《2度目の人生を、楽しく生きる》43話 「正論と屁理屈」

「…やっちまったなぁ…」

ケン達との戦闘の後、男の初等部の寮へ続く別れ道でセレナと別れ、俺は今自室のベッドに座って後悔していた。

完全にやらかした。 學初日に上級生と喧嘩とか…完全に不良じゃないか。

「それも全部あの夢のせいだ」

あの夢を見てから俺は明らかにおかしい。

の事でイライラしてしまう、しかも日本での出來事を思い出してしまうのだ。

この世界に來てからはあんな夢見た事なかったんだけどな…

『俺たちはお前を友達と思った事なんて一度もねぇよ!』

「っ!」

まただ。 思い出したくなんかないのに、勝手思い出してしまう。

忘れたいのに忘れる事が出來ない。

何故いきなりこんな事になったのだろうか。

「ルージュ、いるか? クリスだ」

突然部屋の扉がノックされる。

クリス? こんな時間になんだ。

時刻は既に夜の9時を過ぎていた。

無視するわけにもいかないので扉を開け、クリスを部屋にれる。

「いらっしゃい、どうした?」

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「いや、寮に帰って來てから君の様子が変だったのでな」

クリスにも気づかれてたのか、俺ってそんなに分かりやすいか…?

「何かあったのか? 闘技場に行くまでは普通だっただろ」

「……なんでもないよ」

「本當か?」

完全に疑われてるなこれは…

まぁ本當の事を言っても信じないだろうしな。

「本當だよ。 ちょっと嫌な夢見て気分が悪いだけだ」

夢の容は言わないがな。

「……そうか」

「話はそれだけか?」

「あぁ。 明日から普通に學校だ、頑張ろうな」

「おう」

「では、おやすみ」

そう言ってクリスは部屋を出て行った。

「…悪いなクリス、俺はこの世界の住人で居たいんだ」

俺がもしクリス達に日本と言う別の世界から來た事を話したら、きっとあいつらとの関係は変わる。

異界から來た俺をれてくれるか分からない。

きっと俺は魔族なんかよりも怖い存在だろう。

だから俺は、誰にもこの事を話さない。

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『その世界は楽しいか?』

………誰だお前。

『俺はお前の父親だよ』

………父親? 俺の父はディノスだ。

『違うだろ。 お前は俺の息子だ、現実逃避をするな』

………うるさい。もう俺はアンタの息子じゃない。

『いいや、お前は俺の息子だ。 お前がどう思おうがこの事実は変わらない。 お前はルージュ・アルカディアじゃない』

………俺はルージュ・アルカディアだ。 

『お前はその世界の住人じゃないだろ。 ルージュ君にを返してあげなさい。

 5歳でを乗っ取られて、可哀想に…』

………黙れ…。

『お前はその世界に居たらいけないんだ。 

お前は異なんだよ』

「黙れ‼︎‼︎」

を勢いよく起こし、ぶ。

「あ、あれ…?」

周りを見渡すと、昨日から俺の部屋になった寮の部屋だった。

狹くも広くもない部屋、必要最低限の家

「……また夢か」

しかも今度は実際にあった出來事じゃなく、俺に語りかけるような夢だった。

相手は日本での俺の父。

「なんなんだよ本當に…」

部屋に置いてある時計を見るとまだ6時だった。

學校に行く時間は8時だったからまだ時間はある。

「……二度寢しよう」

そう決意し、寢転がった途端、部屋の扉が叩かれた。

「ルージュ・アルカディア。 起きているか?」

それは聞いたことのない男の聲だった。

誰だ…? 

俺はとりあえずベッドの橫に立て掛けて置いた片手剣を持ち、扉を開けた。

「誰ですか」

「ほぅ、剣を持って來たか。 なかなかいい警戒だな」

「はぁ…?」

誰だこいつは、男は二十代前半くらいの茶髪の若い男だった。 

よく見ると男の後ろにはダンボールが置いてあった。

「安心しろ。 俺はここの教師だ、ヘルムと言う。 よろしくな」

「どうも…」

そう言うとヘルムは後ろのダンボールから一著の服を取り出した。

「これは?」

「この學園の制服だ。 サイズは合っているはずだ」

「制服なんてあるんですか⁉︎」

驚いた。 まさか制服があるとは…

俺はその制服をけ取る。

「新生の部屋を一部屋一部屋回ったが、男子で俺を警戒しながら扉を開けたのはお前を含めて4人だけだ」

「4人?」

「あぁ、名前は ソーマ、ザック、クリス、お前だ」

「そうなんですか」

「んじゃ、今日からその制服を著て登校するように。 以上」

ヘルムはそう言うと扉を閉めた。 

俺は部屋に戻り、早速制服を見た。

「おぉ…ブレザーか。 なんか日本の制服に似てるんだよなぁ…」

制服は上下黒のブレザーだった。

ワイシャツやネクタイなどもあり、日本の制服を思い出す。

ちなみにワイシャツのは白、ネクタイのは黒だ。

「早速著てみるか」

俺はその場で制服に著替えた。

「おぉ…」

驚くほどサイズがピッタリだ。

10歳で制服を著るのは初めてだが…

「……懐かしいな」

制服を著たら、やはり日本の記憶が蘇ってくる。

初めて制服を著た中學生の時の気持ちなどが。

「ん? これは…校章か?」

つい見逃していたが、俺の足元には校章が落ちていた。

校章にはなにか絵が書いてあった。 は緑だ。

俺はそれをにつけた。

「よし、一応はこれでOKか?」

なにか変な所はないかと見て見たが、特に何もなかった。

時計を見るともう7時だった。

もう二度寢は出來ないな。

「時間までゆっくりしてるか」

俺とクリスは一緒に登校する約束をしている。

8時には教室にいなければいけないから、7時30分くらいに迎えにくるはずだ。

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「ルージュ、起きてるか?」

扉の方からクリスの聲が聞こえる。

時刻は7時30分ちょうどだ。

俺は扉を開けた。

「おはようクリス」

「あぁ、おはよう。 これは制服と言うらしいな」

クリスも當然だが制服を著ていた。

クリスは著慣れてないのかぎこちなかった。

「これは慣れるまで時間がかかりそうだ」

「はは…んじゃ行くか」

俺とクリスは寮の出口へ向かった。

寮を出て10分くらいで校舎につく。

10分は近いようで長い距離だ。

初等部校舎にり、1年2組の教室の扉を開く。

「あっ! 來たぞ!」

「本當だ!」

「あいつがルージュか!」

俺が教室にると、既に教室に居た男のクラスメイト全員が俺を見た。

……え、なに?

「なぁなぁ! お前中等部の先輩倒したって本當か⁉︎」

クラスメイトのの1人の男が俺に話しかけてくる。

「え、なんで知ってるんだ?」

「そう言ってるって事は本當なんだな⁉︎ 実は昨日お前が先輩を倒す所を見たって奴が居てさ!」

マジか、見られてたのか……

「ルージュ、それは本當か?」

俺の橫にいたクリスがそう聞いてくる。

俺は渋々頷いた。

「……そうだよ」

俺がそう言った瞬間、クラスメイト達が騒ぎ出した。

それから俺は10分間くらいずっと質問攻めにあった。

「はぁ…疲れた…」

「おつかれ、でも一何があったんだ?」

「クリス…俺が今まで質問攻めにあってたのを知ってるのに、また質問するのか…?」

「すまない。 だが不思議でね、君が理由もなくそんな事をするとは思えないんだ」

クリスは真剣に聞いてくる。

んー…これは話すしかないか。

「実はな…」

俺はクリスに昨日の事を話した。

「なるほどな…」

クリスはそれっきり何も言わなかった。

それにしてもセレナ達遅いな。

あと10分しか時間がないぞ。

俺がそう思っていると、教室の扉が開いた。

扉の方を見て見ると…

「お、おぉ……」

制服を著たセレナ達が居た。

黒のブレザーに黒のチェックのスカート。

それを著た3人を見て俺は固まってしまった。

似合いすぎだろ…

「おはよう! どう? 似合ってる? 」

「おはようございます皆さん」

セレナとアリスは俺とクリスに挨拶をしてきて、フィリアは何も言わずに席に座った。

「お、おはよう。 似合ってるぞ」

俺がそう言うと2人は笑顔になった。

「あ、ルージュさん」

突然アリスが俺の肩を叩いてきた。

「なんだ?」

「その…怪我はありませんか? 昨日お互い気絶してしまったらしいので…」

「あー…全然大丈夫だよ。 俺はアリスの方が心配だよ」

「私は大丈夫ですよ」

「そっか、なら良かった」

俺がそう言うとアリスは席に座った。

「皆、席につけ」

教室の扉が開き、そう言いながらモーナが教室にってきた。

クラスメイト達は速攻で席に著き、無言になった。

「よし、では早速だが……ルージュ・アルカディア。 前に來い」

「はい?」

いきなり名前を呼ばれた。

クラスメイト達が俺の方を見る。

「前に來いと言っている。 早く來い」

「は、はい!」

俺は勢いよく立ち上がり、モーナの前まで歩く。

「な、なんでしょうか…?」

「昨日、上級生と戦闘をしたらしいな」

うわ…教師も知ってるのかよ…

「は、はい…」

「何故戦闘をした?」

「そ、それは…」

「せ、先生! あの…」

「セレフィーナ、今私はルージュ・アルカディアと話している。 黙れ」

セレナが何か言おうとしたが、モーナがセレナを黙らせた。

怖…怖すぎるよモーナさん…

セレナはを噛んで無言になった。

「それで? 何故戦闘をした?」

「……友達を馬鹿にされたからです」

「友達?」

モーナはちらっとセレナの方を見て、また俺を睨む。

怖ええぇぇ…

「なるほど、大は分かった。 お前と戦闘をしたケン達は何かと問題が多い生徒だからな」

「はは…」

「だが」

俺は許されたと思い安心していたら、モーナが

「だからと言ってお前を許すと言う訳ではない」

そう言ってきた。

「手合わせ程度の戦闘ならどこでやろうが構わん。 実際に1組のソーマとザックの戦闘に関しては何も言ってないだろう?」

確かに…ザックは何も言われていない。

「何故だか分かるか?」

「……分かりません」

そう言うとモーナはため息をついた。

「ルージュ、お前がやったのは手合わせではないからだ。 お前がやったのは”ただの暴力”だ」

「ただの暴力?」

「そうだ。 手合わせはお互いの力を高めるものだ。 それは剣魔學園は推奨している。

だがお前のはただ暴力を振るっただけだ」

「………」

「現にお前はケンの弟2人を気絶させた、相手に何もさせずにな。

 これを暴力と言わずしてなんと言う」

………暴力。

確かにそうかも知れない。 あれは決して手合わせではなかった。

「なら、俺はただ我慢すれば良かったのですか?」

「…何?」

納得はしている。 だが反論がない訳ではない。

「目の前で友達が暴言……言ってしまえば、言葉の暴力をけているのに、黙ってそれを見ていろと?」

「言葉の暴力か。 なかなか面白い言い訳だな」

「モーナ先生は、自分の友達が暴言をけているのを前にして我慢できますか?」

クラス中が騒つく。

ただ黙って教師の言う事をはいはい聞いているだけじゃ納得できない。

言いたい事は言わせてもらうぞ。

「我慢は出來ないな」

「でしょう? なら…」

「だが、場所を考えろと言っているんだ」

モーナは俺の言葉を遮る。

「ここは剣魔學園、己を高める場所だ。 ただ戦う場所じゃない。 暴力を振るいたいなら山賊にでもなれ」

「っ!」

何も反論出來なくなる。

モーナの言っている事は正論。

対して俺の言っている事は屁理屈だ。

「ようやく分かったか」

「……はい。 すみませんでした」

俺は素直に頭を下げた。

「素直に謝ったのは評価しよう。 これに免じて、お前にはチャンスをやろう」

「チャンス?」

「あぁ、私と手合わせをしろ」

「……は?」

「聞こえなかったか? 私と手合わせをしろと言ったんだ。 私と手合わせをして、勝ったら今回は見逃そう。 だが負けたら罰をけてもらおう」

手合わせって…モーナとか?

「言っておくが拒否権はないぞ。 そうだな…明日やるか、ここにいる者も見に來るように、これは命令だ」

モーナの言葉にクラスメイト達が頷く。

セレナ達は不安そうな顔をしていた。

「話は以上だ。 席に戻れ」

「は、はい…」

マジかよ…

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