《2度目の人生を、楽しく生きる》83話 「2日後に向けて」

…さて、やるべき事が増えてしまった。

これまでは、この屋敷から逃げ出す事が目的だったが、それをするにはまずレーラ達の魔法陣の謎を解かなくてはならない。

だが魔法陣についてはレーラ達は知らないらしい。 

「まずいな…」

この屋敷から逃げる時は絶対に誰1人欠けずに出する。

これは確定事項だ。

さっきから俺は元監部屋、現自室で考えているが、何もいい案が浮かばない。

隣でカノンも一生懸命考えてくれてるが、カノンもいい案が浮かばないようだ。

「失禮します。 ルージュ様、ローガ様がお呼びです」

すると、ケイプが扉を開けてそう言った。

「ローガ様が? 」

「はい。 大事なお話があるとの事です」

大事な話…? なんの事だ?

「分かりました。 んじゃカノン、行ってくる」

「あ、はい! お気をつけて」

「おう」

カノンにそう言い、ケイプと共に部屋を出た。

「…で、ケイプさん」

「はい?」

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3階への階段を登りながら、俺はケイプに話しかける。

「ケイプさんは魔法陣の事、ご存知ですか?」

「……なんの事か、分かりませんね」

なら今の間は何なんだ。

「ケイプさん、ちょっと服いでもらっても……」

「嫌です」

「ですよね。 ごめんなさい」

そうだよな。 が簡単に服をぐわけがないよな。 

うん。 あの2人がおかしいんだ。

…見れば一発で分かるんだがなぁ…

「さ、ローガ様がお待ちです。 どうぞ」

「あ、はい。 …ところでケイプさん、今日って暇な時間ありますか?」

「ありません」

「え、いやいや、あるでしょう。 流石に1日中働いてるなんて…」

「働いていますが。 何か?」

………は?

「え、寢る時間は?」

「ありません」

「休憩時間は?」

「ありません」

「…嫌じゃないんですか?」

「そういう”命令”なので」

………

確定だ。 ケイプにも魔法陣がある。 

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そのせいでケイプは1日中休まず働かなければいかないんだ。

逆らえば魔法陣が発してしまうから。

「さ、ローガ様がお待ちです」

俺は無言でローガの部屋の扉を開け、中にった。

ケイプは部屋にはらず、何処かへ歩いて行った。

また次の仕事があるんだろうか。

「やぁ。 ルージュ君」

「お待たせしてすみません。 ローガ様」

ローガの部屋は結構広く、本棚が沢山置いてあった。

ローガは機の前に座っていた。

「話とはなんですか?」

「うん。 報告しておこうと思ってね」

「報告…?」

「さっき、僕達はドラグラード王國を出たよ。 もう國の外だ」

……間に合わなかったか…

出來ればドラグラード王國にいる出したかった。

「この屋敷は何処に向かってるんですか?」

「隣國のカジノ王國、トバーブルクさ。 依頼でね、その國のある人を殺さないといけないんだ」

殺しの依頼……魔剣使いは殺し屋みたいな事もやるのか…

「そこで本題だ。 ルージュ君には早速、トバーブルクで僕の手伝いをしてもらいたい」

ローガの手伝い。

それはつまり、殺しの手伝いをしろという事だ。

「分かり…ました」

「うん。 最初は辛いだろうけど、覚悟をしておいてね」

「はい」

「休み無しでトバーブルクに行くから、あと4日後には著くよ。 

それじゃあ、部屋に戻っていいよ」

「はい。 失禮しました」

ローガの部屋を出て、俺はゆっくりと自室に戻った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

自室の扉を開け、中にると、カノンが1人で本を読んでいた。

カノンは俺に気づくと

「あ、お兄様! おかえりなさい!」

と笑顔で言ってきた。

「あぁ、ただいま」

と、俺は普通に言ったつもりだが、カノンには何か引っかかったのか、首を傾げた。

「お兄様、何かあったのですか? 元気がないですね」

「そうか? 別に元気だぞ?」

噓だ。 殺人に協力すると分かって元気でいられるわけがない。

だが、それをカノンに気づかれるわけにはいかないんだ。

「んー……」

そう言いながらカノンが俺をジッと見つめてくるが、俺は何も言わない。

「分かりました。 私の勘違いだったみたいですね」

と言ってきた。 

「おう。 さて、考え事の続きをしようか」

「はい!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「食事の時間です」

昨日の夕飯と全く同じ時間にケイプが自室の扉を開ける。

「お兄様、行きましょう」

「…あぁ」

ケイプについて行き、食堂にる。

食堂にはもう既に全員揃っていた。

シーラがローガに見えないように小さくこちらに手を振ってきた。

いつもの席に座り、レーラ達から料理を貰う。

「ルージュ君、隨分と元気がないね。 やっぱり急な話過ぎたかな?」

ローガが俺の顔を見てそう言ってくる。

「…いえ、大丈夫です」

「本當かい? 」

…しつこいな。 カノンには人殺しの手伝いをするとは言ってないし、絶対に言いたくない。

だからカノンには黙ってたのに、ローガが話を終わらせてはくれない。

「僕が初めての時は張したけどね」

「…本當に大丈夫です。 だから早く食べましょう」

「そうだね。 冷めたら勿無い」

よし。 これでいい。 

カノンは余計な事を考えなくていいんだ。

もし俺が人殺しの手伝いをすると知ったら、カノンはきっと心配するだろうからな。

「それじゃあ、”人殺し”頑張ろうね」

と、ローガは「人殺し」の単語を強調して言った。

そう言った瞬間、食堂の空気が凍った。

ケイプは真顔だが、メイド姉妹はジッと俺の顔を見ている。

そして俺の隣にいるカノンは

「…ひ、人殺し…? お兄様…?」

それを見てローガはニヤニヤといやらしい笑みを見せる。

……なるほど。 反応を見て楽しんでるわけか。 

本當に趣味の悪い奴だな。

「はい。 早く覚悟を決めます」

「うん。 では食べようか」

そしてそのまま食事を始めようとした時…

「そういえばローガ様、1つお聞きしたい事があります」

ケイプが手を挙げ言った。

「なんだい?」

「2日後に到著する予定の龍族の村ですが、滯在する場所は森の中でお間違いないですか?」

……ん?

龍族の村…?

聞いたことないな…

というか今、なんて言った…?

滯在、と言ったのか?

「……そうだけど、それがどうかしたかな?」

ローガが不機嫌そうな顔で言う。

先程俺とローガが2人で話していた時、ローガはこう言った。

”休み無しでトバーブルクに行くから、あと4日後には著くよ。”

と、なら龍族の村に滯在するというのはなんだ?

休み無しじゃなかったのか…?

「いえ、ただ聞きたかっただけです」

その後、誰1人何も話さずに、食事を始めた。

食事が終わった後、ローガは何も言わずに食堂を出て行った。

「…お兄様…? あの…さっきのお話は…」

「カノン、その話は後だ」

滯在という事は、空間魔を解き、この屋敷が実化するという事だ。

という事は、永遠に空間を移し続ける事は出來ないのか?

「早く部屋に戻ろう」

「え? あ、はい」

これはよく話し合う必要がある。

後2日後に龍族の村に到著する。

なら、チャンスはその時だ。

そして、2日後までに魔法陣の謎を解かなくてはならない。

モタモタしてはいられない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「カノン。 タイムリミットは2日後だ」

「はい?」

自室にった途端、カノンにそう言うと、カノンは首を傾げた。

「さっきケイプさんの話聞いただろ? 2日後、この屋敷は実化する。 逃げるならその時しかない」

逆に、その機會を逃せば出は難しくなってしまうだろう。

「ですが、どうやって出するのですか?」

問題はそれだ。 今俺は魔を使えない。 だから風加速で逃げる事は出來ないんだ。

「…これから考えよう。 

とにかく、2日後に俺、カノン、レーラさん、シーラさん、ケイプさんの5人でこの屋敷を出する」

「わ、分かりました」

多分、さっきケイプは俺に教えてくれたんだ。 

”チャンスは2日後だぞ” と。

せっかくケイプが教えてくれたんだ。 このチャンス、絶対に無駄には出來ない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーローガ視點ーー

「ローガ様、何かご用ですか? まだ仕事が殘っているのですが…」

ケイプが真顔で僕の部屋にってくる。

「…ケイプ。 なぜルージュ君達に2日後の事を教えたんだい?」

「…何か問題でもありましたか? ルージュ様はローガ様に忠誠を誓ったはず。 でしたら報は共有すべきかと」

「それは僕が決める事だろう。 いつから君はそんなに偉くなったんだ?」

僕は空間から魔剣グラビを取り出し、ケイプに向ける。

「君にはし、お仕置きが必要だね」

魔剣グラビが気味悪くり、ケイプの背中の魔法陣が発する。

「くっ…! あぁ…!」

「ははは、痛いだろう? ごめんねケイプ。 これは仕方のない事なんだ、僕の理想に近づくにはね」

背中の痛みに耐えられず、ケイプが膝をつく。

まるで僕を崇めているようだ。 実に素晴らしい。

「僕の理想には、僕に逆らう人間は要らないんだ。

誰も僕に逆らわない、そんな城を作るんだ。 僕の…理想の城をね」

あぁ…早くルージュ君を僕のにしたい。

フロウからルージュ君の話を聞いてから、いろいろ調べた。

そしてルージュ君の実家に何も知らないカノンを送り込み、やっと…やっとルージュ君をこの屋敷に連れ込んだんだ。

早くトバーブルクに行かないと……この依頼が終われば…ルージュ君は僕のだ。

ふふふ…ルージュ君。 君は僕の理想に近づく為には欠かせない存在だ。

絶対に僕のにしてあげよう。

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