《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》3-44 瘴気

「ああ、面白い。実に面白いぞ、七代目勇者!私にここまで面白いものを見せてくれるとはな!」

剣の使徒はそう言ってひとしきり笑った後、突如笑いを止め己の大剣を天に掲げた。

「魔王様。やはりこの者たちは脅威です。このままでは貴方様の崇高なる計畫の弊害になってしまうことでしょう。誠に勝手ながら私がこの命に代えてかの者たちを地獄に落として差し上げましょう!」

剣の使徒は天を仰ぎそういうと、突如天に掲げたその大剣を地面に突き刺し、何やら詠唱のようなものを始めた。

「何始める気か知らねぇが、させるか!」

朝日は使徒のその行を阻止すべく飛び退いたその場から一気に剣の使徒に詰め寄ろうと駆けだす、が。

「ッ!?なんだこれは…?」

突如、使徒のからあふれ出てくる紫の靄にその足を止める。

その靄は煙幕のようにあたり一面を覆い隠し、徐々に朝日と勇二達のいる場所へ迫っていた。

≪マスター。これは恐らく『瘴気』かと…≫

朝日の右の手の甲に赤い模様が浮かび上がり、そこから『魔剣サクリファイス』の意思が朝日の疑問を補足した。

「『瘴気』?」

『瘴気』というのは源は怨念や不純な魔力が凝された結果。

すべてを魔、又はそれに近しいものに変化させてしまう質を持つ強力な『毒』のことである。

先程から使徒が幾度にもわたって『瘴気』を噴出させているのは、あの使徒の存在が『瘴気』に由來するものであるからであると考えて間違いはなさそうだ。

もっとも、それがこの使徒特有のものなのかほかの使徒にも共通するものなのかは不明ではあるが...

閑話休題。

どうにしろ『瘴気』というのは人だけでなく自然環境にも悪影響を及ぼすのは事実。

魔剣と一化している朝日はその恩恵によって『瘴気』の力を無効化できているが、勇二達はそうとはいかない。

能力が他よりも優れている以外は殆ど普通の人間と変わらないのだ。

瘴気により狹まりつつある視界の中、華夜が勇二と未希の手を引きその場を離しようとしているのが目にる。

「俺に関しては特別気にすることじゃないが…ま、仕方ねぇか」

瞑目すると腰を低くし、剣を下段で構える。

「強化しろ…『ハイ・ブースト』」

朝日は改良したオリジナルの強化魔法を自にかける。

「シッ――!」

そしてそのまま剣を橫薙ぎに一閃した。

強化された朝日の斬撃によって発生した剣圧はまるで衝撃波のように辺り一面に充満した『瘴気』を斬り裂き、霧散させてゆく。

「どうやら、今の攻撃は文字通り『自を削った攻撃』だったようだな」

『瘴気』が霧散したことにより開けた視界の中、剣の使徒は地面に突き立てた大剣にしがみつきその場に膝をついていた。

to be continued...

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