《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》1-23 旅立ちの試練1

転生してから十一日目、勇二は小鳥のさえずりによって目を覚ます。

橫を見れば穏やかな寢息、前を見ればたたまれたシーツ、ではなく...

「珍しい、朝日が部屋で寢てる…」

そこにはシーツとタオルケットに包まって寢ている朝日がいた。

ここ最近、というか転生してからというもの、勇二は朝日がしっかりと睡眠をとっているところを見たことはなかった。

だがその朝日が今部屋で寢ているのだ。

というか、朝日がこの世界に來てからの睡眠時間を合計しても六時間にも満たない。

そのため、朝日がこの部屋でしっかり寢ているのは激レアだったりする。

「あぁ、そういえば「めぼしい本は全部読み終えた」って言ってたっけ?」

そう、実のところ朝日はこの王城の中の興味のある本は全部読み終えていた。

そのため朝日はこの部屋だ眠っているわけなのだ。

「…ん、んみゅう?」

そんなことを考えていると不意に隣から聲がした。

どうやら未希が起きたようだ。

「おはよう、未希」

「ん、おはよ、勇二」

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朝の挨拶をした後、未希の視線が向かったのは朝日だった。

「あ、朝日が寢てる!?」

それにしてもひどい驚き様である。

すると未希は何か思いついたのかそーっと朝日に近づいていく。

そんな未希に苦笑しながら勇二はそっと未希に小聲で耳打ちする。

「ほら未希、もうし寢かせてあげようよ、久々のまともな睡眠なんだしさ」

「えー、でも今しかいたずらできるチャン「やめようか、あとでこっぴどく叱られるよ?」う"っ」

「………朝から元気だなお前ら」

二人がそんなことをしていると、ムクリと朝日が起き上がった。

「あ、朝日起こしちゃった?」

「いや、大丈夫だ、勇二が起き出した時にはもう起きてた」

寢起きが悪いんだ、などと言いながらびをしてをほぐし始める朝日。

よく見ればその瞳は若干眠たげに細められている。

「さてと、今日はオレはのんびり過ごすつもりだがお前たちはどうする?」

をしながら二人に問う朝日。

「うーん、僕も今日は行くりしようかな?」

「私も、今日はのんびり過ごそうかな?」

「いや未希、言っておくが、お前の過ごし方はオレたちに比べると十分ゆっくりだからな?」

「そうかなー?」

「「そうだ(よ)」」

そんなやり取りをしながら部屋から出ていこうと扉に近づく勇二と朝日。

部屋から出るのは未希が著替えるためだ。

この前のようなことを繰り返さないために、と三人で決めたことだ。

扉の取っ手に手をかけようとしたところで勇二が扉の下に何かが挾まっているのを発見した。

それは羊皮紙だった。

「えっと、どれどれ?」

勇二はその紙に書かれていることを読み取っていく。

そして、あーっと言いながら天を仰ぐと二人に向き直った。

「殘念ながら今日はのんびりできないみたいだよ」

といい『訓練場まで來るように』とだけ書かれた紙を二人に見せつけるのだった。

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三人は今野外訓練場にいる。

そこには近衛騎士団副団長のウィリアムが立っていた。

「よくぞ來られました、勇者様方」

「おはようございます、ウィリアムさん」

恭しく敬禮をするウィリアムに軽く禮をしながら挨拶する勇二。

いつもとウィリアムの話し方が違うのは気にしないようだ。

「さて、本日來ていただいたのは他でもありません、本日は勇者様方に旅立ちの試練をけて頂くべく、參上していただいた次第です」

そのウィリアムの言葉に思わず眉を顰める朝日。

「旅立ちの試練?そんなの聞いてねぇぞ?」

「おや?國王様から聞いていませんかな?旅立ちの試練というのは…」

どうやらウィリアムの話によると旅立ちの試練というのは、召喚された勇者たちが旅立ちの前に國王の近衛との決闘を行う儀式のようなもの、らしい。

本來は騎士団長が勇者の相手をするらしいが今、騎士団長は任務の途中でこの城にいないため、副団長であるウィリアムが相手をするとのこと。

説明を終えたウィリアムは地面に突き刺した模擬剣を抜き構える。

「さて、どなたがお相手かな?」

素人目に見てもわかるほどに今のウィリアムには覇気がある。

思わず気圧されてしまうほどに...

しかし、そんな空間を打ち破るものがいた。

「なら、トップバッターは僕が行きます、二人とも問題ないよね?」

それは、やはりというか勇二だった。

「ふむ、得は以前と同じもので?」

「ええ、それで」

勇二がそういうとウィリアムの部下の一人が勇二の分の模擬剣を持ってきた。

勇二はそれをけ取り、かるく振り回し手になじませる。

「準備は?」

「はい、いつでも。今までの訓練の果、お見せします!」

その言葉を合図に二人は一斉に距離を取り、勇二の試練が始まった。

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「まずは様子見!炎よ敵を焼き貫け!『ファイアボルト』!」

勇二は先手必勝とばかりに火屬初級魔法を放った。

「へぇ、弾數が多いな」

思わず朝日がそう想を溢す。

普通の魔法使いであれば大八発が限界であるそれを勇二は十二発放った。

勇二の魔力により生み出された炎の弾丸は迷うことなくウィリアムのもとに飛んでいく。

それをウィリアムは剣の一閃で全てをかき消す。

思わず驚く勇二。

しかしその驚きも一瞬、すぐさま剣のグリップを強く握り直しウィリアムに向かい剣をふるう。

「む、訓練の時よりも早く鋭い。程、実力を隠していたか」

しかし、ウィリアムもそんな勇二に負けじとガード、反撃を繰り出す。

先日の模擬戦騒を思い出させるような試合だが、あの時とは比べにならないくらいにレベルが高くなっている。

そんなとき試合にきがあった。

剣と剣がぶつかりあい、鍔迫り合いになったのだ。

今出せる全力を出して踏ん張る勇二。

それに対抗するかのように一歩一歩踏み出し勇二を力で押さえつけるウィリアム。

一見ウィリアムが有利に思われたそれは勇二が見つけ出した突破口によりいとも簡単に崩れ去った。

「っく!?こうなったら!炎よ敵を焼き貫け『ファイアボルト』!」

勇二が詠唱を終えた瞬間、ウィリアムの鎧に衝撃が走った。

思わず、鍔迫り合いを中斷し後退するウィリアム。

その鎧には勇二の魔法によって刻まれた、いくつもの凹凸ができていた。

「ここで魔法を使うとは考えたな」

そういってウィリアムは剣を構えなおす。

「では、ユージ殿、私のこの攻撃をけきれたら晴れて合格としよう、行くぞ!」

その言葉に勇二は張を強める。

そういったウィリアムの周りには風が立ち込めていた。

「夢現流魔法剣『飛翔剣』!」

ウィリアムはそうぶと同時に後退したその場から剣を振るった。

それは不可視の斬撃。

眼で見ることはかなわなぬ風の一撃。

その攻撃を勇二は.........

剣で空を縦に斬りつけ凌ぎきった。

そんな勇二にウィリアムは頷く。

「ふむ、確かに実力は上がっているな、それに勘もいい、宜しい合格だ!」

その言葉に勇二は満足げな表を浮かべその場に座り込んだ。

to be continued...

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