《2度目の人生を、楽しく生きる》73話 「帰郷」
「お客さん。 もうすぐドーラ村につきますよ」
王都を出発した次の日の晝。 おじさんにそう言われ、外を見ると、懐かしい景が見えて來た。
ここは王都に行く時に通った道だ。
「やっとつくんだな」
「うん。 なんかあっという間だったね」
ずっと景を見てたから、時間が経つのが早くじた。
丸一日馬車の中にいたと言うのに、全然疲れがない。
「お二人はドーラ村出なんですか?」
このおじさんとも仲良くなった。
俺達が景を見ていると、おじさんが珍しいについて説明してくれたりしたのだ。
「はい。 今は夏休みなので、実家に帰るんです」
俺はおじさんに帰る理由を説明した。
「なるほど學生さんでしたか。 すると剣魔學園の生徒さんですか?」
「はい。 俺ら二人共剣魔學園に通ってます」
「ほー…でしたら相當強いんでしょうなぁ…」
「そんな事ないですよ」
「おじさんはこのお仕事どれくらいやってるんですか?」
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セレナがおじさんに質問する。
「んー…30年くらいですかね? 隨分続けてますよ」
30年⁉︎ このおじさん、見た目は50代後半くらいだから…半分以上この仕事をしてるのか。
やはりこういう仕事の方が安定して稼げるのだろうか。
「あ、ほら、見えて來ましたよ。 ドーラ村です」
前を見ると、ドーラ村の門が見えてきた。
まぁ、門と言っても王都みたいな鉄のもんじゃなく、木の門だけどな。
ここらへんまで來たらもう徒歩でも帰れる。
「はい。 馬車で送れるのはここまでです」
そう言われ、俺とセレナは馬車から降りる。
忘れは…無いな。 大丈夫だ。
「おじさん、ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
おじさんにお禮を言うと、おじさんはニコッと笑って去っていった。
「さて…行くか」
「うん!」
帰って來たぞ。 ドーラ村。
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「うわぁー! 懐かしいねぇ!」
「あぁ、帰って來たんだな」
俺とセレナは今ドーラ村を歩いている。
周りの村人が俺達をジロジロ見て來るが、きっとそれは俺達が剣を持っているからだろう。
「ルージュ、これからどうする? お互い別々に家に帰る?」
「そうだな。 今日は家族でゆっくり過ごして、明日合流しようぜ」
「分かった!」
久々に會うんだ、ゆっくりしたいもんな。
「んじゃ、俺はこっちだから、また明日な」
「うん! また明日!」
當然だが、俺とセレナの家は別の所にある。
俺達は別れ道で別れた。
「……風加速ウィンド・アクセル!」
早く帰ろうと思い、俺は風加速を使って走る。
俺を見た村人が驚いた表をするが、気にしない。
きっと俺は今笑っているだろう。 久々の帰宅だ。 楽しみに決まっている。
「著いた」
風加速で走り続けて數分。 歩きなら數十分はかかっただろう。
今俺の目の前には、木で出來た庭付きの二階建ての家がある。
アルカディア家だ。
「ふぅ…」
俺は深呼吸をして、扉を目指して歩く。
2人共居れば良いけどな。
まだ晝とは言え、買いものに行ってないとは限らない。
「よし…」
俺は扉をコンコン…と叩く。
すると、中から「はーい」と言う聲と、こちらに歩いてくる足音が聞こえて來た。
懐かしい、フローラの聲だ。
「今開けますねー」
そう言って、フローラが扉を開け、俺と目が合う。
「あ……え……」
俺を見て目を見開き、口をパクパクさせているフローラに
「母さん。 ただいま」
「る…ルージュ!」
俺がそう言うと、フローラは俺に抱きついてきた。
「帰って來たのね! 帰ってくるなら手紙くれればよかったのに!」
「だって、手紙がいつ屆くか分からなかったし、ビックリさせたかったんだ」
俺はニヤッと笑って言った。
するとフローラは笑顔で
「もう…イタズラ好きなんだから…。 おかえりなさい、ルージュ」
そう言うと、フローラはまた俺を抱きしめた。
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「そう言えば、セレナちゃんはどうしたの?」
「セレナも帰って來たよ。 今日はお互いゆっくり過ごそうって話になったんだ」
「そうなのね、待っててね、今お晝ご飯作るから!」
「うん」
今俺は料理を作るフローラを椅子に座りながら見ていた。
「あ、そう言えば父さんは?」
「父さんはね、手紙は見たでしょう? そのの子とお出かけしてるわよ」
ほう、どうやら仲は悪くないようだな。
「へぇ、手紙見た時驚いたよ。 そのの子はどんな子なの?」
「とても良い子よ? カノンちゃんって言うんだけど、大人しくて禮儀正しくて…」
なるほど、9歳で大人しくて禮儀正しい。 名前はカノン…
早く會いたいな。
「はい、出來たわよ」
どうやら料理が出來たらしく、フローラがテーブルに料理を置く。
これは、火炎鳥フレイム・バードの唐揚げだ。
剣魔學園でも食べたなぁ…
火炎鳥を食べ終え、フローラとし話をする。
「…やっぱり、ルージュちょっと背びたわね」
「え? そうかな?」
自分ではよく分からないが、フローラがそう言うならびたんだろう。
「えぇ、この5ヶ月で隨分変わったわね」
「…まぁ、々あったからね」
奴隷商人に攫われ、學試験で教師と戦い、必死で勉強し、貴族の家に忍び込んで貴族を脅し、クラストーナメントで強い奴と戦って……
うん、々やったなぁ…
「ふふふ…お疲れ様。 夏休みは長いんでしょう? ゆっくりするといいわ」
「うん。 そうするよ」
「父さんがね、ずっとルージュが帰ってくるのを楽しみにしてたのよ?」
「そうなの?」
「えぇ、「早く戦いたいなぁ…」ってずっと言ってたの。 カノンちゃんにいつもルージュの凄いところを自慢していたわ」
なにそれ、めっちゃ恥ずかしいんだけど…
その後は、自分の部屋に荷を置き、リビングでフローラに剣魔學園でやった事を話していた。
そんな事をしていると
「ただいまー!」
「ただいま帰りました」
扉が開くのと同時に元気な大聲と、落ち著いた聲が聞こえた。
この聲はディノスだな。 そしてもう1人がカノンだろう。
俺はその聲が聞こえると、勢いよく椅子から立ち上がり…
「母さん、父さんには俺の事黙っててね」
ちょっと驚かせてやろう。
フローラは俺の考えが分かったのか、笑顔で
「了解よ」
と言ってきた。
俺はリビングのすぐ橫にある俺の部屋にり、扉に耳をくっつけた。
「ただいま母さん! 」
「おかえり。 カノンちゃんもおかえり」
「ただいま帰りました、では、荷を置いてきますね」
聲を聞いただけでも分かる。 この子かなり大人しいな。
なんと言うか…元気がない? と言うじだろうか。
そして、リビングから去っていく足音が聞こえる。
きっとカノンが荷を置きに行ったのだろう。
って事は、今リビングにはディノスとフローラが居るということになる。
…よし、そろそろ出るか。
「消音サイレント…」
俺は音を立てずゆっくり扉を開け、部屋を出る。
「ん? 母さんどうした? なんで笑ってるんだ?」
ディノスは今俺に背を向けていて気づいてないが、フローラからは完全に見えている。
だからフローラは笑ったんだろう。
さて…どうやって驚かしてやろうか。
やはり魔か? 
よし、電流ボルトでちょっと痺れさせてやろう…
俺はニヤニヤしながらディノスの背中に右手を向け…
「…電ボル……!」
「あなた、どちら様ですか?」
俺が電流ボルトを撃とうとしたら、左側から聲が聞こえた。
フローラが顔を手で隠してプルプルと震えている。
きっと笑いを我慢してるんだろう。
「ん? どうした? カノンちゃ……えぇ⁉︎」
ディノスが振り向き、俺を見て驚く。
いや…これはないだろ……
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「ははははは! なるほど! 俺を驚かそうとしたがカノンちゃんに見つかって失敗したのか! はははははっ!」
「笑うな! 馬鹿にしやがって…」
ディノスは俺を見てさっきから大笑している。
くそっ、後しだったのに
「あの…申し訳ありません。 私が話しかけなければ…」
「あ、いや…気にしなくていいよ」
カノンが俺に謝ってくる。
カノンは、綺麗な肩までくらいの水の髪をしている。 背はセレナと同じくらいか、顔は…めちゃくちゃ可い。
「あぁそうだ。 ルージュ、カノンちゃん。 自己紹介したらどうだ?」
ディノスにそう言われ、カノンと向かい合う。
ここは俺からの方がいいよな。
「初めまして。 俺はルージュ・アルカディア。 10歳だ」
「初めまして、カノンと申します。 9歳です。 ルージュ様の事はディノス様から聞いております」
ルージュ様⁉︎ てかこの子本當に9歳か⁉︎
「…父さん。 いくらなんでも9歳のの子に様付けで呼ばせるのはどうかと思うよ」
「なっ⁉︎ 違う! 違うぞルージュ!
 俺はちゃんと「お父さん」か「父さん」と呼ぶように言った! なのに呼んでくれないんだ!」
ディノスが必死に否定する。
…まぁ、確かに知らない人を「お父さん」とは呼びたくないな。
「なぁ、カノンって呼んでいいか?」
「はい。 好きに呼んでくれて構いませんよ」
「そうか、俺の事は「ルージュ」か「お兄ちゃん」って呼んでくれ」
「はっ! 馬鹿だなルージュ。 父さんが何度頼み込んだと思ってるんだ。 
カノンちゃんが様付け以外で名前を呼ぶ事はない! 殘念だが諦めろ」
そんな事は分かってる。 これは仲良くなるための冗談みたいなものだ。
カノンは顎に手を當て、し考えると…
「分かりました。 では「お兄様」と呼ばせていただきます」
「ほら言った通りだろルージュよ! カノンちゃんが様付け以外で……えっ?」
ディノスが固まる。
「え…あ…うん。 好きに呼んでくれていいよ…うん」
まさかの「お兄様」呼びに俺は戸いながらも返事を返す。
ディノスは固まったままで、フローラはクスクスと笑っていて、カノンは俺の様子に首を傾げていた。
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