《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》4-17 決別の日
それは普段と何も変わらない帰り道から始まった。
この日を境に朝日と華夜、二人の兄妹の運命は大きく狂い始めた。
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「あ、そういえばお兄ちゃん。あの噂、聞いたことある?」
「噂?」
いつも通りの帰り道。
朝日と華夜は何気ない會話をしながら帰路についていた。
そんな中、華夜の口にした話題に朝日が耳を傾ける。
「ほら、杉崎先輩と宮先輩の噂」
「杉崎君と宮さんの?」
「そうそう!さっき宮先輩に直接聞いたんだけど、あの二人って付き合ってないんだって」
「え、意外だね。いつも一緒にいるからすっかり付き合ってるものかと」
「だよね!いっつも一緒なのは馴染だからじゃないかな?」
「あー、そういえばあの二人ってそうだっけ?」
「うん。あ、でも宮先輩は杉崎先輩のこと好きらしいよ?」
「それ、ファンクラブの人たちが聞いたら杉崎君を全力で殺しにかかりそうだね」
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「うわぁ…」
その場面を想像したのか華夜の表がひきつる。
「あれ?でも、その気持ちに杉崎君は気付いてるの?」
「……お兄ちゃん。ただでさえあんなに仲がいいんだよ?気づいてたらとっくに付き合ってると思うよ?」
「え?あ、そうか」
「お兄ちゃん。ほんとにそういったところ鈍いよね」
「あ、あははは」
呆れたような口調で朝日にジト目を向ける華夜。
朝日はその視線から逃れるように顔を背け乾いた笑いを浮かべる。
「あ、いけない!」
「うわっ!?華夜、どうかしたの?」
「學校にノート忘れてきちゃった…」
「えー、取りに行くの?今から?」
「むぅ…行きたくないならお兄ちゃんは先に帰ってていいよ」
そういって不貞腐れたような顔をしながら今來た道を走って引き返す華夜。
朝日はそんな華夜をみて「仕方ないなぁ」とひとり呟いて華夜の後を追いかける。
幸い、まだそこまで遠くには行っていなかったようですぐに追いつくことができた。
「來るならくるって言ってよ…」
隣を歩く華夜のそんな呟きに朝日は小さく苦笑しながら彼の頭を軽くでる。
「………」
全く反応がないが赤くなった耳を見るに喜んではいるらしい。
その後はお互いに無言のまま時が過ぎていく。
そのまま無言で歩き続けてそれなりの時間が経ったその時、華夜は急に立ち止まった。
「華夜?」
怪訝そうな顔をする朝日に対して華夜はどこか不安そうな顔をしている。
「お兄ちゃん…揺れなかった?」
「え?」
「ほら、また地震が…」
華夜はそう言って朝日の腕にしがみつく。
そんな華夜の様子を見て、朝日は意識を集中させてみるが揺れはじられない。
「華夜?地震なんてなかったよ?」
「うそっ、だって今もこんなに強く揺れて……!?」
朝日の言葉を否定しようと華夜が言葉を紡ごうとしたその時、異変は起きた。
華夜の足元を突如怪しいりが囲い始めたのだ。
そのは肩幅ほどの大きさの円になり、その中に陣を描き始めた。
「なに、これ…」
「華夜!早くそこから出るんだ!嫌なじがする!」
「ダメ、足がかないの!」
朝日の視線の先には一生懸命足を上げ一歩を踏み出そうとしている華夜の姿があった。
しかし、どれだけ足に力をれてもその足が持ち上がることはなかった。
「っ!華夜、手を!」
見かねた朝日が華夜に手を差しべる。
華夜がその手を取ったのを確認すると朝日は力いっぱいその手を引っ張る。
しかし、華夜の足はまるで地面にくっついているかのようにかない。
「たすけて、おにいちゃん!」
どんどんの強さを増していく魔法陣に華夜は焦燥と恐怖のり混じった聲でぶように朝日を呼ぶ。
その瞳には大量の涙が溜まっていた。
朝日はそんな華夜を見て手を握る力を強める。
「お兄ちゃん…!」
そして次の瞬間、魔法陣が激しいを発した。
眩いの中で自分を呼ぶ華夜の聲が聞こえた。
華夜が視界から消えるのと同時に朝日の意識はそこで途絶えた。
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この日、地球上から東山華夜という人は跡形もなく消え去った。
その日は奇しくも朝日達が『異世界ザナン』に転生した日と同じ日付だった。
to be continued...
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