《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》1-25 旅立ちの試練3

「うー。痛いよぉー」

未希の試合が終わった後、未希はうずくまっておでこを抑えていた。

「バカかお前は!?なぜ自分の開けたに埋まる?もっと周りを見て戦え!」

「う”。ゆうじ―」

「…ごめん未希、流石に今回は僕でもフォローできないや」

そして、朝日と勇二から説教をけていた。

「っていうか頭痛いんだけど」

「……お前、回復魔法使えたろうが。それ使えよ」

「あーそうだった。えっと、痛いの痛いのとんでけ!『キュア』」

未希が回復魔法の(でたらめな)詠唱をするとみるみる未希のおでこの腫れが引いていった。

「はぁ、ったく。それじゃあ殿はオレか」

そういって朝日は地面に腰を下ろしているウィリアムの前に立つ。

「む、今回は逃げようとしないのだな」

「まぁな、今回のはどうやっても逃れそうにないしな」

そういって朝日は肩をすくめて見せる。

「ふむ、それで得はどうす「このままでいい」…なに?」

朝日の放った言葉に自分の耳を疑い、思わず聞き返すウィリアム。

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「あ?聞こえなかったか?武はいらないと言ったんだが」

しかし帰ってきたのは先ほどと同じ言葉。

「なめている訳では、無いようだな」

ジッと朝日の目を見つめ、朝日が本気で言っていることを確信するウィリアム。

「あぁ、それじゃ、さっさと始めようぜ?早く終わらせて今日はとっとと休みたいんだ」

そういってウィリアムから距離をとる朝日。

そんな二人を遠目に見つめる未希と勇二。

「大丈夫かな朝日、初日以來いてるところ見てないんだけど」

「うーん、でも朝日だよ?何の策もなしに行するとは思えないよ?」

それに、と勇二は続ける。

「武なしで挑むなんて明らかにおかしい、魔法の練習の時にも無屬魔法しか使ってなかったし…」

そういって勇二が朝日とウィリアムを見やるとお互いに向き合って禮をしていた。

「お、始まるね」

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ウィリアムと朝日は互いを牽制しあっていた。

互いのきを見張り、どちらか片方がけば即座に対応できるように。

そんなの張りつめた空気を最初に破ったのは...

「ふんっ!」

ウィリアムだった。

彼は手に持った模擬剣を上段で構えこちらに突進してきた。

しかしそれを朝日は、

「うわ、イノシシかよ。相手の手のが見えないからって即潰しに來るか」

そんなことを言いながらウィリアムが丁度自分の三メートルほどの距離にった途端、朝日は高く飛んだ。

突進していた彼も思わず止まった。

「ふん、そんなに高く飛んだところで後ろに避ければ「殘念ながらそうはいかねぇよ!」なに?」

朝日はそう言うが早いか手の平をウィリアムに向かってかざす。

無き魔力よ!彼の者を討て!『フォースバレット』!」

一度でも彼の詠唱を聞いたことがある二人は気付いただろう、詠唱の一部が省略されていたことに。

朝日が詠唱した魔力の弾丸は迷わずウィリアムのもとに殺到する。

「っく、またもや魔法か!」

そういいながら、自分に當たりそうなものは剣で弾き、それ以外はギリギリのところで回避した。

全ての弾丸を捌き終った時、すでに朝日は地に足を付けていた。

「被弾なしか、流石だな」

「ふん、當然だ」

そのやり取りの後、ウィリアムは再びこちらにとびかかってきた。

朝日はそれを回避すべく別の魔法の詠唱を開始した。

「はぁ面倒くせぇ、我がに宿る魔力よ、我がを強化せよ『ブースト』」

朝日がその魔法を発した瞬間、朝日のから淡いがあふれだした。

「な!?強化魔法!?」

斬りかかってきたウィリアムは若干戸いながらもそのまま剣を振り下ろした。

しかし、振り下ろしたそこに朝日はいなかった。

「危なかったな、ぶっつけだったが発したか」

聲のした方向を見るとそこには傷一つない朝日がいた、淡いはすでに収まっているが。

「ふぅ、それじゃあ奧の手、お披目と行きますかね」

そういって朝日は空中に右手をかざす。

それはいつか見た神のように。

ウィリアムはその様子をじっと見つめる。

「我がに宿る魔力に命ず、我が想いに応え、その力を現化させよ!『クリエイトマジック』!」

朝日の詠唱が完了した瞬間、彼の手の平に魔力が集まり始めた。

「な!?可視化出來るほどの魔力濃度だと!?」

ウィリアムが朝日の右手に渦巻く魔力を見て思わずつぶやく。

その魔力は徐々に細く、長く、鋭く、形をしていく。

そして朝日がその魔力を思いっきり摑むことで、集まっていた魔力は霧散した。

その手の中にあったのは水晶の如き剣、半ばき通った青白い剣だった。

彼はその剣を軽く左右に振り、握りを確かめるとウィリアムに突き付けた。

「さ、そんじゃ、続きと行こうか」

その言葉にウィリアムも、ハッとし剣を構えなおす。

「さて、さらに奧の手第二弾」

そういって朝日はポケットの中から一枚の紙を取り出した。

その紙には魔法陣が組まれていた。

「発しろ『ブースト』」

その紙は朝日の放った言霊に反応し燃え上がった。

そしてその紙が燃え盡きたとき朝日のに変化が起きていた。

彼のは先ほどの淡いに、魔力に包まれていた。

「よし、これで準備萬端だ、行くぜ!」

その言葉を最後に朝日の姿が掻き消えた。

「しっ―――!」

次の瞬間、朝日はウィリアムの目の前で剣を振りかぶっていた。

そしてその剣を振り下ろそうとした瞬間...!

「そこまで!」

すぐ傍から靜止の聲がかかった。

その人は...

「國王様!何故にこのような場所に」

「なに、今日は出発の試練の日であろう?気になって見に來たのだが…」

ウィリアムはその場で跪く。

國王はチラリと朝日とウィリアムの姿を見る。

「ウィリアムよ、無理はいかんぞ?いくらお主でも三人連続は厳しかろうに」

「しかしっ…いえ、おっしゃる通りです」

國王はもう一度朝日の方を向いた。

「どうやらウィリアムは本調子ではないようだ。というより貴殿も気づいておったろう?」

國王の探るような眼差し、朝日は肩をすくめてそれに応える。

「ふむ、して、お主はどう思う?アサヒ殿は合格かの?それとも…」

その言葉にウィリアムは首を思いっきり橫に振る。

「不合格だなんてとんでもありません!思いつきもしない奇策、ビックリ箱のように出てくる魔法の數々、合格に値します」

それに、とウィリアムは続ける。

「恐らくですが、アサヒ殿とユージ殿の二人でかかられた場合、全開の私でも勝てる気がしません」

「ほほぅ、それほどまでに」

「はい、さらにそこにミキ殿が加われば、間違いなく勝てませんね」

國王が程な、と呟き朝日達の方を向く。

「聞いての通りだ勇者様方。貴殿等は見事、旅立ちの試練を突破なされた。明日はいよいよ出発の儀だ、今日はゆっくりと休息をとるように」

そういうと國王はウィリアムを従えて王城に戻っていった。

「………僕たちも戻ろうか」

「「…賛」」

ともに疲れ切った三人は國王の後を追うように王城に戻っていく。

見事、旅立ちの試練をクリアした三人。

明日はいよいよ異世界ザナンの冒険、その第一歩の始まりである。

そしてその夜、彼らは夢を見た。

遠い遠い未來の夢を...

to be continued...

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