《2度目の人生を、楽しく生きる》71話 「友達との別れ」

トーナメント戦が終わった3日後、後は夏休みを待つだけとなった。

ついに來週から夏休みだ。

「皆は夏休みどう過ごすんだ?」

今は晝休み、校舎の食堂で晝食を食べながら、皆に聞いてみた。

「私はドーラ村に帰るよ!」

「僕はクレアと一緒に王都でゆっくり過ごすよ」

「私は…まだ決めてません」

「私もよ」

セレナとクリスは家に帰るのか。 まぁ分かってはいたがな。

…というか…

「決めてないって…家に帰らないのか?」

「はい」

「…関係ないでしょ」

まぁ…関係はないけどさ。

あまり人の家庭に首を突っ込むわけにもいかないな。

「あ、そうだ。 セレナ、後で話があるんだ」

俺は晝食を食べた後、セレナを呼んだ。

「話って何?」

「あのさ、父さんと母さんから手紙が來たんだけど……」

俺は、ディノスがあるの子を保護した事、そしてそのの子が今俺の家にの子が住んでいる事をセレナに話した。

「えぇ⁉︎ じゃあ新しい家族って事⁉︎」

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「いや…保護してるだけだから、親が見つかったら引き取られるよ。 それまで一緒に住むって事らしい」

「へー…嫌われないようにしないと!」

「心配しなくても大丈夫だと思うぞ?」

口ではこう言ったが、ちょっと心配だ。

王都ではセレナを嫌ってる奴はなかったが、ドーラ村にはエルフを嫌ってる奴が多いんだ。

今俺の家に住んでいるの子は、どっちなんだろうか……それによって、接し方を変えなければならない。

「はー…それにしても5ヶ月ぶりかぁ…早く帰りたいね!」

「そうだな。 久しぶりにゆっくり出來る…」

そんな話をしながら、教室に戻り、午後の授業をけた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今は放課後、俺はフローラから貰った魔の本を持ってグラウンドに來ていた。

トーナメント戦以降、俺、セレナ、クリス、アリス、フィリアは放課後にグラウンドに集まって魔の特訓をしている。

「…よし、やるかぁ」

まだだれも來ていない。 先に始めてるか。

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「えっと…中級魔法はっと…」

ページをペラペラと捲り、良さそうな魔を探す。

「お、これなんかいいかもな…炎拳ナックル・フレア…炎を拳の形に変化させ、相手を攻撃する中級魔法…」

遠距離から相手を毆れる魔法みたいだな。

自分の拳の3倍くらいの大きさが作れれば習得ねぇ……

これ、魔力込めればもっと大きく出來るよな。

「ものは試しだ! ーー炎拳ナックル・フレア!!」

イメージとしては火球を撃つ時と同じだ。

だが、その火球を大きく、さらに拳の形に変化させる……

そうイメージしながら撃つと……

「……えっ……」

思わずそんな聲が出てしまった。

……やり過ぎたか?

炎拳は、俺の拳の約10倍程の大きさだった。

…巨人の腕みたいだなこれ、しかもこれ飛んでいくんじゃなくて、腕に纏う魔なのか。

今俺の姿は、右腕だけ巨人の腕みたいに巨大化していて、凄く気持ち悪い。

「だけど全然重くない。 ……威力は…おりゃっ!」

威力を確かめる為、地面を思い切り右手で毆ってみた。

すると…凄まじい音が鳴り響き、砂埃が舞った。

「うえっ! …口に砂が…! ……突風ウィンド!」

突風で砂埃を消すと、目の前にあったのは…

「え、何これ…」

巨大なクレーターが出來ていた。

クレーターの大きさはちょうど俺の炎拳と同じ大きさだ。

………うん。

「…人に使う時は、威力を下げよう」

俺がそう決意した時、セレナ、アリス、フィリアがやってきた。

クリスは遅刻か?

「お待たせルージュ! …ってなにこれ⁉︎」

「あー…ちょっと威力調整間違えてさ」

セレナ達はクレーターを見て驚いていた。

「こんな威力の中級魔法ってありましたっけ…」

「炎拳ナックル・フレアっていう魔なんだけどさ」

「炎拳ってクレーターが出來る魔じゃないはずなんですが…」

「ははは……それよりさ、早く始めようぜ」

俺達が放課後こうして集まって魔の特訓をしている理由は、簡単だ。

強くなりたいから。 ただそれだけだ。

「あ、ねぇねぇ皆見て! 私新しい魔使える様になったの! 」

セレナがそう言い、俺達の視線がセレナに向く。

セレナは右手を上に向けると…

剣ホーリー・ソード!」

思い切り右手を振り下ろした。

すると、三日月の様な形をしたが凄まじい速度で飛んでいき、遠くの方で消えた。

「どうかな? 中級魔法らしいんだけど…」

どうかなって……凄いとしか言えないぞ…

威力高そうだし…

「私も新しい魔覚えましたよ!」

セレナが魔を披し終えると、次はアリスが宣言した。

そしてアリスは俺を見て…

「あの…この魔は相手が居ないと意味がないので、ルージュさん、けてもらえますか? ダメージはないので」

「あぁ、全然いいぞ」

ダメージがないならいいか。

「では…いきます。 水牢アクア・プリズン!」

突然、俺のを水が包んで……えっ…

「むぐっ⁉︎ んー⁉︎」

ちょちょちょ…⁉︎ 息が…!

「はい、終わりです」

アリスがそう言うと、バシャアッという音と共に俺を包んでいた水が弾ける。

「ぶはっ! 」

水が弾けたと同時に、一気に酸素がの中にってくる。

めちゃくちゃ気持ち悪い…

「どうですか?」

「どうですか? じゃねぇよ! 閉じ込めるなら先に言ってくれ! めっちゃ焦ったわ!」

「す、すみません!」

「まったく…でもこれ戦闘で役に立つんじゃないか? 閉じ込めて、その間に攻撃すれば…」

「はい! あとは威力の高い攻撃魔法を覚えれば…」

……マズイな…戦闘で水牢なんか使われたら勝てる気がししないぞ……

「最後は私ね……」

フィリアはそう言うと、木に向かって手を向け…

「真空波ソニック・ブーム!」

だが、何も起こらなかった。

フィリアの手からは何も出てない。

「……失敗か?」

「よく見なさいよ。 あの木」

フィリアが木を指差し、その木を見ると…

木には何かで切りつけた様な傷が出來ていた。

さっきまではなかったはずだ。

という事は…

「見えない攻撃って事か?」

「そうよ。 原理はよく分からないけどね」

見えない攻撃……ザックの空音波と似てるな…

「さて、次はルージュだよ! あのクレーターを作った魔見せて!」

「ここにもう1つクレーターを作ってみてください」

「皆見せたんだから、あんたも見せなさい」

……まぁ、斷る理由はないから、いいけどね。

…いや…どうせならさっきよりも魔力を込めて…凄い奴を見せてやろう。

「……んじゃ、やるぞ」

俺は魔力のほとんどを使い…

「炎拳ナックル・フレア!」

炎拳を出すと…さっきの炎拳の倍以上もある拳が出てきた。

俺のがアンバランスになっていく…

「……これで地面を…毆る!」

そのまま思い切り地面を毆った。

すると先程よりも大きな音と、大量の砂埃舞った。

「突風ウィンドーっと、どうだ? 凄いだ……ろ…」

砂埃を消し、3人の方を見ると…

餅をついているセレナ。

顔や髪に砂がつきまくっているアリス。

セレナと同じように餅をつき、俺を睨んでいるフィリアがいた。

「あー……その…すみません」

とりあえず謝ったが、あの後めちゃくちゃ怒られた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「今日で學校に來る日は最後だ。 明日から夏休みが始まる。 実家に帰る者、寮でゆっくり過ごす者、何をしても構わん。 を休めるように。

そして、この後トーナメント戦の下位20名は私の元へ來い。 訓練の容を伝える」

ようやく明日から夏休みだ。

というか、本當に夏休み中も訓練やるんだな……

「以上だ。 解散!」

よし、後は部屋に戻って荷を纏めるだけだ。

「クリス! 帰ろうぜ」

「あぁ」

セレナ達に別れを告げ、先に寮に戻った。

どうやら子達3人はこれから用事があるらしい。

「ルージュは村に帰るんだろう?」

「あぁ、ドーラ村って所にな」

「そうか、この前クレアに會いに行ったんだが、ルージュに謝していたぞ」

「本當か? そういえばあの日以來會ってないなぁ…」

クリスの妹のクレア。  8歳なのにあんな事件に巻き込まれた可哀想な子だ。

…そうか、謝してくれてるのか。

「それでな、ルージュに會いたいらしいんだ。 ドーラ村から帰ってきてからでいいから、會ってあげてくれないか?」

「全然いいぞ。 帰ってきたら絶対に會いに行くよ」

「ありがとう」

會いたいと言われたら斷るわけがないだろう。 クレアは良い子だしな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

部屋に戻ると、早速俺はリュックに荷を詰め込んだ。

ドーラ村へは1日かかるらしいから…多めに持って行こう。

著替え、水、食料、暇潰し用に本、布……これくらいか?

剣魔學園に來てから5ヶ月。 々大変だったが、とても楽しい日々だった。

こんな楽しい日々がまだまだ続くんだ。

全力で楽しもう。

「この部屋ともしばらくお別れだ」

5ヶ月間生活した部屋、初めての一人暮らしという事もあり、著がある。

「よし、夕食の時間まで本でも読むか」

まだ夕食までは時間がある。 俺はこの前買った魔の本を取り出し、中級魔法のページを開き、読み始めた。

「ルージュ、夕食の時間だぞ」

読書に夢中になっていると、扉がノックされた。

時計を見ると…もう1時間も読書していた。

「今行く!」

俺は急いで部屋を出て、食堂へ向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ねぇルージュ、ちゃんと荷準備した?」

「おう、もう完璧だ! 」

「本當? 部屋に戻ったらちゃんと確認するんだよ?」

「分かってるよ」

今日の夕食は焼き魚か。 なんの魚かは分からんが、相変わらず味いなぁ…

「あ、ルージュさんは実家に帰るんですよね?」

「あぁ」

「でしたら、ルージュさんのお父様にコレを渡して貰えませんか?」

そう言って、アリスが手紙を渡してきた。

アリスがディノスに手紙…気になる、気になるが…見るわけにはいかない。

「お、おう、分かった」

夕食を食べ終えた後、俺たち5人は男子寮と子寮への別れ道で話していた。

「當分皆とは會えないな」

「ですね…私とフィリアさんはいつでも會えますが」

「寂しいね…」

セレナが下を向きながら言う。 剣魔學園は俺とセレナにとって初めてだらけの場所だ。

俺にとっては、初めて學校を楽しいと思えた場所。

セレナにとっては、初めて自分から友達を作った場所。

クリス、アリス、フィリア。

いつも仲良くしてくれてるこの3人には謝しないとな…

「夏休みが終わったら、また楽しく過ごしましょう! 當分會えないのは寂しいですが」

「そうよセレナ、離れ離れになるわけじゃないんだから」

アリスとフィリアがセレナの肩に手を置いてめる。

「……うん! 」

それまで下を向いていたセレナが顔をあげ、笑顔になる。

……本當にいい友達を持ったな…。

「では、ルージュさん! クリスさん! さよなら!」

「バイバイクリス! ルージュはまた明日ね!」

アリスとセレナが手を振りながら子寮へと歩いて行く。

…あっ、フィリアがチラチラとこっちを見ながら手を上げたり下げたりしてる…きっと手を振るか降らないか迷ってるんだろう。

うん。 頑張ったなフィリア。

「なぁルージュ」

男子寮につくと、クリスが話しかけてきた。

「僕は剣魔學園に來てから、強くなれただろうか」

突然弱気な事を言ってくる。

…何言ってんだこいつ…

「クリス、それは嫌味か? 勉強でも訓練でも戦闘でも上位の癖に……それで満足してないならその頭脳を分けてくれよ頼むから」

「いや…嫌味というわけでは……まぁいいか。 忘れてくれ」

「おう。 夏休み中、俺ドーラ村でも特訓するから、のんびりしてると追いつけなくなるぞ?」

俺はニヤニヤしながらクリスに言った。

するとクリスはフッ…と笑い。

「特訓するのが自分だけだと思うんじゃない、當然僕も特訓するさ。

 確かにこの前は負けはしたが、たった1回負けただけだ。

夏休みが終わったら、どっちの方が強くなってるかな 」

と、クリスは挑発するように言ってきた。

…ほう…?

「上等だクリス。 なら夏休みが終わったら戦おうぜ、どっちが強いか決めよう」

むところだ。 君が驚く程強くなってやるさ」

よし、帰ったらディノスとフローラに頼み込んで、もっと強くしてもらおう。

「ふっ…では、またなルージュ」

「おう。 じゃあな」

部屋の前につくと、お互いそう言って別れた。

……さて、寢るか!

明日は朝早くから出発だ。 寢坊は出來ない。

久々に帰るぞ、ドーラ村。

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