《2度目の人生を、楽しく生きる》69話 「トーナメント戦、開始」

あれから5日が経ち、今日はいよいよ夏休みを賭けたトーナメント戦の日だ。

モーナによると、トーナメント戦を行うのは初等部の1年生だけらしい。 

そしてもう他のクラスは終わっていて、俺たちの2組が最後らしい。

「トーナメント戦は強さが均等になるようにこちらで決めた」

因みに今俺達がいるのは闘技場だ。

流石にグラウンドでやるわけにはいかないんだろう。

「トーナメントは25名ずつ赤ブロック、青ブロック別れている。そして赤ブロックの優勝者と、青ブロックの優勝者で決勝戦を行い、クラス1位を決める。 では発表するぞ」

頼むぞ…知り合いと一回戦で當たりませんように…!

「組み合わせは以上だ。 では早速トーナメント戦を始める! 第一試合は…」

結果は、赤ブロックに俺、クリス、セレナ。 

青ブロックにザック、アリス、フィリアに別れた。

幸い一回戦で當たる事はなかった。 

だから全員一回戦を勝ち抜けば夏休みを過ごせる。

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それからどんどん試合が進んでいった。

俺、セレナ、アリス、クリス、フィリア、ザックは一回戦を突破する事が出來た。

「よっし! これでとりあえず俺達夏休みを過ごせるな!」

「ですね! 」

「では次の組み合わせを発表する! 赤ブロック、ルージュ・アルカディア! クリス・フォード!

青ブロック、アリス! フィリア・ジュエルだ!」

「おぉ! クリスか!」

まさか2回戦でクリスと當たるとは…本気で戦おう。

俺とクリスは下に降りる。

戦う奴ら以外は全員アリーナに移る決まりだ。

「ルージュ、本気で行くからな」

「おう! こっちこそだ」

今日まで一度も魔を使ってこなかったし、一回戦目も魔を使わないで勝った。

だがクリス相手には使う事になるだろう。

この5日間、剣の訓練だけをやってきた。 そのおかげで前より強くなったはずだ。

俺は木刀を構え、クリスは杖を構える。

クリスは最近杖を買い替えたらしく、前の小さな杖ではなく、片手剣と同じくらいの長さの木でできた杖にしたらしい。

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何故杖を買い替えたのかは教えてくれなかったけどな…

「では始めろ!」

「石連弾ロック・マシンガン!」

クリスが早速石連弾を撃ってくる。

俺は魔を使わずに石連弾を避けながらクリスの方へ走り出した。

「……いくぞクリス! 」

俺は全弾避けきり、クリスに木刀を振り下ろした。

だが…

「何故僕が杖を買い替えたのか教えてやろう」

クリスはなんと、杖で俺の木刀をけ止めた。

「僕が杖を買い替えた理由…それは、接近戦でもある程度戦えるようになる為だ!」

クリスは杖を上手く使い、槍の様に俺の腹を毆った。

俺はそのまま飛ばされてしまう。

……まさかクリスが接近戦もする様になるとは……

「……風加速ウィンド・アクセルッ!」

久々に風加速を使い、高速でクリスの周りを走り回る。

「火球ファイアー・ボール!」

「土壁アース・ウォール」

火球を3発撃つが、土壁に防がれる。

防がれるなら…防げない程の數で攻める!

矢フォトン・アロー!」

「石連弾!」

矢と石連弾がぶつかり、消える。

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「黒霧ダーク・ミスト…」

黒霧を使い、視界を奪う。

そしてその間に出來るだけ魔力を込める。

「くっ…厄介な…」

そして右手を上に上げ、大きな火球を5個作る。

「これで終わりだクリス! 隕石メテオ…! あれ⁉︎」

な、なんか…足が沈んでるような…絶対沈んでるよなこれ⁉︎

黒霧のせいでよく見えねぇ…!

「ウ…突風ウィンド!」

隕石雨をやめ、急いで突風を使って黒霧を消す。

そして地面を見てみると…

「な、なんだこれ⁉︎」

「お、なんだ。 自分から黒霧を消してくれたのか」

地面に俺の足が沈んでいた。

「泥沼マッド・スワンプ。 土屬の中級魔法だ」

マジかよ…! これじゃあただの的じゃないか!

「くっそ…!」

「すまないが、終わりだ。 石連弾!」

石連弾が迫ってくる。

泥沼のせいでこの場からはけないが、手は使える、魔を撃つことは出來るんだ。

なんなら…派手にやってしまおう。

「大発エクスプロージョン!!」

俺は隕石雨の為に溜めていた魔力を全て大発エクスプロージョンに使い、石連弾ごと発させた。

その大発エクスプロージョンの風によって沼から足が外れ、俺は地面を転がる。

流石は複合魔、すごい威力だな。

発エクスプロージョンによる煙幕が晴れると……

「……全く…君は本當に滅茶苦茶だな…」

ボロボロになりながらもクリスが立っていた。

そしてクリスは杖を構え…

「……これが今の僕の全力だ…! 巖石風ロック・ブラストッ!」

大きな巖が5個、凄まじいスピードで飛んでくる。

この威力…中級魔法か…⁉︎

「中級魔法には中級魔法だ! 隕石雨メテオ・レイン!」

俺の隕石雨とクリスの巖石風がぶつかり、砂埃が舞う…

俺は木刀に炎を纏わせ、いつでも炎斬を撃てるように準備するが…

砂埃が晴れると、それは意味がなくなった。

クリスが地面に倒れていたのだ。 俺の隕石雨が當たったわけではない。 隕石雨と巖石風はぶつかり合って消滅したからな。

って事はクリスが倒れた原因は魔力切れだ。

魔力が切れた以上、もう戦えない。

「勝負やめ! この勝負、ルージュ・アルカディアの勝利だ!」

クリスの元へ行くと、意識はあるようだった。

「お疲れクリス。 まさか中級魔法使えるようになってるとは思わなかったよ」

「…泥沼が功した時、勝てると思ったんだがな…」

「あれはマジで焦ったよ。 とりあえず、今回は俺の勝ちだな!」

きっとクリスはまだまだ強くなる。 俺がサボったりしてたらすぐに抜かされるだろう。

頑張らないとな…

クリスに肩を貸してアリーナに行くと、アリスとフィリアが準備をしていた。

そういえば次は2人だったな。

「あ、ルージュ! クリス! お疲れ様! 凄い試合だったね!」

「魔勝負…見ていてワクワクしました!」

セレナとアリスにそう言われると照れるな…

「次はアリスとフィリアだろ? 頑張れよ!」

はっきり言って、どっちが勝つか分からない。

アリスとは戦った事があるが、フィリアと戦った事はないからな…

いつもジャンケンに勝ってたし。

「青ブロックの試合を始める! アリス! フィリア! 降りてこい!」

モーナにそう言われ、2人は下に降りていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ねぇルージュ、どっちが勝つと思う?」

「んー…分からないな…クリスはどう思う?

ってあれ…?」

「あ、クリスならあっちだよ」

セレナが指差した方を見ると、クリスはナーシャと仲良く話していた。

…なるほどね、仲が良いようで何よりだ。

「あっ! 始まるよ」

セレナにそう言われ、アリス達を見る。

「では、始めろ!」

「行きますよフィリアさん! 聖水連弾セイクリッド・ウォーターマシンガン!」

早速アリスが聖水連弾を撃つが、フィリアは一歩もかずにただ木刀を持っている。

「…ふっ!」

そしていた瞬間、フィリアに迫ってきていた聖水連弾が全て消えた。 

フィリアが一瞬で全て斬ったのだ。

「なら…! 風切ウィンド・カッター!」

アリスが風切を撃つが、フィリアは凄まじいスピードで風切を避けながらアリスの方へ走っていく。

そして木刀を両手で持ち…

「円月斬えんげつざんッ!」

フィリアの円月斬がアリスに當たり、アリスが地面を転がる。

…あれはカインと戦った時に見た奴だな。 

流石はカインに傷を負わせた技だな…

風ブラスト!」

「きゃあっ!」

立ち上がろうとしていたアリスに、容赦なく中級魔法の風ブラストを撃つフィリア。

風ブラストによってアリスはさらに飛ばされてしまう。

「…容赦ないですね…フィリアさん…」

「當たり前じゃないの、勝負なんだから」

「そうですね、なら…ルージュさんの戦い方、真似させてもらいます!」

……え、俺の真似?

何する気だ…?

アリスは木刀を持ってない方の手を後ろに向けて………あっ…あれは…

「突風ウィンド!」

後ろに突風を撃ったことによってアリスは前に飛ぶ。

あれは…確かにアリスと戦う時はあんな戦い方してたが……まさか真似されるとは…

「ちょっ…! な、なんで…」

「行きます! 閃打せんこうだ!」

アリスが勢いそのままにフィリアの腹を毆る。

それによって今度はフィリアが地面を転がる。

流石に俺にやった閃連打せんこうれんだはやらなかったみたいだが、閃打でも子には辛いだろうなぁ……

「うっ…! はぁ…はぁ…」

フィリアが腹を抑えて立ち上がる。

分かるぞフィリア、あれめっちゃ痛いもんな…

「…ブラス…!」

「風の太刀!」

アリスは素早くフィリアの元に行き、フィリアが魔を使う前に俺にやったのと同じ居合斬りをした。

アリスの居合斬りによってフィリアは飛ばされる。

「はぁ…はぁ…降參よ。 私の負けだわ」

フィリアはもう立ち上がる事が出來ないようで、降參をした。

アリスとフィリアの勝負は、アリスの勝ちで終わった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「2人共お疲れ! いい勝負だったな!」

「ありがとうございます」

「………」

フィリアは何も言わない。

「フィリア、分かるぞ。 閃打、あれめっちゃ痛いよな!」

「え、す、すみません…! 」

「………」

アリスがオロオロしながら俺とフィリアに謝るが、それでもフィリアは何も言わない。

「お、おーい…フィリア?」

「……今度」

「ん? なんだ?」

フィリアがボソッと何かを言った。

「今度、私と勝負しなさい」

「……え、俺が…?」

「そうよ。 アリスはあんたの戦い方を真似したんでしょう?

 なら、私が負けた原因はあんたのせいでもある訳だから、あんたを倒すわ」

「ただの八つ當たりじゃねぇかそれ!!」

なんだそれ! 俺何も悪くないだろ。

「いいから、今度私と戦いなさい。 そうね…次の戦闘訓練の時でいいわ」

「……お、お手らかにお願いします…」

「嫌よ」

きっぱり言われてしまった。

フィリアってなんか俺に厳しくないか…?

クリスとは普通に話してるのに…!

「では、次の試合を始める!」

次は確かセレナの試合だったか。

「セレナ! 頑張れよ!」

「うん! 」

セレナは、なんと圧勝だった。 相手は何も出來ずに最後には降參してしまった。

……セレナ…お前強くなりすぎだろ…

次は青ブロックのザックの試合だったが、ザックも圧勝だった。

「よし、次はいよいよ準決勝だ!」

準決勝、という事は…

「赤ブロック、ルージュ・アルカディア! セレフィーナ・エゼルミア! 降りてこい!」

「ルージュ! 手加減しないからね!」

むところだ!」

準決勝の相手は、セレナだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺とセレナは向かい合う。

剣魔學園に來てから、訓練で対戦はしていたが、本格的な戦闘は今回が初めてだ。

セレナは強い。 それは俺が1番よく知っている。 ドーラ村にいた時からずっと……

そんなセレナと戦えるんだ。 

気合いをれよう…

「では赤ブロック準決勝…始め!」

「大発エクスプロージョンッ!」

俺はこの一撃で終わらせるつもりの全力で大発を撃った。

だが……

「…やっぱり避けるか…」

「ルージュの事だから、最初から凄い魔使ってくると思ったよ!」

セレナは俺が大発エクスプロージョンを撃つ直前に走り出していた。

「じゃあ、お返し! 吹雪ブリザード!」

「なっ⁉︎」

セレナの吹雪ブリザードを避けようとしたが、完全には避けきれず、右手と右足が凍ってしまった。

なんだよ吹雪ブリザードって…! こんな凄い魔使えるようになったのか⁉︎

「くそっ!」

右足と地面が完全にくっついてしまいけない。 

クリスの泥沼の時と一緒じゃないか!

「閃矢ライトニング・アロー!」

「熱手ヒート・ハンド!」

左手を熱くして、左手を右足に當てる、すると氷が溶けていく。

はやく…! 流石に閃矢をくらったらまずい!

はやく……!

「溶けた! 風加速ウィンド・アクセル! 」

溶けた瞬間に風加速で走り出す。 まだ右手が凍っていたからすぐ転んでしまったが、なんとか閃矢には當たらずにすんだ。

危ねぇ……

「あー…當たらなかったかぁ…」

「……けなくして攻撃とか…悪趣味な事考えるようになったな…」

「ははは…勝つためだからね。 これぐらいの事しないと、ルージュは驚かないだろうから」

「そうか…なら、俺も悪趣味な事するからな」

「えっ…?」

「黒霧ダーク・ミスト!」

まずは黒霧を使う。

そして速攻走り出す。

「黒霧なんて意味ないよ! 突風ウィンド!」

セレナが突風ウィンドを使い、黒霧を消し去る。

そうすると思ってたぞ。

「えっ…なんでルージュがこんなに近く…」

「悪いなセレナ。 閃フラッシュ!」

「うわぁっ!」

俺はセレナの目の前で閃フラッシュを使った。 俺はもちろん目を閉じている。

これでセレナは目を開けられないはずだ。

「ちょっ…ルージュ…!」

セレナが目を開けられないからか、木刀をがむしゃらに振り回している。

「氷結フリーズ」

「冷たっ! え! 何⁉︎」

氷結でセレナの手と足を凍らせる。

これでけないだろう。

そしてようやく目を開けられるようになったのか、セレナが目を開けると…

「え…なにこれ…⁉︎ ちょっとルージュ!」

「はっはっは! どうだセレナ! けないだろ、これで俺の勝ちだ! 」

「むぅ…でもさ、ルージュはどうやって私に勝つの? …まさかけない私に遠慮なく魔を使ったりしちゃうの…?」

「えっ……」

……それは考えてなかった。 確かに、男なら構わんが、の子をけなくして遠慮なく魔を撃って勝ったとしたら……

絶対アリスやフィリアから怒られる…!

俺もそんな事はしたくないし…

「か、考えてなかった…」

「…はぁ…しょうがないな、降參してあげるから、手の氷を溶かしてくれない?

 降參する時は両手を上げなきゃいけないんだよ」

「マジか! 降參してくれるのか! すぐに溶かすからな!」

俺はそう言って熱手で熱くした両手をセレナの両手に當てる。

………あれ? フィリアって降參するとき、両手上げてたっけ…?

「引っかかったねルージュ! 突風ウィンド!」

突然、俺のが飛ばされる。

…まさか…!

「騙しやがったなセレナ!」

「へへー! ちゃんと考えなかったルージュが悪いんだよー! じゃあ私降參します!」

「上等だ! ………えっ?」

「だってさ、手は溶けたけど足は溶けてないんだもん。 これじゃあ戦えないよ」

……確かに…

「じゃあなんでさっき突風ウィンドを撃ったんだ?」

「あれ? あれはただのイタズラだよー」

セレナはそう言って笑う。

くっそ……悪趣味なイタズラしやがって!

「セレフィーナ・エゼルミアの降參により、この勝負、ルージュ・アルカディアの勝利!」

勝った。 勝ったが……なんか嬉しくねぇ!

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