「『華夜』…」

小さく囁くように呟いた朝日の聲がシンとした雰囲気に覆われた窟の中を木霊する。

朝日の見つめる水晶の柱。

その水晶の中では一人のが、まるで眠るようにその瞼を固く閉じていた。

歳は十代前半、長い黒髪が印象的な小柄な。

數年前を皮切りに見ることの葉わなくなったその穏やかな寢顔に、朝日は思わず取り留めなく流れる涙の事も忘れ見っていた。

「やっと、やっと逢えた…これでオレは…」

朝日はうわごとでも口にするようにそう呟きながら水晶柱に縋りつくようにその場で膝を落とす。

「っ！？」

そして朝日の黒い右腕が水晶にれた途端、朝日は言いようのない違和をじとった。

いや、この覚には覚えがある。

もしかしたらこれは違和というよりは既視と言った方が正しいかもしれない。

この覚を初めてしたのはこの世界に來てから二日目の事。

特殊な魔道を使って魔力量の計測と魔法適正を調べたときだ。

適を調べるために使用したカーペット狀の魔道にれたときにじたからナニカが抜き取られるような覚。

今じ取った覚に最も近いのがそれだ。

「今のは一…？もう一回れて見るか…」

興味半分でもう一度水晶柱にれてみる朝日。

すると再び水晶がからチカラを吸い取るような、そんな覚に襲われた。

「一この覚は何なんだ…？不思議と不快ではないが」

朝日はそう言って一度水晶から手を離すと怪訝そうな顔をして自の手と水晶柱を見比べる。

すると、そんな朝日の脳に聲が響く。

≪僭越ながら、マスター≫

「どうした、サクリファイス」

それは朝日と契約した魔剣。

その意思であり本、霊でもある『魔剣サクリファイス』だった。

≪恐らくですが、その水晶はマスターの魔力に反応、共鳴しているのではと推測されます≫

「共鳴だと？そりゃまたなんで？」

≪…この水晶。近なところで見覚えはありませんか？≫

サクリファイスのその言葉に朝日は一度記憶の中に探りをれる。

その答えはサクリファイスの言う通り案外近なところにあった。

「まさか…創造魔法クリエイトマジックか…？」

目を丸くし、朝日は魔法で作り上げた剣と水晶柱を見比べる。

確かに大きさに違いはあれどどことなく似通った點が見られるようだ。

よくよく観察してみれば目の前にある水晶柱からは決してなくない魔力が認知できた。

普段ならこれだけの魔力、すぐにじ取ることができただろうが『妹』を目の前にして気が転していたのだろう、朝日にしては珍しい見落としだった。

「だが…創造魔法はオレと初代勇者にしか…って、まさかこの空間を作り上げたのが初代勇者ってことか…！？」

そこまで考えた朝日は自の考えを否定するように首を橫に振る。

「いや、ありえないな。初代は五百年以上前に死んだはずだ。もしそうだとしても華夜がここにいるのは明らかにおかしい。そうだろ？」

≪私には答えかねます≫

「…まて、サクリファイス。お前まさか何か知ってるのか？」

≪………≫

「だんまりか…まあいい。そんなことより、まずはこっちが先だ。サクリファイス、この水晶をどうすれば華夜を外に出すことができる？」

≪…まず水晶にれてください。そのあとは普段創造魔法を扱うときの覚で水晶を変質させれば可能かと…≫

「わかった。やってみよう」

そう言って早速水晶柱に手の平を當て、魔力を注ぎ込む朝日。

朝日の魔力にれたそれはゆっくりとその形を変化させてゆく。

「む？なかなか難しいが不可能ではない、な」

そんな獨り言をつぶやきながらも作業の手を止めようとしない朝日。

しかし、朝日は作業に熱中するあまりその存在に気づくことはなかった。

≪…非に申し訳ないのですが、マスター≫

「なんだ」

≪敵襲エネミーです≫

「は？」

そんな間抜けな聲を出して振り向いた先いたのは竜だった。

手足を重石に繋がれ、とげの付いた首を裝著した地を這う飛竜ワイバーンがそこにいた。

to be continued...