《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》1-10 長かった一日の終わり

さて、先ほどの模擬戦騒から一転、今朝日たちは食堂にいる。

理由は言うまでもないが食事をとるためだ。

なにせ彼らは朝から人助けに奔走し、晝食を摂っていないのだ。

その上、トラックに轢かれ、異世界に転生し、一國の王と謁見し、模擬戦を行った。

こんなエキセントリックな一日を過ごしたのだ、それは疲れもたまるし腹もすくだろう。

そんなわけで模擬戦の終わった朝日たちは野外訓練場から場ったところで出迎えていたメイドのジェーンに案され食堂に來たわけだが...

朝日は出てきた料理に言葉を失っていた。

目に映るのはテレビなどで紹介されている三ツ星シェフも真っ青な料理ばかり。

唖然の表を浮かべる朝日たちにメイドの一人が、

「大丈夫ですよ勇者様、國王様やそのお妃さまが食べているのと同じような料理ですから」と耳打ちしてきた。

朝日が心(いやいや、王族と同じものを食えと?なおさら張するわ!)とぶが通じない。

ちなみに國王とその妃は執務中であるらしい。

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今夜の食事は立食形式のようで次々と新しい料理がテーブルの上に並べられている。

そして勇二と未希はというと...

「ん、勇二!この料理味しいよ!」

「へぇ、どれどれ?あっホントだ味しい!」

(なんで平然と食えるんだよお前らは!?)

朝日が心の中でそうぶが當然聞こえない。

「朝日、早くしないとなくなっちゃうよ?あ、この料理見たことない料理だけどおいしいよ!」

始めてみる料理に果敢に挑んでいく朝日と未希、逞しすぎる。

「はいはい、分かったからモノ喰いながらしゃべんなっての」

二人のそう注意すると「朝日お母さんみたーい」と言いやがったのでデコピンをかます朝日。

うずくまる二人を目に料理に手を付ける。

エビチリに似た料理だった。

「うん、確かにうまいな」

豪華な料理のご満悅な朝日、痛みが引いて朝日に抗議する二人。

食事の場は忙しなくき回る給仕たちと、騒がしく料理を食べる朝日達により賑やかになっていた。

そんなにぎやかな空間にある男がってきた。

「食事中に失禮する。なかなか賑やかではないか、私も混ぜてはくれんか?」

その男は騎士団副団長のウィリアムであった。

この男、先ほどの模擬戦から態度がフランクなものになっているのは気のせいだろうか?

「ふむ、なかなかに味い。さすがは城の料理人だ」

料理をつまみ食いしながら朝日達のもとに歩み寄るウィリアム。

「すまんな、いきなり」

「いえいえ、食事は大勢で食べたほうがおいしいですから」

勇二がにこやかな表け答えをする。

「いや、明日のことについて話したかったのだが…」

「明日のこと?でしたら部下に命じればよろしいのでは?」

「いや、これについては國王直々に命令されたんでな。そうもいかんのだ」

そういうと國王ウィリアムは懐からある紙を取り出した、羊皮紙だった。

「その紙に明日の予定が書いてある。時間が來たらその紙の通りに行するように、とのことだ」

ウィリアムは羊皮紙を勇二に渡し、食堂から去っていった。

「…腹も膨れたし、そろそろ部屋に戻るか」

どこか疲れた表を浮かべる朝日が発した言葉に二人が頷き、波の(?)食事の時間は終了したのだった。

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朝日達が與えられた自室のまえで問題は起こった。

「ねぇ、ユージ、同じ部屋で寢ちゃダメ?」

問題の発端は未希のこの発言である。

「あれ、未希?未希にもちゃんと部屋が與えられてるよね?」

「つーか、この部屋オレもいるんだが?」

まぁ、最初は當然こうなる。

「…だって、あんなに広い部屋に一人って落ちつかないもん」

どうやら聞く話によると未希に與えられた部屋は自分たちに與えられた部屋と大同じ大きさらしい。

「それに、慣れない空間だと眠れないし…」

恥ずかしそうに頬を染める未希。

このまま放置してもいいのだが、未希は放置した後が面倒くさいので解決策を考えることにした一同。

「朝日、僕は別にいいんだけど」

という勇二の発言に目を輝かせる未希。

「オレは反対だ」

朝日はきっぱりと切り捨てた。

だが...

「だから、未希。お前の布団やら寢やら全部持って來い」

朝日の発言に怪訝な顔をする二人。

どうしてこうも察しが悪いのかと頭をかく朝日。

「はぁ、オレは通路で寢る。お前らは部屋の中で寢ろ」

その言葉に再び顔を輝かせる未希。

「ほら、寢るんなら早く寢を持って來い」

「分かった!朝日アリガト!」

そういうが早いか未希は與えられた自室に駆け出した。

まったく、とその後姿を呆れながら眺める朝日と勇二。

「ねぇ、朝日」

未希の姿が見えなくなり、自分たちも部屋にろうとしたところで勇二が話しかけていた。

「あ?」

「朝日ってに甘いよね」

「…バカじゃねぇのお前?」

まったく何を言い出すか、とため息をつく朝日。

そんな様子の朝日にニコニコしながら勇二は続ける。

「それに、未希がこっちに來るのを許可したのって「持ってきたよー」」

だが、勇二がそれを言い終わる前に未希が到著した。

「よし、きたか。ほら勇二!ぼさっとしてないでさっさと部屋って寢ろ」

朝日はここぞとばかりに話題を逸らし、勇二と未希を部屋に押し込んでいく。

途中で、ちょっと朝日まだ話は終わってないよ!と聞こえた気がするが無視する。

二人を部屋に押し込み扉を思いっきり閉める。

すると扉の奧から聲が聞こえてきた。

「あーもう、朝日このことは明日問い詰めるからね!」

最後の最後で勇二はあきらめなかったが明日には忘れているだろう。

そんなことを考えながら朝日は部屋の中から持ち出した日記を読む。

眠くなるまで、ではなく一晩中だ。

朝日は今夜眠るつもりはなかった。

彼が今部屋の外に出ているのは警戒のためだ。

國王の話では自分たちはこれから伝統とやらに倣って冒険者になるらしい、ならば時には野営をすることもあるだろうから、というのが表向きの理由だ。

しかし本當は、この城の中に善からぬことを考える輩がいるかもしれないため二人が安心して眠れるように、という理由だ。

勇二が見抜いたのは後者の方だろう。

に甘いと言われるのも仕方がないか、と心ため息をつく。

「まったく、そういったところは鋭いんだよなぁ」

そんなことを呟きながら手にした日記を読み進めていく朝日。

こうして異世界ザナンに転生した年たちの長かった一日が。

その夜が更けていくのだった。

to be continued...

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