《2度目の人生を、楽しく生きる》17話 「油斷」
「まずは、ここを出る前に俺達の荷を探そう」
俺は歩きながらそう呟いた。
俺はさっきから一度も後ろを見ていない。
この道は一方通行だ、だから前だけを警戒して歩く。
「そうですね、大事なもありますし」
「そんで荷を回収したら、なるべく急いでここを出る。
無事ここを出たら人がいっぱい居るところまでダッシュだ」
「はい」
「了解だ」
さっきあの男を捕獲して報を聞き出す事に功したおかげで、皆に余裕が生まれた。
ここまでくればもう出は確定だろう。
「…………ん?」
俺は足を止めた。
「どうしました? ……あれ?」
アリスが俺の橫に來て、足を止めた。
道が分かれていたのだ。
「ど、どっちに行けばいいんでしょう…」
「ここに來て分かれ道かよ……」
これは想定外だった、あの男の言う通りなら、あとは荷部屋と敵の部屋が殘ってるはずだ。
って事は分かれ道の片方が荷部屋、もう片方敵の部屋って事になる。
「ここまで來たらもう勘で行くしかないんじゃないか?
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さっきの奴も倒せたんだ、僕達なら大丈夫だろ」
「いや、それはダメだ」
「なんでだ?」
「さっき倒したのは、あくまで手下だ。 このアジトにはまだボスがいる。 ボスって事は當然強いはずだ」
「ならさっきみたいに痺れさせればいいんじゃないか?」
「それはあの男が油斷してたから功しただけだ。 殘ってる2人は當然部下の帰りが遅いから警戒してるはずだ。
さっきのは通用しない」
「ならどうすればいいんだ…?」
「それを今考えてる、ちょっと待ってくれ」
まずいな、ここを出するには當然殘りの2人とも戦う事になると思っていたが。
それは俺達が萬全の準備をしてからの予定だった。
荷を手にれ、念りに作戦を練って戦闘開始、戦闘中に相手の隙を見て逃げ出す。
こうなるのが理想だった。
もちろんクリスの言う通り勘で選んでもいい。
その結果荷部屋に繋がれば萬々歳だ。
だがもし敵の部屋だったら……
向こうも警戒しているはず、だから勿論奇襲は出來ない。
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真剣勝負になる。
真剣勝負になった時、武を持ってない俺達が勝てるのか…?
確率は50%だ。50%の確率で荷部屋、50%の確率で敵の部屋。
その50%に今後の人生を委ねてもいいのか…?
「あ、あの…ルージュさん」
悩んでいた俺にアリスが小聲で言ってきた。
「………ん、あ、なんだ?」
「足音が聞こえます…」
「な、なに⁉︎」
そう言われ耳をすましてみる。
すると確かに コツ……コツ……と足音が聞こえる。
數は1人、方向は……右からだ。
「右から聞こえる! って事は荷部屋は左だ!」
「本當か!」
「あぁ! 鉢合わせる前に行くぞ!」
俺達は急いで左の道へと走った。
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「クリス、常に後ろを警戒しててくれ。 誰か見えたらすぐに教えろ」
「あぁ、任せろ」
よし、順調だ。 後は荷を取って出するだけだ。
「あ、明かりが見えます! きっとあそこが荷部屋ですよ!」
俺達の進んでいる方向にが見えた。
この通路は暗いのでよく目立つ。
「よし、急ぐぞ…!」
俺達は駆け足で明かりの元へと來た、部屋の扉は開いていた。
だからがれていたのだろう。
まずは俺が先にその部屋にった。
そして周りを確認、誰も隠れてないことを確認し。
「よし、っていいぞ」
外の皆を呼ぶ。
「なるべく急いで荷を探してくれ」
荷部屋には々ながあった。
木箱や袋、中には子供用の服から大人用の服まであった。
だが俺達の荷はあっという間に見つかった。
「よし、僕とクレアの荷は回収したぞ」
「私も回収しました」
見るとクリスは長い杖を1本だけ持っており、クレアはポーチを首にかけ、アリスは俺と似たような片手剣を腰にさしていた。
俺も自分の片手剣を見つけ、背中にさす。
「隨分と荷がないみたいだけど、本當に全部か? もう戻ってこれないぞ?」
「それはルージュも同じだろ。 元から僕はこの杖1本だけだったよ」
「私もこのポーチだけだったよ!」
「私もです。 それより、ルージュさんって剣も使えるんですね」
アリスが俺の背中の剣を見て言ってくる。
「あぁ、まだまだ初心者だけどな」
そんな會話の後、俺達は素早く元の隊列に戻り、扉を開けて廊下に出る。
「後は出するだけだ、なるべく急ぎ足でいくぞ」
「はいっ!」
「了解だ!」
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先程の分かれ道まで戻ってきた。
「この先には敵の部屋があるはずだ。 常に警戒しとけよ」
俺は歩きながらそう言う。
皆が張してるのが分かる。
その狀態のまま歩き続ける。
歩いて、歩いて、歩いて………何歩歩いても敵の部屋が見えてこない。
「敵の部屋…ありませんね」
「あぁ、なんでだ…?」
その時、俺の顔に何かが當たった。
これは……風だ。
この通路に風が吹いている。
「あっ、が見えますよ」
そう、前方にが見えるのだ。
そして前から風が吹いている。
という事は、あれは出口だ。
「出口が見えたぞ!」
クリスが嬉しそうな聲を出す。
なんでだ? 敵の部屋は?
3つ目の部屋はどこだ…?
俺は常に警戒しながら歩いたが、なにも起きずに俺達は外に出た。
數時間ぶりの外だ。
俺達がいた建はボロボロの廃墟だった。
そして周りは森で囲まれている、ここは山の中なのだろう。
「そ、外だ……やっと…外に出れた!」
クリスがして涙を流し、クレアを抱きしめる。
見ればクレアも泣いている。
「ルージュさん」
アリスに呼ばれる、アリスは泣いてはおらず、真剣な顔をしていた。
「やっぱり…おかしいですよね?」
「あぁ、3つ目の部屋がなかった、でも足音は右側から聞こえたし……」
「まだ安心は……出來ませんよね」
「そうだな」
本當はアリスも喜びたいはずだ、だが冷靜に狀況を考えている。
だがいつまでもここにとどまるわけにはいかない。
俺達は森の中にっていった。
俺は前を警戒し、アリスは左右、クリスは不思議そうにしながらも無言で背後を警戒した。
ここは森の中だ、いつどこで奇襲されてもおかしくない。
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森を歩き始めて數十分、ついにクリスが口を開いた。
「なぁ、まだ警戒する必要ってあるのか? 
アジトは出したんだ。 もう安心だろ?」
「……3つ目の部屋が無かっただろ、それに敵の姿がないのはおかしい」
「それはそうだが…もう何分歩いたと思ってる? ここまで何も無かったんだ、だから……」
「いいから黙って後ろを警戒してろよ」
……しまった、イライラしてつい強い言葉を使ってしまった。
後ろを見るとアリスは驚いたように俺を見ていて、クリスは呆然としていた。
「わ、悪い…ちょっとイライラしてて……」
「いや…いい。 分かったよ、君の言う通りにするさ」
そう言ってクリスは後ろを向いた。
気まずい空気が流れ始めた時、狙ったように”それ”はやってきた。
「ガルルルルル……」
その聲にいち早く気づいたのはアリスだ、アリスは聲の方向を見てんだ。
「ま、魔獣です! 魔獣が現れました!」
魔獣、この世界に存在する悪い獣だ。
人型のゴブリンやゾンビなどは魔と呼び、のような者は魔獣と呼ぶそうだ。
そして今俺達の目の前にいるのは魔獣、狼に似ている兇暴そうな奴だ。
俺は魔獣を見るのは初めてだが、アリスは違うらしい。
「あれは ガル・ウルフ です!」
「どうすればいい⁉︎ 何が弱點だ⁉︎」
「えっと……確か火が苦手だったはずです!」
「よし! クリス! クレアを連れて離れ…」
「あ、あぁ……まじゅっ…魔獣…!」
クリスは餅をついていた、その顔は恐怖に歪んでいた。
クソッ、肝心な時に……
「クリス‼︎ クレアが死んでもいいのか‼︎ 早く立て!」
俺はクリスに怒鳴る、クリスはビクッとして俺の方を見る。
「クレアは戦えない、だから兄のお前が責任持って守れ‼︎」
「あ…く、クレア…」
「ひっ…お、お兄ちゃ……」
「ガルルルルル…!」
ガル・ウルフが姿勢を低くする。
俺とアリスは同時に剣を抜き、構える。
クリスは……どうやら無事に立ち上がりクレアを抱きしめている。
「グアアアアッ‼︎」
「來ました‼︎」
ガル・ウルフが飛びかかってくる、ガル・ウルフが飛びかかったのはアリスだ。
「火球ファイア・ボール!」
「ガウッ…!」
俺の火球はガル・ウルフに當たり、ガル・ウルフは地面を転がる。
そして俺を睨んでくる。
「っ!」
怖い。 あの爪が、牙が、目が、全部が怖い。
これが魔獣か。
「グルルルァ!」
ガル・ウルフが凄いスピードで俺の方に來る、俺の全速力よりも早いだろう。
「あっ! ルージュさん!」
ガル・ウルフが長い爪を持った手を俺に振り下ろしてくる。
早い、早いが……ディノスよりは遅い。
「ぐっ!」
「ガルァ!」
ガル・ウルフの手を片手剣でけ止める。
ガル・ウルフの力は強い、気を緩めたら一瞬でその長い爪でを切り刻まれてしまうだろう。
「ガルルル!」
「くっ……」
俺は何とか右手に集中して剣に炎を纏わせる。
「ガルッ⁉︎」
異変に気付いたガル・ウルフが俺から飛び退く。
だが……
「もう遅いっ!」
俺は剣を握る手に力を込め……
「炎斬えんざん‼︎」
剣を振り下ろす、俺の剣から放たれた炎の斬撃がガル・ウルフの元へ飛んでいく。
「ガアアアアアアアアアッ‼︎‼︎」
斬撃がガル・ウルフに當たり、ガル・ウルフのを燃やす、その後も暴れ続けたが、すぐにかなくなった。
「はあ…はあっ…」
俺はその場に座り込む、初めてだ、初めて命がけの戦いをした。
そして…初めて何かを殺した。
焦げて死んだ魔獣を見て、これは俺がやったのだと思うと、何とも言えない気持ちになる。
そんな気持ちを察してか、アリスが無言で俺の肩に手を乗せてくる。
「……アリス…?」
「私も、初めて魔獣を殺した時はルージュさんみたくなりました」
「………」
「魔獣でも魔でも同じ命、殺したなら責任を持ちなさい。
と、私の師匠から言われました」
「……そうだな、同じ命…だもんな」
「えぇ、ですが私達はこの先何百、何千の魔獣、魔を倒さなくてはなりません」
「あぁ、そうだな」
俺は立ち上がり、死んだ魔獣の元へ行き、手を合わせて目を瞑る。
こいつは俺達を殺そうとした、だがこいつも生活がかかっていただろう。
もしかしたら子供がいたかもしれない、俺達が生きるためにを食うのと同じで、こいつも生きるために俺達を殺そうとしたのだ。
終わった後、死は燃やして灰にした。
死の匂いにつられて他の魔獣が來るかもしれないからな。
「うわっ…」
安心した直後、足の力が抜け、また地面に座る。
立とうとしても足に力がらない。
「どうしました?」
「いや…分からない、でも立てないんだ」
「多分…魔力切れじゃないですか?」
確かにこの覚は覚えがある。
「アジトにいた時からルージュさんは沢山魔を使ってましたもんね、よく今まで切れなかったですね」
「あぁ、俺は普通の人より魔力が多いらしくてな……クリス、悪いけど肩貸してくれないか?」
「あぁ」
クリスが俺の方に來ようとクレアの元を離れた時、クリスの後ろがいた。
「クリス! 後ろだ!」
「クレアさん! 逃げて!」
俺とアリスの聲は同時だった、俺が聲を出す直前に草むらから何者かが飛び出し……
「むむぅっ⁉︎」
クレアを捕まえた。 
「クレア⁉︎ クレアを離せ!」
クリスが杖を構えた瞬間、違う草むらから何者かが飛び出し、クリスを蹴り飛ばした。
「ぐあっ…!」
蹴り飛ばされたクリスは俺たちの方に転がってくる。
「なっ… 誰だお前ら!」
アリスに肩を貸してもらい、立ち上がった俺はぶ。
すると聞き覚えのある聲が聞こえた。
「ダメじゃないか、勝手に逃げ出したら」
その男はゆっくりと草むらから現れた。
そいつは、俺達を捕まえた奴らのボスだった。
「君達が逃げ出すから……」
ボスは指をパチンッと鳴らす。
すると……
ヒヒヒヒヒ……
と言う笑い聲が聞こえた……俺達の、周りから。
周りを見ると……
「こんなに人を集めなきゃいけなくなったじゃないか」
俺達を囲むように、棒を持った奴らが草むらから出てきた。
「さぁ、逃げた君達にはお仕置きが必要だねぇ…?」
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