《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》3-32 リユニオンの鍛冶師
冒険者ギルドを出た勇二は、一人手に持ったメモを見ながら街の中を歩いていた。
流石は人間國最大の商業の街というべきか、街の至る所に店があり、その一つ一つの店の商品もそれなりにいいものを扱っているようだ。
「えっと…ダグダさんの言っていたお店は…」
勇二はそんなことを言いながら、あたりを見回す。
ちなみに、未希は現在、勇二とは別の場所に手買い中だ。
というのも、前衛を擔當をする勇二と後衛の未希では必要な裝備品などが異なってくるために別々の店に行く必要があるのだ。
その一つ一つ店を當たっていては時間を浪費してしまうため、こうして時間短のために別行をしているのだ。
決して、関係ない未希の服選びに付き合わされるのを避けるためではない。
まあ、もっとも、つい先ほど消耗品を買った時までは一緒にいたのだが...
「お、あったあった。ここだよね?」
勇二は手元にあるメモに記してある店の名前と目の前にある店、その看板にある名前を見比べ、間違いがないことを確認すると安堵の息をつく。
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「よかったー。やっと見つかったよ…」
そう言って溜息をつく勇二の目の前には無骨、と表現するのがのがピッタリと合う一軒の石造りの店があった。
その店の鉄製の看板には『アイアン・スミス』という文字が彫り込んであった。
勇二達はリザーブの街を出る際にパーティ『世界樹の木』のリーダーであるジョウからリザーブの街の鍛冶師、ドワーフのダグダの紹介狀をけ取っていた。
その紹介狀の裏には小さく店名が書かれており、その店こそが目の前の『アイアン・スミス』である。
「ダグダさんの紹介だしやっぱり腕のいい鍛冶屋さんなんだろうなぁ」
そんなことを呟きつつドアに手を掛けた勇二だが、ドアの後ろから何かがが勢いよく近づいてくる気配を察して急いで後に飛び退いた。
次の瞬間、店の中から人が數人、ドアを突き破って目の前まで飛んできた。
その景に思わず勇二は呆然とする。
すると、店の中からこれをやった張本人であろう者の聲が聞こえてきた。
「この腑抜け者どもが!貴様らのような者たちに儂の剣が握れると思うな!分かったらとっとと消えろこのモヤシ共!」
そう言って罵倒の言葉を口にしながら出てきたのは普通の人間よりしばかりか小さい軀の男だった。
その男は小さい軀には不釣り合いな黒い髭を生やした顔を激しく歪め目の前で蹲っている男達を睨み付ける。
すると睨まれた男達は蛇に睨まれた蛙の如くビクリと肩を震わせて一目散に逃げだした。
男達がその場を去った後、未だに呆然としていた勇二に男の視線が突き刺ささる。
「どうした若いの。剣を探しているなら、他を當たれ。殘念ながら貴様のような細腕で握れるような剣は置いていないぞ」
男はチラリと勇二の姿を一瞥するとつまらなそうにそう言った。
今、勇二は軽鎧をに著けておらずシャツの上にジャケットを一枚羽織り腰に剣の鞘をぶら下げただけという出で立ちで、勇二の格を正確に見抜けなかったが故の発言だろう。
「あ、ちょっと待ってください。実はリザーブの街のダグダさんから紹介狀をもらってるんです!」
男が店のドアを立て直し、中に戻ろうとしていたところを気を取り戻した勇二が呼び止める。
「なに、ダグダだと?貴様、それは本當か?」
店に戻ろうとしていた男は勇二の言葉に素早く反応し、顔だけをこちらに向けて話しかけてくる。
勇二は無言で頷くと『道袋アイテムストレージ』から取り出した紹介狀を目の前にかざす。
男は勇二のもとに近づき、その紹介狀をひったくるようにけ取り、紹介狀の中を見る。
すると數分後、男はそれを読み終わったのか紹介狀から顔を上げ勇二の顔をジッと見つめ、辺りを見回す。
「貴様の言う通りこの紹介狀はダグダが書いたものだ。だが、これには貴様の他にもう一人いるとある。そいつはどうした?」
「殘念ながら別行中ですよ。もっと証拠が必要というのならこの剣を見ますか?なんでもダグダさんの師匠さんが打った剣だそうですよ?」
そう言って腰のベルトから剣の鞘を外して男に突き出す勇二。
「いや、必要ない。だがな」
すると男は首を振り僅かに目を細める。
「儂は儂の認めた者にしか打った剣を握らせる気はない。認めてほしいならその剣を振って見ろ。それとも、その剣は飾りか?」
分かりやすい挑発。
だが敢えて勇二はこの挑発に乗ることにした。
「ええ。構いませんよ。その代わり、認めてくれたら剣の値段、割り引いてくださいね?」
勇二はそう言って一つ大きく息を吐き意識を集中させる。
「ハッ――!」
そしてしばしの靜寂の後、勇二はその場で剣を抜き放ち、その場から一歩後ろに引いた後に連撃を繰り出す。
それは左からの橫一閃、素早い二段突き、そしてトドメの右斜め上からの切り下し。
彼にとっての基本的な連撃であるそれを終えた勇二はゆっくりと息を吐きだし、剣を鞘に収める。
「で?どうでしょうか。認めていただけますか?」
鞘を再びベルトに繋ぎながら勇二がそう聞けば男は小さく唸り聲をあげる。
「実に憾であるが、その手腕誠に見事である。貴様の腕を認めよう、ついてこい」
男は勇二にその表を見せることなくそう言うと一人先に店の中にっていく。
勇二はそんな男に軽く肩をすくめながらその後姿を追いかけていくのだった
to be continued...
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