《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》4-23 理解できない

リビングでの出來事から數十分。

華夜は一人、湯船に浸かりながら虛空を見つめていた。

「兄さん……」

小さく呟いたその言葉は、湯気で満たされたその空間に小さく木霊した。

の脳裏には先程、『魔剣サクリファイス』のであるが言い放った言葉が浮かんでいた。

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「マスターが捧げたもの、それは……」

「魔王討伐後における自の命、その全てです」

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「わからないよ…なんで兄さんがこんなことをするのか、全然理解できないよ……」

俯き、瞳に涙をためながら小さく呟いた華夜の肩は僅かに震えていた。

『魔王討伐後の命を捧げる』。

これは魔王が朝日達、もしくはその他の第三者によって倒された時、朝日の命が『魔剣サクリファイス』との契約の対価として捧げられるということ。

つまり、それはそのまま『朝日の死』を意味する。

現狀、朝日達の最終目的は『この世界に再び復活して現れた魔王を討ち滅ぼす』ことだ。

そして、その魔王が復活に要する期間は多く見積もって一年半。

その二つのことから導き出される答えは単純明快。

『朝日の壽命があと一年半ほど』という事実である。

當然、この程度の答えに行きつかないような彼ではない。

話を聞くうちにすぐに気が付いた。

そして、それに気が付いた時、華夜は目の前が真っ暗になった。

それからのことは記憶にない。

気が付いた時にはすでに彼は自室のベットに運ばれており、後から二人に聞いた話によると、どうやら自分は気を失って倒れたらしい。

ちなみに何故、彼が風呂に浸かっているかというと……

「寢汗いっぱい掻いたでしょ?お風呂れたからってきていいよ」

と、いう二人の溫けて今に至ったわけである。

木材で四方を囲われた浴室に石造りの浴槽、天井と壁には雨除け、風除けの魔法が施された換気用の窓が開けられており、そこからは『普段通り』であれば満天の星空とそこに浮かぶ月が一できる。

しかし、今は生憎の大雨だ。

雨風こそってこないものの、外から聞こえる雨音はそれだけで気分を沈ませる。

「おにいちゃん………」

そんな大雨につられてか、遂に華夜の瞳から一筋の涙が零れた。

華夜はまるでダムが決壊したように溢れ続ける涙を惜しげもなく流し続けた。

幸いにも徐々に大きくなっていく嗚咽は雨音がかき消してくれる。

「おにいちゃん…おにいちゃっ………」

こうして華夜はお風呂から上がるまでの數十分の間。

一人涙を流し続けたのだった。

to be continued...

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