《2度目の人生を、楽しく生きる》8話 「ディノスとの差」
さて……セレナはディノスから一本取ることに功した。
次は俺がディノスと戦う番だが……
「さっきはセレナちゃんがあんなに凄い魔法を使えるとは知らず油斷したが、次は油斷しないぞ。
 流石に我が子に負けるわけにはいかん、俺も本気でいこう。」
これだ。
ディノスはめっちゃ警戒している、さっきのセレナのように魔を使う戦い方は上手くいかないだろう。
どう攻めればいいんだ……勝ち目なくね? 
「ルージュが準備でき次第始めよう。 どう攻めるか念りに考えるといい。
言っとくが、ただの魔ではもう俺は倒せないぞ」
さっきのセレナの魔での攻め方は完璧だった。
だが魔を警戒しだしたディノスにはもう通用しないはずだ。
そもそもセレナのように正確なコントロールは俺には出來ないしな。
ならば俺が有利になるにはどうすればいい?
俺のアドバンテージはなんだ? 
あっ、あるじゃないか、俺が唯一セレナよりも優れているものが。
「父さん、1つ聞きたいんだけどさ」
「ん? なんだ?」
まずはディノスに聞かなければいけない事がある。
ディノスがこれを知らなければ俺は確実に有利になる。
だが知っていれば…俺はディノスには勝てないだろう。
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「父さんは……母さんに俺達がどの屬の魔法が使えるかを聞いた?」
俺がそう言うと、フローラは なるほど…、といったじで微笑んだ。
さぁ……どうなんだ…
「いや? 模擬戦での楽しみがなくなるから聞かなかったぞ?」
どうやら知らないらしい……俺が全屬の魔法を使える事を。
これでだいぶ有利になるはずだ。
「なるほど、分かった。 じゃあもう始めよう」
「お、やっとか」
俺とディノスは互いにし離れ、木刀を構える。
「よし…では合図は母さん、頼む」
「はいはい、じゃあ……始め‼︎‼︎」
始まった瞬間、俺は木刀を持っていない左手を前に出し……
「火球ファイアー・ボール‼︎」
ディノスに向かって火球を撃つ。
さぁどうなる……
「ふんっ!」
ディノスは火球を木刀で斬り、火球はそのまま消滅した。
…………は? 魔法を…斬った?
ディノスはそのままもの凄いスピード俺に向かってきた。
「ちょちょちょ‼︎ 」
「おらぁっ‼︎」
ディノスは俺の腹を木刀で毆った。
「ぐあっ!」
俺はそのまま地面を転がる。
「ほら、どうしたルージュよ。 俺は甘くないぞ、もっとがんばれ。
剣聖になりたいんだろ?」
ディノスは俺をまっすぐ見ている。
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その目は普段俺を見る目ではなかった。
明らかに違う、多分ディノスは今俺を息子とは見ていないのだろう。
………上等だ、俺も全力で戦おう。
周りの被害なんて知るか。
「火球‼︎」
俺は空に向かって高威力で、大きさも普通より大きい火球を撃つ。
俺が唯一火屬だけ出來る高威力の魔法だ。
「空に魔法? 何がしたいんだ?」
「風切ウィンド・カッター‼︎」
ディノスの言葉を無視し、すぐに火球に向かって風切を撃つ。
風切が火球に當たった瞬間…
バアアアアアァァァァン‼︎‼︎‼︎
という破裂音と共に、火球が弾け、空から大量の火のが降ってくる。
「なっ⁉︎」
ディノスは上を見て驚いている、どうやらディノスも無數に降ってくる火のを回避する方法は無いようだ。
俺は右手に火を発生させる、火を放つのではなく、右手に纏うイメージを……
「あっつつつつ‼︎‼︎ くっそぉ! 」
ディノスは大量の火のをけ、ワタワタしている。
俺の方は……
「あれ…? なんだこれ?」
俺が右手に発生させ、纏うイメージをした火の魔法は俺の右手ではなく、なぜか俺の持つ木刀に火が纏っていた。
一瞬、もしかして燃えてるのか? と思ったが、違うらしい。
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どうやら俺の魔法は木刀に火を纏わせてしまったらしい。
俺のイメージでは、右手に炎を纏わせ、その炎の右手でディノスを毆ってやろうと思っていたのだが……これはこれでいいだろう。
俺は木刀を構え、ディノスに突進する。
「おっ、やっと火のはなくなったか……… ってうぉ⁉︎ なんだルージュその木刀は⁉︎」
「くらえええぇっ‼︎」
ディノスの言葉を無視し、俺は左下から右上へと切り上げる。
それをディノスは後ろへ飛んで回避する。
「ふっふっふ…そんなバレバレの切り上げが俺に當たると思うか!」
俺は左手を後ろに向け、風魔法で突風を起こす。
それにより俺のはもの凄いスピードで前へと飛ぶ。
ディノスが後ろへ飛んだ事によって出來た距離を一瞬で詰め、俺は勢いのままディノスの腹を狙い居合斬りのように斬る。
「おおぉっ⁉︎」
ディノスは俺の木刀に斬られ、そのまま後ろへ飛ぶ、俺は前に突風を出す事で、その場にとどまった。
ディノスは立ち上がろうとする。
「な…なかなかやるなルージュよ…だがこんなもんでは……うぉ⁉︎」
俺はディノスに向かって矢を放つ、だがディノスはそれを橫に転がり回避する。
「水球ウォーター・ボール!」
俺はすかさずディノスの足元に向かって水球を撃つ。
「くっ! なかなか近づけん…!」
「水球!」
ディノスが避けた所に、また同じく水球を足元に撃つ、それを5回ほど続けた結果、ディノスの周りには水溜りが出來ていた。
ディノスが歩くたびにピチャピチャという音がなる程に溜まっている。
「もう同じではくわんぞルージュ! 遠くから攻撃しやがって!」
「なら次は接近戦だ!」
俺は両足に土魔法で土を纏い、さらに木刀に火ではなく今度は雷を纏わせる。
両足に土を纏っているせいで移しづらいが、仕方がない。
「なっ…雷魔法と土魔法だと⁉︎ お前いったい何種類の屬を…!」
「うらぁ!」
俺はディノスへとがむしゃらに木刀を振り続ける。
右下から左上への切り上げ…避けられる
左下から右上への切り上げ…避けられる
腹を狙って左から右への一文字斬り…避けられる
腹を狙って突き…かする
ただ振っているだけでは全然當てることができない。
「ほらほらどうした? 水浸しにすればきが鈍ると思ったか?
もっと全力で打ち込んでこい!」
だが俺の目的は木刀をディノスに當てる事ではない、次に俺がどんな攻め方をするのか、それをディノスに考えさせる事が目的なのだ。
そして今ディノスは俺をジッと見ている。
ーーー足元の水の事は何も考えてはいない。
俺は雷を纏った木刀を逆手に持ち……
「これが今の…俺の全力だ!」
剣を水浸しの地面に突き刺す。
そして木刀からの電気が水を通り……
「ぐっ⁉︎ 」
ディノスのに電流が走る、功だ。
俺が両足に土を纏っていたのは、電気を通さないようにするためだ、まぁ、しはビリっとしたが…無いよりはマシだろう。
俺は膝をついたディノスに突進し、ディノスの頭に向かって全力で木刀を振り下ろした……だが…
「なかなか、面白い戦い方をするな。 ルージュ」
俺の木刀をディノスは自分の木刀でけ止めたのだ。
ウソだろ…? 電気が効いてないのか? 
いや、効いたはずだ、しかも結構高威力の電撃だったはずだ。
なのになぜすぐにける…?
「あぁ、あんまり落ち込むなよ? 俺が直ぐにけるのは、ただ単に俺とお前の実力の差だ。 お前の作戦は素晴らしい」
実力の差……俺は今日初めて魔法を使ったし、戦ったのも初めてだ。
だがディノスは何年も命がけの戦いをしてきたのだ、そんな奴に勝てるわけがなかった。
そこからはあっという間だった、あれからディノスはまたスピードが速くなり、俺はディノスのスピードについていけず、ただボコボコにされるだけだった。
ディノスの猛攻に耐えられず、俺は気絶してしまった。
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「お、起きたかルージュ」
目がさめると、俺は自室にいた。
そして目にったのは俺を見ているディノスだった。
だがセレナと母さんの姿が見えない。
「あっ、セレナちゃんなら今母さんと一緒に魔法の練習をしてるぞ」
「……そっか」
「ルージュ、気絶させちまって悪かったな」
いきなりディノスが謝ってきた。
「最初はお前の実力を見たいだけだったんだが……お前の実力が予想以上でな、父さんもつい熱くなっちまった」
「予想以上?」
「あぁ、後から母さんに聞いたんだが、お前は七屬全ての魔法を使えるんだろ?
 驚いたぞ、すごい才能だ。 しかもあの戦い方、あれはな発想を持つ奴しかできん。
そしてその発想から生まれる戦い方は、相手を翻弄し、有利になる」
「あれは…ただ使えるものを使っただけだよ」
どんなに勵まされ、褒められようが、負けは負けだ。
俺はセレナが勝った相手に負けた。 
今出來る全力で戦い、負けたのだ。
「なぁルージュ、あまり落ち込むなよ。父さんもな、最初から強かったわけじゃないんだぞ?
最初は師匠に負け、友に負け、ライバルに負け、魔獣に負けた。
魔獣に負けるたび、友に守ってもらい、落ち込んだ、今のお前みたいにな」
「………………」
「その度に強くなろう、強くなって皆を見返してやろうって思って、ひたすら努力した。
そして努力を続けた結果、ずっと負け続けてきたライバルや、魔獣に勝てた。
師匠には最後まで勝てなかったがな…」
ディノスは過去の事を懐かしそうに呟いた。
「まぁ俺が言いたいのはだな、俺に一度負けたぐらいで落ち込んでんなって事だ!」
そう言ってディノスは俺の頭を暴にでた。
「これからも剣の修行を続けていくなら、お前は何度も俺に負けるだろう。
そして10歳で剣魔學園にり、そこでも同い年の奴らや先輩達に負ける事もあるだろう。
だが、その度に落ち込むのか? 馬鹿馬鹿しいとは思わないか?」
「馬鹿馬鹿しい?」
「あぁ、別に落ち込むのが悪いとは言わん、これは師匠の言葉だが、「落ち込むのは2割にしろ、そして反省が2割、殘りの6割は修行だー‼︎」ってな」
「落ち込むのは2割…」
「あぁ、俺はその教えをずっと守ってきた、そしたら、いつの間にか強くなれたんだよ」
ディノスは腰にさしている赤竜刀をでながら言った。
ディノスの言うとおり、俺は落ち込みすぎていたかもしれない。
落ち込むばかりで、何が悪かったか、次はどうするか。 という事を何も考えていなかった。
「父さん」
「お? なんだ?」
「俺は剣聖と呼ばれるようになりたいよ」
「あぁ」
「でも今の実力じゃ剣魔學園に行っても負けまくりだ」
「……」
「だから、俺を強くして下さい。
 剣も、魔も、誰にも負けないような強い人になりたいんだ」
俺がそう言うとディノスは俺の頭を今度は優しくでる。
「あぁ、俺と母さんが全力で、お前を強くしてやる。 だからお前も全力で頑張れ」
「あぁ! いつか絶対、父さんよりも強くなって、本気の父さんを倒してやるよ!」
「おぉ、期待してるぞルージュ。 何十年後になるか分からんがなぁ」
「すぐだよすぐ! 子供の長速度って凄いんだぜ!」
「はっはっは、楽しみにしてるよ」
そう言って笑いながら、ディノスは俺の部屋を出て行った。
そうだ、俺には落ち込んでいる時間なんてないんだ、あと5年……あと5年したら俺は剣魔學園に學する、それまでに強くならなくてはいけないんだ。
ーーー剣聖になるために。
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ーディノス視點ー
ルージュの部屋を出たあと、俺はフローラの元へ向かった、フローラは俺に気づくとセレナちゃんに「ちょっと1人で練習しててね」と言って俺の元へ來た。
「ルージュはどうだった? やっぱり落ち込んでた?」
「あぁ、でももう大丈夫だ」
「そう、ならよかったわ。 それにしても、ルージュとセレナちゃんは凄いわね」
「あぁ、まさか2人共あんなに強いとは思わなかったよ」
セレナちゃんと戦って驚いたのが、1つは頭の回転の速さだ。
元々頭が良いのだろうか、俺の行を見て瞬時にどの魔法を使うか考えていた、そしてその魔法は全て正確に俺のきを封じていた。
そして2つ目が、魔法の威力だ。
セレナちゃんが使った魔法は3つ、俺を引き離すために使った風魔法の突風ウィンド、離れた俺に追撃するために使った矢、を凌いで油斷した俺に使った水球。
その全ての魔法の威力が異常なほど高かった。
突風は通常人を1〜2メートルほど人を引き離す程度の魔法だ。
だがセレナちゃんの突風は俺を5メートルほど引き離した。
そして矢、これが1番驚いた、通常は3〜4本くらい出すのが普通だ、俺は一度だけ矢を6本出す奴に會った事があるが、そいつはいろいろ努力をしたと言っていた。
だがセレナちゃんが出したのは10本、その1つ1つが高威力で、しかも正確に俺を狙ってきた。
最後に水球、これは大きさがでかかった、しかもそのスピードも速い、普通の水球なら避けられたはずだ。
だがセレナちゃんの水球は避けられないほど早かったのだ。
その水球の水が目にって目を閉じた瞬間、腹に痛みがあった。
どこまで計算されていたかは分からない、もしかしたら全て計算通りだったかもしれない。
どちらにしろ、凄い才能だ、將來が楽しみだ。
そして我が息子、ルージュ。
最近急に大人っぽくなったルージュだ。
我が子と戦うのには抵抗があったが、子供を強くするのが親の役目だ、心を鬼にして戦おうと思った。
ルージュの凄いところは、1つは魔法を使う速さだ。
何かコツでもつかんだのだろうか、普通の人よりも明らかに魔法を使うスピードが速いのだ。
2つ目は、使える魔法の多さだ。
なんとルージュは七屬の魔法を使えるらしい、俺との戦闘では闇屬以外の6種類の魔法を自在に使いこなしていた。
3つ目は、な発想だ。
ルージュと戦闘している時、俺は1度もルージュが何を考えているか分からなかった。
火球に風切をぶつけて破裂させ、火のを降らすなんて見た事がない。
俺が庭に行った時、庭が水浸しになっていたのはきっとルージュが同じ事を水球でやったからだろう。
そして風魔法を使っての加速、魔法を攻撃手段ではなく、移手段として使ったのだ、俺はそれに驚き、避けるのを忘れてしまったほどだ。
次に、木刀に魔法を纏わせる技。
はっきり言おう、あんなのは見た事がない、ルージュ自もビックリしていたが、俺の方がビックリだ。
いろいろな奴らと戦ってきた、剣の達人や強い魔師、有名な魔法剣士などだ、だが1人もルージュのように武に魔法を纏わせて戦うなんて事はしなかった。
最後に、水溜りに電気を流した事。
何度も水球を撃ってくるので最初は水を使って何かするのかと思った。
だがルージュはそのまま接近戦を仕掛けてきた、コツをつかんだのか、ルージュの剣はどんどん上達していき、気を抜けば當たるかもしれないというほどだった。
そして俺はそれに夢中で、いつのまにか下の水から意識をそらしてしまっていた、今思うとそれがルージュの狙いだったのだろう。
ルージュは電気を纏った木刀を地面に突き刺した。
俺はその瞬間 やってしまった… と思った。
俺のに電流が流れたのだ、そのまま俺は膝をついてしまった。
痺れはすぐになくなり、前を見ると、そこにはルージュがいた。
俺はつい本気でガードしてしまった。
最初は実力を見るだけのはずだったのに、いつのまにか本気を出すほど追い詰められたのだ。
「さすが自慢の息子ね」
「そうだな、さっきルージュに、「いつか父さんを倒す」って言われちまったよ」
「あらあら、どうするの? 20歳くらいになったら抜かされちゃうんじゃない?」
クスクスと笑いながらフローラは言う。
さっきはルージュに數十年はかかると見栄を張ってしまったが
「いや、數年で抜かされるだろう。 へたしたら15歳くらいで抜かされるかもしれん」
「ふふふ…楽しみね」
「あぁ、あの2人がどんな長をするのか、本當に楽しみだ」
もしかしたら、あの2人は本當になるかもしれないな。
ーーー剣聖と白魔に
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  一章   期   2度目の人生
                                               終
                                                   
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