《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》1-9 模擬戦3
未希の模擬戦が終わった後、自分の番を忘れたふりをして帰ろうとした朝日だが...
「用件は済んだか?じゃあ帰「さて、それでは最後にアサヒ殿だな」…やっぱりかよ」
ウィリアムからは逃げられなかった、さらに言うと勇二たちからも逃げられなかった。
「いや、でももう日が暮れてきてるぜ?」
そう、朝日の言う通り外はもう夕方となっている。
因みに余談だが朝日達がここに來た時點でお晝時はとっくに過ぎていたりする。
「むむ、確かにそうだな。ならばなおさら早めに始めなくては」
ダメだ。この副団長脳筋だった、と思わず頭を抱える朝日。
「だー、分かったよ。やればいんだろやれば」
若干やけくそになりながら足元の模擬剣を手に取る朝日。
「ふっ、やっとやる気になっ「あ、言っとくけど俺、殆んど素人だから」…なに?」
ウィリアムの言葉を遮り自分の言いたいことだけを言う朝日、せめてもの反抗だろう。若干子供っぽいが。
ウィリアムは朝日の言葉をけ固まっている。
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その間に勇二が近づきそっと耳打ちする。
その言葉を聞き、驚いたような、納得したような顔をする朝日。
勇二はそれを告げた後そそくさと朝日から離れていく。
朝日はそんな勇二の後ろ姿ををジト目で睨みつけていた。
「ウィリアムさん固まってるとあっという間に一本取られますよ?」
勇二の言葉によりやっと再起したウィリアム。
「では、5、4、3、2、1、試合開始!」
そして試合は再び勇二のカウントを開始の合図として始まった。
しかし、試合が始まったにもかかわらず両者は一歩もかない。
そんな中、ウィリアムは警戒心をMAXにしていた。
(おいおい、初心者って本気で言っているのか?あの構え、ユージ殿の構えと殆ど変わらないぞ?)
心でそんなことを考えているウィリアムを見て、朝日は口元をニヤリと歪める。
そして、あろうことか朝日は勇二と寸分変わらぬ構えを解いた。
「どうした?そっちから來ないなら、こっちから行くぜ!」
次の瞬間、朝日の姿がウィリアムの視界から消えた。
「隙ありだ、副団長!」
朝日の聲が聞こえた場所それは…
「っな!?いつの間に!」
ウィリアムの背後であった。
朝日は先程の一瞬でウィリアムの後ろに回り込んだのだ。
もちろんウィリアムの注意不足というのもあるのだが、その本的問題は朝日のにあった。
朝日達は地球でその命を終え、異世界に転生した存在だ。
さらに言うなら自分たちのはあちらの世界で死んでいる。
このは恐らく神に作られただ。
ならば、多能力が上がっていても驚きはしない。
勇二の剣戟も、未希が金屬製の模擬槍を軽々と持っていたのも説明がつく。
「っく!そのようなのこなしで素人とはよく言ったものだ、なっ!」
ウィリアムはそう言って剣を橫に一閃して距離を取ろうとするが...
「ッな!?」
朝日はその一撃をあえて模擬剣でけニヤリと嗤う。
「計算通りだよっ!」
次の瞬間、朝日は剣を手放し再びウィリアムの懐に潛り込むとウィリアムの顎目掛けてアッパーを繰り出した。
ウィリアムが驚きつつも首を傾げることでそれを右に避ける。
渾のアッパーを避けられた朝日はその場に落ちた自の模擬剣を拾い上げると今度はウィリアムのを目掛けて突きを放った。
しかし、朝日の放った突きはウィリアムが後ろに飛んだことで避けられてしまった。
今度は右手の模擬剣を逆手に持ち直し、人を毆るときの要領で振るう朝日。
その刃はウィリアムの元に屆く。
二人の影が差した瞬間、ギンッ、という金屬音がその場に響き、遅れてサクッ、という何かが土に刺さる音が聞こえた。
「ふぅ、危なかったな。ホントに初心者かと思えるような戦いぶりだった。中々に型破りな戦い方をするものだ」
そんなコメントを若干冷や汗をかきながら話すウィリアム、その手には模擬剣があった。
朝日は一瞬何を言っているのかわからなかったが、し軽くなった右手の剣を見た瞬間、起こったことを理解した。
右手に逆手で握られた模擬剣、その柄と刀のちょうど中間あたりで荒折れていたのだ。
恐らくは先ほどの攻撃がはいる寸前のところで防がれたのだ。
「はは、流石副団長だな、完敗だ」
折れた剣を見つめ、朝日が負けを認めたことでその日の模擬戦騒は終わりを迎えたのだった。
to be continued...
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