《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》3-26 帰還と人影
「はぁー、やっと出口だ…この階段、來るときは下りで気にならなかったけど結構しんどいね」
そう言うのは先程冒険者ギルドから來た応援に、拘束した傭兵達を半ば押し付けるように地上に出てきた勇二である。
ちなみに余談ではあるが、応援に駆け付けた冒険者達が拘束され地面に橫たえられていた傭兵達を見て驚き、ドン引きされたのはここだけの話である。
まぁ、そんなことはともかく二人は無事に地上に出てきていた。
「えっと…この椅子と機はこのままにしておいた方が良いんだっけ?」
「うん。確かその筈だよ」
その視線の先にはここに來た時、地下へ続く階段を覆い隠していた板とそれをカモフラージュしていた機と椅子である。
「さて、そんなことよりもまずはギルドに行かないと」
「うん。今頃ラックもギルドで待ちくたびれてるだろうしね」
勇二と未希はそう言って顔を合わせると、すぐにボロ小屋を飛びだし冒険者ギルドへ足を急がせのだった。
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「えぇっと…ナニコレ?」
冒険者ギルドの扉を開け放ち、その先に見えた景に二人は思わず呆然と立ち盡くした。
そこにあったのは修羅場だった。
ギルド部を職員が駆けまわり、あちらこちらでは悲鳴のような絶のような聲が聞こえ、何とも言えぬピリピリとした空気が漂っていた。
「あ、見ろ!『銀騎士シルバークライヴ』と『白の聖エーデルワイス』が帰ってきたぞ!」
中にいた冒険者の男が勇二達の姿を捉え大きな聲でそう言うとギルドを駆けまわっていた職員の視線が二人に釘付けになる。
「あ、よかった!ご無事だったんですね!」
勇二達の前まで勢いよく詰め寄りそういうのはこのギルドへ來た時に素材の買取を依頼した付嬢だった。
「あの白黒の娘がいつまでも戻らないから心配で心配で…」
「え…?白黒って、ラックのことですか?僕、地下で別れてから一度も會ってませんけど?」
付嬢の言った言葉の中に気になる點があった勇二は思わず聞き返す。
「えぇ…?そんなはずは…丁度そちらの聖さ…ミキさんが一度こちらにいらして、またそちらに戻られた時。それから暫くして、お二人の様子を見てくると言って出ていきましたよ?」
「未希?」
付嬢の言葉に未希のほうを見やる勇二。
「いや、私も子供たちを送り屆けて、すぐに勇二の方に行ったから分かんないよ?」
しかし、當の未希はその狀況があやふやなのかコテン、と首を傾げている。
「どこかでれ違い…は、ないね。あの道を教えてくれたのはラックなんだし」
そう言って自の至った施行を自己完結し終了させる勇二。
「ま、まあ。あの娘も仮にもBランク冒険者なわけですし大丈夫なのでは?っと、そうだ忘れるところでした!奧の個室でリースさんがお待ちです」
「?誰ですか、その人?」
「シェリーさんのお母さんですよ。って、そう言えばお二人は依頼人の名前も聞かずに飛び出して行かれたんでしたね…」
こんなこと當ギルドでは前代未聞の出來事です。と付嬢は溜息をつく。
「さぁ、お二人が待ってますからお早くお早く!」
「わ、分かりましたから押さないでください」
こうして勇二と未希は付嬢にせかされつつギルドの奧にある個室へと歩みを進めてゆくのだった。
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その頃、同じく地上のある小屋では...
「っく…!何なのだあの小僧は!私の金で集めた傭兵どもが全く役に立たんではないか!更には付近の森で捕まえてきた変異種のフォレストベアまで殺される始末…!」
そう言って固く握ったこぶしを小屋の壁にたたきつける小太りな男。テルダ・ケルロ。
「長いこと商人をやってきたがここまでコケにされたのは初めてだ…!」
そう言ったテルダ・ケルロはに濁った瞳に怒りの炎を宿す。
「やはりあ奴には商人を馬鹿にした罪を味わってもらわねばならん」
しかし、そんなことを言って邪悪な笑みを浮かべる彼は気付かない。彼の後ろに近づく人影に。
冒険者ギルドの前に今回の件の首謀者として鎖で拘束されたテルダ・ケルロがゴミのように投げ捨てられているのが発見されたのはそれから暫く後のことだった。
to be continued...
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