《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》1-19 大浴場と仲直り
今、朝日達は夕食も食べ終わり、無駄に張り詰めた張の中、食後の紅茶を飲んでいた。
いまだに勇二と未希はだんまりを決め込んでいてものすごく居心地が悪い。
はっきり言って、ここにいるくらいならさっさと書庫にこもりたい気分だ。
朝日がそんなことを考えていると食堂の扉からノックする音が聞こえてきた。
ってきたのはメイドのジェーンだった。
「勇者様方、お湯が沸きましたましたがどうなさいますか?」
「お湯?あぁ風呂か」
どうする?と二人に視線を向ける。
「うーん、流石に昨日と今日でいろいろあったからりたいかな?」と勇二。
「流石に二日連続でらないのはちょっとね」と未希。
「それじゃ決まりだな」
二人の言葉を聞いた朝日はジェーンに向き直る。
「かしこまりました、それで男陣と陣、どちらがお先にりますか?」
「へ?男別にないんですか?」
どうやらこの王城に風呂は一つしかないらしい。
すると未希が
「……朝日達、先っていいよ」と言い出した。
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その言葉に朝日は目を丸くした。
「未希?いいのか?記憶が正しければ未希は風呂好きだったろ」
「…いいよ、って言うか風呂好きは朝日も一緒じゃない?」
痛いところを突かれてしまった。
そう、実は朝日も風呂好きだったりする。
浴時間が三十分越えなどザラだ。
「そうか、わかった、お言葉に甘えて先にらせてもらうわ、勇二行くぞ」
「え、あ、うん」
「…………」
何か言いたげな厳しい表の未希。
「…っと、わりぃ。し先行っててくれ」
「どうしたの?」
「いや、しジェーンに聞きたいことがあってな」
「そう?じゃあ先行ってるよ?」
そういって勇二は食堂の前で待機していたメイドの先導で王城の風呂に向かっていった。
勇二が扉の傍から離れたことを確認して、未希に向き直る。
「未希、お前は勇二と仲直りしたいんだろう?」
「…うん」
未希がしおらしく頷く。
「なんというか、お前たちって本當に似た者同士だよな」
流石馴染、と朝日はかるく未希をからかう。
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「まぁ、両者がそう思ってるなら問題な「ねぇ、朝日」…お前、人のセリフに被せんのいい加減やめ「仲直りするチャンスがしいんだけど」…はぁ」
その意趣返しか、偶々なのか未希は朝日に言葉に自分の言葉を被せる。
「チャンスか、ちょっと待て」
そういうと朝日はまだ近くで待機していたジェーンに何やら聞き出していた。
どうやら先ほどのあれは建前ではなかったようだ。
「よし、それじゃあ、オレたちが風呂から上がって、お前が風呂から上がった後だが…」
朝日はさっそく立てた作戦を作戦を未希に伝える。未希はそれを一字一句聞き逃さんと真剣な表だ。
「っというわけだ、分かったか?」
「うん!分かった!頑張る!」
「…元気があって大変宜しい」
先程の厳しい表から一転、とても明るい笑顔をこちらに向けてくる未希。
しかし朝日はポーカーフェイス、流石である。
「さて、それじゃオレも風呂行ってくるわ」
そんなアドバイスも終え、朝日は風呂に向かうのだった。
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「こいつは…なんというかとんでもないな」
所で勇二と合流を果たした朝日は浴場にって第一聲、圧巻の聲をらす朝日。
その目の前にはスー○ー銭湯顔負けの浴槽があった。
「見たじだと學校のプールと同じくらいあるね」
勇二が苦笑しながらそう言えば、朝日も全く同意見だとばかりにそれに頷く。
「っていうか壁に彫られてる絵って間違いなく富士山だよな?」
「過去の勇者の人たちが教えたのかもね。よく見たら床もタイル張りだし」
各々の想を口にしつつ朝日達は桶を手に浴槽に近づいていく。
朝日の後ろを歩いていた勇二は偶然、朝日の背中の『ソレ』を見て思わず表をゆがめた。
「勇二?どうした、立ち止まって?」
「いや、相変わらず消えないなーって思ってさ。背中の痣」
勇二のその視線の先にあったのは朝日の背中に刻み付けられたいくつもの傷跡であった。
何かで引っ掻いたような傷や固いもので撃たれたような痣、仕舞にはやけどの跡が殘っている。
見る度に居た堪れない気持ちになってくる傷跡。
しかし、朝日はそんな勇二の様子を気にするまでもなく浴槽に足を進めていく。
浴槽までたどり著いた朝日はそこから桶でお湯を汲むと頭からそれを被った。
朝日の長めの赤味がかった黒髪が水分をけて垂れ下がる。
目元にかかりそうなそれを鬱陶しそうにどけながら朝日は軽く肩をすくめた。
「こんなもの気にしたってどうしようもねぇぞ?この程度の傷、実踐を積むに幾らでもけることになるんだからな」
そう言って湯船につかる朝日。
実にフリーダムである。
勇二はそんないつも通りな朝日を見て「全く、朝日は朝日だね」と一人納得し、朝日に続けて湯船につかるのだった。
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風呂から上った朝日達は今、自分たちに與えられた部屋のベランダで涼んでいた。
もちろん服もきちんと著替えてある。
「ふー、流石は王城。中々に立派な浴場だったな」
「夜風が気持ちいいねぇ」
勇二に関してはすこし年寄りくさい聲を出している気がするが。
充分に涼んだ朝日達はベランダの扉を閉め、部屋に備え付けられた椅子に座り込む。
その後、數分間にわたり雑談に興じていた二人だったが、朝日が突然立ち上がったことでその會話は途切れることとなった。
「っと、わりぃ。し書庫に行ってくる」
「え、今開いてるの?」
「あぁ、開いてるってか開けてもらってる」
「…もしかして、ジェーンに聞きたいことってそれだったの?」
「ああ、時間が惜しいからな。開けてもらってるのすっかり忘れてた」
「おっけ。いってらっしゃい。寢る時間前には帰っておいでよー?」
「へいへい。わーってるっての」
朝日はそういって面倒くさそうに頭を掻きながら部屋から出ていく。
朝日が扉を開けたその時、ちょうど風呂上がりの未希が扉の前に立っていた。
頬はわずかに上気しており、ほんのしだけ気のようなものがじられた。
朝日はすれ違いざまに小聲で「がんばれ」とだけ聲を掛けて書庫へと向かった。
朝日とれ違うように部屋にった未希は靜かに扉を閉める。
はっきり言って心臓はバクバクである。
「「…………」」
お互いに何もしゃべらない。
未希も時々自分から何かを言い出そうとするのだがすぐに口を閉ざしてしまう。
すると、ついに勇二が口を開いた。
「……未希。その、今朝はごめんね?」
「え?」
「ノックとかしておけば良かったんだけど、ホントにごめんね?」
ストレートに謝られてしまい思わず言葉を失う未希。
それを拒絶とけ取ったのか勇二は困ったような顔をする。
「えっと、どうしたら許してくれるかな?」
未希はし考える素振りをする。
もともと未希は今回の件についてそれほど怒っているわけではなかった。
ただ、怒りよりも気恥ずかしさの方が大きく素っ気ない態度をとってしまっただけなのだ。
本來なら笑顔で頷いて自然に仲直りするつもりだったのだが、勇二から謝られたことでし予定が狂ってしまった。
ちなみに、この時の勇二の提案は朝日の差し金だったりする。
しかし未希はそれを知らないし、勇二は謝罪に何かしてくれるということで頭がいっぱいになっている。
「えっと、それじゃあ」
そういって未希は勇二のもとに近づき、しゃがんだ。
「えっと、未希?」
「――でて」
「へ?」
「頭でて、小さい時みたいに」
そういう未希の耳は真っ赤になっていた。
勇二はし困ったように笑うと、優しく未希の頭をで始める。
勇二のその優しい手つきに気持ちよさそうに目を細める未希。
「未希、これでいいの?」
「うん、これがいいの」
二人っきりの桃空間が展開されていた。
もしも近くに人がいたならば、間違いなく砂糖を吐きたくなるであろうほどに甘い空間だ。
しかし、自分たちの世界にり浸っている彼らは気付いていない。
朝日が僅かに開いた扉から二人の様子を見守っていたことを。
さらに言えばこの展開が朝日の想定通りであったことも。
to be continued...
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