《2度目の人生を、楽しく生きる》82話 「メイド姉妹とカノン」
「朝食の時間です」
朝、昨日と同じく部屋の鍵が開けられ、ケイプが部屋にってきた。
俺は座っていた椅子から立ち上がり
「おはようございます! ケイプさん!」
と、今俺が出來る最高の笑顔と最高に明るい聲で言った。
ケイプは俺の変わりように驚いたのか、目を見開いて面白い顔になっている。
「…昨日と隨分態度が違いますね」
「はい。 昨日は俺、気持ちの整理が出來てなくて……一晩寢たら気持ちも落ち著きました」
「…なるほど」
「さぁ、カノンもお腹が減ったみたいなので早く行きましょう! な? カノン」
「え!? あ、はい!」
急に話を振られたカノンが慌てて顔を縦に降る。
そして俺とカノンはケイプに連れられ、三階の食堂へと向かった。
なぜか今日は腕を縄で縛られなかった。
食堂の扉を開くと、昨日と同じようにテーブルの奧にローガが座っていた。
「やぁ、おはよう」
「おはようございます。 ローガ様」
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「え? …あ、うん」
まさか様付けで呼ばれると思わなかったのか、ローガが驚いた顔をする。
俺とカノンは昨日と同じ席に座ると、メイドのレーラが俺の前に、シーラがカノンの前に料理を置いた。
「ありがとうございます。 レーラさん」
「あ、ありがとうございます…シーラさん…」
「いえ、仕事ですので」
レーラは表を崩さずに言ったが…
「うん。 どういたしまして」
シーラはカノンの頭を優しくでながら言った。
レーラはそれを止めずにただ見ていた。
……やはり、メイドの2人とカノンは仲が良かったんだな。
「ルージュ君? 昨日と隨分様子が違うけど、どうしたんだい?」
予想していた通りの質問が來た。
「もう何をしても逃げる事は出來ないのは分かったので、開き直る事にしました」
「そうかい。 まぁ、仮にこの屋敷を出る事は出來ても、もうドーラ村へは帰れないしね」
…? どういう事だ?
「あぁ、言ってなかったね。 実はこの屋敷、移するんだ。 実際にじゃなくて、空間をね」
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「空間?」
「うん。 ルージュ君が初めてこの屋敷を見た時、何があった?」
「……何もない場所に、いきなり屋敷が現れました」
「そう! これは空間魔と言うんだ。 それを使ってこの屋敷ごと空間を移しているんだよ 」
空間魔……確か、グレンが使っていた奴だ。
だがグレンは”自分一人と何か1つを消す程度”と言っていた。
と言う事は、ローガの空間魔はグレンよりもレベルが上という事になる。
それに今、空間を移していると言った。
「なら、今俺達はどこにいるんですか?」
「ん? もうすぐ王都に著く頃かな? 
今は空間の中を移してるから、今外に出たら一生空間の中を彷徨う事になるね」
なるほど…なら、急がないとな。
「そうですか! 凄いですね!」
「ははは、ありがとう。 さぁ、食べようか」
ローガがそう言い、料理を食べ始めた。
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料理を食べ終えた後、俺は立ち上がり。
「ローガ様」
「ん? なんだい?」
「お願いがあるんですが、この屋敷を自由に歩く事を許可して下さい。
 もう屋敷から出るつもりもないし、そもそも出れないので」
俺がそう言うと、ローガはし考え…
「うん。 いいよ。 君達もあの部屋じゃ退屈だろうしね」
「ありがとうございます!」
屋敷を自由に歩く事を許された。 これでいろいろ調べる事が出來そうだ。
「それじゃあ。僕はやる事があるから部屋に戻るよ」
そう言ってローガは食堂を出て行った。
それに続いてメイド2人もカラになった皿を持って部屋を出て行った。
そして食堂には俺とカノンとケイプの3人だけになった。
「…では、私も仕事がありますので」
そう言ってケイプは食堂を出ようとするが…
「ケイプさん。 1ついいですか?」
「…はい?」
「昨日のあの言葉、あれは本當ですか?」
昨日、ケイプは「逆らえないから」と言った。 
俺は、ケイプはローガに従うが、信頼はしていないと考えている。
だが、逃げたくても逃げられないんだ。
「……さぁ? ご想像におまかせします」
否定はしないんだな。
「そうですか。なら、勝手に解釈して、勝手にあなたを信用します 」
「………」
ケイプは、何も言わずに食堂を出て行った。
「…お兄様?」
「ん?」
「何か、私に出來る事はないでしょうか? 
考える事はお兄様にしか出來ませんが…私にも何か…」
「カノン。 何言ってんだ?」
俺が言うと、カノンは首を傾げた。
「カノンにやってもらいたい事なんていっぱいあるよ。 バンバン働いてもらうぜ?」
「は、はい! 頑張ります!」
カノンはドーラ村に來る前、この屋敷でメイド見習いをやっていたと言った。
つまり、カノンはこの屋敷に詳しいはずだ。
屋敷の構造が分かるのは大きい。
「よし! んじゃ早速1つ目だ。 カノン、メイド2人は普段何処にいる?」
「え? レーラさん達ですか? 」
そしてカノンはメイド2人と仲が良い。 これを利用しない手はない。
「あぁ。 あの2人とも話さなきゃいけないからな」
「えーと…今は多分キッチンでお皿を洗っているはずです」
「なるほど。 ならカノン! 早速キッチンに案してくれ」
「はい!」
俺達はキッチンを目指し、食堂を出た。
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食堂は二階にあるらしい。
俺達は今、キッチンの部屋の目の前に來ていた。
部屋は扉が閉まっていて、中は見えないが、中からカチャカチャと皿の音が聞こえるので、メイドが居るのは間違いない。
「カノン、準備はいいな?」
「…はい。 大丈夫です」
「よし。 んじゃ行くぞ」
俺は部屋の扉をノックした。
すると、部屋の中から
「はーい。 今開けます」
と、聲が聞こえた。
俺はまだ2人の聲の區別がついておらず、レーラかシーラか分からない。
姿を見れば分かるけどな。
「はい。 どうしましたケイプさ……あれ?」
どうやらケイプと間違えたらしく、シーラが扉を開けた。
「どうも、シーラさん」
「え、えっと…ルージュ様? …がどうしてここに?」
「し、お話がしたくて。 中にってもいいですか?」
「えぇ…構いませんが…」
「では、失禮します」
俺とカノンは部屋の中にった。
部屋の中にはとても綺麗で、汚れが1つもなかった。
大きく綺麗なキッチンに、木の機、3つの椅子。
そのキッチンでレーラが洗いをしていたが、俺の顔を見て洗うのをやめた。
「急にお邪魔してすみません」
俺がそう言うと、レーラが手を拭き、俺の顔を見た。
「ルージュ様。 何の用ですか」
シーラと違い、レーラは無表で問いかけて來る。
「し2人とお話がしたいんです。 後、様付けはいいですよ。 あと敬語も」
「では、ルージュ。 何の用かしら、もしかして、料理が口に合わなかった?」
あれ…? いきなり呼び捨て? いや、様付けはいいって言ったけど、いきなり呼び捨てとか凄いなこの人。
あとなんか勘違いしてるっぽいし
「料理は凄く味しかったですよ。 今回は別の件で…」
「ちょっと待って」
「はい?」
レーラが俺の言葉を遮った。
なんだこの人……俺喋ってる途中だったのに…
「私が敬語をやめたんだから、あなたも敬語やめなさい。 あなたが敬語使ってると…なんか…気持ち悪いわ」
「えぇ!?」
なに!? 気持ち悪いって、いきなり罵倒!?
確かに俺敬語あんまり使わないけど…言い過ぎじゃないか…?
「ごめんねルージュ君。 姉さん正直者だから…。 はい椅子。 座って話そうか」
シーラが椅子を1つ持って來て、テーブルの前に置く。
これで椅子が4個で人數分になった。
シーラはレーラと違って想がいい。
俺とカノンが隣、レーラとシーラが隣同士で座り、向かい合う。
「じゃあ…敬語はやめで。 …俺達がここに來た理由だけど。2人に聞きたい事があるんだ 」
「聞きたい事? 何かしら」
レーラが首を傾げて言う。
シーラは椅子には座らず、お湯を沸かしている。
「ローガの正。 ローガがどんな奴か知ってるか?」
「魔剣使い。 でしょ? 知らないわけがないじゃない」
俺の隣でカノンがピクッと反応した。
ずっとこの屋敷にいたカノンは、ローガの正を知らなかった。
 だが、カノンと共に仕事をしていたこのメイド2人はローガの正を知っていた。
だから今カノンは混しているはずだ。 この2人は”どっち”なんだろう。 と。
……まぁ、俺はもう確信してるけどな。
「はい、紅茶。 あとクッキーも、カノン好きでしょ?」
「あ…はい…」
シーラは優しく微笑みながら言うが、カノンは下を向いていて目を合わせない。
シーラはそれを見て悲しそうな表をしながら全員に紅茶を配る。
なんだ…見ていてムズムズするなコレ…
「今からする質問に正直に答えてくれ。
 カノンの為にも、はぐらかすのは無しにしてくれ」
「えぇ、いいわよ」
「2人は、自分からローガに協力してるのか? それとも、強制的に協力させられてるのか?」
カノンが手をギュッと握る。
2人は噓をつかないはずだ。 
2人は俺の質問に答えず、黙って立ち上がる。
そして背中に手を回し…
「これが…」
「答えだよ」
レーラとシーラは、振り返り、俺に背中を見せてきた。
2人とも背中の部分の服の紐を解いており、白いが曬されている。
本來なら目を逸らすが、今はそんなのは関係ない。
「なんだ…それ…」
2人の背中には、白いに似合わない。 赤い魔法陣が描かれていた。
「この魔法陣のせいで、ローガに逆らえないのよ」
「ローガに逆らうと、この魔法陣が発して、凄い痛みが來るの」
逆らうと…? じゃあ、ケイプにもこの魔法陣が…?
「…じゃあ、2人は自分からローガに協力してるわけじゃないんだな?」
レーラとシーラはまた背中に手を回して服を直し、椅子に座ると
「えぇ、あんな男に協力するわけがないでしょう」
「うん。 出來るなら、今すぐにでも逃げたいくらいだよ。 でも、それが出來ないのは、分かるよね?」
もし逃げれば、それはローガに逆らうと言う事。
魔法陣の痛みがどんなものかは知らないが、逃げ切れても一生その背中の痛みに耐えながら生きなければいけないんだ。
そんなの…酷すぎる。
「…あぁ。 よく分かったよ。
 カノン、2人は悪い人じゃなかったみたいだぞ?」
俺がそう言うと、カノンは靜かに立ち上がり、レーラとシーラの元へ歩いて行く。
「あ…あの…私…」
「何かしら?」
「落ち著いて、ゆっくりでいいよ」
「私…2人の事…疑って…! ごめんなさい…!」
カノンはポロポロと涙を流しながら、頭を下げた。
「…いいのよ。 カノン。 怒ってないから」
「うん。 またお話しできて嬉しいよ」
2人はそう言って、カノンを優しく抱きしめた。
その後、カノンが泣き止むまで3人で抱き合い。 カノンが泣き止んだ後、カノンが椅子を持ってレーラとシーラの真ん中に移した。
おかげで今3対1みたいな狀況になっている。
「…この雰囲気は壊したくないし、聞きたかった事は聞けたから、 今日は楽しく話すだけにするか」
「賛よ。 せっかくカノンに會えたんだもの。 暗い話はしたくないわ」
「やったねカノン。 お話しできるよ!」
「はい!」
…何これ。 俺帰った方がいいのか…?
あの楽しそうな空間にれる気がしないぞ。
「あ、そうだ! レーラさん、シーラさん聞いてください!」
カノンがニコニコしながら言うと、2人は微笑みながら耳を傾ける。
「私、お兄様が出來たんです!」
「……」
「……」
ずっとニコニコしていた2人が急に無表になる。
そして2人とも俺を見る。
「カノン。 もしかして…そのお兄様って…」
「はい! お兄様がお兄様です!」
カノンが俺を見て訳が分からない事を言うが、2人はそれで伝わったらしい。
「なるほど…どんな関係なのか気になってはいたけど…まさかそんな関係だとは思わなかったわ」
「うん。 人見知りなカノンにまさかお兄ちゃんが出來るなんて…」
やっぱりカノンは人見知りだったんだな。
何となくそんな気はしてたが…
「ねぇカノン。 私達は? 私達はカノンとどんな関係なの?」
シーラがカノンを見て言う。
そしてカノンは迷わずに
「お姉ちゃん…みたいだと思ってました」
「そっかそっか! 私達はお姉ちゃんかー」
……あれ? ちょっと待てよ…?
カノンの兄は俺。 そしてカノンの姉はレーラとシーラ。
あれ…? なら…俺とレーラ達は…?
「ならさ、私達はルージュ君のお姉ちゃんになるね」
「なるほど。 シーラ、確かにその通りだわ。 ルージュは明らかに年下だもの」
「うん! それじゃあ私達は家族だね」
「え、あ…はい…」
この日、俺に初めての姉が出來た。 
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