《2度目の人生を、楽しく生きる》74話 「カノンの特技」

「お兄様は、剣魔學園で普段からどのような事をしているのですか?」

「えーと…勉強して、を鍛える。 この繰り返しだな」

今、俺とカノンは俺の部屋で2人で話をしている。

何故か知らないが、カノンは積極的に俺に話しかけてくる。

「ではお兄様はお強いのですか?」

「いや…まだまだ弱いと思うぞ?」

「ですが、ディノス様はいつも「ルージュは強いぞー?」と言っていましたよ?」

今のはディノスの真似か? 

…悪いが、全然似てない。

「お兄様は、剣と魔、どちらがお得意なのですか?」

「魔だな。 剣は難しいんだ」

「なるほど…お兄様は剣が苦手なのですね」

カノンは、何故俺にこんなに話しかけてくるんだろうか。

カノンの第一印象は、言っちゃ悪いが、「靜かな奴」だと思っていた。

だが、カノンは積極的に話しかけてくる。 ディノスもこれには驚いたらしく、俺に「カノンちゃんと仲良くしてやってくれ」と頼まれた。

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今俺達が2人きりなのも、ディノスとフローラが強制的に俺達を部屋にれたからだ。

「…なぁカノン。 カノンは剣魔學園に通いたいと思うか?」

「剣魔學園…ですか? どうしてですか?」

「いや、だって剣魔學園の事ばかり質問してくるだろ? 興味あるのかなと思ってさ」

カノンは首を傾げた後、何かを考えるかのように顎をり…

「……いいえ? 私は剣魔學園に行きたいとは思いません。 剣は得意ですが」

「え、カノンって剣出來るのか」

「はい、を守る為に練習しました」

を守る為に剣を練習したのに、森で保護された。

カノンはまだ9歳だ、9歳で一人旅はしないだろうし、考えられるのは……

やはり、親に捨てられたと考えるのが妥當だろう。

「……カノン。 父さん達からも言われたと思うが、この家を自分の家のように使って構わないからな」

「お兄様…ありがとうございます…」

カノンは座ったまま深く頭を下げてきた。

…こんな子を捨てる親がいるとはな…

俺はカノンの頭をでながら

「お禮なんていいよ、兄妹なんだから、頼るのは當たり前だろ?」

「兄妹…私とお兄様がですか?」

「あぁ、だからいつでも俺を頼れ」

「…ふふ…お兄様は優しいですね。 ……優しすぎます」

そう言ってカノンは笑ったが。 俺には、その笑顔に何か違和じた。

無理して笑っているような…まだ俺に心を開いてないのか。

そんな事を考えていると、突然部屋の扉が叩かれた。

「どうぞー」

俺がそう言うと、扉を開け、ディノスが部屋にってきた。

…木刀を二本持って。

なるほどね、今からやるのか。

「ルージュよ」

「分かってるよ父さん。 早くやろう」

もっとカノンと話をしたかったが、ディノスとも戦いたい。

今回はディノスを優先させてもらおう。

だがカノンは訳が分からないようで、俺とディノスを互に見ている。

「今から俺と父さんが戦うんだよ。 カノンも見にくるか?」

「え? 私も見ていいのですか?」

「もちろん。 カッコいい所見せたいしな」

俺はディノスから木刀を一本貰い、部屋を出る。

「ルージュよ、自満々だな。 父さん楽しみで仕方がないぞ!」

ディノスはソワソワしているのが見て分かる程ソワソワしている。

そんなに戦いたかったのかよ…

「ならばルージュ! 早速庭に…」

「いや、庭でやると、多分家が壊れると思う。 広い場所に行こう」

俺の技は派手なものが多い。 アルカディア家の庭は広い方だが、それでも足りないだろう。

俺がそう言うと、ディノスはニヤッと笑い

「いいだろう。 なら早速広い場所に…痛たたたたた! な、なんだ母さん!」

突然、ディノスの耳がフローラに引っ張られた。

「なんだじゃないでしょう! ルージュは今日帰ってきたばかりなのよ? 

今日は家でゆっくりするべきだわ。 疲れもあるでしょうし」

まぁ確かに、長旅で疲れてはいるが…

「だが母さん…俺はずっとこの日を楽しみに…」

「ダメ。 明日やりなさい」

「どうしてもか?」

「ダメよ」

ディノスが床に崩れ落ちる。

こうなったフローラには誰も逆らえない。

もし逆らったら…夕食抜きになるか、掃除をやらされるか、何かしらの罰が與えられるのだ。

だから絶対に逆らわない。

「お兄様? 結局戦わないのですか?」

「ごめんなカノン。 明日は戦うから。 さぁ、部屋で話を続けようぜ」

「はい」

俺は、崩れ落ちたディノスを放っておいて部屋に戻った。

はぁ…フローラに許可取ってからいに來いよ…期待して損した。

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「それで、いつもセレナ、アリス、フィリアって奴らがじゃんけんして、負けた奴が俺と戦うんだよ」

「お兄様、その じゃんけんと言うのはなんなのですか?」

「へ?」

「じゃんけんと言うのはなんなのですか?」

「え、じゃんけん知らないの?」

「はい。 聞いた事がありません」

あれ…てっきりこの世界でもじゃんけんは知られてるものだと思っていたが…知らない奴もいるのか。

俺の知り合いは皆知ってたんだけどな…

「じゃんけんって言うのはな? グー、チョキ

、パーっていう3つの…なんて言うんだろうな…んー…技? 技があるんだよ」

実際にグー、チョキ、パーを作りながらカノンに説明する。

カノンは俺が言う事に頷きながら靜かに聞いている。

「パーはグーに強い、グーはチョキに強い、チョキはパーに強いんだ。 

だから……あー…」

なんて説明したらいいんだ? じゃんけんの説明なんてした事ないから分からんぞ…

「よし、実際にやってみよう。 「じゃんけん、ぽん」の「ぽん」の時に、グー、チョキ、パーのどれかを出すんだ」

「出す…とは、手で作ればいいのですか?」

「そうそう。 んじゃやるぞ? 」

カノンは頷き、お互い靜かになる。

「じゃんけん……ぽん!」

俺が出したのはグー。 対してカノンが出したのはパーだ。

「この場合、私の勝ちなのですか?」

「そう言う事、これがじゃんけんだ」

「これが…じゃんけん…」

カノンはパーのままの自分の手を見つめ…

「じゃんけん、面白いです! もう一度やりましょう!」

「え? お、おう。 いいぞ、じゃんけん…ぽん」

俺はパー、カノンはチョキを出した。

「やりました! また私の勝ちです!」

「す、凄いな…」

カノンの奴、急にテンション上がったな。 そんなにじゃんけんハマったのか?

…まぁ、カノンが楽しいなら、カノンが飽きるまで続けてやろう。

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「じゃんけんぽん! ああああっ! また負けた!」

「お兄様…流石に飽きてしまったのですが…」

「ダメだ! 俺が勝つまで続けるぞ。 じゃんけんぽん! 負けたあああっ!」

「……なんで勝ってしまうんでしょう…」

あれから何回も何回もじゃんけんをしているが、一度もカノンに勝つ事が出來ない。

なんだ…? なんかイカサマでもしてるんじゃないか?

「お兄様、そろそろ違う遊びがしたいのですが…」

「……そうだな…流石にじゃんけんばかりってのも………じゃんけんぽん! くそおおぉっ!」

「あぁっ…また勝ってしまいました…」

俺が負けているのに、何故かカノンが悔しがっている。

なんでこんなに勝てないんだ…?

カノンの特技はじゃんけんなのか?

「お兄様…じゃんけんは飽きました、違う遊びがしたいです」

「うん…そうだな…あれ? 俺らって遊びの話をしてたっけ?」

「違いますが…お兄様の知ってる遊びの方が楽しいです」

まぁ…楽しいなら別に構わんがな。

カノンにはとことん日本の遊びを教えてやろう。

「なら、じゃんけんと同じくらい有名な、あっち向いてホイという遊びを教えよう」

「是非お願いします!」

「これは、まず最初にじゃんけんをして…」

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「あっち向いてホイ……お兄様…これで何回目ですか…」

「………」

俺は一度もあっち向いてホイと言えていない。

まずじゃんけんに勝つ事すら出來ないからな。

「もう一回やりますよ? じゃんけんぽん。 ……あっち向いてホイ。 ……お兄様……」

カノンが哀れみの目を俺に向けてくる。

果たしてこれは俺が弱いのか、単純にカノンが強すぎるのか。

分からないが、俺がカノンに勝つ事はないんだろう。

「……お兄様。 私、お兄様の學校のお話が聞きたいです」

「…うん。 俺も今めっちゃその話したかったんだ。 じゃあ剣魔學園の學食の話を…」

「學食? 気になります」

俺は遊びの話をやめ、カノンに剣魔學園の話をする事に決めた。

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