《異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー》5-1 夜明けの曇り空

嵐の吹き荒れる夜が明けた。

空は未だに雲で覆いつくされているが昨日のような大雨はもう降り注いではいなかった。

そんな薄暗い曇り空の下、勇二は一心不に剣を振っていた。

辺りにはただ模擬剣が風を切る音だけが響いていた。

「っ!」

しかし勇二の朝練は次の瞬間、予想外の介者によって中斷することとなった。

ただひたすら素振りを続けていた勇二に向かってきたのは鋭い殺気。

勇二がそれにづくのとほぼ同時に複數の飛翔が勇二の顔めがけて飛んできた。

「はあっ!」

しかし、勇仁はそれに殆どじることなく飛翔、投げナイフを一つ一つ余すことなく捌いていく。

すべてを捌き終わったとき、勇二の目の前には拍手をしながらこちらに近づいてくる華夜の姿があった。

その姿は出會った時の白黒裝束ではなく短パンにジャケットという隨分とラフな格好だ。

「反応速度、剣のキレ、どちらをとってもお見事です。流石ですね、勇二さん」

「おはよう、華夜ちゃん。いきなり殺気が飛んできたからビックリしたよ」

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「おはようございます。でも、勇二さんならあの程度、どうとでもなるでしょう?」

「意識を素早く切り替えることができてればね。華夜ちゃんも訓練?」

「……ええ、まぁ」

勇二の問いに曖昧な表現で返す華夜。

この時、勇二は気付いていなかったが華夜の目元には濃い隈ができていた。

勇二が気付かなかったのは単に彼が鈍だから、というわけではなく華夜が目元に出來た隈を誤魔化しているからだ。

実はこの世界にも化粧品というのは存在している。

値段自はそれなりに高価ではあるが、低品質のなら一般家庭の主婦が一か月無駄な買いを我慢すれば手にる程度の値段で手にれることができる。

華夜が使っているのはそれなりに高価な部類にるものだが、元居た世界での某化粧品メイカーとも張り合えるレベルのものがそろっている。

閑話休題それはさておき。

朝日や未希ならば気づいたであろう、その微細な違和に勇二は例のごとく気づかない。

「あれ、違った?……っあ!もしかして模擬戦をおみかな?」

いや、それどころか全く別の方向に勘違いを始めた。

どうやらこの鈍は日々進化しているようだ。

「いや、違いますけど……そうですね、うん。一戦だけお相手していただけますか?」

「お、やる気だね?」

「ええ。し気分転換がしたかったので」

「よし、だったら早速始めよう!ルールは―――」

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丁度その頃、所変わって朝日の自室。

そこでは未希がベッドに腰かけた朝日のにまかれた包帯の換をしていた。

「朝日、キツくない?」

手慣れた様子で包帯を取り換えていく未希。

対する朝日は時折を捻ったりしてかしながらの調子を確かめていた。

「ああ、問題ない。悪いな、一人でも出來ないことはないんだが、どうにもまだが思うようにかなくて、な」

「気にしないでいいよ。華夜ちゃんには見られたくないんでしょ?」

「……ああ。助かる」

言葉足らずに禮を言う朝日だが、その顔にはどこか影が差しているように見えた。

実は今朝、様子を伺いに朝日の部屋にった二人はたまたまその時起きていた朝日に、「昨晩見たことは華夜にだけは絶対に言わないでくれ」と念を押して頼まれたのだ。

ちなみに、『見聞きしたこと』でなく『見たこと』なのは朝日自が昨晩『サクリファイス』と話しているとき、二人が貍寢りしていたことを知らなかったためだ。

勿論、勇二と未希とて『あの話』を口外するつもりはないのだが...

閑話休題それはさておき

ボーっとしたまま宙を眺め始めた朝日の顔を怪訝そうな顔で未希が覗き込む。。

「朝日?」

「…ん?ああ、なんでもない。……それにしても、流石だな」

一瞬、ハッとしたような顔をした朝日だがすぐに話を逸らすように中にまかれた包帯に視線を向ける。

「…まぁね。長年、無茶ばかりする人が隣にいたからねー」

「……ほんと、なんでそんなに仲がいいのに一切の進展がないんだろうな」

「な、何のことかな!?」

「痛っ!?締めすぎだバカ!」

未希が揺し手元を狂わせたために、中に巻かれた包帯にを圧迫された朝日は思わず悲鳴を上げる。

「あっ!ご、ごめん!」

幸いにもすぐに朝日の異変に気が付いた未希の手によってその狀況はすぐにすることができた。

「あのなぁ…?いつまでもそんな調子で、これから先進展は、って、締めんな締めんな!分かった、からかいすぎたっ!」

「むぅー。朝日のイジワル!」

涙目で訴えかける未希に朝日は軽い苦笑をらす。

「悪かったって……あ、そう言えば勇二の奴はどうした」

「へ?…あ、えっと今なら外で剣の素振りでもしてるんじゃないかな?」

「ホント、相変わらずだな、あいつは」

「そうかな?」

「そうだよ」

「…私達も変わらないよ?」

「……そうか?」

「うん。絶対にそうだよ」

「そうなの、かもな……」

気まずい沈黙が部屋に流れる。

「……はい、終わったよ。あまり激しくき回るととれちゃうからね?それと、無理はしないこと」

そんな中、朝日の包帯の換を終え、未希が立ち上がる。

「ん、サンキュな。善処する」

まだ若干気まずいのか顔を逸らしお禮を言う朝日。

しかし、朝日のお禮の言葉を聞いた途端、未希はに微妙な顔つきになった。

「なんか、朝日が素直にお禮を言うって気持ち悪いね」

「おい、どういう意味だコラ!」

すかさずツッコミをれる朝日。

「あ、私朝ごはん作らなきゃ!」

だが、朝日のツッコミを聞き終えるよりも早く未希は早々と朝日の部屋から立ち去った。

「ったく」

部屋に一人殘された朝日はそう小さく溜息をつき、道袋アイテムストレージから本を取り出した。

そして朝食までの間、朝日は徐々に外から聞こえ始めた木剣同士がぶつかり合う音をBGMに読書を始めるのだった。

to be continued... 

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