《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》3-31 伝言と昇格

「あれ?ユージさん、ミキさん。買取のはもう終わったのですか?」

ギルドのカウンターにいた付嬢は、倉庫から戻った勇二達に気付きいち早く気付くと、駆け寄ってそう話しかけてきた。

「それが、もう暫く時間がかかるから先にギルドに行けって…」

「応援をよこしてくれーって言ってたよ?」

「そうですか。そういうことなら、分かりました。こちらへどうぞ」

そう言って付嬢は二人をギルドの付に案する。

「え?でも僕達、特に依頼とかけてませんよ?」

そう言って歩きながら疑問を口にする勇二に、付嬢は呆れたような顔をする。

「昨日、ユージさんが飛び出す前にギルドの正式な依頼とするための手続きをしていたでしょう?ユージさんもその場にいましたよ?」

「あー、うん。多分憶えてる」

そんな勇二の曖昧なけ答えを見た付嬢は呆れのを更に強くする。

「…まぁ、いいです。とにかく、お二人には依頼の報酬をけ取ってもらいたいのです。木版を提示していただければ、この報酬も金額を上乗せいたしますよ?」

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「あ、それじゃあお願いします」

「承りました」

付のある所まで辿り著き、カウンターに立った付嬢はそう言ってカウンター下から金屬同士がれ合う音を立てながら小さな麻袋を取り出した。

「こちらが報酬の金貨一枚と大銀貨二枚、銀貨四枚枚。そして上乗せ分の金貨一枚と大銀貨二枚になります」

日本円にして約二十萬円である。

「おぉ!結構多い。ありがとうございます。あ、でもラックの分どうしよう」

付嬢に木版を渡し、報酬をけ取った勇二は思わずそんなことをこぼす。

そんな勇二の呟きに反応したのは意外な人だった。

「おや?あの白黒の娘なら報酬をけ取らずに伝言だけ殘してどっかに行っちゃったわよ?」

それは高長に鮮やかな青い髪が印象的なエルフのだった。

「あ、ギルドマスター。って伝言?」

その、冒険者ギルド、リユニオン支部のギルドマスターであるレイーネの存在に気づいた勇二は、彼の言葉の中に気になる単語があったのか、聞き返す。

「えぇ。何でも「待ち合わせをしていた仲間と合流ができたので自分は先を急ぎます」…だったかしら?」

どうやらその伝言によればラックは既にこの街にはいないらしい。

「ちなみにどこで會ったかは…?」

「ギルドでよ。朝早くから、それこそまだ日の昇らないから來ていたわ。貴方達によろしく伝えておいてくれとのことだから、しっかり伝えたわよ?」

「そう、ですか…なーんだ、昨日の夜から見かけないと思ったら仲間と合流できたんだ」

そう言って安堵の溜息をつく勇二と未希。

「えぇ、話を聞く限りではそのようね。…それよりも貴方達、覚悟なさい」

「「へ?」」

ギルドマスターのいきなりの言葉に、思わず間の抜けた返事をする勇二と未希。

「今回の見た素材。なかなか數が多い上に質の良いものも多かったから…かなり高額になるわよ?買取金額」

「そんなに…ですか?」

「そんなによ」

何かの冗談かと思い軽い気持ちでそう尋ねた勇二、だが帰ってきたのは即答。割と本気マジなギルドマスターの視線に思わず二人は直する。

「まず、皮。これは切斷面もきれいで面積が大きくなるように解されている。それからは保存狀態がかなり良く抜きもしっかりと施されているためそれなりの値段で買取が可能。その他の素材も品質が良く高額での買取が期待できるわ」

「え、え?」

勇二が困している中、ギルドマスターはそれを気にすることなく今回の買取の要點を読み上げる。

「加えて貴方達が昨日、地下で大暴れしたことによるある一部の品の値段がし高騰していて、それに木版の上乗せ分を加えて…」

「金貨十二枚に大銀貨八枚、銀貨四枚と大銅貨七枚で合計十二萬八千四百七十ギルよ」

その金額を聞いた瞬間、勇二と未希の時は完全に止まった。

一ギルは大日本円で十円ほど。

つまり、日本円でいえば今回の買取金額は約百二十萬円となる。

勇二達は冒険者となり、いろいろな街で依頼をけ、魔の素材の買い取りや報酬をけ取ってきたが、今回のそれは過去最大金額といってもいい。

ちなみにこの前までの最大はリザーブの街でけたゴブリン討伐だったりする。

「いやはや、さすが期待の新人君だねぇ。なかなかいないわよ?Cランクでここまで稼ぐ人」

ギルドマスターはおどけたようにそう言ってカウンターの上に貨のった麻袋を置く。

「もういっそのことランクアップしちゃう?」

ギルドマスターのそんな発言を聞いた勇二の頭にある疑問が浮かんできた。

「え?でも、それには特別な試験が必要だって…」

そう、それは冒険者ギルドの掟の一つ。

『Cランク以上のランクに昇格するには特別な試験をけなければならない』というものだ。

「あぁ、その規約ね。大丈夫よ。私、ギルドマスターだし」

しかし、対するギルドマスターは特に気にした様子もなく言ってのける。職権用である。

「それに、そもそもその規約だって未來ある冒険者が、高ランクの依頼で簡単に命を落とさないようにするためのものだからね。貴方達は大丈夫でしょう?見たじそれなりに修羅場をくぐっているみたいだし」

「え?分かるんですか?」

「當然。ギルドマスターなんだから、人を見る目はピカイチよ」

そういって片目を閉じてウィンクするギルドマスターに勇二と未希は一度視線を合わせどちらともなく頷く。

「それじゃあ、お願いできますか?」

「分かったわ。あ、でもギルド証の更新に一日かかるんだけど…もしかして今日、依頼をけるつもりで來た?」

「いえ。それならちょうどよかったです。ちょうどこの後、裝備の新調と食料の補充のために買いに行く予定だったので…あ、どうぞギルド証です」

勇二はそう言ってギルドマスターに自と未希のギルド証を手渡す。

「あら、そう?この街は買いをするには最高の場所よ。いい品が見つかるといいわね」

「ハズレを摑まされないように気を付けます」

カウンター上に置かれた麻袋を手に取り、懐にしまうと勇二は肩をすくめ、冗談めかしてそう言った。

「それじゃ、未希が我慢の限界っぽいのでそろそろ行きますね」

勇二はその視線を、今にもギルドの中から飛び出しそうなほどソワソワして待ちきれない様子の未希に向け苦笑し付のカウンターに背を向ける。

「ふふ、苦労するわね。男の子は」

ギルドマスターはそんな二人の様子を羨ま…微笑ましげに眺める。

「またのお越しをお待ちしております!」

こうして、勇二と未希は、ギルドマスターが來たことで完全に空気と化していた付嬢の聲を背にけながら冒険者ギルドを後にするのだった。

to be continued...

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