によるものだったかもしれない。
しかし、その言葉はメアリーにはっきりと屆いた。
「……うん。うん……。ありがとう……フル……」
かみしめるように、メアリーは何度も、何度も、頷く。
『さあ、急いでくれ! もうその世界は持たない!』
「行くわよ、メアリー・ホープキン!」
既にメアリー以外の人間は、メアリーとロマ・イルファが乗ってきていたホバークラフトに乗り込んでいた。ロマ・イルファとガラムドと――そしてバルト・イルファの死を乗せたホバークラフトがメアリーを待ち構えていた。
崩壊していくコントロールルームとコロニー。
メアリーは、畫面を何度も見ながら――やがて振り返ることなく、ホバークラフトへと走って行くのだった。
◇◇◇
――世界再生プログラムを実行いたします。
影神のがホログラムのように、消えた。
そして彼のの中心から、一つの立方が姿を見せた。それはサイコロのようなものだったが、やがて一つの目が開き、彼に問いかけた。
『初めまして。私はこの世界を管理するあなたの補佐を行うホストコンピュータです。まずは、何をなさいますか? 影神、古屋拓見様』
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