《2度目の人生を、楽しく生きる》84話 「魔法陣の謎」

「…くそっ! 何処にも載ってないか… 」

俺は今、屋敷の図書室で報を探していた。

探している報はもちろん、”魔法陣の解除の仕方”だ。

だが、この広い図書室にあるのは昔話、魔関連、逸話、伝説などの暇潰しに読む程度の本しかなかった。

朝食を食べた後からずっとこの図書室にいるが、無駄だった様だ。

屋敷を自由にける様になったとはいえ、1つも進歩がない。

魔法陣の事も、俺とカノンの首の事も、俺の武の場所すら分からない。

明日には龍族の村に到著するというのに、このままでは本當にマズイ…

「…とりあえず、この部屋はダメだな」

今、俺には時間がない。 この部屋の本を全部見ている時間なんてないんだ。

ある”かもしれない”というだけで時間を無駄にするわけにはいかない。

「となると…次はどうするか」

そう呟きながら図書室の扉を開け、廊下に出る。

窓から外を見ると、真っ暗な景が何処までも続いていた。

……今、外に出たらどうなるだろうか。

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「…いや。 ダメだろ…」

生きていられる確証がない。

しかも、そうした場合、魔法陣はどうする。

そう考えながら歩いていると、キッチンの前に著いた。

カノンは今レーラ達に預けている為、この部屋に居るはずだ。

俺はキッチンの扉を開け、中にる。

「あ、お兄様!」

「ルージュ君、おかえり」

カノンとシーラが俺を見て挨拶してくる。

レーラは俺の顔を見て察したのか

「…ダメだったみたいね」

と、そう言ってきた。

…俺ってそんなに分かりやすいのか…?

「あぁ、図書室には何もなかった」

「でしょうね。 そんなにマヌケな訳ないもの」

シーラが「お疲れ様」と言いながら紅茶を淹れてくれた。

その紅茶を飲み、次の事を考える。

「…というか、ルージュ。 あなたは私達が何年この屋敷に居ると思っているの?」

「…何年だ?」

「四年よ、四年。 私達が8歳の時からこの屋敷に居るの」

「だから何だよ?」

そう言うと、レーラは深い溜息を吐き。

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「あのね、私達が四年経ってもこの魔法陣の謎を解けていないのに、この屋敷に來て數日のあなたにこの謎が解ける訳ないでしょ」

「…なら、どうすりゃいいんだよ」

確かに、簡単に解ける謎なら、今レーラ達はこの屋敷に居ない。

レーラは腕を組み、真顔で

「簡単でしょ。 私達の事を考えずに、ルージュとカノン。 あなた達2人で逃げればいいわ。 あなた達には魔法陣は無いんだから」

と、さも當然の様に言った。

俺は口をポカンと開け、固まってしまった。

「何故ルージュが私達を助けようとしてるのかは知らないけど、結構よ」

「な……は…?」

「ルージュ君。 それに関しては私も姉さんに賛だよ。 私達のせいでルージュ君が苦しむ事はないよ。

折角のチャンスなんだから、ね?」

何で…何でこの2人は…簡単にこんな事を言えるんだ…?

それが出來たら…どんなに楽だろうか。

「出來る訳…ないだろ」

カノンと楽しそうに話す2人を見た。

2人は、俺を弟としてれてくれた。

ケイプは、俺にチャンスをくれた。

こんな人達を見捨てろ…? 馬鹿を言うな。

「絶対に全員で出する。 俺、カノン、レーラさん、シーラさん、ケイプさんの5人で出するんだ。

絶対に見捨てない」

何が何でも5人で出する。 

たとえ…俺がトバーブルクで人殺しになった後でもだ。

この際、數ヶ月後でも、何年後でもいい。 

誰かを見捨てて生きるなんて、楽しくない。

「…はぁ…あなたは馬鹿ね。 何でわざわざ難しい手段を選ぶのかしら」

「家族を見捨てるなんて出來るわけないだろ」

俺が笑いながら言うと、レーラは額に手を當て

「はぁ……シーラ、どうやら私達の弟は相當馬鹿みたいよ」

「うん。 そうだね、馬鹿だけど…凄く優しい」

「まぁ、馬鹿なのは認めるよ。 勉強苦手だしな」

俺がそう言うと、レーラとシーラは苦笑いをした。

カノンはずっと心配そうに見ていたが、今は安心した表だ。

「さて…休憩はしたし、また報探してくる」

「アテはあるのかしら?」

「んー…一応ケイプさんに聞いてみる事にする」

「そう」

會話が終わると、俺はキッチンを出て、ケイプを探す為に歩き出した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「居ねぇ……」

ケイプが何処にも居ない。 

というか俺からケイプに會いに行ったことなんてないから、普段何してるかなんて知らないぞ…

「時間ないのに…! 何処に居るんだよ…」

「何かお探しですか? ルージュ様」

「うわぁっ⁉︎」

と、すぐ隣から聲が聞こえた。

驚いて聲のした方を見ると、扉を開けて箒とちり取りを持ったケイプが出てきた。

……あっ、部屋の中調べるの忘れてた。

「驚かせてしまい申し訳ありません。 それでルージュ様、何かお探しですか?」

「あ、あぁ…ケイプさんを探してました」

「私…ですか?」

ケイプは自分の顔を指差して言った。

俺は周りを確認し

「ちょっとお時間頂いても大丈夫ですか?」

「…ルージュ様。 私には自分の意思で休憩を取る事は出來ません」

…そうだった。

俺はケイプの手からちり取りを奪い

「なら、一緒に仕事しましょう。 話しながらね」

そう言うと、ケイプは微笑み

「仕事は話しながらするじゃありませんよ? …でも、今回はいいでしょう」

そして、ケイプは箒を持って廊下を歩いて行った。

俺はその後をついて行き、次の仕事場に向かった。

「…それで、お話とは何ですか?」

何も家が置かれていない部屋を箒で掃きながら、ケイプが聞いてきた。

「はい。 ケイプさんが知っている報を、出來る限りでいいので教えて下さい」

俺の予想だが、ケイプはレーラ達よりもこの屋敷に居る期間が長いと思う。

なら、レーラ達が知らない事も知っているかもしれない。

「…何が知りたいのですか?」

「魔法陣の謎です」

「そうでしょうね」

2人しか居ない部屋に、沈黙が流れる。

ケイプは知っているのか、知らないのか。

知っていたとして、教えてくれるのか、教えてくれないのか。

そんな不安が、俺の頭の中を支配する。

そして、ようやくケイプが口を開いた。

「…ローガは、魔法陣の力を使う時、必ず魔剣を実化させます」

「魔剣を⁉︎」

「はい。 多分ですが、魔法陣の力はあの魔剣がないと使えないのでしょう」

「…拠は、ありますか?」

そう尋ねると、ケイプは俺の顔を真っ直ぐ見て

「実際にこの目で見ましたから」

「っ!」

無意識に拳に力がる。

、何度ケイプ達は魔法陣の力を使われたのだろうか。

魔法陣の痛みに苦しむケイプ達を想像するだけで、ローガに対する怒りが増す。

「冷靜になって下さい。 今ルージュ様がしなければいけない事を思い出して下さい」

…そうだ。 俺が1番冷靜にならなきゃいけないんだ。

俺に、皆の人生が掛かってるんだ。

失敗は出來ない。

俺は、「ふぅ…」と息を吐き、気持ちを落ち著かせる。

「ケイプさん、他に知っている事は?」

「魔法陣に関する事は以上です」

魔法陣が魔剣の力だというのが分かっただけでも大きな進歩だ。

「なら、次の質問です。 ケイプさんは、今の生活に満足していますか?」

そう聞いた時、ケイプは一瞬驚いた顔をしたが、その後にすぐ微笑み

「いいえ。 満足した事なんて、一度もありません」

「分かりました。 ありがとうございます!」

俺は素直にケイプにお禮を言う。

するとケイプは俺の手からちり取りを奪い

「後は私1人で仕事をするので、ルージュ様はルージュ様の仕事をして下さい」

「はい!」

俺はそう言って部屋を出た。

魔法陣は魔剣の力によるもの。

つまり、魔剣を奪えば…魔法陣の効果は無くなるはず。

魔剣を奪うためには、ローガと戦う必要がある。

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「馬鹿じゃないの? 死ぬ気?」

「しょうがないだろ! 魔剣はいつもローガが持ってるんだから」

キッチンに戻った後、俺の考えを伝えると、レーラにそう言われた。

「ルージュがどこまで強いのか知らないけど、ローガに負けたから此処に居るんでしょう? なら、無理だって分かるでしょ」

「だから、今勝つ方法を考えてるんだ。 皆も考えてくれ」

「お兄様?」

「お、カノンどうした?」

俺の隣でカノンが手をあげる。

「お兄様が負けたのは、多分私という足手まといが居たせいです…」

「えっ…そ、そんな事ないぞ⁉︎ カノンが居なくてもきっと俺負けてたし! ボコボコにされてたよ!」

「そんなんでよくローガを倒すなんて言えるわね…」

レーラがボソッと呟いた言葉は、しっかり俺に聞こえていたが、あえて無視した。

「ふふっ…お兄様は優しいですね。

 私が言いたいのはその事ではなく、お兄様とローガが一対一なら、勝てる可能があるのではないですか?」

「…どうだろうな。 今俺は魔を使えない。 魔が使えない俺なんてただの雑魚だぜ?」

だが…もし魔が使えるようになれば、可能はあるかもしれない。

あの魔剣にさえ気を付けて、隙を見て大発エクスプロージョンや炎拳ナックル・フレアのような高威力の魔を使えば……

かなりの賭けになるが、やる価値はある。

その為にはこの首の謎を解かなければいけない訳だが…

また謎解きかよ……いや、もしかしたら力ずくで壊せるかも…

ならまずは剣を探すべきか?

「ねぇカノン。 ルージュ君ってそんなに強いの?」

シーラがカノンの肩を叩いてそう言う。

「はいっ! お2人に今からお兄様の凄さを教えてあげます!」

そこからカノンが目を輝かせながら俺の話を始めたので、俺は逃げる様にキッチンを出た。

…絶対に、5人で出するんだ。

俺は、再びそう誓い、剣を探す為歩き出した。

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